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「宙の発明家」第一章 四.カカナとピーシ④

穏やかに微笑む男は、まだ四十代前半といったところだろう。カカナと同じ亜麻色の髪を短く刈り込み、まっすぐな眉は凛々しさすら感じさせる。明るい緑の瞳。
カカナの父であり、賢老士の一人であるブール候は着ていた丈の長いマントを従者に預けると、ベッドの反対側にあるダイニングのイスに腰掛けた。入り口から横に長い部屋は、寝室兼ダイニングだ。小さなキッチンと洗面所が別についている。
クラフは、目を大きく見開いて、突然の来訪者に怯えたかのように毛布の隙間からのぞいていた。

「大きな声を出していたね。扉の外から聞こえたよ。
ピーシ、君の言いたいこともわかるけれどね。我々にとっては、クラフをどうすると言うより、クラフのいた世界の人間が、もし、再びここに来たらどう対処するかが重要なのだ。
だから、中途半端な状態だけれど、クラフにはね、人質として、異世界のものを追い払う役目を負ってもらう。簡単に言えば、彼らに、帰らなければクラフを殺すぞ、と脅すわけだね」

そっと、カカナと並んでクラフのベッドに座るピーシを観察するように見つめる。ピーシが、決まり悪そうに視線をそらすと、ふと笑って、ブール候は室内をぐるりと見回した。

「父上、そうしたら、クラフはずっとこちらにいるってことですか?その、異世界の人間が来ても返さない、クラフは帰れないってことですよね」
カカナが身を乗り出した。手元のスープの皿が、カチャリと鳴った。クラフは毛布の隙間から、さらに奥にもぐりこんで、それでも気になるのだろう、黒いトンネルの口を開けたままにしている。
「そうだね。つまり、クラフ。お前はもう、元の世界に戻ることはない。だから、ね、私は君に、私たちのところに来て、もう少し自由になってもらいたいと思っているんだよ。
この那迦の街では神の地とされる大聖堂がある。人々の信仰も深い。ここでは君を自由にはさせられないのだ。私たちの街の郊外なら、自由にさせてあげられるんだよ。いざと言う時には、もちろん、人質であることには変わりないがね」
クラフが毛布のトンネルの入り口をふさぐのと、ピーシが身を乗り出してテーブルに手を着くのと同時だった。
「どうした、ピーシ?何を驚いている?」
一瞬にして、表情を隠すと、ピーシは元のように座りなおした。
「いえ、なんでもないです」
にやりと笑うブールから、視線をそらす。
様子を、聞けるだけ聞いたほうがいい、ピーシの態度はそれを表していた。だまって、ブールの動向を探るつもりだろう。カカナにもそれは分かった。
カカナはどうして父親が、政敵であるピーシにそれを明かしてしまうのかが分からなかった。
それとも、この程度のことなら知られても平気だということなのだろうか。確かにこれだけでは、神を貶めたわけでもないし、賢老士会の決定に離反するものでもない。

「クラフ、今の話はカカナから聞いていると思うが。うるさいセキアがいない今が、丁度いい機会だからね、直接会ってみたいと思ったのだ。まだ、怖いのかね」
カカナは背後を見つめた。毛布に隠れたまま、クラフはじっとしていた。
「言葉は分かるのだろう?」
手を上げるブールにあわせて、従者の男が一人、クラフに近づく。
慌てて、カカナが毛布の塊の前に立ちはだかった。
「なんだい、カカナ。クラフの態度がそれでは、話も出来ないだろう?邪魔しないでおくれ」
「父上、クラフは子供なんです、あの、まだぜんぜん小さな子供で、とても臆病なんです!それに、今風邪で体調を崩していて」
「お、臆病じゃないぞ!」
毛布がもこもこと動いて、クラフが顔を出した。毛布に包まれたまま、座り込んで、頭だけ出す。乱れた金髪が、あちこちを向いている。
「オレは臆病じゃない!」
「そうか、ほう、大きくなったな。はじめてみた時はまだ、小さかったな」
穏やかに、あくまでも優しく笑うブールに、クラフはどきどきしていた。低い落ち着いた声、整いすぎた完璧な笑顔。何を言っても、何をやってもきっと、笑っている。
何を思っていても、だ。
そういう奴は、怖い。
「お前は、ここを出る勇気はないのかな?」
「どこでも、同じだ」
「研究の自由と昼間の散歩を保障しよう」

ピーシが交互に視線を移す。カカナは緊張した面持ちでクラフを見つめた。
「嫌だ、帰る。オレはオレの生まれた世界に戻るんだ。だから、それまでここにいる」
「帰らせないよ」

ブール候の低い声は、異様な威圧感を感じさせた。
背中を、ぎゅっとクラフが握り締めたのを感じて、カカナは振り返る。
男から視線をそらすことが出来ずカカナの服を握り締めるクラフの手が、少し震えていることに気付いた。ピーシもその手を見つめていた。

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 続きはこちら!(^^)
「宙の発明家」第一章 四.カカナとピーシ⑤
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南瓜人形さん

続けてコメありがとう!
職場の送別会で、コメのメール受け取りつつ、喜んでる酔っ払いです(笑)
ピーシ君、いいですか。ふふ。
実はセキアさんの次に人気者、だと。
うれしいなぁ!

ピーシ君、カッコイイなぁ……。
プール候は、自分の為にクラフを利用しようという雰囲気を感じさせます。
こういう時、セキアが居れば……
戻って来~い、セキア~~!


花さん

ピーシ君、人気出てきましたね!
地味な子だけどまじめなんです。生真面目。
そういえば、いつのまにか、セキアさん、「様」付けで呼ばれていますね(^^)愛されているね!嬉しいですよv-411

クラフ君、帰ること公言しちゃったんですね。あーあ、不可抗力といえど、難しくなることは目に見えてるのに…。
そして、ここ数話で、すっかりピーシ君のことを見直した単純花です;;
セキア様、ここぞという時に帰ってきて、クラフ君を守ってくれるといいなぁ…。

kazuさん

ありがとー!
らんららもピーシ君一押しです!
いい子ですよ!
これからがんばりますよ(^^)

カカナのお父さん、登場!
穏やかで的確なことをおっしゃる方だけれど、とても威圧感があって・・・。
このことで、カカナ君とピーシ君、クラフ君の3人に、今まで以上の連帯感ができればいいなっと、願う、kazuです。
セキア様らぶだけど、最近なんだかピーシ君にらぶ~v-10
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