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「宙の発明家」第二章 二.父親⑥

★★★らんららです!ブール候の悪行ぶり(?)はまだ続きます…(><)がんばれ!クラフ!!★★★


「……わかったから、造るから、教えろ。何に、使うんだよ」
クラフの言葉に、ブール候は口の端をゆがめるようにして笑った。
ぎらぎらして見える瞳、額にかかる乱れた前髪。
クラフは唇をかみ締めた。口の中に血の味が広がる。

「この世界をまとめるのだ」



「…なんで?今だって、一番の権力者じゃないか」
自分の声が思う以上にかすれ、震えていることにクラフは情けなさを感じる。
「ふん、お前は知らんのだ。この地は世界の西端にある。苔池の広がる郊外、ちょうど苔の花が咲くころ、西風が吹く」
クラフは眉を寄せた。
「苔の花が放つ花粉は、人の肺を蝕む。カカナの母親も、兄も。それで亡くなった」
「治らないのか?」

はじめて聞いた。セキアは大体なんでも、この世界のことを説明してくれたが、その話は聞いたことがなかった。

「今の医学では無理だ。人に害があることを承知で、それでも苔池は聖なる地だとし、焼き払うこともできん。最も被害にあうこの街は、常にこの病と戦ってきている。いくら賢老士の地位を得ても、秩序を壊さなくては、この街から逃れることは出来ない。我らはこの地を捨て、新たな街を作る。すでに軍隊はあるのだ、飛行機があればわれらの勝利は確実だ」
「…」
「神の教えは、人々の幸せのためにある。分かるか?私は今の間違った教えを正したいのだ。苔池は聖なる地でもなんでもない、人に害を及ぼす忌まわしい、じめじめした湿地だ。
五百年続く七つの都市、賢老士会と司教会、すべて不要だ。だから一つにまとめるのだ。私がこの世界の常識を変えるのだ。そのために、力が必要だ」

それで、飛行機を作ってハナビの火薬で武器を作って、戦争を起こすつもりか。
クラフはにらみつけた。震えが止まった。
飛行機や爆弾を造ったら、戦争じゃなくて、殺戮になってしまう。きっと。
「でも、苔池だって大切なんだ、あれがないと酸素がなくなって、息が出来なくなるよ、だから、教えで聖なる地って言われているんだ、もっと別の方法を…」

こめかみに衝撃を感じて、意識が遠のいた。
男がまだ、何か言っていた。
「時間が、ないのだ」そう聞こえた気がした。




少年は、黒い髪をくしゃくしゃとかき混ぜて、苛立っていた。
那迦の街の政府庁舎に昼過ぎから訪ねて、もう夕刻だというのに、ずっと一階の控え室で待たされていた。ピーシが賢老士の息子だと分かっていても、この場所では何の優遇もない。
ただ、閉庁時間を過ぎていても追い出されないだけましだった。
冷たい大理石の柱に寄りかかり、何度目かのため息をつく。椅子とテーブルがあるが、座って待っている気分ではない。自分が父親の怒りを買っていることを、実感していた。

そうでなくても、仕事中の父親は、常に家庭を遠ざけてきた。
それは昔から、いつだってそうだった。ピーシが生まれた時だって、第一子の兄が生まれた時だって、父親は病院に駆けつけなかった。三人目の妹が生まれたとき、病院でピーシは、ずっと父親を待っていた。難産で、医者の慌てる様子に子供ながらに胸を痛めていた。きっと、お父さんは来てくれる、そう信じて、幼いピーシは病院の前で立ち尽くしていた。我慢できなくなって、この政府庁舎まで走ってきた。
追い返された。
とぼとぼと泣きながら病院に戻った、あのときの苦い思いを、今また、感じていた。
後から母に聞いた。翌日になって、少しだけ顔を見に来たという。
それでも、母親は、大変なお役目を果たされているのですから、と父親に恨み言も言わない。幼いころは反発もした。
けれど、母親はよくピーシに言い聞かせた。
家で、喧嘩することはいくらでもしなさい。お父さんと話し合うことは大切だから。けれど、外では、他人の目がある場所では我慢なさい、と。
あくまでも、政治家である父親の立場を優先していた。

