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「宙の発明家」第一章 四.カカナとピーシ ①

それから、三日。
クラフは苛立っていた。
苛立ち紛れに、「ぺタッ葉」と、最近開発した「もえ玉」を、たくさん製造していた。
誰に試そうかと考えながら作業している姿はとても幸せそうだ。
仕上げに「もえ玉」を乾かそうと床一面に並べた。
中身の匂いが部屋に充満している。

赤い玉は丁度、クラフが親指と人差し指で作る輪くらいの大きさで、持つとずしりとしている。中には、空気と混じって発火する液体が入っている。
この世界に放火魔がいれば、泣いて喜びそうな代物だ。
外側の樹脂の硬さ、壊れやすさに神経を使った。玉がある一定以上の衝撃を受ければ、壊れる。手に持って軽く握り締める程度なら発火しない。
いいできだ。

クラフは床に腹ばいになって寝転び、かわいい「もえ玉」たちを眺めて笑う。白いシャツは赤い樹脂で汚れ、鼻の頭にもちょんと張り付いている。髪はくしゃくしゃで、服装も気にしないと見える。寝転んだまま、指先でつんつんと赤い球をそっとつつく。

「その姿、ちょっと変人に見えるな」




見上げると、カカナだった。扉をそっと開けて一歩入った。
いつもの笑顔。クラフがどんなに嫌な気分でも、カカナはいつも、笑っている。それがなんだか悔しい。

昨日、「もえ玉」の中身の燃焼実験でやけに興味を示したので追い出そうとして喧嘩になった。殴られた頬の痛みを思い出して、クラフは顔をしかめた。
セキアと違って、カカナには勝てない気分だった。どんなに暴れても、拗ねても、カカナは変わらない。セキアみたいに取り乱したり本気で怒ったりしない。
まるで小さい子をあしらわれるようにされて、クラフはいつも惨めな気分になる。

「睨むな。昨日のはお前が悪いだろう。…コレ、なんだい?少しは片付けなよ。ほら、食事持ってきたんだよ。こんな匂いじゃ、折角の食事がまずくなるよ」
片手に持ったトレーを、少し掲げてみせる。上にパンと、何か皿に入ったものが見えた。
「入るなよ!」
「いらないのか?いい加減食べなきゃだめだぞ」
カカナは床に一定の間隔で綺麗に並べられた赤い球を、よけるために一つ軽く蹴った。
「危ない」クラフが目を細めた。
「え?」
ぼっと小さな炎が上がる。
「うわ!」
飛び離れようとして、トレーがひっくり返った。
ガシャン、と嫌な音ともに、トレーと皿の周りが燃えあがった。スープの焦げる変なにおいに、クラフも顔をしかめた。せっかく造ったもえ玉が、五個は無駄になった。

「昨日から何を造っているんだ!危ないじゃないか!」
さすがにカカナも笑っていられないようだ。クラフは少し面白い。
「だから、言っただろ。入るなって。まだ、乾いてないから、壊れやすいんだよ」
そこまで話して、クラフは目をぱちくりした。
「なんだ、丁度いいや、地雷みたいだ」
入り口からこちらまで、一面に敷き詰めた「もえ玉」。カカナは近寄れずにいた。
「じらいってなんだ?」
「教えない」カカナはクラフが警戒するような言葉や、ものに興味を示す。何を見せて何を知らせるか、それを考えているだけでイライラした。かといって、造りたいものは造りたい。セキアにはそんなこと、考える必要もなかったのに。
「これ、武器なんだろう?いいな、出来上がったら父上の兵に持たせたいなぁ…」
「だめ。もえ玉は、オレ様専用」
にらみあう。
そのうち、カカナが大きくため息をついて、視線を外した。

「よく、我慢していたな、セキア。お前も、ランドエンドに言った時には可愛かったのに、何でそんなに反抗的なんだ?」
「…反抗なんかしてない。好きなことしているだけだ」
「ふうん。どうみても、セキアがいないから拗ねているように見えるよ」
「違う!」
「本当に、子供だな。だから、セキアもあきれて出て行ったんだ…って、いや、それは、言い過ぎたよ、クラフ、悪かった」
クラフが上目遣いで睨みつけながら、完成品だろう赤い玉を投げようとして構えていた。

