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「宙の発明家」第一章 四.カカナピーシ②

中央の街、大聖堂の講堂の隣にある、政修学校は、各地からの優秀な子供を集める、いわばエリートの学校だ。年齢は十五歳から十八歳。この世界では、子供は皆、十八で成人とみなされる。政治、科学、医学、経済学。それらの専攻に分かれている。全寮制である。

寮は男子女子に分かれ、共同の談話室や食堂が、間にある。
深い茶褐色のレンガ造りのそこは、平屋建てで、建物の中央部分の屋根が丸く高くなっている。そこから取り込む陽光が、室内を明るく照らす。高い天井、談話室はいくつかの部屋に分かれ、それらは格子状の木の壁で仕切られている。間に透明なガラスがはまっているので、誰が何をしているかは遠くからでも分かる。

談話室は建物の半分ほどを占め、中央に通路があり、それはまっすぐ食堂につながる。
リスガは食堂の一角で、友達二人とお茶を飲みながらおしゃべりしていた。



女子の制服は、深い紅色のベルベットのノースリーブのワンピースに、同じ生地のボレロ。それに合わせて、各自が好きなようにおしゃれしている。ワンピースをミニにしてヒップからすそにかけてつけられたフリルが華奢な女の子らしさを強調している。
彼女はボレロの代わりにアイボリーのふんわり編んだカーディガンを羽織っている。頭には同色のニット帽。一箇所を小さな花の止め具で締めて、とても似合っている。
足元はマッシュルーム色のブーツ。ブーツの上からひざ下までのもこもこした白いアンゴラのオーバーソックスをはいている。それが、足を組みかえるたび、ゆらりとゆれて、男子生徒の視線を集める。
本人は気づいていない。

「ね、聞いている?」
友達の話も上の空だ。
「この間のお休み明けから、変よ、リスガ。もう、二週間もボーっとしてる」

亜麻色の巻き毛を手でもてあそびながら、ぼんやりしている少女の目の前の紅茶に、友達がお砂糖を二つ、黙って入れる。
それでも、気づかない。

「分かった、もう、リスガの考えることなんか、すぐ分かるんだから!」
三人のうち一人がテーブルに身を乗り出した。

「男の子でしょう?恋してるんでしょ?恋に落ちるといつもこうなんだもの、意地っ張りなくせにすごく分かりやすい」
「それで、そんな可愛く決めてるんだ最近。毎日すごい気合入れているものね!」
「……」
「ねえ、誰?」
「うーん」
リスガはため息を一つ。頭を横に振る。

「だめ、だめよ、言わない!絶対ろくなことにならないんだから!」
「誰にも言わないから」
そういったユーリは三人の中で一番のおしゃべりだ。
「私なら信用できるでしょ?ね?」
ネネがストレートの黒髪をきらりとさせながら、うつむくリスガを覗き込む。
「だって、ずっと休んでいるし……」

リスガの言葉に、二人は顔を見合わせた。
それから、おもむろにリスガに向き直ると、叫んだ。
「か、カカナさま!?」
リスガは固まる。
学校ではカカナのことを年齢問わず誰もが“さま”をつけて呼ぶ。リスガも以前は友達に合わせてそう呼んでいたが、一緒に旅した後では、“さま”はつけにくい。かといって、呼び捨てにすれば、余計にかんぐられる。
周りの視線がさすように見ているのを感じて、席を立った。

「そうなの!?ねえ!」
「そういえば、同じ時期に、休暇とってたわ!」
さらに確認しようとするネネを無視して、歩き出す。

きっと顔が赤い、すごい変な顔になってる。
そんなことを考えながら、それでも平気な顔を装ってすたすたと談話室の前を通って寮に戻ろうとする。
背後で二人がきゃあきゃあ喜んでいるのが聞こえる。
リスガはぎゅっと目をつぶった。

カカナは、怪我を理由に学校を休んでいた。
あれ以来、会っていない。
もちろん、クラフたちと出かけたことは誰にも秘密なのだから、学校で会ったからといって、話すことなんかないし、今まで避けてきただけに、急に親密になって友達って言うのも、おかしい。
でも、会いたい。
あって何を話そう、そればかりを考えながら、もうすぐ三週間になってしまう。
カカナは相変わらず学校に来ない。男子寮の寮長に聞いていも、まだ、何の連絡もないという。
怪我の様子も心配なのに、かといって、会って何をどうしていいのかも分からない。
寝苦しい日が続いていた。

