12
1
2
3
4
5
6
7
8
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
   

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

掌編小説:冬

さてさて。
初の一番乗り!?

今回のテーマは「冬」

いつもの通り、1000文字以内の掌編小説です♪


『冬』


このままでは勿体ないね。
そう言われた。

美術部の顧問、新井先生の隣で地下鉄の喧騒に揺られながら思い起こす。
新井先生は今年から芸大の講師になった。俺たち美術部も盛り上がり、芸大の新任講師作品展でのおまけ的な若年公募展にこぞって出品した。
俺の作品は評価され、展示会最終日に呼ばれたのだ。
その時、芸大の教授に言われたのだ。

このままでは勿体ない。
言葉の意味を考えると、
「僕には何が足りなくて、それを補うには何が必要なんでしょうか」
と問いたくなる。口を滑り落ちた言葉は新井先生にも届いたらしい。
「あの教授は自宅でも教えているらしい。一度会いに行ってみたらいい」
そう言ってくれた。

「教授に師事するとになると、費用が掛かりますよね」
俺の家は一般的な家庭だ。次男だから自由にしているだけだ。特別な期待を背負っているわけじゃないから、親の出資は見込めない。
先生も分かっていた。
「まずは道を歩いてみることだ。行き先はその後決めればいい。今、お前には歩き出すだけの力はあるんだ」
「歩き続けられるかは、僕次第ですか」
先生は頷いた。
「部活、続けられますか」
「分からん」

地下鉄はふわりと地上に浮上する。通学に地下鉄を使う俺は、この瞬間がいつも楽しみだった。
生き物が息を吹き返す、春の芽吹きを感じさせる。
けれど外は雪混りの雨だった。

「白い、絵を描きたいです。藤田嗣治みたいな生命感のある特別な白で」
「藤田がフランスに残したユキのように、一緒に女まで捨てるなよ」
見抜かれた気がして振り返ると先生は穏やかに笑っていた。
「海外じゃないんだぞ、お前は。考えすぎだ。玲ちゃんが可哀想だろ」

「でも。いいんですか。絵にのめり込んだら、玲を構ってやれなくなる」
「学校に戻れば会えるだろ、俺に聞くな。ほら着いたぞ。画家には生涯描き続けるモチーフがあるものだ。大作にならずとも、スケッチブックを占めている存在がな。そういうのは、大事だろ」

俺たちはホームに降りた。
夕暮れの空は薄暗く、濡れたタイルに反射した蛍光灯の光がやけにたくましく見える。
寒さに一つくしゃみをして俺は鼻をすすった。

「何があっても、必ず春は来る。耐えて見せろよ」
先生が背中を押した。
帰宅途中の学生が改札の前でたむろしていた。知った顔が数人、俺に手を振る。
玲もいた。

玲の華奢な手が、俺に向かって大きく振られた。
人の流れに逆らい、自動改札ですれ違う悲劇を全身で防ぐ。
俺を待ち受ける。




スポンサーサイト

プロフィール

らんらら

Author:らんらら
のんびり小説を書いています
日記ブログはこちら♪

ランキング参加中です♪

クリック よろしく~♪

FC2Blog Ranking

最近の記事+コメント

FC2カウンター

リンク♪

小説ブログの皆様

カテゴリー

ブログ内検索

RSSフィード

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。