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「宙の発明家」第一章 三.信じることと甘えること④


「はあ」
大きなため息をついて、セキアは立ち止まった。

一度振り返って。
また、出口に向かって歩き出した。
クラフの寝室を出て、迷路のようになっている廊下だ。
白い石で作られた迷路。

寝室から研究室までは階段一つ降りるだけでいけるようになっているが、寝室から建物の外に出るには、この廊下を通る。クラフがここを通る時は目隠しをしている。わざと、間違えたり、遠回りして通っているが、多分、彼ならすぐに通り抜けるだろう。そう、たいして複雑な造りでもない。逃げ出した時に、少しでも時間がかかるようになっているだけだ。
かえって、ここを毎日通らなければならないセキアには、苦痛だった。
何度、この通路を通ったことか。壁のシミ、床の石、見ればどこなのかすぐわかるくらいだ。建物の外側にぐるりとめぐる回廊につながって、最後に出口にたどり着く。
回廊の柱の隙間から入り込む陽光に、細い目をさらに細めて歩いていた。
十年。
限界なのかもしれない。

二十五歳から十年の間をこの仕事に費やしたことは、人並みの出世をあきらめることになった。もともとは、司教会所属の聖騎士であった。大教皇の守護者の役をいただき、聖騎士の身分では各都市の聖騎士を束ねる「聖位」のすぐ下に位置する「尚位」にまでなっていた。大教皇の守護者になった時には、その若さでと、はやされた。信頼を得ていた。

それが、この有様だ。
今、クラフの世話係を辞したとして、大教皇がどのように取り計らってくれるのかは、わからない。不興を買えば、保証はない。だが、このまま、クラフについて一生、この建物の中で生活するのも、同様だ。
時間を作っては学び、体を鍛え、いつでも他の仕事に復帰できるようにと準備していても、それは空しいだけだ。からかわれるとおり、恋人の一人も作る余裕はなかった。

この苛立ちも、あせりも、すべて押し殺して、誠心誠意、世話してきた。
それを、あの子供は。
いとも簡単に、騙してくれる。利口な上にずる賢い。
それでも、憐れに思ってしまう。私が、間抜けと言うことか。
情けなさに、唇を噛んだ。

「なんじゃ、セキア、出迎えなどよかったのに」
ちょうど、離れに向かおうとしていた大教皇と迷路の入り口で出会った。
大教皇は、照れたように頭をつるりとなでた。
「あ、いえ…」
セキアは膝を落として、小柄な老人に深くお辞儀した。
「なんじゃ…元気がないのう。また、喧嘩したか」
「いえ、あの、私はもう。あの方のお世話はできません」
うつむいたまま、男は言った。
大教皇は首をひねった。
「辞すると、いうのかな」
「…はい」
「ふうむ。それは困った」
さして重要そうでもなく、のんびりと白いひげをなでる。
「理由如何では尚位の剥奪になるやもしれんのう」

「…覚悟の上です」
「生真面目でつまらんの。もう少し慌てんかのう?冗談じゃ。
いくらわしでも、そう簡単にはお前の身分を剥奪などできんでの。
ま、しばらく休んでみるのもいいじゃろう。ちょうど、お前の代わりに通いたがっている若者もおる」
「!カカナさま、ですか」
「そうじゃ。仲良しのようじゃ。お前はしばらく、休め。クーちゃんの世話は一時の休みもなかったろう。疲れもたまる。ほれ、お前のここのシワ、ずいぶん深いぞ」
そういって、大教皇は眉間を指差していた。
「…はい、そうですね、カカナ様なら、クラフさまも喜ばれるでしょう」
「時には、流れるままに任せるも必要。離れてみるのもよいじゃろう。クーちゃんはよく分かっておる。我らが何を必要とし、何を不要とするかをの。そこから、若い者が学んで、いずれこの世界を守ってくれる。素晴らしいことじゃないかの」

大教皇は、人質にすることを反対した。だが、すべての決定権があるわけではない。賢老士会の全会一致では、対抗しようがなかった。
大教皇は最初から、クラフに同情していた。
「申し訳ございません。私は、その、どうも親身になりすぎたようです」
「よくやってくれておる。わしもあれを人質などとは思えんでな。お前の抱える矛盾、分からんでもない。しばらく、わしの身辺におるがよい。以前のように、な」
「はい」
セキアは、大教皇の穏やかな小さな瞳を見つめた。
カカナに任せるのは、不安もあるが。クラフの顔を思い浮かべて、まだ怒りとも寂しさともつかない感情に心揺れるのは、よくないことだろう。しばらく、そう、しばらく離れているべきだろう。


「クーちゃん!」
そう戸口で叫ぶと、大教皇はベッドで横になっているクラフに駆け寄った。

クラフは、じっとしていた。

「なんとなんと、縛られたのか」
「じじい、セキアは?」
「よしよし」
小さな子にするように頭をなでて、ロープを解こうとする。
「だめ」
クラフがそれをさけ、起き上がった。口を少し尖らせ、拗ねているようにも見える。

