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「宙の発明家」第二章 一.二人の賢老士③

カカナとピーシは、凍りついたようにこわばった。
「どういう、こと?」
リスガが一歩、セキアに詰め寄る。
「クラフさまの発明品で、危険なものがあるという話で、臨時の賢老士会が開かれたようです。飛行機と、ハナビ、もえ玉あたりのことでしょう。そして、昨夜、遅い時間に、クラフさまは無理やり寝室に監禁されてしまった」
「何で、止めなかったの!?」
リスガの言葉に、セキアはぎゅ、と目をつぶった。
「それが、…流季節のお祝いでもらった酒に、何か入っていたのかと、分からないですが、一杯飲んだだけなのに、私はクラフさまが連れ去られたことも、あの雷嵐すら知らずに、寝込んでいたのです。今朝になって、警備兵に起こされるまで、まったく起きることが出来なかった。クラフさまは、作業の途中だったのでしょう、すべてをそのままにして、姿がありませんでした」
そこで、セキアは悔しげに拳を胸の前で握り締めた。床に、残っていた血痕、引きずられたような跡。血の量からしてそれほど深い傷ではないようだが、どんな扱いを受けたのか、想像できるだけに腹立たしい。

「賢老士会で正式に決定したことなら、仕方ありません、ですが、やり方が気に入りません。なにゆえ、そんな強引な方法をとるのか!大教皇様も承服しかねるご様子で、今、ピーシ殿、あなたのお父上に掛け合っておられる」
厳しい視線を受けて、ピーシは目を丸くした。
「!僕を疑っているのかい?」
「いえ、そういうわけでは……」
しかし、クラフが飛行機を作っていることを知っているのは、この三人と大教皇。それだけだ。クラフが、何か新しいものを作り出すことを警戒していたピーシの父親、セクトール候が発起人と考えるのが普通だろう。だとすれば、彼に情報を漏らしたのは、必然的にピーシ、ということになる。ちょうど、学校の休暇にあわせて、ピーシも自宅に戻っていた。
みなの視線の意味を感じて、少年は表情を固くする。
「違う!僕はお父様に話していない!話せるわけがないんだ、僕がクラフたちと一緒になって、飛行機を作っているなんて。そんなこと知られたら、僕は追い出されるよ!」
「じゃ、あ?」
リスガが、言いかけて、やめた。
セキアが、じっとカカナを見つめる。その険しい表情。カカナは整った顔を曇らせて、見つめ返した。セキアが先に視線をそらした。
「いえ、いいんです、それはもう、起こってしまったことです。それより。クラフさまが今、どこにいらっしゃるかが、問題なのです」
「え?」
カカナが、一瞬歩みを止め、リスガがその肩にトンと当たる。
「だって、監禁、って」
立ち止まった三人に、セキアは振り返った。腰の剣が、かちりと鳴りその音は通路に響く。
「警備兵が、昨夜一人残ったのですが。今朝、遺体で発見されました」
「!それが、さっきの?」
「そうです。彼は、寝室にクラフさまと二人で残ったということです。外から鍵を閉められて、出られない状態にして、です」
「クラフは…」
ピーシの言葉に、セキアは首を横に振った。
「姿が、ありません。分からないのです」
そこまで話すと、セキアは再び前を向いて歩き出した。
迷路の最後の角を曲がると、寝室の扉が見える。両脇に、二人の警備兵が立っている。
二人は、セキアの姿を見ると、慌てたように姿勢を正す。

「もう一度、見せてもらう」
セキアの言葉に、二人は扉の鍵を開けた。

寝室は、明かりが消え、開いた扉からの薄明かりだけが、白く斜めに室内を照らす。セキアは扉付近の壁に作られたスイッチをひねる。天井全体がうっすら白く光る。冷たく冷え切った部屋。いつもより暗く感じる。床に散らばる書類、本。飲みかけのミルク。
「昨日の、昼までと同じ状態です」
セキアが言った。
「ただ、この入り口の血痕を除いて、ですが」
入ってすぐの冷たい石の床に、小さな血だまりがあった。それは、何かの下に流れたようで、不自然な形をとっていた。
「警備兵は、背中を刺されてうつ伏せで倒れていました。この血は、彼のものです」
セキアが淡々と説明する。
ピーシも、カカナも、室内をきょろきょろと見回した。
リスガだけが、カカナの胸元にしがみ付いている。
「これ、セキア、ここに」
カカナが床に落ちていたぺたっ葉を指差した。それは何かから無理やりはがしたようで、くしゃくしゃになっていた。
「クラフが使ったんだ!」ピーシが叫んだ。
セキアは、口をぎゅっと結んで、扉の外に向かう。
「セキアさん?」
リスガがそれを目で追う。
セキアは、扉の外に立つ二人を睨んでいた。
「お前たち、クラフさまに、何かしたか?」
三人は慌てて、セキアの後を追って部屋を出る。
警備兵二人は、扉の脇に二人そろって立っていた。
セキアの厳しい口調に、一瞬驚いた顔をしたが、すぐにそれはふてぶてしい表情に変わった。気づいて、セキアの声も大きくなる。
「答えろ!!」
セキアの突然の怒号に、リスガは首をすくめた。
「クラフさまをどうしたんだ!」一人の胸倉をつかんだ。
「せ、セキアさま……」
背後の壁に押さえつけられ、もがく警備兵。
「セキアさま、我らは警備を命じられただけです!」
もう一人がかばうように言うので、セキアはじろりと睨む。つかまれた男も、言った。
「昨夜の出来事は、我らは関係ありません」
セキアは、細い目をさらに細めて、男の腹をひざで蹴り上げた。
「何を、なさいますか!」もう一人の警備兵が、持っていた槍を構えた。
「その眉毛、クラフさまにぺたっ葉を投げつけられたんだろう?それでお前、クラフさまに暴力を振るったな!」
男の眉毛は半分なくなっていた。慌てて手で押さえたが、遅かった。セキアは気づいていたのだ。
「わ、私だけじゃ、…」
警備兵は二回目の膝蹴りをみぞおちに受けて、最後まで言えずに、床にくずれた。
もう一人がつかみかかる。
その構えた槍をむずとつかんで、逆に相手をぐんと引き寄せ、転びかかる相手の鼻面に左の拳を合わせた。
鈍い音とともに、男はひざをつく。
鼻血が床に落ちる。リスガが小さく悲鳴を上げた。
男は鼻を手で押さえ、もごもごと何かわめいている。
「無防備な子供相手に、剣を抜くなど!騎士の名が穢れる!」
もう一度派手に蹴ると、転がった警備兵の喉元を押さえつけて、セキアは怒鳴った。
「言え、どこに連れて行った!逃げ出された振りをして、連れ去ったのだろう!?どこだ!」
男は、青くなって、震えだした。
「な、何を、おっしゃっているのか…子供は、我らの仲間を殺して、逃げ出したんです」
セキアは口の端をゆがめた。冷たく壮絶な表情にカカナがごくりとつばを飲み込んだ。それにあわせるかのように、その腕にしがみ付くリスガも、手に力が入れる。

