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「宙の発明家」第一章 五.リスガとカカナ②

<<今回のお話をクリスマスに間に合わせたくて、怒涛の更新を繰り返してしまった(^^;)
だって、ねえ?クリスマスはロマンチックなのがいいよね!!>>



地下室では、相変わらず三人はもめていた。
隠し部屋ではなく、作業台のある広いほうで、仮眠用のソファーにクラフが不貞寝している。
カカナとピーシは、二人でガラスのビンに入った緑色の液体を覗き込んでいた。
「これから、酸素が出るんだって」ピーシが説明する。
「へえ、この苔池の水から」カカナはビンを持ち上げて、下から眺めたり軽く振ったりしている。
ピーシはちらちらと、クラフのほうを見る。
「クラフ、カカナに説明してやってくれよ、さっき僕に話した酸素の話」
「いや、だ」
クラフはベルベットの気持ちい肌触りのクッションに顔をうずめたまま言った。
「いいよ、ピーシ。君の説明で、大体分かった。酸素がないと息が出来ない。で、飛行機で果てから向こうへ出ると、酸素がないんだ。それで、酸素を何かに詰め込んで持って行こうって言うことなんだろ?」
「そ、それで、この苔池の水から、酸素だけを取り出して、何かに詰め込む」
「水じゃない」
クラフがつぶやいた。
「さっき、水って言ったよ、クラフ」
ピーシは涼しげな顔をして、クラフに背を向ける。
「違う!」
クラフは起き上がる。
「そうだった?」
にやりと笑うピーシに、クラフはわざとだと気づく。頬を膨らめて、それでも仕方なさそうに起きてくると、カカナの隣にたった。



「苔池の苔から、酸素をとるんだ」
そういってクラフは、緑の液体をカカナから取り上げた。
「苔が作り出す酸素は濃度が高い。だから、それを密封できる、しかも伸縮に強い袋に入れる。それはいいんだ、それより、この宙を出た成層圏の気圧、それから目的地の気圧。その差をどう埋めるかなんだ!今ここはオレのいた世界より、少しだけ低い気圧なんだ。だから、俺のいた世界に近づくまで維持できれば何とかなる。途中の対流圏上層が問題なんだ」
「それ、その対流圏、とか成層圏、ってのが分からないんだよね」
ピーシが頭をかく。
「そういうものだって、思うしかないよピーシ。実際見たこともないんだ」
カカナがクラフの書いた数式を眺める。
「成層圏は空気が薄い。だから気圧と呼ばれるものもほぼ一定で、ないに等しい。でも、対流圏内は普通に大気がある。低いところへ向かうほど、大気の重さ、つまり気圧を背負うことになるんだ。空気の入った袋を気圧の低いところに置けば、袋は膨らむ。気圧の高いところでは逆に、しぼんでしまう」
「…そうすると、「空の羊」号も膨らんだり萎んだりするってことかい?」
「機体の強度が不足すればね。「空の羊」だけじゃないよ、乗っている人間だって膨らんだり縮んだりする。限界を超えるときっと、体を壊す」そして、血液が沸騰して、死ぬ、とまではクラフは言わずにいる。

カカナとピーシは黙った。
クラフは二人をにらんで口を尖らせた。
「なんだよ」
「危ない」
ピーシが言った。
「危険だよ、クラフ。無茶だ。やっぱり、果てを越えて飛ぶなんて、無理だ」
「気密性を高めれば大丈夫なんだ!」
「ダメだよ、危ない」
カカナもクラフの肩に手を置いた。

「邪魔するなら出て行け!」
クラフはカカナの手を振り払ってまた、ソファーに寝転んだ。
考えているのだ、方法を。
気密性を高める方法を。そして、酸素供給をうまくするための仕組みを。
ピーシは大きくため息をつくと、わざと大声で言った。
「行こう、カカナ。そろそろ、リスガがおいしい手料理を作ってくれているころだよ」
ぴくり、とクラフが動いた。
「ああ、そうだったね。クラフ、今日、リスガが来てくれているんだよ。きっと、おいしいもの作ってくれるよ」
「…」
「拗ねていると、そのこと、リスガに言うよ?」
クラフはがば!と起き上がる。
「じゃあ、夕食だ、おなかすいた!」
満面に笑みを浮かべるクラフに、カカナが噴出した。
「休憩しよう、休憩」
ピーシも笑いながら言った。

