08
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
   

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

「宙の発明家」第二章 三.黒猫③

★★★らんららです!最近すごーくすごーく、眠い!!職場で一日中眠い…昼寝のために仕事休みたい誘惑に駆られています!!
さて、セキアさんたち、どうするんでしょ?続きです(^^)★★★


食後は、馬を引いて歩く。
人ごみに紛れるとはこのことかと、カカナは感じた。
セキアが人通りの多いこの場所を選んで進む理由を理解した。

大きな声で呼び込みをする商人、駆け回る子供、雑踏はこれほど音を遮断する効果があるとは。引いている馬で、彼らの姿も隠しやすい。その中を進みながら、セキアは少しずつ説明してくれた。
彼らをつけてきている黒猫は、やせ気味の背の高い四十代後半の男。黒髪を短くし、頬に傷跡がある。小さな眼鏡をかけ、黒い裾の長いマントを着ている。
公に出来ない黒猫を使うということは、クラフを奪還、あるいは亡き者にする、それが目的だと考えられた。
つまり、もっとも事件を小さいうちに処理する方向だと、セキアは読んでいた。
そう語る厳しい眼が、一瞬、悲しげに見えて、カカナはふと、自分の胸に沈んでいる感情と同調した気がした。

なぜ、父親は、こんなことをしたのだろう。
それさえなければ、カカナ自身も、セキアも、クラフも、こんな思いをしなくて済んだのに。絶対的な信頼を置く、父親。たった二人の家族。母親の亡き後、カカナを大切に育ててくれた。疑いたくない。信じている。けれど、胸の奥にわだかまるものの重さが悲しくさせた。セキアのやりきれない怒りは、それに似ている気がした。
カカナは、父親にその疑問を、ぶつけたくなった。どうして、こんな思いをさせるのか。
どうして。
カカナは、セキアの先を歩き、迩史の街の政府庁舎に向かった。





政府庁舎では、カカナは暖かく迎え入れられる。
門前の衛兵から始まって、三階建ての建物の最上階に到着するまで、誰もがニコニコと笑顔で迎える。お帰りなさい、と声をかける。
カカナも慣れたもので、セキアのことを友人だと紹介しつつ、まっすぐ目的の父親のいる執務室の前に立った。

「よく、おいでになるのですか」
セキアの問いに、カカナは頷いた。
「父上は、一年のほとんどをここで過ごされる。他に家族がいないからね、まるで、この庁舎が家で、部下は皆家族、そんな雰囲気なんだ。だから、僕も、学校の休暇にはここに帰ってくる」
笑顔で答える少年。灰色の固いイメージの大理石を多く使った建物も、なぜか、温かみのある雰囲気だ。所々に、白い毛皮の装飾が施されているからか。花が飾られているからか。そこで、セキアは気づいた。

「これ、は」

建物内は、天井まで届くくらいの大きめの窓で日の光をふんだんに取り入れるように設計されている。しかし、どうしても、北側は薄暗くなる。自然、そこは仕事をする場所ではなく、休憩する場所などに利用されているが、人気がなく寂しい印象になる。
ここにはその場所に、小さな照明がついていた。木のベンチが置かれ、数名の官吏が、くつろいで話をしている。
驚くセキアに、カカナが微笑んだ。

「ほら、ランドエンドに行くとき、クラフが造った小さな灯り。あれを、教えてもらったんだ。あの離れみたいな全体を明るくするのは大変だけど、携帯用のあの灯りなら、こうやって使えば便利だから。皆、仕組みは分からないけど、くつろぎやすいみたいで。あの場所に人が集まるようになった。せっかく休憩するんだ、心地いいのが一番だって、父上が賛成してくれた」

「はあ」
「クラフも、あの灯りなら、使ってもいいって言ってね。もえ玉は絶対教えてくれないくせに、灯りのことすごいって褒めたら、嬉しそうに造ってくれたんだ」

亜麻色の髪をふわりと揺らし、少年が微笑む。
セキアは知らなかった。この賢老士の子息が予想以上にクラフと密接であることに、今更ながら不思議な気持ちになる。セキアでは決して出来ない関わり方だ。