「クラフさまは、逃げ出すようなことはしない。怪我をなさっていればなおさら。それとも、警備兵は武装しておきながら、素手の子供に殺されたとでも言うのか?逃げ出したのではない、連れ去られた、それが正解だろう!」
「あの、生意気に抵抗したんで…」
「なんだと?」適当な言い訳がさらにセキアの怒りを沸き立たせる。
「あ、いえ、あの。われ等は、本当に知らないんです、その、この部屋に閉じ込めるよういわれていまして。あいつが見張りは一人でいいって言うんで、鍵を閉めて、その後は休んでいて、その、だから、何も知らないんです。まさか、殺されるなんて……」
警備兵は訴える。その口調は切実で、リスガは同情し、カカナの腕を引いて、セキアを止めてほしいと目で訴えた。カカナは、気づいたが、小さく首を横に振った。
「では、お前たちの落ち度だな。鍵はお前たちが持っていた。盗まれたなど今更言うなよ。クラフさまが誘拐されたにしろ、逃げ出したにしろ、お前たちは処分を逃れられない」
「そ、その」
「クラフさまの存在を知り、失態をさらし、その上捜査の役に立たないとなれば、まあ、簡単だ」
セキアが腰の剣に手を置いた。二人は床を這って、逃げようとする。
「セキアさん!」
カカナだった。いつもは呼び捨てなのに、思わず、さん付けになっている。
「あの、僕たち出ていたほうが、いいですか」
ピーシも、いつもよりはっきりしない口調だ。
セキアはリスガの青い顔と潤んだ瞳に気づき、ふと息を吐いた。
「あなた方は、皇宮でお待ちください。私は、もう少しこの二人に聞きたいことがありますので」
穏やかににこりと笑う。

三人はただ、頷くだけで、とにかくそこを後にした。
迷路を少し歩き始め、リスガはちらりと振り返る。
寝室の扉の外で、セキアは座り込んだままの警備兵二人をにらみつけている。
セキアの表情が、恐ろしく見えて、ぞく、とリスガは身を震わせた。


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花さん

ふふ、ちょっと、変な想像させちゃいましたか…殺人事件。
らんらら、頭悪いので、推理ものは苦手なんだけど、なんとか事件解決できるといいなぁ!(他人事のように…^^;)
っていうか、きっとセキアさんが何とかしてくれる!力づくで。凛々しい?ありがとう!
きっと、本人が聞いたらテレまくりですね!
なんだか、セキアさん一番人気?もしかして。

アポロちゃん

セキアさん、怖かった?怖く描けたかな?
大人な彼の仕事ぶり、見ていてあげてね!
これから、もっと、怖く…?なっていくかも(^^)

kazuさん

セキアさんの気持ち、分かってくれてありがとー!!
っていうか、kazuさん、セキア派ですもんね!これから、活躍しますよ!楽しみにしていてください!
コメ返し、すっかり遅くて、ごめんなさい!訪問も出来てなくて…宴会続きで、夜まともじゃないので。今日もこれから忘年会。明日も…。
乱れた年末だなv-389

クラフ君、ようやく仲直り出来た…と思ったら、ついに巻き込まれてしまったのですね。殺人事件のコピーを見て、一体何の小説になっちゃったんだろうと一瞬思いましたけど…(笑
セキア様、戻ってこられて存分に力を発揮してられる様、凛々し過ぎです…っ!w
クラフ君のため、ですもんね。さぁ、クラフ君を助けに行きましょう!

(;□;) アウアウ

こわいょぉ。セキア別人だよぉ。でもこれが騎士であるセキア。なんだか今までのギャップがかなりドキューンときます!リスガ怖がっちゃってかわいそうだけど・・・クラフくんの状況聞くにはこうしないといけなかったんですよね。
クラフくんどこにいるのぉ!?

セキア様・・・!
クラフ君の見守りの役にいて、クラフ君に少し振り回されていて・・・、でも凄くまじめで優しいセキア様・・・。
でも、やっぱり騎士なんですね。
そしてそれは、クラフ君を思う気持ちが、よけいセキア様を駆り立てているような・・・。
クラフ君、どこに行ったの!?どこに連れて行かれたの・・!?怪我は大丈夫!?
セキア様の元に帰ってきて・・・!
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