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「宙の発明家」第一章二.世界の果て②

<<最初のお泊り。クラフ君、どきどき、だよね(^^)>>



白い石を積み上げた小さな礼拝堂は、正面の入り口を入ると、中はひっそりとしている。くすんだ色の木のベンチが並び、正面に一段高くなった聖壇。夜活動することのない習慣のため、灯りはない。昼間は天窓のステンドグラスの光が差し込んで、美しいのだろう。
今は、クラフの作った、電池式の小さなライトだけがその礼拝堂の一部を丸く照らし出す。
ベンチの並ぶ一階の両脇から地下へと続く階段があり、旅人のための部屋があった。部屋と言っても、低い天井の何もない部屋に、木でできたベンチとも寝台ともつかない台が六つ並んでいるだけだ。両側に三台ずつ二列に並び、それで部屋はいっぱいに見えた。
「オレ、リスガの隣!」
クラフは自分の荷物を右側の真ん中の寝台に置くと、さっさとリスガの荷物を取り上げて、隣の寝台に置く。いつもの場所、と言った感覚で、セキアもクラフの隣に荷物を置いた。クラフは自分の寝台に座って足をばたばたさせる。
「もう、本当に子どもみたいなんだから」
苦笑いしながら、リスガが自分の荷物を置かれた通路から向かって右奥の寝台に座った。
向かい合う形で、クラフはニコニコして少女を見つめる。



「なあに?」
「オレ、リスガのこと大好き!」
「ふふ、ちっちゃな弟みたいね」

二つ年下の少年を、優しく見つめながら、リスガは微笑む。
亜麻色の髪はくるりと癖を持ち、額のあたりで揺れる。黒い大きな瞳が、薄暗い室内でぬれたようにキラリと光る。瞬く。
結わえていた亜麻色の髪を解くと、ふわりと香油の甘い香りがクラフの鼻をくすぐる。
「うわ!いいにおい!」
どきどきしてきて、身を乗り出す少年を、間に入ったセキアが止める。
「な、んだよ、邪魔するなよ!」
クラフに遠慮などはない。そういう性格なのだ。
「何の邪魔だと?リスガさま、間に私が寝ますので、ご安心を」
「やあね、大丈夫よ、クラフは可愛い弟みたいなものだもの」
「じゃ、一緒に寝る?」
クラフは枕を抱きかかえると、また、足をばたばたさせる。
「いいわよ」
あまりにあっさり頷く少女に、クラフは甘ったれた表情になる。眉が下がっている。
「クラフさま。リスガさま、お強いですよ」
「平気…」
リスガの座る横に座って、リスガの肩に手を乗せようとした時だった。
ばちん!
気付けば、抱えた枕ごと床に落ちている。
「い、た…」
「触ったら、承知しないからね、クラフ」
にこにこ可愛く笑って見下ろすリスガに、クラフは床に座り込んで頬をさすった。
派手に赤い手形が残っていた。
「くく、クラフさま。どうぞ、ご自分の場所でお休みください。そのほうが、身のためです。リスガ様は学校で護身術を習っておられますからね。かないませんよ」

悔しげに頬を押さえたまま、クラフは自分の寝台に、横になった。
その様子を面白そうに見ていたカカナが、ついとリスガのそばに来た。
「お休み、リスガ。これ、明日また君の笑顔が見られるように」
整った顔立ちのカカナは、決めの笑顔を浮かべて、リスガの前に小さな花を差し出した。いつの間に取ったのか、旅の途中で、リスガが好きだと言っていた花だ。

「うえ、気障やろう…」
枕に頬を押しつけたまま、クラフがじろりと年上の少年を見上げた。
一瞬リスガの頬がピンクに染まったのをクラフは見逃さない。
「やだ、採らなくてもいいのに。ひどいわ、カカナ。私の好きな花の命を奪うなんて」
そう言いながらも、花を受け取る。
「え、あの、君のために…」
「お花がかわいそうよ」
しっかり花を胸の前で握り締めているくせに、と、クラフは少女を観察する。
「ごめん、君が喜ぶと思って…」などと、言い訳をしながら退散するカカナを、ちょっと同情しながら眺める。
「さ、クラフ様、風邪引きます。寝てください」
セキアが毛布をかけてくれる。黙って大人しくしたまま、クラフは傍らの少女をまた、見つめる。受け取った花を、まんざらでもなさそうに、リスガはきれいな刺繍のハンカチに包もうとしていた。
むくりと起き上がって、クラフはその黄色い小さな花を取り上げた。