「うわぁ!いい匂いだ」
一番乗りで寝室に入ってくると、クラフは真っ先にキッチンをのぞく。
「こんにちは、久しぶりねクラフ」
にこっと笑うリスガは、亜麻色の髪を二つに縛って、ピンクのエプロンをつけている。
「かわいい!似合う!りー、大好き」
抱きつこうとするクラフを、カカナとピーシが背後から羽交い絞めにすると、クラフはじたばたしながら連れて行かれた。
ふう、とリスガは一つ息を吐いた。
チキンのクリーム煮の鍋をよいしょと持ち上げて、運ぶ。
「僕が持つよ」
カカナだった。
「大丈夫よ」
ちょっと上目遣いに睨むリスガに、カカナは首をひねって、もう一度言い直した。
「君に、そんなことさせられないよ」
にっこり笑われて、リスガはくじけた。
一瞬持ち上げた鍋を下ろした。正直、少し重かった。
それを、カカナは軽々持って、寝室のテーブルに運ぶ。
リスガはその背中を見ながら、取り分ける皿とスプーンを運んだ。
「ありがとう、リスガ、片付けもしてくれたんだね、すごくきれいになって嬉しいよ」
ピーシとクラフはすでに、テーブルに身構えている。クラフは何かを先につまんだのか、頬をもごもごさせている。
「本当に、ピーシもカカナもきれい好きって聞いていたのに、あんなふうになっているなんて思わなかったわ。びっくりしちゃった」
「ごめんよ、片付けるとすぐに、クラフがちらかすから。僕もピーシも諦めちゃったんだ」
「オレのせいにするな!」
「本当のことだよ、クラフ」ピーシがクラフの頭を軽くつつく。
「うわ、美味しそう!」
クラフはすでにフォークを構えている。待ちきれないように、テーブルに並ぶサラダや、チーズトースト、果物を見回している。

「はい、どうぞ」
一番はじめにリスガが取り分けた皿を受け取り損ねて、クラフは皿の行き先、カカナを睨んだ。
「先にクラフにあげなよ」カカナが苦笑する。
「いいのよ、だってもう、サラダ食べちゃってるもの。悪い子はお仕置き」
「うう!?」
クラフは慌てて口を押さえて、目を瞬いた。リスガがクリーム煮をわける間に待ちきれなくて、サラダを口に突っ込んでいた。
「リスガ、クラフのマナーは直らないから、放っておいたほうがいいよ」
ピーシが苦笑いした。
「だめよ。クラフ、私、マナーの悪い人と一緒にお食事したくないの。特に、最初のお祈りを待てない人は大嫌いよ。守ってくれないなら、出て行って」
「うう?」
クラフは口を手で押さえたまま、何か言った。
「あ、ばかだな、嫌いなパセリを食べちゃったんだろ、慌てるからだよ」
カカナが面白そうにクラフを見つめる。
「うー」
飲み込めないのか、クラフは涙目になりながらリスガとカカナを交互に見ている。
「リスガ、苛めるなよ。ここはクラフの家なんだし」
ピーシが軽くリスガを睨んで、クラフをキッチンに連れて行った。
「いやあね。クラフが悪いんじゃない」
「ね、リスガ、何かあったのかい?何か、怒ってる?」
二人が席を立っている隙に、カカナが小さな声で尋ねた。
「え、別に、何も」
リスガは少し赤面して、最後のクリーム煮をとりわけ終えて、席に座った。その間に、カカナはジュースをグラスに注いでいる。
「クラフの食事のマナーは、最悪だから、気長に直していかないと。あんまり叱るとまた、拗ねて食べなくなってもいけないしね」
「食べなくなったの?」
「やっと、ここ二、三日でまともに食べるようになったんだ。セキアがいなくなって拗ねていたのと、風邪がお腹に入ったのとで。やっと治ったと思ったら、夜、空気の調査だとかで徹夜して、またぶり返したんだ。むちゃくちゃなんだ」
「しばらく、研究休めばいいじゃない」
リスガは眉をしかめた。
「それはそうなんだけどね。なんだか夢中なんだ。気持ちも分かるからね」
「りー、お待たせ!」
駆け込んできたクラフは、満面の笑みでリスガに笑いかける。
ちゃんと椅子に座って姿勢を正して、カカナのまねをする。
「あきれた、クラフ。お前、態度違いすぎじゃないか?」
ピーシが肩をすくめながら椅子に座る。
「最初から、リスガに来てもらえばよかったかもしれないな」
カカナも苦笑いした。
「そうだよ、そうすればよかったんだ!」
勝手な言い草のクラフを、ピーシがこつんと殴る。
「いて!」
「もう、三人とも、ちゃんとして!」
リスガに怒られて、慌てて三人は手を合わせる。

