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「宙の発明家」第一章 四.カカナとピーシ⑥

翌朝、ピーシが目を覚ました時には、クラフはいなかった。
隣で寝息を立てているカカナを揺り起こす。
「クラフが、いないんだ」
がば!と起き上がって、カカナは跳ねた髪を押さえながら見回す。
「!地下だ!」
二人は慌てて地下へと続く階段を降りる。途中一つだけ踊り場があり、すぐ地下の研究室の扉にたどり着く。
「クラフ?」
両開きの木の扉をきしませながら開く。
「いるのか?クラフ!」
ピーシも声をかける。ピーシは初めて入る研究室に、少し圧倒されている。見たことのないものがあちこちにある。ついそちらに、目が行く。
ぱっと見た感じでは、いない。
「ここ」
微かな返事を頼りに、いろいろなものが乗っている棚まで来た。壁と棚の間に、体を横にすれば通り抜けられるくらいの隙間が開いていた。
二人は、そろそろと、入る。
天井からの白い光に、クラフの金色の髪が輝く。まぶしい気がして、カカナは目をしばたいた。
「おはよ!見てみて!これ、オレ様の最新作!いいだろ?」
気付けば傍らに、クラフが何かの道具を持って立っていた。嬉しそうに目を輝かせている。
「ふうん。これ、なんだい?大きいな」
カカナは、銀色のそれこそデンワを巨大にしたようなそれに近づいた。
ピーシは遠目から全体を見ようと、腕を組んで見ている。しゃがんで下から見たり、少し移動してみたりする。安易に近寄らないのは慎重な性格の故か。
大豆のようなデンワを、少し引っ張って伸ばしたような細長いそれは、全体がつるりとした銀色の金属でできている。
緩やかな曲線を描いて、丁度豆でいう芽の出る方が上になっている。くぼみ辺りにガラスでできた丸いふたがついていて、豆の下には猫の前足に似た形のものが二本、豆を支えている。足はちょっと短めで、グウに丸めた手のひら部分は柔らかな羊の毛皮で覆われている。羊の毛をまとった猫の前足みたいに見えて、面白い。
カカナは近づいて、その前足をなでてみた。大きさは丁度、カカナの頭二つ分くらい。ふかふかと柔らかく、適度に弾力がある。
豆部分には、横に何かをつなげるのか、そこだけ皮を切り抜いたようになっている。接合部分には硬そうな金属がのぞく。ここに何かがついて、完全な形なのだろう。

「な、どう?カッコイイだろ?じじいに許可もらっているからな、完成させていいって」
「で、これ、なに?」二人は同時に言った。
「なんだよ、見てわかんないの?セキアはすぐ分かったぞ!」
クラフはがっかりして、口を尖らせた。
「セキアが?…ちょっと、待って、当てて見せるから」
カカナは、また、それの周りを一回りしてみた。
豆のお尻の部分には、縦にぴんと三角の魚の背びれに似たものが立っていて、そのすぐ下には、横に張り出した同じようなものが左右二枚ずつ、水平に並んでいる。そこには小さな五枚くらいの羽根が丸くはめ込まれている。中心で風車のように回転するようだ。
ぐるりと回ってみる。足から豆の上まで、小さな金属のでっぱりが並んでいることに気付いた。そこに足をかけて、上ってみる。
丸いガラスの中には、座る場所が二つ、前後に並んでいる。
前の席は機械に囲まれている。座る場所は全部、羊のもこもこした毛皮を張り詰めてあって、気持ちよさそうだ。
「これ、乗っていいの?」
見下ろすと、クラフは別のところにある羽のようなものの、何かを調整していた。
「!これ、それとくっつけるんだ!羽がつくんだね!そうだよ、鳥みたいだ」
クラフが見上げた。
「もしかして、飛べるの!?」
嬉しそうに、クラフはにっこりした。
「お前、すごい!すごいよ!」
「やっぱりカカナはいいやつだ!セキアは、俺が逃げ出すって怒り出したぞ」
「!…そのための、ものなのか」
カカナの表情が少し曇った。
クラフは再び作業に夢中になっていた。
「…な、クラフ」
自分の身長の二倍くらいの高さから、テクテクと降りながら、カカナは声をかける。ピーシもそばによってきた。まだ、腕を組んだままだ。
聞こえないのか、クラフはうつむいたまま、羽の風きり部分を動かしてみている。
「完成させるからな!完成したら、オレ、帰るんだ」
「すごいね、ここまで、具体的になっているなんて、想像できなかった」
ピーシが、ポツリと言った。
「帰る。セキアと同じこと言うな」
作業の手を休めずに、クラフは低い声で言った。
カカナは優しく笑っていた。
「寂しいな」
「…」
「クラフは平気なのか?」
「…」クラフは黙った。口をぎゅっと閉じて、カカナを見上げた。
カカナは、しゃがんでひざを抱えたまま、考え込むようにあごに手を当てている。クラフの視線を受けて、笑った。