「お待たせしました、カカナ様」
先客だった官吏が、仕事の書類だろうか、抱えて出てくると、二人は入れ替わりに執務室に入った。
「父上、突然、すみません」
カカナの言葉に、衝立の向こうで、穏やかな声が響いた。
「入りなさい」
執務室は、薄い桃色の大理石の壁、床には白い毛皮。調度品はすべて手の込んだ石造りで、所々にガラスや宝石が使われている。それでも、全体に落ち着いた雰囲気なのは、余分なものが置かれていないからか。室内には、打ち合わせ用のテーブルとソファー、執務用の大きな机、机の背後に書類の棚。背後の大きなステンドクラスの窓は、シンプルな色調で、昼下がりの陽の光をきれいに分散させている。

ブール候は、二人を見つめ、立ち上がると、穏やかに笑って手を差し出した。
セキアは、握手する。
「セキア殿、よくおいでくださいました」
「いえ、急なことで、恐縮です」
「さ、どうぞお座りください。今、飲み物を運ばせましょう」
「あ、父上、僕がやりますから」
カカナが立って、隣接する守護士の控え室に姿を消した。

改めて、セキアはブール候を見つめた。
セキアより確か十歳ほど年上だ。賢老士の中では、最も若い。
ブール家は代々、この迩史(にし)の街の賢老士を務め、名門の代名詞でもある。世襲制ではなく、住民の投票で決められるこの賢老士をこれほど長きに渡って拝命する家系は他の街にもなかった。
しかしながら、今、目の前にいる候とカカナ、ただ二人を残して、その家系は絶えている。そのほとんどが病による早逝であることを考えれば、賢老士の地位を持ちながら、これほど苔池の病に侵されている家系もまた稀なのだ。
だからこそ、カカナは多くの人に大切にされる。

「この度はクラフが、大変なことで。今回もその件でおいでですか」
いきなり、この話題を出すあたりに、ブール候の自信が伺えた。クラフのデンワのことを知らないのだろう。それとも、探りを入れるつもりなのか。
「ええ、そうです」
セキアは穏やかに答える。

「クラフが、この街に隠れている、とお思いですか」
「可能性が高いものですから。クラフさまが、唯一、那迦の街以外で来たことのある街ですから」
「前回は、ランドエンドに向かわれたのでしたね」
「はい。その節は、ご配慮、ありがとうございました」
「いえいえ、彼のおかげで、カカナも様々なことを学ばせてもらっていますし。カカナはいい友達だと、言っておりますしね」
「そうですか」
そこに、カカナがカップに飲み物を入れて運んできた。
「父上、本当に友達なんです。クラフは僕のこと、すごく慕ってくれています」
「おお、そうだね」
「ふ、クラフさまは人質ですが」
セキアが目を細めた。歯がゆい芝居に、いやみの一つも言いたくなる。
その言葉に、親子は一瞬、笑顔を曇らせた。

「セキア殿は、クラフを可愛がっていると、息子から伺っているが」
「それでも、人質であることに変わりはありません。今回の件で、逃げ出したクラフさまに、追っ手がかかっております」
相変わらず、怒っているのか笑っているのか分からない表情で、セキアはさらりと言った。
「…ほう」
ブール候は飲み物を引き寄せながら言った。
カカナは口をつぐんだ。
「あなたも、その一人、ということですか」
ブール候の緑の瞳が、いたずらっぽくセキアを見つめる。
「ええ。私はクラフさまに責任がありますので。始末は自分でしたいと考えております」
「穏やかではありませんな」
「仕事ですから」
そこで、二人は笑った。
カカナは、黙ってお茶を飲む。
二人の男が、笑いながらにらみ合っているのを、少年は感じ取っていた。