食事を終えて、カカナとリスガが片づけをはじめた。
「な、クラフ」
ピーシは、クラフを呼び止める。クラフは早く二人に間に割り込もうと、最後まで苦戦していたサラダの皿を抱えて、キッチンに向かおうとしていた。
「なに?」
「あれ、なくなってる」
ピーシはひそひそと小さい声でクラフに言った。
「あれ?」
「ほら、例の雑誌」
クラフはきょろきょろ見回して。
ピーシと目が合った。
「そうだよ、どこに?」
二人は、同時にキッチンのほうに視線を向ける。
「まさか、リスガが、隠したのかな」
ピーシはリスガならやりかねない、とあごに手を当てた。
「まさか、聞けないし、ね」
ピーシの言葉に、クラフはニコニコした。
「じゃ、オレ聞く」
「は?」
ピーシが止めるまもなく、クラフはキッチンに駆け込んだ。
「なあ、リスガ!」
「なあに?」
楽しく会話していたのだろう、リスガの振り向いた顔は天使のように微笑んでいる。
隣のカカナと、悔しいけれどお似合いだ。
クラフは、ちょっと拗ねた顔をして、言った。
「女の子の写真が載ってる雑誌、知らない?」
「わー!ばか!」
後ろから口をふさごうとしたピーシは一足遅かった。
「離せって、ピーシ、隠すことじゃないだろ!」
「隠すことなんだよ!ばか」
カカナもやっと意味が分かった。
「あ」
リスガと目があう。
リスガは真っ赤になっている。
まさか、聞かれるとは思わなかった。直接、しかもカカナのいる前でそんなこと、聞かれるとは。
「す、捨てたわ!クラフ、子供があんなもの見ちゃダメなんだから!」
「!ひどいよ!あれしかないんだ!オレのを勝手に捨てるなんてひどいよ!」
暴れるクラフをピーシが押さえつける。
「大切なら、しまっておけばよかったじゃない!」
リスガはそう怒鳴って、部屋を飛び出した。
「リスガ!」
カカナが後を追う。
「ひどいよ!」
クラフは逆にベッドにもぐりこんだ。
ピーシは、クラフのそばに、座り込んだ。
「ばか、クラフ…お前、本当に分かってないな」
「…リスガだってひどいよ」
「お前もひどい」
「……」頭を毛布にもぐらせたまま、クラフは枕をピーシにぶつけた。
何度も、何度も。
ピーシはため息をついた。
サイドテーブルに置かれた、ピンクのリボンのついたデンワを見つめる。
かなう恋じゃ、ないだろう。


「リスガ!」背後からカカナの声。
迷路の途中、夢中で走って、いくつかの曲がり角を曲がると、目の前に壁。
間違えたと気づいたときに、後ろから来たカカナに追いつかれてしまった。
壁につけられた小さな明かりで、リスガが泣いていることにカカナは気づいた。
「…、ごめん、リスガ。僕ら、君に対して気遣いが足りなかった。あれ、見ちゃったんだろ」
リスガは頷いた。
「君の言う通り、しまっておかなきゃいけなかったんだ。ごめん。その、困らせて」
黙って、首を横に振って、リスガは涙をぬぐった。
カカナは少女を抱きしめた。
「!あの、カカナ…」
「ごめん、泣かれるとは思わなかった。いや、泣かれて、こんな気持ちになるとは思わなかった」
「え?」
カカナの胸の鼓動が聞こえる。暖かい。
リスガも抱きしめ返した。
広い背中にうまく手が回らない。カカナの大きな手が頭の後ろから優しく抱きしめるのを感じる。
もう、自分のどきどきを聞いている余裕もなかった。やっと、一つ息を吐いた。
「カカナも、見たの?」
「あ、ええと」
頭に置かれた手が一瞬はなれる。
「あの、いいの、いいの。男の子だもん、興味あるの分かるし、その、…」
カカナがそっと離れる。
「あの、ごめんなさい。カカナが、見ると思うと、嫌で、…捨てちゃった」
見上げると、やさしく笑っていた。
きゅん、と気持ちが鳴いた。
思わず涙がこぼれる。
「僕は、リスガがいてくれればいいよ」
カカナの目が大きくなって、影が顔にかかって。
やさしいキスをもらった。