「なんだか、こうやって、目の前に見るとセキアの気持ち、わかるね」
ピーシだった。やっと組んでいた手を離して、「空の羊」号に触れてみる。カカナも、頷いた。
「なんだか、切ないなぁ。せっかく仲良くなったのにさ」
「うるさい、邪魔するなら出て行け!」
クラフが急に立ち上がって、カカナを追い出そうと手を掴んで引っ張る。
「おいおい、クラフ」ピーシが苦笑いする。カカナは引かれるまま立ち上がり、そこでクラフの手を両手で包んだ。
「ね、クラフ。僕らはお前の立場には決してなれないから、お前の気持ちは分からないけどさ。セキアが怒るのは、よく分かるよ。寂しいんだ。でも、そんなふうに帰りたがるお前を、責めることもできないしね。なんていうのかな、あ!そうだ。鳥、かな」
「鳥?」
クラフの動きが止まる。
「僕ね、小さい頃スズメの子供、拾ったことあるんだ。巣から落ちていて、親は何処かに行っちゃっていて。だから、育てたんだ」
肩に両手を置かれクラフはうつむいた。手に持つペンチを睨んでいる。
カカナは少し遠くを見るように視線を上げ、話しを続けた。
「すごく、可愛いんだ。野生ではどこにでもいるんだけど。でも僕のスズメは特別だった。僕が呼べば飛んできて、手にちょんと乗って。すごい、きれいな声で鳴いた。大きくなって、大人の鳥になっても一緒にいた。いつも僕の後を追ってきて、肩にとまって。だけど、あるときから、いつもと違う鳴き方をするようになったんだ」
「なんで?」
「大人になってさ、恋人を探し始めたんだ」
「じゃ、もう一羽拾ってくれば?」
くすりとカカナは笑った。
「野生で生きているスズメを拾うなんて、そうないことだよ。かといって、誘拐してきたら、ダメだろう?それにね、僕のスズメは窓辺で鳴いて、ちゃんと好みの奥さんを呼んでいたんだ。窓の外から、応える声が毎日していて。スズメは窓辺に付きっ切りになって。僕が呼んでも来てくれなくなった」
「…」
「あんなに、一生懸命世話してさ、育てたのに、そいつには奥さんのほうが大切なんだ。しょうがないけど、悔しくて。僕はずっと、そいつを部屋に閉じ込めていたんだ」
「…」
「友達なのに、大切なのに、閉じ込めていた。そばにいて欲しくて」
「それで、どうしたの?」
「僕が神経質になって鳥と一緒に閉じこもっているのを見かねて、父上が、窓を開けた。僕は泣いたよ。スズメは、一回だけ振り向いて、外に飛んで行ったんだ」
クラフは、抱えた膝を見つめていた。
「二度と、帰ってこない、僕は泣いて怒った。父上はね、僕に言ったんだ。友達を信じないのかって」
そこまで話して、カカナは大きく息を吸った。ぐんと腕を伸ばした。遠くを見る彼の目には青い空が見えているような気がした。スズメの去っていった空。

「それで?スズメは帰ってきたのか?何処かに行っちゃったの?」
クラフの問いに、カカナは笑った。
「さあ、ね。秘密だ」
「ずるいぞ!」
「セキアや、僕らの気持ち、なんとなく、分かっただろ?」
背を向けて、また何か作業を始めようとするクラフに、カカナが声をかけた。
「知らない!セキアはオレのこと嫌ってるんだ!セキアはカカナのお父さんと違って、絶対窓を開けない!」
「開けてくれたら、お前どうするんだ?」
ピーシが、ポツリと言った。
クラフは茶色い瞳を大きく開いて、ピーシを見つめると黙った。
「僕は、お前が帰りたいならそうしてもいいと思う。淋しいけどね。でも、その前に、もっとたくさん、必要なことを教えて欲しいんだ」
カカナが、穏やかに言う。
「やだ」
「この間、話してくれただろう?この世界の話。お前が思う以上に、僕らだってこの世界を守りたいから、さ」
クラフはちらりと、年上の少年を見上げた。少し離れて、ピーシがじっと見つめている。
「コレ、造るのも、手伝うから」
カカナの笑顔に、クラフは表情を緩めた。頷く。

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 続きはこちら!(^^)
「宙の発明家」第一章 五.リスガとカカナ①
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南瓜人形さん

南瓜人形さんもですか!実はらんららも、子供の頃拾ったんです。本当に。スズメ。
可愛かった…。
切ないですよね。
一度さよならを言った、スズメは、戻ってきました。
泣きましたよ。