その後は、世間話になり、カカナの学校の成績の話に及んで、カカナは立ち上がった。
「父上、あまり長くお邪魔してもいけませんので、この辺で。セキアには、今夜うちに泊まってもらうつもりです」
「ああ、そうしなさい。私は、仕事が立て込んでいて戻れないが。セキア殿、あちらは普段誰も住んでいない状態なのでね、家を取り仕切るものは置いていないが、カカナはなんでもします、不自由は感じられないと思いますよ。どうぞ、ごゆっくり旅の疲れを癒してください」
「はい、ありがとうございます」

執務室を出ると、カカナが派手なため息をついた。
「父上の所に来て、こんなに緊張したの、初めてだよ」
セキアは、黙っていた。
「父上も仕事上は本音を明かさない人だけど、セキアも似たようなものだね。見慣れた光景だけど、さすがに僕も疲れたよ」
それでも、口を開こうとしないセキアはどんどん、歩いていく。
二つ目のため息と同時に肩を落として、カカナも歩き出した。


カカナの手料理は、美味しかった。クラフがよく、喜んで食べていた。たまに、同じものを作れとわがままを言われ、辟易したこともあったが、食べてみるとよく分かった。
カカナは、家のこと、父親とのこと、母親のこと、いろいろと話した。
セキアが無口だった分、気を遣ったのだろう。
代々賢老士を拝命する家系とは思えないほど、ごく普通の家庭的な匂いが、この場所にいるカカナからは感じられた。あの居酒屋で見せた、子供らしい表情。穏やかで機知に富み、気品漂う賢老士の子息という定評も、結局、勝手に周りが決め付けている印象に過ぎないのかもしれない。

セキアは、与えられた部屋で、ベッドに横になった。久しぶりに体を伸ばした。
一人ではない旅では、基本的に守護する立場。常に、気を張っていて、くつろいで寝ることなどなかった。
この広い邸宅を捜索するつもりはなかった。
ブール候のあの自信、ここには何の証拠も手がかりもないということだ。
「それなら、それでいい」
ポツリとつぶやいて、セキアは目を閉じた。
ほのかに甘い香の匂い。この邸宅に入ったときから感じていた。

<<応援が力になります!(>_<)>>

 続きはこちら!(^^)
「宙の発明家」第二章三.黒猫④
関連記事
スポンサーサイト

ユミさん(^^)/

ありがとうございます!
カカナくん、結局何も話せなかったですね。それは、いつか後悔するかもしれないけれど…。
知っているようで、親のことって知らないものです。特に、この年代は。カカナクンはピーシ君と対比して父親と親しい関係なのだけれど。それでも。
大人同士の争いには、口出ししにくいんでしょうね。
この後ますます、翻弄されますよ!
でも、そんな中がんばる姿が、若い子っていいなぁなんて。(^^;)

カカナ偉い!

カカナは、大事にされているからこそ、
父親を信じているのでしょうね~。

セキアとブール候のやり取りは、本当に緊張!
お互い腹の探り合いのような会話が何とも
いえませんねー。
わたしだったら、何か口を挟んでしまいそう。
穏やかな会話が訪れるのを待つのも得策ですね!

ホーリ先生

お久しぶりです!!らんららもすっかり宗像先生とご無沙汰していて…更新されたのかな?このあと遊びに行きます!

らんららの描写、褒めてくださって嬉しいです(><)
本当は、もっともっと煮詰めなきゃと思うのだけど。セキアさんには感情移入しやすいので、主体にして動かすのはやりやすい人です。(価値観が理解しやすいから)
変わりに、カカナクンの感情表現は控えめになってしまっていて。かわいそうな存在かな(^^;)
このあと、どう展開するのか。
ふふ。楽しみにしていてくださいね!!

chachaさん

カカナくん。きっと言いたいことはたくさんあるのでしょうけど…らんらら、ちょっと意地悪ですね。ブール候と話す機会を作ってあげなかった…いや、どちらかというとセキアが意地悪?(^^;)
セキアさん、みんなの期待通りに動いてくれるといいのだけど…v-392

プール候とセキア・・・
大人の駆け引きは息が詰まりますねぇ。
それを垣間見るカカナ。
これは疲れるわなぁ~。

さて黒猫が今後どう出るか?
これが問題だな!
セキアと黒猫、何だが激しく激突しそうな予感がしますが・・・

しかし「らんららさん」の小説、描写が旨い。
心の機微が手に取るように解かるんだもの。
凄いよ。ホント!