「いや、止めとけよ、本当に冗談じゃすまないよ、危ない…クラフ、おい」
「カカナ、さ。いろいろ知りたいって、言っていたよな」
拗ねた顔のまま、クラフが言った。
「あ、ああ。お前のいた世界のこと、知りたい」
「コレ、あげる」
この間の「SCIENCE」誌を、一冊投げつけた。それを受け取ると、カカナは嬉しそうに目を輝かせた。
「カカナ、コレもあげるよ!」
ひゅ、と飛んできた赤い玉に、カカナは思わず手に持っていた雑誌を盾にした。
ボ、と雑誌が燃え上がる。
「うわ!」取り落とす。
「怖いだろ?」
クラフはにやっと笑っている。
「クラフ!いくらなんでも、やりすぎだぞ!」
「怖いだろ!これを、兵士にもたせるなんて、絶対ダメだぞ!」
また、にらみ合う。
カカナは足元の炎を踏み消した。雑誌のこげる匂いが充満する。
「これは、僕のもので、いいんだね」
雑誌は表紙を焼いたものの半分以上無事だ。すぐに落ち着いた表情になるカカナの余裕ぶりにクラフは頬を膨らめた。カカナは穏やかに話し始める。
「言っただろ?父上は、お前の持っている知識とか技術を高く評価されている。お前がその気になれば、…投げるなって!」
再び投げつけられた「もえ玉」をまたもや雑誌で防いでしまって、燃え上がる。
「あち!」
放り出した雑誌が床に落ちると他の「もえ玉」に引火して、小さな焚き火が出来上がった。
「クラフ、いい加減にしろよ、こんなの、お前が持ってたら危なくてしょうがないだろ!」
「カカナはオレを自由にしたいんじゃなくて、オレ様の造る発明品が欲しいだけなんだ!カカナの提案どおりについて行ったら、オレのこと武器製造機か何かみたいに扱うんだ!オレはそんな自由はいらない!!」
「違うよ!便利なものとか、面白そうなもの、ほしがっちゃいけないか?お前だって面白くて開発するんだろ?僕は、お前の知っていることに、興味があるんだ」
「いやだ!セキアがいれば、追い払ってくれるのに!」
「なんで?僕はお前を自由にしたいんだ!お前のこと思っていっているんだよ!」
「オレがどうしたいかはオレが決めるんだ!セキアはいつもオレが何を造ろうと黙って見ていてくれたのに!」
「……お前がセキアを辞めさせたんだろ?結局、セキアじゃなきゃダメなんだろ」
「!」
不意に、クラフが座り込んだ。
床に膝をつく。胸を押さえて。
「!バカ、発作か?」
苦しそうに、クラフはそのまま、床に横になった。
「おい、クラフ!」
動かない。
カカナとの間には、「もえ玉」が床一面に並んでいる。跳び越えるには少し遠い。
カカナは一瞬躊躇したが、後ろに下がって、距離をとると、一気に駆け出して跳んだ。
誤って一個踏みつけた。
「あち!」
着地と同時に片足を上げた勢いで転がって、肩を机の脚に当てた。痛みを感じながら、火のついた革の靴を脱ぐ。
「ばかばかばかばか!本当にお前は!」
怒鳴りながら、懐から薬を取り出すと、セキアがしたように、手のひらに二滴落とした。
ぐったりするクラフの肩を起こして、口元に手を持っていった。
「ほら、舐めろ!薬だ」
「…」
苦しげに息を荒くして、クラフはぺろ、と舐めた。
犬みたい。一瞬、そんな考えがカカナに浮かぶ。

クラフはそのまま、カカナの膝に頭を預ける。ぐったりと、目を閉じている。セキアがここを離れて以来、まともに食事を取っていなかった。心配をよそに意地を張るクラフにいらだって、昨日は殴り合いの喧嘩になった。
殴り合いなんかしたことなかった。
失敗だった。余計に拗ねたクラフは、絶対に口を開けなかった。
カカナは、ため息をついた。

「なんで、僕じゃダメなんだ。一緒に来てくれれば、もっと広いところで、自由にさせてあげられるのに。研究の手伝いだって出来る。クラフを大切にしたいと、本気で考えているのに」
伝わらない。
何をそんなに警戒するのか。本当は何を考えているのか、クラフは子供みたいなくせに、明かさない。
セキアには、それが、分かっていたんだろうか。
伸びた髪が頬にかかるのを、そっとかき上げてやる。


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「宙の発明家」第一章四.カカナとピーシ②
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chachaさん

ふふふ。クラフくん拗ねています!セキアさんの苦労わかってくれて…(T_T)
セキアさんもててるなぁ…意地悪したくなっちゃうなぁ(^o^)v-~~~
お昼寝いいなぁhttp://blog70.fc2.com/image/icon/e/51.gif" alt="" width="14" height="15">
前日は夜更かしだったのかな?(*^o^*)

こんにちは~☆

今日はお昼寝するので1話だけ(笑)

クラフ、拗ねてますね、絶対^^
セキアさんのことあんなに悲しませたんだから仕方ないでしょ!
ちょっとはセキアの気持ちに気付きなさい!
ってなっちゃいます><
・・・む?てことは、私はセキアさんの味方?(笑)
カカナも手こずってますね~^^;
そこのトコ、やっぱりセキアさんは凄く大人だったんだなぁと思いました☆
そして、クラフのことをそれだけ想ってたんだなって・・・

やっぱり二人はコンビですよね。
早くセキアさんに戻ってきて欲しいです><
カカナも負けるな!ポチッ☆

コメントありがとう(^^)/

kazuさん
そうです、しばらくセキアさんなしで。
だって、いるとクラフ君なにも変われないし…
そろそろ、親離れ…?

アポロちゃん
でしょ?そう思うよね?
でも五歳児クラフ君には、その価値、分かってないんですよねー(^^)
何せ、親だから。
親に感謝できるようになったのって、らんらら、つい最近ですものホホホv-398

(;□;)

クラフくんセキアと他の人(カカナ)比べてみてどうよ。
拗ねちゃってるクラフくん可愛いけど (ぇ
あ~切ない。カカナもクラフくんのこと思っていろいろ言ってくれてるけど、うまく伝わらないのね・・・。
こんなときセキアならどうするの・・・。

おはようございます。
セキア様がいない・・・。寂しさが、おいらの心に渦巻いておりまする・・・。

クラフ君とカカナ君。
自由にならない苛立ちを抱えて、でも、誰からも哀れみを受けたくないクラフ君。
自由をもてないクラフ君を、自由にしてあげたいカカナ君。
うまく、いかないですね。
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