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「宙の発明家」第一章 二.世界の果て④



クラフの騒ぎで少し遅れてしまったために、空がうっすら白む頃に果ての礼拝堂に到着した。
「さ、クラフさま、着きましたよ」
セキアの言葉にも、クラフはうるさそうにフードを目深にかぶった。眠いのと、先ほどからずっと、先を行くカカナとリスガの楽しそうな会話が、彼の神経を逆なでしていた。
つまり、不機嫌なのだ。



「クラフ、気にすることないよ。カカナは誰とでもああなんだよ」ピーシが笑う。
面白そうにしている彼に、クラフは口を尖らせて見せた。
「カカナ、なんであんな気障なんだ?ちょっとむかつく」
「昔からだよ。同じ学校だけど、女子生徒に人気があって。女性は皆、おだてに弱いのかな。誰にでも同じようなこと言うのに、喜ぶから」
「笑うな、セキア」
背後で肩が揺れるのを感じて、クラフがさらにむっとする。
「いえ、面白いですね、さあ、降りてください」
「面白がるな。自分だって、女の子の扱い下手くそなくせに」
クラフは左肘で、背後の男をつつく。
「さあ、どうでしょうか」
穏やかに笑うセキア。ピーシがひょいとラマから降りて言った。
「クラフ、お前は知らないだろうけど、セキアはお前の世話始めるまでは、めちゃくちゃもてていたって聞いたよ。何しろ、かっこいい聖騎士で、お前より二十も年上で。恋愛経験で勝てるわけないよ」
「これ、が?」
仕方なく、クラフもずるずると降りる。
「そう、コレでも。この外見と聖騎士って肩書きあったら、女性はなびくよ」
「コレって、どういう言い方ですか、クラフさま、ピーシ様。必要でしたら、お教えしますよ、女性のこと。あなた方よりは、経験ありますからね」
「あ、いいな、それ」
反射的にピーシが言った。いつものどこかに棘のある口調の彼にしては素直な言葉だった。
言ってから、クラフのまん丸な目と視線が合って、自分らしくなかったことに気付く。
「あ」照れたように、ラマを礼拝堂の入り口につないだ。
「ふーん。こういうの、教えて欲しいんだ?」
クラフが、がさがさと、自分の荷物から折りたたんだ紙らしきものを取り出した。
「なんです?クラフさま、それは」
セキアも、ピーシも覗き込んだ。
「これ、これ。残っていた本の中に『プレイボーイ』ってのがあって、こういうのばっかり載っているんだ」
ひらりと開かれたそこには、女性の淫らな写真。
「うひゃ!」
「こ!こんなもの、どうして!」
思わず声を低くする二人に、クラフはにんまり笑う。
「だって、この子、ちょっとリスガに似てると思って」
「…確かに」
「だろ?」
三人は雑誌の切抜きをじっと見つめた。
「こういうの、まだ、たくさんあるのか?」
ピーシの鼻の穴が少し膨らんだのを見て、クラフは笑いをこらえる。
「ううん、一冊だけ。でも、オレ見飽きたし、本ごと貸してもいいよ」
「クラフさま、いつの間にそんなこと」
「セキアも見たい?」
「あ、えと」
「この世界には写真なんてないからね、貴重だよ?オレの気が変わらないうちに、お願いしておいたほうがいいと思うなぁ」
切抜きを丁寧にたたんで、しまいこみながら、クラフは笑う。
「ごほん、さ、降りてください、私は結構です!子供じゃあるまいし」
「へー、つまんないの」
「何の話?」
カカナが、ラマから降りて、話し込む三人に声をかける。

「なんでも、ありませんよ」
ピーシがいつもの顔で言った。
「そ、なんでもないよ」
クラフが面白そうに笑っていった。
「さ、日が昇ります、クラフさま、急いでください」
セキアが、ラマをつなぐことを忘れていたのを思い出し、手綱をまとめる。
「変な感じだな、三人とも」
カカナがラマを礼拝堂の外の柵につなぎながら、肩をすくめた。
「…あれ、ランドエンド?」
クラフは視界の先に見える、古びた城壁を指差した。地平線をぐるりと取り囲む。門の様な物もなく、ただ、高い大きな塀が続いている。まるで、雑誌で見た万里の長城みたいだと、クラフは思っていた。
「ええ。そうです。今日はもう日が昇りますから、クラフさま、夕刻になったらご案内しますよ。眠いでしょう?先ほどから、ここ、しわが寄っていますよ」
そう言ってクラフの眉間をつんとつついて見せた。
少年は数回瞬きして、額を押さえた。
うつむいたまま、頷く。

