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「宙の発明家」第一章 三.信じることと甘えること③

<<らんららです!12月ともなると増えます、飲み会!
週末がバドミントンでつぶれ、必然的に平日にずれ込んでいる忘年会たち…今日も今から、行って来ます!>>




「あなたの部屋とは思えないくらい、片付いていますね。それに、これ、なんです?ずいぶん大きな機械ですね。造りかけですか?それにしては道具も、材料も片付いていますが…」
「な、なんでもないよ!」
セキアには飛行機なんてものの概念はない。だから、見てもわからない、はずだった。

「あ、これ、あの本にあったのに似ていますね」
「本?」
「カカナさまが盗もうとしたあれです」

「…盗むって…お前、ひどい言い方だな」
ごまかそう。
「カカナはオレのいた世界に興味があるんだ、だから」
「…で、なんです?これ」

「…なんでもないよ、それより、昼ごはん…」
「クラフさまがなんでもないって言う時は大抵隠し事をしている時です」
セキアは立ち上がった少年を、座ったまま見上げてにらみつけた。

「…あ、また、発作が…」
「ごまかさないで下さい。あの本に、コレに似たのが、空を飛んでいる写真が載っていました。空、飛ぶんですか?」
「あーっと、じじいに頼まれて」
セキアは立ち上がると、「空の羊」号に近づく。機体に手をかけて、コックピットを覗き込もうとしていた。

「空を飛んで、どうするんです?逃げるつもりですね」
言い終わる時にはすでに、セキアの手がクラフの腕をつかんでいた。
「う」
「さ、こちらで説明していただきましょう」




隠し部屋を塞いでいた棚が、それごと少しずらされていて、人一人がすり抜けるくらいの隙間ができていた。
「お前、これ、動かしたのか?」
「はい」
「怪力だな…」
「誰のためだとお思いですか!」
腕を引かれたまま、再びごちゃごちゃした研究室に戻った。机のそばに転がっている仮眠用の大きなクッションに座らせようと言うのだろう。
クラフはまるでタックルするようにセキアに抱きついた。
「!クラフさま?」
よろけるセキアにお構いナシに、クラフは胸に顔をうずめた。
「ありがとう!オレのこと、そんなに心配してくれたんだ!セキアは何度オレのこと助けてくれたかわからないよね!感謝してるよ!本当、オレ、いつも苛めて意地悪ばかりしているけど、本当は大好きなんだ!セキアがいてくれて、本当によかったと思って…」
「いるなら、何で逃げようなんてするんです?こそこそ、あんなもの作って」

顔を上げると同時に、クラフはポケットから取り出したぺタッ葉を男の顔めがけて投げつけようとする。
「っと!」
かろうじて腕をつかんでよけると、セキアはつかんだ少年の両腕をひねり上げた。
「いた!離せ!痛い!セキア、離せって」
ぎりぎりとしめられ、クラフはたまらず、セキアの腹に膝蹴り。
一瞬緩んだ手を振り払って、駆け出した。

扉へ。
出口へ。

重い木の扉は、セキアが慌てて入ってきたためだろう、施錠もされず半分開いている。
扉に手をかけたところで、後ろにぐんと引っ張られた。

振り向くと同時に、頬に衝撃を感じてよろめく。
殴られた。頬に手を当てて、セキアの顔を見た。本気の、顔だ。

「お前…わかってないぞ!オレはいつだって、帰りたいんだ!お前に俺の気持ちなんかわかんない!」
「わかりません」
クラフは腹に重い痛みを感じて、視界が暗くなった。

床に転がる少年を見下ろして、セキアはため息をつく。
つりあがった精悍な眉。細く長く、垂れた目。
相変わらずその表情は、笑っているのか怒っているのかわからない。
「…可哀想だとは、思っているのです。これでも、ね」

十年間、あのチビの頃からそばにいる。
ずっと見てきている。
ここにいてほしい。
このままで。
逃げ出されては、本気で追わなくてはならない。
傷つけなければならない。

だから、この建物からは一歩も外に出さない。
この小さな世界での自由は、保障する。大切にしている。
なのに、なぜ、逃げ出そうとするのか。帰ろうとするのか。
帰れるはずもないのに。

子供をここに閉じ込めた後、あの場所に残された、異世界のものをすべて、一緒に持ち込んだ。むやみに処分するのも気が引けたし、かといって人目に触れるわけにも行かない。
それがよくなかった。
子供は、荷物の中の本を読みふけった。
そのうち、言葉を理解するようになり、ここに自分だけの城を築き始めた。
ほんの小さな子供だった。何もできないと、皆が思っていた。
セキアも、彼の慰めになるならと、頼まれる材料を持ち込んだ。
ぺたっ葉の元になるゼリーの後、彼は灯りを作った。この部屋のために。建物の屋根に置かれた太陽の光を、変換するとか言う機械で、彼の作ったガラスの箱は白く光った。夜の活動のためにそれを天井に張り巡らせた。
そのときから、ここが研究室になった。

そして、彼がここに来て三年後、セキアは初めてクラフに、閉じ込めている理由を明かした。
賢老士会も、司教会も、クラフを衆目から隠し、彼をここに連れてきた白い人間たちが再び訪れることがあれば、追い返すための人質にしようと決めた。何の情報も与えず、ただ、生かしておくことに決めた。
だから、私は彼にこの世界のことを教えた記憶もないし、言葉だって必要最低限のものだけを覚えさせた。それが、いつの間にか、クラフは言葉を覚え、いろいろと質問を始めた。一つ答えれば、そこからたくさんのことを理解した。本人が言うとおり、確かに普通とは思えない才能がある。記憶力も洞察力も。