答えのない、何がよかったともいえない出来事です。それはでも。子供の心に何かを残す。
決して無駄じゃない出来事ですね。

帰るってことを、言葉だけじゃなくて
空の羊号を見せることで、示したクラフ君。
このシーンで、「嗚呼、これで三人は本当に友達になったんだなぁ」って思いまし
た。

鳥の話は、南瓜もこれと同じようなことが、子供の頃にあったので、ちょっと泣けてしまいました。


chachaさん

す、鋭い!
ピーシくん、もちろんプレイボーイも大切な目的でした。だから、リスガがいては困る、だったの。ま、そこまで書かなくてもいいかな、と思っていたら…気付いてくれるなんてo(^-^)o
嬉しい!
鳥の話、らんららの子供の頃のエピソードを少し脚色しました(*^o^*)
恥ずかしい…思い出です(>_<)

ほぁ~^^

どんどん話が進むにつれて、もっと先が気になって仕方ないです(笑)
でも、とりあえず今日はここまでで^^

<カカナとピーシ>の話では、クラフの気持ちが痛いほどよくわかりました。
そして、クラフがどれだけみんなから想われているか・・・
優しい想いだったり、何か裏があるような想いだったり?@@
カカナとピーシ、いい奴だなぁ!
プレイボーイ再び登場で笑いました^^ふふふ。
あ、もしかして、それでリスガを呼ばなかったのか!?ピーシめ、考えたな!(笑)

これからみんなで羊号作りですね☆
カカナの鳥の話、うるっときちゃいました;;クラフにもその想いが伝わったみたいで・・・
3人とも頑張れ!の、ポチッ☆^^

楓さん

あけおめです!!
コメ返しおくれて、ごめんなさい!!
一月四日昨日が仕事始めでした。
久しぶりに出勤すると、「あれ、何するんだったかなぁ」とぼけぼけなので、ちょっと集中しようとして二日から四日はパソコンはがまん。(^^;)
クラフ君、ピーシ、カカナ。それぞれの立場や気持ちを書きたくて。この章は動きは少ないけれど、彼らの関係を表現するのに重要なんです(^^)嬉しいです、じっくり感じていただいて。
らんららも、明日の土曜日には徘徊を始めます!よろしくお願いしますね!タウ君にあえるのを楽しみにしてます!

あけおめー!!

年末のご挨拶に伺って以来、すっかり遅くなりましたが、ようやくあけましておめでとうございます!!どうか今年も宜しくお願いします!
で、今日実家から帰ってきまして、深夜徘徊中でございます。てことで今日は第一章四カカナとピーシを一気に読ませて頂きました。ううーん、やっぱいいですね。感じたこといっぱいあります♪
まず、クラフのセリフ「ごめん、俺、いつかみんなを裏切る。それでも俺、みんなのことが好きだ」・・・一見矛盾しているようですが、クラフの素直な気持ちがすごく伝わりました。故郷への憧れ、それと相反するセキアさんやカカナ・ピーシとの関係・・・いまはまだ、帰りたいという思いが強いんでしょうね。それと、物事を包み隠さずまっすぐに伝えようとするクラフの性格も垣間見れました。
あとは何と言ってもピーシ!・・・いや、カカナもカカナのお父さんも素敵だと思うのですが、僕の中ではピーシが赤丸急上昇です!!なぜかって、最初ピーシは「僕はクラフの友達になる資格はない」といいますよね。それは父を含めたクラフを取り巻く大人たちの世界をのぞき込み、それを自分なりに理解しようとしている課程でピーシが発した言葉だったでしょう。それが、最後は「僕も一応クラフの友達だからね」と言っている・・・この微妙な言葉の変化にピーシの思考のほんの些細な変化が隠されているような気がして、おお!って感動してしまいました。
ともあれ、この節でカカナとピーシとクラフ、3人の友情を確認できたのが大収穫でした!これで安心して今後の展開を見ていられる~!!がんばれ!

kasuさん

こんな、忙しい時期に、公開予約でとぱとぱ更新しちゃうらんららに、コメントくださって本当に嬉しいです!
今回、こういう繊細な(?)描写を多くしているので、楽しんでもらえるのかなぁと、すごく不安なのだけど!
見守ってあげてください!
らんららも、今日は同居人が酔って眠ってしまったので!今からは自由時間v-238
久しぶりにブログ散歩します!

帰るって・・・、宣言したから。
本音を話せたから。クラフ君は、空の羊号をみせたんですね。友達だって、分かってくれるって。
カカナ君が代弁してくれたセキア様の気持ち。
クラフ君に通じて欲しいな。
セキア様の気持ちも、カカナ君の気持ちも、凄い伝わってきて切なくなりますね。
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