「あ、何するの?」
取り戻そうとする少女の手をよけて、クラフは寝台の脚に、ぺたっ葉でそいつを貼り付けた。
「やだ!何するの!」
「この粘着性の、水分を保持するから。可哀想なお花なんだ、できるだけ長く咲かせたいだろ」
口をぎゅっと結んで、少女がクラフを睨んだ。

「クラフさま、それは、その…」
何か言おうとするセキアを無視して、クラフは笑った。
「帰りにまた、ここ、お前の場所って分かるから。カカナの気持ちがこもっているんだ。きっと帰りに立ち寄る時まできれいに咲いているよ」
「なんだって?」
クラフの寝台の向こう側で、カカナが半分笑ってみている。
「せっかくだから、飾っとこうと思ってさ」クラフが笑う。
枕をぎゅっと抱きしめて、自分の寝台に寝転ぶと、カカナに小さくウインクした。その金髪の頭を、セキアがくしゃりとなでた。
「…」
何も言わずに、リスガは皆に背を向けて毛布を被った。

「皆さん、うるさいです。私はもう寝たいんです」
一人はなれた場所の寝台を選んだピーシは、毛布の下から、もごもごと抗議した。どうやら、こちらの様子は見ていなかったようだ。
「おやすみ」
カカナが片手を挙げて、言った。
「ん、お休みー」
クラフはつぶやくように言う。その様子を見て、それから室内のみなの様子を見回して、セキアは戸口に一番近い自分の寝台に座った。腰の剣を鞘ごと外すと、肩に抱くように背を丸め、毛布をまとうと顔をうずめた。
横になるつもりはないようだった。

リスガは、少し悔しい気分で、寝返りを打つたび、ちらちらと寝台の脇に貼り付けられた黄色い花を見つめる。
隣のクラフは、ぐっすり眠っている。何の悩みもなさそうな、幼い顔。
はあ。
一つため息をついて、少女はまた、壁のほうに体を向ける。
背後でむにゅむにゅとクラフの寝言が聞こえる。
「ん、りー…」
リー、とは、自分のことだ。クラフが勝手にそう読んでいるのだと、いつかセキアが嘆いていた。
別に、年下の男の子になにを言われようとも、気にならないと笑っていたのだけれど、この日は少し、違った。
腹立たしかった。
「なによ、まるで、私が悪者みたいじゃない…」
つぶやくと、少女は毛布に顔をうずめた。


カカナは、リスガと同じ学校に通っている。気さくで整った顔立ち、父親が賢老士会一の実力者となれば、女の子が放って置かない。それに、あの気障な行動。誰にでもああする。彼の父親も、女性に人気の高い政治家だ。それをそのまま引き継いでいる。

学校では、なるべく顔をあわせないようにしていた。
大教皇の娘である自分とカカナが話していれば、必ず変なうわさを立てられるから。それがいやだった。
けれど、ここでは、避けようがない。
嫌いではないけれど、気障なことされるのは慣れていないし、変に緊張する自分を見せるのが嫌だった。
ちょっと、言い過ぎたかもしれない。
ただ、きちんと、そういうことされるのは嫌だって表現しておけば、この後あんなことしない、そう思えた。
枕に顔を擦り付けて、ため息を殺し、また寝返りを打つ。

夜が明けてきたのだろう、室内には天井付近の高窓からうっすらとが差し込み始めた。
昼眠って、夜歩く。この旅行には、リスガもまだ、慣れないでいた。これが最初の宿泊になる。
クラフだけでなく、リスガも前日の昼から、出来るだけ寝ようとしていたけれど、そう簡単に体のリズムを変えられるわけではない。うまく寝られなかった。

あれだけ暴れたせいか、クラフはぐっすり眠っている。
腹立たしい。
また、ため息をついて、リスガはむくりと起き上がった。
誰かが動く気配がした。
目をやると、セキアが剣を抱えたまま、寝台に座っていた。
薄暗い中、寝ているのかなと観察するように見つめて、リスガが首をかしげた。
「眠れませんか?リスガ様」
穏やかなセキアの声に、一瞬ドキッとしながら、リスガは頷いた。

「先ほどの、クラフさまの行動、お許しください。そんなに、深い意味があるものでもないのです。本当に、そのぺたっ葉に使われているゼリー状の粘着成分は、水分を保持するのです。もともと、花の命を永らえるために、彼が発明したのです」
「花の?変なの、似合わないわ」
セキアは笑ったように見える。