今は、分からないでもない。確かにそれで支えられてきた。
今の生活は、父親のおかげなのだ。
その、父親に、逆らおうとしている。いや、裏切った、と思われているだろう。クラフの発明品に関して、何の情報も父に報告せず、その上、自分が発明の手伝いをしていたのだから。

待っていても、無駄。そう判断して、ピーシは父親の執務室に向かって、夕日のさす廊下を歩き始めた。庁舎は既に閉められていて、残っている騎士たちや官吏もわずかだった。皆、日暮れ前に帰途に着く。この季節なら、後二時間もしないうちに日が沈む。

冷たい足音を響かせる大理石の廊下を足早に進み、庁舎のエントランスの正面から続く階段を駆け上った。最上階は五階。
上りきると、正面に守護士の控えの間があり、五、六人いるだろうか、いずれも屈強な騎士たちが、立ち上がった。
一瞬、歩みを止める。

「ピーシさま、こちらにおいでになる許可はお取りですかな」
中でも一番年の若い騎士が、控えの間の左手にある執務室に向かおうとするピーシを阻んだ。
廊下の突き当たりの大きな窓から、夕日が差し、男の顔は逆光でよく見えない。ピーシは眉間にしわを寄せて、目を細める。
「お父様に、いえ、セクトール候にお会いしたい」
「本日は、あなた様とはお会いにならないとのこと」
一階の受付では、何もそんなことは言っていなかった。待たされた分、勢いも増す。

「大切なお話があるのです!例の子供の件で、動きがあったと、お伝えください。それでも、私にお会いいただけないのでしたら、力づくでも通ります」
ピーシは背は高いものの、やせていて、とても、騎士たちにかなう様子はない。それでも、きりりと伸ばした背筋、少年の表情、口調からは、思いつめた様子が伺えた。
セキアと同年代と思われる騎士は、目にこめた威嚇を緩める。
「しばし、お待ちを」
騎士は、少年に小さく礼をすると、きびすを返し執務室に向かった。
それを見送りながら、ピーシは視線を控えの間にいる騎士たちに流す。
皆、それぞれの仕事をしているようでいて、こちらの様子を伺っている。中には、見知ったものもいたが、この場で声をかけようという気にはなれなかった。かけられても、相手も迷惑だろう。彼らがピーシに対して取ってきた態度は、父親の威光によるもの。父親の機嫌を損ねた少年に媚を売るものはいない。


<<ピーシ君、がんばれ!のポチいただけるとうれしいです!>>

 続きはこちら!(^^)
「宙の発明家」第二章 ニ.父親⑦
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kazuさん

ありがとう!
みんな色々抱えています(>_<)
そこをしっかり読み取ってくれて…http://blog70.fc2.com/image/icon/e/259.gif" alt="" width="14" height="15">ありがたいです。
この後はピーシくん。頑張れるかな…(@_@)

ユミさん(^^)

コメ、ありがとう!!
世の中上手くいかないことだらけ…
クラフ君も改めて、この世界のこと知っていくんです。
ブール候の気持ち、分かっていただいて嬉しいです(><)
今回の事件で、一番描くのが難しかった人なので。
続き、楽しみにしていてくださいね!!

こんにちは♪
ブール候にも、ブール候の守りたいものがあって。
そのためには、不必要としか思えない、この世界の秩序を壊したい・・・。
ブール候なんで!!って思っていた気持ちが、とても悲しい気持ちに変わりました。
時間がない・・・。
その理由が、きっとブール候をここまで駆り立てた要因なんですね。

ピーシ君、辛い状況だけど、頑張って!!

悲しい

どちらの言っていることも分かる分、辛さや悲しみが増して
いきます。でも、安住の地を手に入れるために、殺戮を始
めるようであるなら、クラフくん、とめて!!
皆が幸せになる方法、他に見付かればいいのに~。
ブール候!!少しはみんなの気持ちを汲んであげて!
って、熱くなっちゃいました(^^;)
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