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「宙の発明家」第二章 二.父親⑦

すぐに先ほどの若い騎士が出てきた。
表情は厳しい。
ピーシは口をぎゅっと結んで、一歩前に歩き出した。
「あの」
言いかけた騎士を素通りし、ピーシは執務室に駆け込んだ。
「!ピーシ様!!」
慌てる騎士の脇を寸前ですり抜け、さらに追いすがる騎士の目の前に無理やり扉を開いて、けん制すると、執務室に滑り込む。正面には大きな衝立。奥は見えない。
室内にもう一人、側近が控えていて、ピーシはそいつに止められた。
「ピーシ殿」
側近は、幼いころから遊んでくれた男だった。背後からのぞく守護士に、目で合図し、先ほどの騎士はほっとしたように扉を閉めた。
「お父様に、あわせてくれ!」



「殿下、落ち着いてください!」
「放せ!キタキ、頼むから!」

互いに馴れ親しんだ呼称を使う。キタキが少年に同情する気持ちも、ピーシが男に寄せる信頼も、今は呼称に表現するのみ。キタキは少年を羽交い絞めにした。
「頼む…」
「ピーシ様、今日のところはどうか、お帰りください。候はお怒りです。あなたもご存知でしょう、候は逆らう者を決して許しません」
「逆らって何が悪い!僕は、僕の気持ちに正直に行動したまでだ!」
「騒々しいぞ、ピーシ」
ついたての向こうから、低く落ち着いた声が響いた。
「!お父様!」
「我が息子ながら、情けない。自らの過ち、許しを請いに来たか」
「違います!」
あくまでも、姿を見せないつもりなのだろう、ついたての向こうでは動く気配はない。
ピーシは、もう一度抜け出そうと身をよじるが、キタキは強い。抜け出せない。
「お前は常にうまく周りに溶け込む。心にもないことを口にし、媚を売る。わしに対して頷いて見せたのも同じだ。お前は、表面だけわしに従うふりをした。そして、裏切ったのだ」
「!」
キタキは思わず、ピーシの顔から目をそらした。
ピーシが怒鳴ったり、叫んだり、傷ついた子供の顔をするのを男は想像した。常にそれを、彼は見てきていた。
次男として生まれたピーシは、常に二番目と意識させられ、上のものに逆らうことを禁じられてきた。それでも、生来の繊細でやさしい性格を変えられるわけでもない。いや、だからこそ、周りに合わせ、気持ちを抑え無理に従ってきたのではないか。
ピーシの言葉に込められる皮肉や嫌味は、常に自らに嘘をついているからだ。自分自身を嘲笑っている。
キタキが幼い頃から見てきた少年は、そう、育っていた。悲しい子供、その印象が強い。
黙って睨みつける少年に、候はさらなる言葉の刃を振りかざす。
「情けない。お前は誠実ではない。兄のような人の上に立つ資質を持ち合わせていない。妹のような素直さも可愛げもない。だからこそ、お前はわしの邪魔にならんよう、コマの一つとして役立てばよいものを。それすら、できぬとは」

沈黙の後。少年は、肩の力を抜いた。
十七歳、もう大人なんだ。カカナの言葉がよみがえる。
「セクトール候、僕は、僕の考えで行動しています。逆らった、裏切ったとお思いなら、結構です。僕は、あなたより、友人に誠実でありたいと考え実行しただけです」
「殿下、それは…」
キタキは血の気が引いた思いだ。
「例の子供、いえ、僕の友人は、今は無事です。連絡がありました。逃げ出したのではありません、彼の意思ではなく誘拐されたのです」

「……連絡が、あったと?」
セクトール候の口調が、少し変わった。

「クラフを保護してください。彼には何の罪もありません!クラフが、警備兵を殺すはずがないんだ!」
「…うそつきの言葉、どう信じろというのだ」
「!…あなたが、彼の知識を悪用されることを恐れるのは、あなたの力が足りないからです。悪用しようとする輩を放置し治安を保てない、だから、クラフにも危険が及ぶんです!あなたが悪いんでしょう!?権力を持つものには責任がある!力のないものを守らなきゃいけないのに!出来なかった…」
椅子がばたんと倒れる音。
「キタキ、そいつを捕らえておけ!」
怒鳴り声と同時に、衝立を倒さんばかりの勢いで、男が現れた。白いすその長い衣装、ダークグレーの肩掛けに金糸の刺繍。いからせ、大きく見せようとするその肩が、それほど大きくも、力強くもないことを少年は知っている。
「逃げたりしませんよ、僕は」
ピーシは、背後にキタキの腕の力を感じながら、精一杯胸を張って、父親を睨み返した。
セクトール候のひげを蓄えた細いあご、怒りで青ざめた顔、険しい視線。
身長は、もう、ほとんど違わない。
一瞬の間をおいて、候の手が上がる。
ピーシは一瞬目を閉じ、歯を食いしばった。
が、痛みはなかった。
「おやめ下さい」
キタキが、目の前で庇ってくれていた。
「どうか、お怒りをお納めください!」