怖~~><

笑顔の下には何が・・・??
私もカカナと同じような立場で二人の話し合いを聞いていたら
もぉさっさと部屋を出ていきたくなりますよ~@@;(笑)
ブール候のこの自信は一体どこからくるの・・・?クラフはもう別の所に行ったのかな;;

それにしても、カカナは本当にお父さんを信じていて、それが逆に辛くなります。
カカナも、辛いんだと思います。
全ては真実がわかれば、長く苦しむこともないのでしょうね><

何とか無事クラフが救出されることを祈ってます!みんな頑張って!!☆

コメントありがとう!

kazuさん
緊張感、出せました?良かった。
ここでカカナが悪い子なら、ええいとセキアもクラフも裏切って父親に従うんでしょうけど…そうは出来ないくらい、仲良しになってしまっているんですよね。
アメリカからの使者…彼らがどう、影響するのか。ふふ。
もうちょっと待っていてねー!

アポロちゃん
鋭いポイントを!
セキアさん、あんまり意識してないけど、ちょっとヤキモチですねv-390
冷静そうでいて、実はそうでもない。まだまだ、ブール候みたいなオトナにはなりきれていないのかなぁ…
そうね、セキアとクラフの、あの、楽しい会話…今後あるのかな…

楓さん
ありがとう!
楓さんのコメントを読んで改めて、自分の書いたストーリーの状況をどう把握してもらっているのかが分かって、らんららも勉強になります!
伝えたいことが、伝わっていると分かると本当に嬉しいv-344
そうですね、いろいろと事件は起こりそうなんですが…まずは、クラフくんに集中しなきゃ、ですね!!

火花バチバチですね。
セキアさんはブール候がクラフ君を誘拐したことを知っている。一方のブール候はいったいどこまで知られていると分かっているのでしょうか?恐らくセキアさんの態度から、全てばれていると分かっているんでしょうね。きっと。
それにしても、ブール候の自信が怖い。いったいクラフ君は屋敷からどこに連れ去られたんでしょうか?それと、穏やかで、皆に慕われているブール候があれほど取り乱し飛行機を作れ、時間がないとクラフを締め上げるシーンが脳裏をよぎります。何をそんなに焦っているの?もしや苔と関係が?それともアメリカの使者?ううーん、何とも気になります!!
カカナ、結局仲介に徹してしまって、自分の気持ちをブール候に伝えることはできませんでしたね。聞きたいことは山ほどあるはずなのに。信じたい、いや信じている・・・でも何だ、この胸の苦しさは・・・もうこうなったら、何はさておきクラフ君を捜し出すことだけに集中するんだ!!セキアさん、カカナ、頑張って!!・・・と、勝手に盛り上がって話作って楽しんでいます♪

うぅぅぅ(><;

アポロも緊張したぁ。大人のやり取り怖いぃ。灯り・・・セキアってばやきもちやいちゃう?うふふ。
あ~クラフとセキアの会話が恋しい・・・。

おはようございます♪
笑いながら・・・、表面上は冷静を保ちながらの駆け引きは、本当に緊張しますね。
セキア様とブール候。
執務室を出た後、一言も話さなかったセキア様。
挟まれていた感のあるカカナ君は、辛かったでしょうね。
アメリカからの使者が来ていると知ったときのセキア様は、一体どうなってしまうんだろう。
そしてクラフ君たちは・・・?
考えるだけでドキドキしちゃいますね。
更新楽しみにしています☆
Secret

プロフィール

らんらら

Author:らんらら
のんびり小説を書いています
日記ブログはこちら♪

ランキング参加中です♪

クリック よろしく~♪

FC2Blog Ranking

最近の記事+コメント

FC2カウンター

リンク♪

小説ブログの皆様

カテゴリー

ブログ内検索

RSSフィード

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。