「なんじゃ?解いて欲しくないのかな?」
「セキアに解かせる。あいつがやったんだ、あいつに解かせる」

「……少し、わがままが過ぎたようじゃな」
小さくため息をついて、大教皇はクラフの腕をつかんで、ロープを解いた。結び目はさしてきつくなく、本気で解こうとすればクラフ本人でも緩めて外すことができただろう。
二人の信頼関係を感じて、大教皇は目を細めた。

「セキアはの、ここにはもう、来ないのじゃ」
クラフは目を丸くした。
「…交代になったのか?」
「なんじゃ、嬉しくないのかな。以前からたびたび喧嘩して、代えて欲しいと訴えておったじゃろう」
老人の小さな目が穏やかに少年を観察する。クラフは目を大きく見開いたまま、しばし黙ったが、一つ瞬きして言った。
「嬉しいよ、コレで自由だ」
「ま、自由と言うわけにはいかんがの、カカナが代わりに来る」
「!」
「なんじゃ?それも、嬉しくないのかな」
一瞬複雑そうな表情をしたクラフを見逃さない。
「別に。カカナ、面白いし、大好きだ」
「ほう。セキアは面白くなかったのかの?どんな奴じゃった?」
クラフは黙った。
「…別に」
「べつに、なんじゃ?」
「誰かと比較したことないからわからない。それだけ。そんなこと、考えたことない」
そういって、クラフは頭をかいた。少し伸びた髪が額をかすめる。何かふに落ちないような、そんな表情をしている。

「ふうん。そうか、そういうものかの。ところでクーちゃん、何か新しいもの造ったとか。見せて欲しいのう」
「完成させていいって約束してくれるなら、見せてやるし、説明してやる。そうだな、今すぐ、応えてくれるなら、乗せてやってもいいぞ」
瞳を輝かせて、クラフは嬉しそうに言った。いつもの、発明家の顔になっていた。

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 続きはこちら!(^^)
「宙の発明家」第一章 四.カカナ①
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南瓜人形さん

コメありがとう!
委員ですよ、ゆっくり楽しんでください!
らんららも、なかなか遊びにいけてなくて、申し訳ないと思っているところなんです(^^)
そう、くーちゃんにとっては当然の行動なんですけどね。セキアさん、思ったよりくーちゃんが自立した行動取るから、慌てちゃったんですね。

なんか、本当にゆっくりでスイマセン。
セキアとクラフ、別れちゃいましたね。
二人の信頼関係にヒビが……
セキアもショックだったでしょうねぇ。
でも、クラフにとっては当然のこと。
また、二人一緒になって欲しいなぁ。

chachaさん

ありがとー!!今日は昼休みコメ、ぜんぜん出来なかった…(TT)
この場面、二人の気持ち分かってくれて本当に嬉しいです(><)
(…じつは、連載始める前にこのシーンを書きながら、クラフ君女の子に変更しようかな…なんて、かなり真剣に悩みました。でも、設定的に無理かと思って…女の子だったら、もうちょっとお話がイロイロとv-345膨らんだかも…なんて^^;)

うんうん><

今回はクラフの気持ちもセキアの気持ちもよくわかって…切ない気持ちでいっぱいになりました;;
クラフ、そりゃ帰りたいよね!どんな場所で、どんなに大好きな人ができたとしても、誰だって生まれた故郷に帰りたくなります><
セキア、そうだよね。何だかんだ言ってもクラフのことを想ってしていたのに、クラフは結局嘘をついたり隠し事をしたり…。ショックだっただろうな。
これから二人はどんな風になっていくんだろう。ドキドキです><

大皇教様、いい人ですね^^出てきた時から好きだったけど、今回のことがあってますます好きになりました☆
最後まで味方でいて欲しいなぁ!

コメントありがとう!!

アポロちゃん
おお、あのせりふ、らんららも好きなんです!
嬉しい!同じとこで感じるのってv-238
十年、きっと、倦怠期なのですよ、お互いに。

ホーリ先生
ありがとうございます!
予想外の問題。
そうです。物語は事件が起こらないと、ね。
楽しみにしていていください!
更新は、土日は厳しいので平日でがんばりますよ!

花さん
大きな家族!
なんだか、妙に納得ナ感じです!
カカナという新しい家族に、クラフ君は?
見ていてくださいねー(^^)

押してダメなら引いてみろ、ですね。(笑
クーちゃんの心中は反抗期なお年頃の心中と同じなんですね。常に矛盾していて、常に許してくれる存在を求めてるっていう。
大教皇様、何か好々爺なイメージだったんですけど、+お父さん肌が花のイメージとして定着しましたですよ。
さて、まるで大きな家族みたいな物語、これからどう動くのでしょうか?

おぉ~、これはクラフにとって事件ですね。
セキアに代わってカカナかぁ~。。。
これは予想外の問題が発生しそうですねぇ。
それでクラフも少しずつ大人になって行くのかな?

いずれにしてもセキアの心中、葛藤が生まれそうですね。

続きが気になって仕方ありません。
早よ、更新して!らんららさ~ん♪

セキア・・・ (´・ω・`)

少しの間休憩・・・。居間まで精一杯クラフのこと面倒みてたのに急にお休みしちゃうと寂しくないのかな・・・。
きっと複雑なんだろうな・・・。
そんな後にクラフが「セキアに解かせる」っていったのなんだかキュンとしました。
クラフの隣にはセキアにいてほしぃよ~(><;

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