「これはお前が庇うほどのものではないぞ!」
「キタキ、いいんだ!僕は、分かってる!」
「生意気を言うな!ピーシ!」
父親の怒号にも、二人はひるまない。ピーシは、切れ長の目をしっかり父親に向け、静かに言った。
「お父様、いえ、二度とその呼び方をさせていただこうとは思っていませんが。これまで、僕を育ててくれたこと、感謝しております。ですが、僕はけっして、あなたのような政治家にはならない。いずれ、あなたを超えてみせます!」
それだけ言うと、ピーシはきびすを返して、部屋を出た。
「ピーシ様!」
キタキの声を聞きながら、少年は廊下に立ち尽くしている先ほどの守護士をちらりと見やって、無表情のまま階段をおり始める。

「ピーシ様」
踊り場で、キタキが追いついてきた。
少年の肩に手を置く。
「お前、来ちゃダメだろ、候のお怒りを買うぞ」
「もう、遅いですよ」
キタキは少ししわの出始めた目元を、緩ませて笑った。
ピーシの肩は、震えていた。
「随分、ご立派になられました」
男の言葉に、思わず、目頭が熱くなって、ピーシはうつむいた。
首を横に振る。
「……失敗なんだ、僕の、目的、クラフを自由にしてあげたかったのに」
キタキの手が、そっと肩を叩く。少年はつぶやいた。
「だめだね、まだ、だめだ…」

「いいえ、私は、すっきりしました」
男の嬉しそうな声に、驚いて、ピーシは顔を上げた。
本当にキタキは、嬉しそうに微笑んでいた。くす、とピーシも笑った。
「それ、本音?」
「ええ。そうです。お送りしますよ。何しろ、私も、今は誰の部下でもありませんので」
「じゃあ、僕の部下になってほしいな。まだ、給料は出世払いだけど」
男は、笑った。
「では、今のうちにたくさん貸しを作っておきますよ」
「ふふ、怖いなそれ」
二人の笑い声は、人影のなくなった政府庁舎の階段に響いた。


<<ピーシ君、がんばりましたが…応援お願いします!>>

 続きはこちら!(^^)
「宙の発明家」第二章 三.黒猫①
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ミナモさん♪

ありがとう~♪
ピーシはがんばりました!カカナは。これからが、大変、だと。
早々、男の子と父親って言う関係。面白いですよね~。
クラフ君、ちょっと、痛そうです…(笑)
でも。精神的にへこたれる子じゃないから!うん。
続き楽しんでいただけると嬉しいです!!

二人とも

父親という強大な存在に、様々な感情を抱いたのですね。
カカナはまだ、半信半疑だけど、父の知らない一面を知った時、どうなっちゃうんだろ。
ピ-シは父を超えるべく、行動に移しましたね。うんうん。
男の子は、こうじゃなきゃね♪

ってか、クラフ殴られ過ぎっ。かわいそぉだよ~。早くセキア、助けてあげて~!!!

chachaさん

すごい、もうここまで…(@@)
ピーシ君に泣いてくれたのですか!?う、嬉しい!!らんららも、ここ、書きながら泣いていました(笑)
どうやって父親をやり込めてやろう、と、うんうん悩んだすえ、こうなりました。
もうちょっと、ピーシ君に勝利の雰囲気を上げたかったのだけど…難しい(><)
chachaさんのお父さんも怖い感じだったのですね…そうかぁ。らんららの父はやさしいです、らんらら、お父さんっ子で育っているので、お母さんよりお父さんです。
その辺が、こういうお話をかく原因かな?
ピーシ君とセクトール候の確執(?)はもうちょっと先でまた、進展があるはず。
期待していてくださいね!!

