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「宙の発明家」第二章 三.黒猫④

ふいに、思い出した。
「彼女と同じ、だ」
セキアは過去、クラフの世話をともにした女性を思い出した。若くして、病で亡くなった彼女は、いつもこの、甘い香りをさせていた。十年、たつ。
覚えている自分に、少し笑みがこぼれる。



闇に包まれる室内で、天井を見上げる。
闇に乗じるもの。
それは、自分も同じ。

セキアは大教皇付きの黒猫でもあった。
セキアが密かにクラフの世話をしている、そのこと自体、すでに黒猫の仕事だった。表の顔と違う顔を持ち、夜の闇に紛れ、公に出来ない仕事をこなす。
黒猫の説明をしても、そこまでカカナは思いが至らなかったらしい。

ぴぴ。
小さな音。
慌てて飛び起きて、セキアはデンワにでた。
「はい、大教皇様」
『セキア、いつ聞いてもよい声じゃ』
大教皇の口調はいつ聞いても呑気、いや穏やかだ。
「…あの。ご用件を」
『おお、そうじゃ、くーちゃんは見つかったかのう?』

「やはりブール候の別邸のようです。カカナ様は、すべてご存知です。明日向かう予定です。黒猫が放たれたようですが、何かご存知ですか」
『ふむ、さすがじゃの、セキア。セクトールの配下のものじゃろう。ピーシがくーちゃんを保護してほしいと訴えたのじゃ。セクトールがどう出るかは分からんが。それでの、ピーシは今、わしの所におるのじゃが、そちらに行くといって聞かなくての』
「…申し訳ありませんが、大教皇様」
『うむ、分かっておる、お前には余計な荷物になる。分かっておるのじゃが、のう』
「?大教皇様、まさか…」

『その、リスガも、うるさくてのう、わしは』
「リスガ様に甘いです」
『セキア』
「私は聞かなかったことにいたしますので」
『セキア!』
「ピーシ様には、お父上のそばにいるべきだとお伝えください。その意味が分からず、行動も伴わないようでは、とても、お父上にはかないませんと」
『ひどいのう…』
「ひどいって、どちらがですか!」
『お前ほど、強くはなれんぞ、ピーシもまだ、子供じゃ』
「では、子供のご機嫌くらい、とってください、大教皇様」
『わしも…』
「皆で来られたら迷惑です!それでは!」
無理やりデンワを切って、セキアはため息をついた。
緊張感が、なさ過ぎる…。
セキアは、デンワを見つめる。
ピンクのリボンが、手の中でくしゃくしゃになっていた。
今、初めてそのことに気付いた。
慌てて、結びなおそうとするが、暗闇では上手く出来ない。
苛立って、思わずリボンを投げ捨てた。

「私にはあれほど我がままを通すくせに」
ふと、ため息を一つついた。
「肝心な時に、なぜ、甘えてくれないのですか…」
デンワを、握り締めた。

手元のカバーをあけた。クラフの頭文字、Cを見つめる。月明かりに、銀色のそれは冷たく光る。昼間の光で何がしかのエネルギーを蓄えると言う。背の部分はうっすらピンク色に光る。リスガのためのピンクが、嫌に眩しい。
こちらからの連絡は、禁じられた。
しかし。
セキアは動くつもりでいた。
布石を打ったからには躊躇してどうする。
そのために、ブール候にクラフの追っ手がこの街に来ていると伝えたのだ。
クラフの連絡を待つつもりもあったが。時間は、過ぎていくばかりだ。

セキアはCのボタンを押した。
耳にデンワを当てる。
何の音もしなかった。
「!」
デンワを開発していた時、まだ不通のデンワが、こういう状態だった。通話可能であれば、違う音がする。それを思い出し、セキアは不安に駆られた。
…クラフさまのデンワ、もしや使えなくなっているのでは。
…クラフさまは連絡したくとも、出来ない。
もう、じっとしていることは出来なかった。
昼間、カカナを伴って黒猫と対峙するのが危険なこともあって、ここに非難させた。様子を見るのはカカナのためでもあった。カカナがいなければどうとでもなる。


密かに抜け出し、セキアは馬を走らせる。
まだ、日が暮れて二時間ほど。それでも、寝静まった街は、セキアの馬のひづめの音だけが響く。
そのうち、セキアは音が一つだけでないことに気付いた。
黒猫。それでもいいだろう。
風を切って走る。視界には満天の星空が揺れる。
カカナの言った郊外の別邸までは、一時間ほどでつけるだろう。
そこに、クラフさまがいて、救い出せれば暗いうちに街に戻れる。安全を確保できる。

