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「宙の発明家」第一章二.世界の果て⑨



思わずクラフは握っていた手に力をこめる。
カカナがそれを強引に振り払って、腰の短剣に手を伸ばしたのと、木の陰から何かが走り出してきたのと同時だった。
「うわ!」
「わー!」

黒い大きな塊のようなものが、二人の前にぐんと立ち上がった。クラフの体と同じくらいの大きさの、獣。
ごわごわとした毛皮に覆われ、太い前足を振り上げて威嚇する。
短い鼻の上には恐ろしげなしわを寄せ、黒い小さな目はギラリと睨む。

「危ない!」
カカナが短剣を構えて、クラフの前に立つ。
「セキア!セキア!!」
クラフは、ただ、カカナにしがみついて叫ぶ。

その声に驚いたかのように、獣は前足を地面に下ろした。
同時に二人も数歩下がる。
クラフの足がもつれて、転んだ。
「!クラフ!」
そのクラフに足を取られてよろけるカカナ。獣が飛び掛った。
うっすらと明けかかっている紺色の空を塗りつぶすように、獣の影が真っ黒く視界を占めた。

カカナは夢中で短剣を突き出した。
重い。
何かがぬるりとてに滴り、短剣の柄がすべる。カカナは両手で短剣をつかむと、強引に突き刺した。
手ごたえ。同時に、ぐん、と左肩に衝撃。よろめいた。

獣はぐうと低くうなって、四足を縮め、一歩下がる。どこかに、傷を負わせたらしい。
「カカナ!」
横からクラフに引っ張られて、カカナは地面に伏した。そのすぐ上を獣の手がなぎ払う。
「クラフさま!」
セキアの声と、獣の動きが止まったのと同時だった。
そいつは、ずしりと大きな体を横たえた。
座り込んだクラフがあっけに取られて見つめる。そこに、セキアでない男が一人立っていた。
どこかで見た。

「クラフさま!」
草を掻き分けて、セキアが男の背後に現れた。
振り返った男を見て、セキアは厳しい表情をした。
「おや、この間、礼拝堂であったなぁ」
男のやけに親しげな低い声。
夜明けが近いのだろう、白む空に青い影を落とす木陰の間に、男の顔がにやりと笑ったように見えた。

「セキア、カカナが!」
クラフの叫び声に、セキアは我に返る。
「クラフさま」
抜き放っていた剣を納めると、駆け寄る。
「カカナ!」
カカナはクラフに寄りかかるように座り込んでいた。左肩から腕にかけて白いマントが引き裂かれ、血が流れている。
「あ、僕…」
呆然とした様子で何か言おうとするカカナをさえぎって、セキアがすばやくロープでカカナの腕を縛る。止血したのだ。
「大丈夫、骨は折れていません。他には、痛いところ、ありますか?」
黙って首を横に振るカカナに、クラフがほっと息を吐いて、抱きついた。セキアは手馴れた様子でカカナの腕の傷を縛った。
「カカナかっこよかったぞ!オレ、何にも出来なかった」
セキアが二人を支えて立ち上がらせた。
「クラフさま、カカナ様は私が運びます」

「おっと、礼も無しかよ」
倒した獣の前で、座り込んで何かしていた男が、立ち上がった。
セキアは、男をにらみつけた。
「見たとこ、高い身分のお方たちだな。お偉い貴族様はありがとうの一言もいえないのかい?」

「違うでしょう?あなたは、最初からその生き物を追っていた。あなたが追ったから、それはクラフさま達の前に現れた。夜の生き物は、意味もなく人を襲ったりしません。あなたに、礼を言う筋合いはない。危うく、二人は殺されるところだった」
セキアの低い落ち着いた声に、カカナは緊張してこわばる。クラフは獣と男を見比べて、言った。
「おっさん、熊は臆病な動物だよ。人間がいれば避けて通る。あんたが悪いよ」
男は、生意気な口を利く子供をにらみつけた。
「お前、変わった顔しているな」
「!?顔は普通だ!」
カカナが、プ、と噴出す。
「変な色じゃないか、顔も、髪も。お前なんで、これをくまって呼ぶ?この獣を知っているのか」
「あ……今、そう決めた。くまっぽいから、くま」
クラフは、ごまかした。この世界で熊は名も知れぬ獣だ。
「ふうん。そうかい」
じっとクラフを見詰める。
「さ、クラフさま、礼拝堂へ戻ってください。カカナさま、歩けますか?」
「ん、ああ」
セキアは、クラフとカカナの肩に手を置いて、言った。
「お二人は先に行っていて下さい。私はすぐ、追いつきますから」
クラフは、男とセキアを見比べて、こくりと頷いた。

二人の後姿を見送りながら、セキアは一つ息をついた。
「なんだい、あの子供は。あの髪の色、普通じゃないよな。夜に旅するのも、そのためか?」
男はじっとクラフを見つめている。明るくなりだした空に、クラフの髪の金色が光る。

 迷ったらインデックスへ!(^^)
「宙の歩き方」

 続きはこちら!(^^)
「宙の発明家」第一章二.世界の果て⑩

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Kazuさん

ありがとう(^_^)
カカナくん、これから活躍ですよ、予約するなら今のうち?
最近、らんらら自身もそうだけど、皆さん忙しいみたいで、コメント減っていて、寂しかったんです(T_T)
いつの間にか、いただけることに慣れちゃっていて…f^_^;
Kazuさんのコメント、本当に嬉しいです!

うひゃーっ、あの礼拝堂であった男の人、また出会いましたね。
そして、クラフ君に興味を持ってしまったような。
セキア様がこの後どうするのか、どきどきですね。

カカナ君、凄い、頑張りましたね。
本当に恐かっただろうに、クラフ君を護ってくれた。
さすが♪
ちょっと気障だけど、それだけじゃなくて、男っぽいところがあるんだなって、なんだかどきどきしました。
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