世界の果て。
あんな、古びた城壁の向こうが、ランドエンド?
クラフはもう一度、明るい青に変わりつつある城壁の向こうを眺めた。ここからでは、空しか見えない。
礼拝堂から、ごろごろした石が少しならされただけの、細い小道が続く。城壁の手前には、うっそうと木々が茂り、こんもりした緑の塊が幾重にも重なって見える。ラマで少し進めば、すぐにたどり着くだろう。
その向こうに、自分のいた世界がある。街があって、車が走って、飛行機が飛んでいるはずだ。
そういう、世界が、きっと待っている。
この世に果てなんか、絶対にない。
クラフは視界がにじむのを感じた。
帰れる。

肩にセキアの手が乗る。
セキアもまた、果ての城壁をまっすぐ見つめていた。
「あ、あれ?」
クラフは自分の胴にロープが巻きつけられたことに気付いた。
傍らのセキアを睨む。
「逃げ出そうと、お思いのようですから」
「そ!そんなことないよ!」
「では、解く必要はないでしょう?私はクラフさまのこと大好きですから」
クラフは背後の結び目に伸ばそうとした手を止めた。
つながれたロープの先を自分の手首に結んでいるセキアをじっと見つめる。
笑っているのか、怒っているのかよく分からない表情の彼は、クラフと目が合うと、細い目をさらに細めた。
クラフは唇をかみ締めた。

「ね、私ランドエンド初めて来るの、宿に入る前に見てきていいかな」
リスガはラマに乗ったまま、城壁の方を見つめていた。
それを聞いて、カカナは振り向くと、にっこり笑う。
「リスガ、僕も一緒に行くよ。朝焼けが見えたら、きっときれいだよ」
「!ええ、どうぞ」
カカナは、何も言わずにさっと、リスガの後ろに乗りこんだ。
「!何?同じラマ?」
「もう繋いでしまったからね。いいだろ?」
リスガが少し頬を赤くするのを、クラフが見逃さない。
「あ、ダメだよ。オレも、いく、オレ!」
慌ててラマに乗り込もうとするのを、セキアが引き止めた。
「どうぞ、行ってらっしゃい。気をつけて。邪魔者はここにつないでおきます」
「じゃ、邪魔者?オレのこと?なあ、オレ様のこと言ってるの!?」
カカナたちは笑いながら、もう城壁に向かっている。

セキアはじたばたする少年の手をとった。クラフはママでついていこうと首にかじりつく。うるさそうにママが鼻を鳴らした。セキアは笑った。
「お似合いです、あのお二人は」
「うるさい、意地悪だな!オレのこと、知ってんだろ!オレ、リスガのこと大好きなんだぞ」
「そうですねぇ」
「ひどくないか?」
「別に」

無理矢理少年を引っ張って、礼拝堂の地下の部屋に、連れて行く。
ここは昨日のものより一回り小さい。寝台は四つしかなかった。

「本当に子どもだな、セキア、お前の苦労、分かる気がする」
ピーシが眉をひそめ、黒髪をかきあげて言った。寝台の一つに腰掛けながら、荷物を整頓していた。きっちりした性格なのだろう。昨日の宿でも、マントや服をきれいにたたんでいた。
「そうですね。大変ですよ。でも、まあ、慣れました。これでも、皇宮の離れで発明している時は私なんかでは分からないような難しいことを考えているんです。偏った成長の仕方をしてしまったんでしょうか、普段はこんなですよ」
部屋の隅に膝を抱えて座り込んで、拗ねているクラフをちらりと見つめて笑う。古い石畳の床に座り込めば冷たいだろうにとピーシは眺める。先ほどから何度セキアが呼んでも、片隅から出ようとしない。明かりの届かないそこは暗がりで、どんな顔をしているのかは分からなかった。つながれたロープはぴんと張って、まるで犬が縮こまっているようだ。
「ちょっと、ペットみたいでしょう?」セキアが面白そうにロープを引いてみる。
「!誰が、ペットだ!」
クラフが暗がりから投げつけた「ぺたっ葉」を、セキアはさ、とよけた。
「本当に、慣れてるね」
セキアがよけた「ぺたっ葉」をまたもや顔に受けて、ピーシは顔を引きつらせた。