「そうでしょうね。クラフさまの、初めての発明品ですよ。私のために作ってくださった」
リスガは枕を抱えたまま、寝台に座りなおした。間にクラフを挟んで、セキアに向き合う。
その様子を見て、セキアは話を続けた。

「クラフさまがこの世界に来た時、まだ幼かった。ですから、当初は私ともう一人、通いの女性の召使がいました。女性は当時二十歳くらいでしたか。体の弱い、身寄りのない女性で、それ故、人に知られる心配もなくクラフさまのお世話をしていました。クラフさまは、初めの頃、言葉が通じませんでした。怖がっていたのでしょう、毎日泣いて、暴れて。食事をとろうとしないので、女性の作ったものは、ほとんど私が食べていたくらいです」
リスガは初めて聞く話に、興味深げに、低く静かに話すセキアの言葉にじっと耳を澄ましている。
「女性は、それでも毎日、嫌な顔一つしないで、通ってくれました。ある日、彼女がたまたま市場でおまけにもらったという花を持ってきました。それは桜でした。
枝の伐採があったのでしょう、いらなくなった枝を、もらったのです。それを見たクラフさまが、泣き出しましてね」

「嫌いなのかと処分しようとした時に、クラフさまは嫌がりまして。花を大切そうに抱えて。何か思い出のあるものだったんでしょう。その花の名前を、彼は一番最初に覚えたのです。
以来、女性は毎日、桜ばかりと言うわけには行きませんが、何かしら花を持ってきてくれるようになりました。クラフさまも花だけは、嬉しそうに受け取るのです。クラフさまも、われらが危害を加えるものでないことを理解したのか、少しずつ、言葉を交わせるようになって。それから二月もしないうちに、大抵の日常会話は通じるようになっていました。
丁度、一年たった頃でしょうか。一年たったのだと伝えましたら、クラフさまは荒れましてね。たまたま、女性に怪我をさせてしまったんです。私が叱ったのですが、あの性格ですから、謝るわけでもなく、拗ねて毛布にもぐったまま出てきませんでした。私も、そんなクラフさまを放っておいて、その日は女性を家に帰しました。

女性は、もともと、病を抱えていました。怪我が原因ではないのですが、その日以来、通えなくなりました。クラフさまは、女性が来なくなった日から、また食事を取らなくなってしまいましてね。
女性が来なくなったことを自分の責任だと、そう思っているようでした。
それで、私は、女性は元気だけれど、用事で来られないのだと伝え、女性が届けてくれたと偽って、花を毎日クラフさまに届けたのです。

クラフさまは、花を見ると落ち着いて、以前のように毎日花が届くのを楽しみにするようになっていました。女性は、一月後に病がもとで亡くなりました。私は言い出せず、その後も、毎日花を市場で買って帰り、クラフさまに届けました。それが、しばらく続いた後でした。

クラフさまは、その頃から地下の部屋で何か作っていたのですが、ある日花を持って帰った私に、細長い器を手渡しました。中に透明なゼリー状のものを入れてありまして、そこに花を入れろと言うんです。
この中に入れておけば、一月は花が綺麗に咲いている。だからもう、お前が毎日買ってこなくてもいいからと」

「理由は分かりませんでしたが、クラフさまは気付いておられました。女性が亡くなったことに」
リスガは、黙って膝を抱えた。
「バカ、お前、彼女のこと好きだっただろ、お前があれだけ落ち込んでたら誰だって気付くさ」
クラフだった。
「!起きていらしたんですか」
「だから、お前バカだろ?すぐ隣でそんな話してたら目が覚めるだろ、普通」
「……すみません」
「もう、寝ろよ」
「はい」
セキアが、リスガの方を見ると、少女は既にこちらに背を向けて横になっていた。

 続きはこちらです!(^^)
http://ranrara.blog70.fc2.com/blog-entry-189.html

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わー!!ミナモさん♪

嬉しいです!!長いのに…ほんと、長いんです。

クラフくん、うふふ!らんららもツボなんです、こういう子。
わがままがいえるのも、相手を信頼しているからなんですよね。

無意識に出る手をつなぐとかも。
それでいて本質は優しい。…うう、かつての旦那様もこんなだったのに(性格は旦那様がモデルなんです…は、ということは。私がセキアさん!?)