左右に三つずつ並んでいる談話室を過ぎるところで、リスガは一人の男子生徒に目を留めた。
談話室で本を読んでいる。
一人だ。
黒髪を少し伸ばし、それが額にかかるのも気付かずに勉強している。
ピーシらしい。
思わず、リスガは扉を開ける。
驚いたピーシが、リスガの表情をどう思ったのか、ニヤと笑った。

「ご機嫌よう。珍しいね」
校内での標準的な挨拶を口にして、少年は目を細める。
「ご、御機嫌よう。あの、ピーシ知ってる?」
「何を?」
いつものリスガらしからぬ遠まわしな言い方に、ピーシは再び手元の本に視線を落とす。わざと、からかうつもりだ。
「だから……」
少年は本から顔を上げずに突き放す。

「何?今忙しいんだ」
「もう!本当にピーシって意地悪ね!」
ピーシは腰に手を当ててぷんと起こって見せる少女に、笑い出した。
「クラフの言う通り、君は考えすぎで短気だな。自分がはっきり言わないから悪いんじゃないか。カカナのこと、聞きたいんだろう?」
リスガは真っ赤になっている。
「今日から、僕も行くんだよ、カカナのいるところにね」
「え?」
「あれ、知らないんだね。クラフがセキアと喧嘩して、セキアがやめちゃったからさ、今カカナが付きっきりなんだ。手に負えないみたいで、僕にも手伝ってほしいって言うんだ。だから、明日からしばらく僕も学校を休まなきゃならないからね。今のうちに勉強しておかないといけないんだ」
「やだ、いつから?」
「クラフのこと?四、五日前じゃないかな。そうか、君は週末しか家に戻らないんだね」
リスガも寮に入っている。ただ、家が近いので週末の大聖堂のミサにはいつも出席する。そこで父親に会えるのだ。週末に父親に会えば、そばにセキアが控えていることに気づいただろう。
それは、今のリスガにはどうでもよかった。

「あの、私、は?」
「え?」
「私も、行きたい」
「さあ、大教皇さまの許可を受けたのはカカナで、カカナが呼んだのは僕。君は、呼ばれてないんだろ」

ピーシはニヤニヤしながら前髪をかき上げた。リスガの頬にさっと朱が走る。
「!そ、そうね」
「僕らは、表向きは大聖堂の書庫の整理を手伝って泊まり込みってことになるらしいんだ。女の子の君も一緒ってわけには行かなかったんじゃないかな」
クラフのところに泊り込むのも、同年代の男の子三人で生活する中に女の子が一人はまずいだろう。たとえカカナやクラフが賛成しても、ピーシとしては遠慮願いたい。
気を使うし、うるさいだけだ。さりげなく、念を押しておく。
「それじゃ、仕方ないものね」

ぜんぜん納得していない顔のまま、少女は大きくため息をついた。
リスガなら別に呼ばれなくても、いつでも出入りしていたはずなのに、カカナに呼ばれる呼ばれないにこだわるところが、ピーシを楽しませる。
気にせずに来ればいいよと、一言言えば、喜ぶことは分かるのだが、わざとしない。
「悪いね、僕、夕方までに来週分の範囲、やってしまいたいんだ」
「ええ、そうね!ピーシはお勉強大好きだものね。がんばってね!」
ぷいと背を向ける少女。
ピーシは面白そうに見送るが、ふと、真剣な表情になる。
「…手伝い、か」
一つ、ため息をつく。

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「宙の発明家」第一章 四.カカナとピーシ③
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うわ、すっかり遅くなってる!!

kazuさん
ありがとう!
リスガちゃん、これからクリスマスに向けてがんばりますよ!
でも、やっぱり男の好きならんらら、女の子キャラより男の子キャラに力はいってしまいます!ピーシくん、見ていてくださいね!

こんにちは♪
リスガさん、カカナくんにらぶ、ですね☆
なんか、もう、いじらしい女心というか、読んでいて身もだえというか。
リスガさん、かわいいなぁと。
ピーシくん、ちょっと意地悪しちゃいましたね。
でも、確かに男の子三人の中に、リスガさんがいるのは・・・、うーん、ね。泊り込むんだし・・・。
最後のピーシ君のため息、気になるです~。
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