「あ、すみません、ピーシさま。それも、もともとは大教皇様の傷めた足を冷やすために考えてくださったんですよ、クラフさまが。いつの間にか、悪戯の道具になっていますが」
「へえ、そう。それで、少し目にしみるんだね」
水で流せば取れると、昨日知ったピーシは、落ち着いて水筒の水をかけていた。
「クラフさま、すねてないで、こちらへいらっしゃい。私が床で寝ます」
セキアがまだマントを着たままのクラフをずるずると暗闇から引きずり出した。
「ちぇ」
クラフは両手に、デンワを持っていた。
「おや、それ可愛らしいですね」
銀色のそれの一つに、ピンク色のリボンが結ばれていた。
「あ、リスガさまにプレゼント、ですか」
にやにやする男に、クラフは悔しげに目をぎゅっとつぶった。
迷っていた。リスガについては、この旅の途中で星空を眺めながら二人っきりになって、というクラフの作戦だった。それを、カカナに先を越された。
「ちがう!」
「あれ?違いました?リスガさまとお話しするために、発明したのではなかったですか」
「へえー、そんなこともしてるんだ。動機がいいよね、リスガのためだなんて、健気で」
面白そうにピーシが笑う。
「違うって言ってる!」
クラフは二つのデンワをセキアに投げつけた。
「おやおや、乱暴な。そうですか、ではいただいてしまいますよ」
にやりと笑うセキア。
「あ…」
「この、可愛らしいのがいいですね」
リボン付きを取り上げるとさっさと自分の荷物に詰め込む。
口を尖らせて睨んでいるクラフとそ知らぬ顔で満足そうなセキアをピーシは半分あきれながら見ていた。
そこへ、カカナとリスガが楽しそうに戻ってきたので、クラフは慌てて毛布にもぐりこむ。
「あれ、まだ起きていたんだ」
セキアにそう声をかけ、カカナは眠っているふりのクラフの肩をぽんぽんと軽く叩いた。
「クラフ?…あれ?寝ちゃったんだ?」
クラフは動かない。
「クラフは寝てるんだね。ちょうどいいや、セキア。聞きたかったんだ」
ピーシが面白そうに寝たふりのクラフを見たときだった。
カカナは、真剣な表情でクラフの眠る寝台の空いたところに座ると、正面にセキアを見つめて言った。
「いつもそばにいるから聞くタイミングがなくて。今回の旅の目的、クラフがランドエンドを見たいからって聞いたんだ。どうしてだい?」
「そうよ、私もそれ、気になってたの。いつもクラフはふざけてばかりだから、聞きにくくて」
リスガも、自分の荷物をまとめながら、こちらを振り向いている。
ピーシは、クラフの様子を見つめながら、それから、セキアの表情を伺う。
「…クラフさまは、世界に果てがあることを信じないのです」
セキアはゆっくり話し出した。
「クラフさまは自分の生まれた世界に戻りたいのですよ。ですが、それは不可能だと何度もお教えしているのですが。信じないのです。この果ての向こうに、違う世界があると信じ込んでいるのですよ」
ピーシはじっと、クラフを見ていた。毛布からはみ出した金色の髪が、かすかに揺れた気がした。
「変なの。果ては果てなのにね」
リスガの言葉にピーシは苦笑した。
「仕方ないよ、閉じ込められて育っているんだ。見たことのないものを信じるのは、難しいんだ。どこかにクラフの生まれたところがあるとしても、この世界とはぜんぜんつながっていない。それを理解するのは難しいんだよ」
「果てを見て。クラフは、どう思うんだろうね」
カカナが再びクラフのほうを見て、その肩に手を置いた時だった。
「!」
クラフが、震えていることに気付く。
「うそつきだ!」
突然、飛び起きたクラフに、思わずカカナは腰を浮かせる。
「果てなんかないぞ!絶対にないんだ!嘘だ。皆でオレを騙そうとしているんだ!」
クラフは駆け出した。
が、すぐに転んだ。