やっとここまで…

すっごい長編ですぅ…。
もう、頭あがんないですよ。らんららさん。

それにしても、この長さを感じさせないストーリー展開で、
一気に読み進んじゃいました。

私は、ワガママの合間に、時折見え隠れするクラフの本心に
ちょいっとクラクラしちゃいました。
かあいい~。

う~。こんな風に、ワガママ言われたいっ(笑)

セキアの心境に近いですね♪

また続きを読みに、お邪魔させてもらいます。

Chachaさん

ありがとう!
第一章は二人の関係、そして、リスガちゃん、カカナ、ピーシ、三人の関係を中心に書いてます!
どう変化していくのか、楽しみにしてください!

うふふ^^

いいな、セキアさん。
ただの過保護じゃなかったな(笑)
優しくて厳しくて、本当頼れる存在ですね^^
クラフも嫌々言いながらも一番心許してるって感じで・・・
二人の関係、いいですね^^

リスガの気持ち、わかるなぁ☆
でも、セキアさんの話聞いて何か思うことがあっただろうな。
クラフに対して、弟以上のものを抱いて欲しいと思う今日この頃(笑)

続きが楽しみです☆
また明日!^^ポチッ!

コメントありがとう!!

花さん
ありがと!ごめんね不定期更新なのです!
そうですか!ピーシ君、やったね!嬉しいですね!
彼、今後いい感じになりますよ、いろいろと。
期待に添える男になるよう、らんらら、努力しますよ!

kazuさん
リスガ、いい立場ですよ、美味しい。
クラフ君、以外に可愛いとこあるでしょ?
もっともっと、いたずらさせたい…らんらら自身、わくわくしています!

アポロちゃん
ありがとーです!
クラフ、いい奴ですよ。
子供だけど、わがままだけど。
こういう弟いたら、かわいがるなぁ。アポロちゃんの弟さんみたいに可愛いといいのに。うちの弟…(><)

龍くん
久しぶり!
そうか、更新ですね!昼休み、遊びに行きますよ!携帯からでもがんばります!パケ代安いプランに変えたものv-91

あきららさん
でしょ?あきららさんのツボあたりかなぁと、ちょっと考えつつ。
セキアとクラフ、何しろ十年そばにいますからね。いろいろとあったと思いますよ。そういう過去エピソードとかも、面白いかもしれませんね…。本編では、チョコチョコと、かけらだけ出します。
観ていてやってくださいね!

ぺたっ葉のエピソード、すごい好きです!
クラフ君とセキアさんの今のベースになるお話。
クラフ君もその女性のこと、本当は大好きだったんだよね。
女性のフリして花を届けてくれるセキアさんのことも
本当は大好きなんだよね。

クラフ君に思わずそう語りかけたくなるような気持ちになります。続きも楽しみに待ってます!

お久しぶりですっ!

色々あって中々来れませんでした。
でもやっと、やっと遊びに来れました。
水凪の国の感想は近くに書きます。
もちっと待ってください。
そして、今日の十時に君がため更新します。
よかったら来て下さいね。

クラフ♪

うずうずするほど近くにおいておきたい人だw
子供みたいなときもあればちゃんと周りに気配りできる。
ぺたっ葉にそんなエピソードがあったなんて!!って驚きだったよ!クラフもそんな素直でかわいいときあったんじゃなぁい♪
またちがうクラフの一面見れました☆

おはようございますv-252
なんだか、リスガさんの立場になりたいような。
かわいいけれど芯の強いところがあって、クラフ君にあれだけ好かれている。セキア様にも心配してもらえる・・・。
いいなぁ、リスガさん♪

カカナ君の行動を気障と思いつつも、カカナ君の為、お花のためにぺたっ葉で長く生かしてくれる。
ぺたっ葉が、小さな頃におきた悲しい別れと、それに伴うセキア様の優しい気持ちに触発されて発明した物だったなんて。
てっきり悪戯に・・・、いやいや(笑

クラフ君の不器用だけれど、とても優しい心。
好きです~v-413

あわわ…。気が付いたら、2話も進んじゃって!
でも、読めば読むほど、セキアさんとクーちゃんの関係がいいなぁと、頬を緩ませながら引き込まれていってます。
不器用だけど優しいクーちゃんに、面倒見のいい保父さんみたいなセキアさん。リスガちゃんじゃなくても、ちょっと疑りたくなっちゃいますよねw
個人的にはピーシくんの隠れファンだったりするんですけどねっ。あ、年上だ。でもくん付けしたい魅力っ。(笑
皆で仲良く、楽しいひと時を過ごして欲しいですねwこまめに覗いて、次回も見逃さないようにします。
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