会社なのに・・・

ここで泣かされるとは思ってなかった!><(笑)
隣の席から「どうして泣いてるんだ?」的な視線が痛いです・・・@@;

ピーシ、やっぱり好きだ!
頑張ったよ、本当に頑張った!!
私の親も、セクトール候の性格に似てるかも・・・昔の話ですが^^;
なので、こんなにも自分の意見を最後まで押し切ったピーシが本当に凄い!そして、嬉しいです☆

問題は・・・カカナですね。
どう展開していくのか不安ですが・・・><
ちょっと!ブール候悪行し過ぎ!!(怒)
クラフは強くないんだから、手加減ってものをしなさい!!><
どんな理由であれ、可哀相だとも思うけれど、戦争はよくない!

そろそろ最新に追いつくかな・・・?^^
また来ます!☆

アポロちゃん

サンキューです!忙しかったんだね(^^)風邪とか大丈夫だった?
ふふ。ピーシ君、がんばるのですよ。
すっきりしてくれてよかった!

やっと読めた!

うふふん。アポロです。
ピーシかっこいい。
「僕は僕の気持ちに正直に行動したまでだ」ってピーシの言葉。いい!(>▽<)
なんかすっきりした!

おお!楓さん

あ、ありがとう!!
ぜんぜん気づかなかったです!早速、密かに(?)直しておきます!v-12
父親なのに、ひどいこといいますね…嫌です、らんららも。
ブール候にしても、セクトール候にしても。大人の男性なのだから、多分、何かしら、考えていることはあると思うんですけどね…ふふふ。
同じ大人の男性として、楓さんの意見はとっても参考になりますよ(^▽^)

ユミさん

変わる、いいですね!
ピーシ君の性格だからこそ、我慢できてきた関係、今後どうなっていくのか。仲直り?理解しあえるときが来るのか。
ふふふ。今は秘密v-392
楽しみにしていてくださいね!!

kazuさん

ふふー(^^)
良かったです!そういっていただけると!
嬉しい。
ピーシ君、そうか、彼はカッコイイのねv-345
一番生真面目で、多分無口。でも繊細。
さて、このあとピーシくん、どうなるのか。
kazuさん、応援してあげてください…らんらら、意地悪作者ですから!!

こんばんわ。
セクトール候のピーシへの批判の言葉
「お前は常にうまく周りに溶け込む。心にもないことを口にし、媚を売る」
これではピーシが救われないですよね。
僕の目から見れば、ピーシは誰よりも人の気持ちを理解するのが早いように思います。クラフがセキアをクビにしてしまい代わりにカカナとピーシが面倒を見るようになったときも、クラフの心をほぐしたのもピーシでしたよね。確か。言葉に刺があったり表現がストレートだったりするけど、そう言う機微というか、そういうことにすごく敏感なんだなと思うんですよね。それを「うまく周りにとけ込む」とか「媚びを売る」なんて・・・そんな風にしか息子を見ることができない父親って・・・悲しいですよね。
それと、ピーシとキタキ。。。クラフとセキアさんの関係を彷彿とさせる良いコンビですね!!!
まだまだぁ!!
1話前のコメントを付けていませんでした。
ブール候の考え。ようやく真相が分かりました。
そっか、そう言う理由で愛する妻と息子を亡くしていたんですね。でもだからっていきなり戦争で国を統一しようだなんて短絡的な・・・もしや、何かもっと根深い賢老子会への不満のような物があるのでしょうか?これまた気になります。
あと、細かなことなのですが・・・
終わりの方でピーシが「お父様に、いえ、ブール候にお会いしたい」と言っていますが、これはもしやセクトール候では?

変わっていきますね!

父親の影を追い払ったピーシくん。とても大人に見えました。
父親の考えが変わらないのであれば、自分が変わって
みせるしかないんですよね。でも、権力を持った人の考え
方って、そう簡単に変わらないもの…。
とても胸が痛みました。
親子なんだから、いつかは分かり合って欲しいですね~。
キタキさん、ピーシ君を見守ってください~♪

ピーシ君!頑張ったよ!!
恐れてきた父親を、クラフ君のために、何よりも自分に誠実である為に、今までの関係を断ち切った。
父親に抑えられて生きてきた、今までを。
ピーシ君、凄い。
キタキさんも、ピーシ君を認めたからこそついてきてくれたわけで・・・。
なんだか、セキア様らぶなのに・・、やっぱりピーシ君、かっこいい!!
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