「ね、クラフ。あきらめなよ」
ピーシは何回目かの枕の攻撃を受け止めて、枕を取り上げると、言った。
「お前、雑誌のことで怒っているんじゃないよね?二人に入り込めない気がして、八つ当たりしているんだろ?仕方ないよ。リスガはカカナのこと好きなんだ」
ピーシは、また、デンワを見つめた。
いつか、セキアが言っていた。
クラフはリスガと話をしたいために電話を作ったんだと。ピンクのリボン。リスガのために用意したものだろう。
「そんなの、分かってるよ」
振り返ると、クラフが顔を出していた。
少し涙目なのが、笑えた。
ピーシはデンワを手に取った。
「これ、僕がもらってあげるよ」
クラフは目を丸くして、それから睨んだ。
「だめ。それは、セキアのだ」
クラフにデンワを取り上げられて、ピーシは微笑んだ。
「お前、変なやつだな」
「うるさい!変になったのはセキアの責任なんだ!あいつが責任取るんだ」
そう怒鳴ると、クラフはデンワを抱えたまま、毛布にもぐった。
ピーシは、目を細めて、ベッドに座る。
後ろでクラフが動くのが分かる。
いい加減、仲直りさせるべきだと、ピーシは考えていた。

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 続きはこちら!(^^)
「宙の発明家」第一章六.クラフとセキア
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chachaさん

ありがと~え、い1位?うわー初めてです(>_<)!つかの間でも嬉しい!長いともっと嬉しい。
chachaさんだって、ずっとそうだったですよね♪
ポチありがとう(T_T)らんららも携帯からではポチできないから夜また行きますね!今、職場のパソコンはブログ開けないので(T_T)

ふふふ。恥ずかしいシーンですね…(^o^;)憧れです…自分は体験できなかったから、こういうの
ピーシくん、愛されてるなぁ(*^o^*)さて、じゃ、仲直りといきましょうか♪

あ~いいなぁ^^

やっぱりリスガとカカナ、くっつきましたね^^
プレイボーイ、こんな所で手柄をたてるとわ(笑)
キュンってなっちゃいました☆
これくらいの歳で、人を好きになって、両想いになった時、
きっとこんな感じなんだろうなぁとほのぼのしながら読みました^^
クラフは・・・残念だったけれど・・・
でも、いつか帰るクラフにとっては、この結果が良かったのかもしれないな。

さてさて、愛するピーシくん(笑)がまた何やら考えてますね!
セキアとの仲直り、きっと他の人達も考えてるんじゃないでしょうか?^^
早くコンビ再開して欲しいです☆

そして、らんららさん、ランキング1位でしたよ!
持続する為に、ポチッと押していきます^^

kazuさん

そうなんです…、このシーンのために、意味もなく(?)毎日更新という無謀なことしてしまいました!ごめんなさい、読むの大変ですね、きっと(><)
書いていて、うわ、ハズカシ…って、思いながら。
普段、恋愛もの書いてないから、へたくそで…。
まだまだ、勉強ですね!
ピーシくん、きっとkazuさんの大人に魅力にたじたじですよ!それはそれで、からかいがいがあって楽しそうですね!

きゃぁぁぁっ!
カッ、カカナ君!!
いやぁ~ん、もうめろめろ~v-10
らんららさんてば、聖夜になんてロマンチックなシチュエーションを・・・。
どきどきしちゃいましたよぉう♪
幸せオーラが溢れちゃってますよ、もう。
リスガさん、いいなぁ。
kazu、かわりたい・・・・。
でもでも、相手はピーシ君希望・・・・・。←あ、却下?(笑

いいなぁ、甘酸っぱい思いをしたいなぁ。

ピーシ君やカカナ君、リスガさんとの生活も楽しそう♪
でも、やっぱりセキア様と仲直りをしてほしいです。
やっぱり、二人でいて欲しいな~。

ピーシ君、がんばって!!
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らんらら

Author:らんらら
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