あの、異世界の本がいけなかったのだ。あれらに、なにか書かれていたのだ。いくら天才でも何もないところから知識を得ることは出来ない。
何度、焼き払おうと思ったことか。
だが、研究して、何かを作っている時のクラフは、本当に楽しそうだった。
出来上がると自慢げに、見せて説明してくれた。
それを、取り上げてはいけない気がした。他に時間の使い方を彼は知らない。

ベッドに寝かされたクラフを見つめて、また、セキアはため息をついた。
ピピピ、とデンワが鳴った。
クラフのものだ。枕元で、銀色の丸いそれがほんのりブルーに光る。
「…大教皇さま」
セキアがデンワを取り上げた。

『おお、セキアか。クーちゃんはいるかの』
「それですが。お祝いより先に、ご覧いただきたいものがありまして」
『なんじゃ、やけに沈んでおるの。またクーちゃんに苛められたか』
「いえ、そういうわけではございません。発明品です。空を飛ぶ機械を、作ったようなのです。隠れてこっそり作っていたようで」
『ほう!見たいのう!それは完成しているのかな』
大教皇の声は嬉しそうだ。

「…さあ、今、クラフさまはお休みしております。起こしますか」
『また、発作かの』
「…、いえ、逃げ出そうとしましたので、少し」
『苛めたのか』大教皇のため息が聞こえる。
「仕事ですので」
『ひどいのう』
「ですから!仕事なんです!逃がすわけには行かないでしょう!それに、空を飛ぶ機械も、取り上げますよ!それで、ここから逃げようと考えているのですから!」
『…まあ、そう、カリカリするな、しわが増えるぞ』
「あなたよりは少ないですよ」
『当たり前じゃ。今から行くぞ。クーちゃんを苛めるな』

デンワが切れた。
はあ。
大きなため息とともに、セキアはがっくりと肩を落とした。どこまでが本気なのか、とらえどころのない大教皇は、クラフに甘い。セキアの立場をわかっているのかどうか。セキアも別に苛めたくて、縛るわけではない。
クラフの縛られた腕を見つめた。手首で両手を縛ってあるが、それほどきつくないはずだ。コレを見たら、また、大教皇に何か言われそうな気がして、セキアのため息は積もる。

だが、もし、目を覚ましてまた、暴れたら。
小さな子供のうちはよかった。殴る必要などなかった。
十年たって、すでに身長はセキアの肩くらいまである。
ここ数年は、本気で暴れたりはしなかった。だから久しぶりだった。クラフの膝蹴りを受けたときに、一瞬ぞっとした。いつの間にか、成長している。逃げ出してしまうのかと、あせりに我を忘れた。
手加減できなかった。

「後悔してるなら、手、解けよ」
「クラフさま!いつの間に気付かれたのですか!」
クラフは横たわったまま、じっとセキアを見上げていた。
「じじいが言うとおりにしろよな、お前、じじいより身分低いんだろ」
にやりと明るい茶色の瞳が笑う。
クラフさまは大教皇様を味方につけるつもりだ。味方につけて、あの機械を認めさせるつもりだ。
「…殴って、いいですか?」
「縛ってる上に殴るのか?ひどいな」
「…ひどいのはどっちですか!」
セキアは背を向けた。
「一人になりたい時もあるかと気遣えば、それを利用して、こそこそ逃げる準備をしているなんて。信じているふりをして、甘えている振りをして、何もかも、嘘なんですね!もう、結構です!付き合いきれません!あなたのご希望通り、私はもう辞めます!」
セキアはそう怒鳴ると、出て行った。
寝室に施錠もしなかった。

クラフは、起き上がった。
ベッドに座って、開け放たれたままの扉を見つめた。
それから、膝の上にある両手を縛るロープを見る。解こうとすれば、解けそうだ。

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 続きはこちら!(^^)
「宙の発明家」第一章 三.信じることと甘えること④
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執筆、お疲れ様でした。
ここまで一気に読ませて頂きました。

ふ~ぅ!2人のそれぞれの想い、難しい問題ですなぁ~。
どちらの気持ちも解かるだけに・・・・・

この続きが待ち遠しいですねぇ。。。。
この後、一体、どうなるのでしょうかねぇ~。ワクワク!

花さん

ふふふー(^^)
どうでしょう?
理解者でありながら理解したくない、うーん。さすが。言い得てますね!

kazuさん

セキアさんの気持ち分かってくれてありがとー!
どうなっていくのか、この二人(^^)
見守ってやってください!
らんらら、このくらいの長さで、二日に一回更新にしてみました。どうでしょう?

あぅ、セキアさんも複雑ですね。
本当にクーちゃんが可愛いんだ。だから、父兄みたいな気持ちになって、離れたくない。傷付けたくない。
理解者であるのに理解したくない、彼の立場も難しいです。
さて大教皇様、何を考えてられるのか?クーちゃんはその隙に何をするつもりなのか?
ん~、ますます深みに嵌っていく気がする花です。。

こんばんは♪
・・・セキア様・・・。
セキア様にとって、とてもショックだったのですね。
今まで、自分の事を信じていると思っていたクラフ君が、実は逃げ出そうとしていたことを。

しかも大教皇様は、セキア様の話を、ちゃんと聞いているのか聞いていないのか。
あぁ、セキア様・・・。

クラフ君にとって、とてもつらいことになってきましたね。
帰りたいけれど、でもセキア様を嫌っているとかではなくて。
自分の生まれた場所に・・・、自分の家族の元に帰りたいだけで。
セキア様、分かってください~v-406
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