石畳の床に、したたか額をぶつけたのか、座り込んで、額を押さえたままうめく。
胴に巻かれたままのロープの存在を忘れていたのだ。

「クラフさま、大丈夫ですか?」
セキアがゆっくり近寄って、手で顔を覆っているクラフを覗き込んだ。
「ああ、血が出てますよ、ほら」
そこで、クラフはセキアの手を振り払った。
「信じない!オレの生まれたとこがあるんだ、絶対、あるんだ!」
その血のついた手を握って、セキアが言った。
「では、見てみますか?今は昼間ですが、その方がよく見えるでしょう。あきらめもつくはずです」
「!」
クラフは、涙目のまま睨んで、頷いた。

絶対にある。この世に果てなんかない。


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 続きはこちら!(^^)
「宙の発明家」第一章二.世界の果て⑤

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chachaさん

ふふ。
プレイボーイはいずれ、キーアイテム(?)担って再登場しますので!お楽しみに(^^)
久しぶりに、この頃のクラフ君見ていると、おー、やっぱり子供…って感じです!だんだん、成長させていきますので、見ていてね!

こっちにも^^

ででで、プレイボーイは誰の手に?^^(笑)
いいですね~のんびり旅をしている感じがとっても好きです☆
ハラハラドキドキしっぱなしだと、心臓が持ちませんから(笑)

今回はよく笑わせていただきました^^
プレイボーイとかぺたっ葉事件。ふふふ☆
リスガはちょっとがっかり?
セキアさんは本当、大変そうだけどこれからも頑張ってね!の、ポチッ!^^

ホーリ先生

ありがとうございますo(^-^)o
誉めていただいて、ドキドキです(*^o^*)
先生のところ、朝、出勤前に覗いたら、たくさん更新されていて、読みかけのままになってしまいましたf^_^;
また、じっくり読ませていただきますよ!

と、取り敢えず電話の合い間に読み続けています。
いいですねぇ~。。。
それぞれの登場人物の絡み。
とても繊細に描かれていて、それに心の動きも手に取るように伝わってきて・・・・

流石だわ!らんららさん!
読んでて、楽しいし、テンポもいいし、ついつい引き込まれてしまうもの。
さぁ、次、行ってみよ~う♪

kazuさん

ピーシ君、いい感じらしいです!
もっと彼のいいとこをたくさん表現したい!
と日々、苦労しています!
いえ、やっぱり基本はくーちゃんとセキアさんなんだけど(^^)
プレイボーイ、日本のはそんなにエロではないです。同居人愛読書。記事がまじめなんだそうで。

花さん

ふふ、するどい?かな?
皆さん、いい勘しているからなぁ!
らんらら、意外性を追及するタイプではないので、予定調和楽しみにしていてください!(いいのか、それで?^^;)
そうか、リスガちゃん、子供らしいのね。
いえ、らんらら、この年代を過ぎて早何年…って感じなので、うーん。自分、この頃どうだっただろう、がよく分からない(おい)現役十代サンにどう見えるのか、ちょっとどきどき、気になるところなんです(^^)ご意見、ください!嬉しいです!

こんにちは。
カカナ君、実はクラフ君の事を友達という意味ではなく、知ろうとしてるのかなぁ・・・。
なんだかちょっと、疑いの眼・・・。
ピーシ君が、なんだかちょっといい感じです♪
「プレイボーイ」を持ってきた最初に来た人て・・・。
うんうん、みんな男だよね~。
んんっ?続きが?!

いつの間にかインデックスが出来ていて、いつの間にかお話がこんなに進んでいて…世間の流れは速いですねぇ。(笑
4人のこどもどきに振り回されるセキアさん、やっぱ見てて楽しいです…w
カカナ君も、よかったですね、クーちゃんと打ち解けて。でも花、ヒネクレ者だから、まだちょっと疑ってたりして…。
女の子一人のリスガちゃん、クーちゃんに次いで二番目ぐらいに子供らしい彼女だけど、これから何かありそうですよね?彼女も成長するのかなぁ…
兎にも角にも、読んでて楽しい!続き、待ってますからね!
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らんらら

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