しばらく走ると、町並みはなくなり、畑の続く丘陵地だ。暗闇でも、セキアは方角が分かる。クラフの教えてくれた北の一つ星と、もともとの黒猫として働いていたときの勘。
夜目も利く。
小高い丘の頂上。糸杉が三本並んでたっているところまで来て、セキアは馬をとめた。
背後から続いていた、もう一つの蹄の音も止まった。
身を隠す場所のないここでは、月明かりに黒猫の姿が浮かぶ。顔までは見えない。
距離は十馬身、というところか。
「黒猫どの」
静まる夜の畑、糸杉の陰に隠れるでもなく、セキアは声をかけた。
「もし、目的が同じであれば、手を組もうではないか」
黒猫の影は、ゆっくり近づいてきた。
「セキアさま、ご協力いただけると申されるか」
「そちらの目的次第だ」
男の影はもう、すぐそばにある。体格、腰の剣、物腰、セキアは目を細めた。使えそうだ。
「候は、すべてを元のように、とお望みです」
候、とは、セクトール候のことだろう。
「では、救出のみ、と考えてよいな」
「はい。可能であれば」
「分かった。協力しろ、お前、名は」
「キタキと、申します」
キタキと名乗った男は、穏やかに笑った。

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 続きはこちら!(^^)
「宙の発明家」第二章三.黒猫⑤

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tag : 小説 冒険 少年 ファンタジー

ミナモさん♪

キタキ、そうなんです~ここに登場♪
おお!?セキアさん、そういう趣味でしたか(笑)
なんて、でも確かに~。
実は原案を考えた時に、クラフ君を女の子にするという選択肢がありました。そうすれば、思う存分セキアさんとラブラブにできると。恋愛関係にしてしまえば深みも増しますし説得力もある。
ただ、過酷なときに可哀想なのと(基本、女の子が暴力を受けるのは大嫌いです!)発明という男の子要素もあって。テーマも三組の「父と息子」という感じですので。
頭の中で「ラブラブ」妄想しながら楽しんでください♪
(投稿するなら改稿して女の子にしなきゃと思ってもいます…^^)

キタキかっこいい~♪

いやいや、私も萌えっちゃいました(汗)

黒猫って印象が、もっと悪なイメージでしたから、まさかキタキだなんて、思いもしなかったです。

セキアのクラフに対する感情・心配。

何だか、男女のそれに見えてきました。
(私だけ…???)

クラフ救出に向けて、是非是非頑張ってほしい~。

楓さん

いえいえ、気にしないで!らんららもよく忘れます。
そう、今となってはかなり昔のあのエピソード、こんなところでつながりましたf^_^;わすれられてもおかしくないです(^o^)
正直、らんららも推敲しながら、追加したんですから!緻密だなんてありえないです(@_@)

しもたぁぁぁ!!!

思い出しました。
読み返して「おおお!そう言えば!」って・・・
すみません記憶力悪くて・・・(汗
いかんですね。ちゃんと読んでいたつもりがこれでは・・・せっかく冒険物語のイラストまで描いてくださっているというのに・・・あまりの申し訳なさに一気に凹みモードです。うぅ。
それにしても、そうでしたか・・・ここで再びこのエピソードが出てくるとは、何と巧みなプロットがそこかしこに配置されていることか!!と改めてらんららさんの緻密さに感心してしまいます。って、気付かなかったのは僕だけ???滝汗

ふふ。楓さん(^^)

10年前。
セキアの知っている。
クラフの世話を一緒にした、女性。
彼女のこと、セキアさんはちょっと、スキだったですよ。
クラフは、彼女からお花もらっていたです。
「世界の果て」の序盤あたりかな?
気になったら読み返してみてください。
らんらら、今日は遅い時間から夕食で、食べ過ぎて、いまちょっと、消化不良気味。
気持ち悪いです…(><)ダウンです。
バドミントン、やりすぎ?それとも、飲みすぎ…??

こんばんわ!

こんばんわです♪
キタキの事で頭一杯になってしまってて、すかり吹っ飛んでしまっていたんですが、もう一度読み返してみると、冒頭の「彼女」って誰よ?って・・・
10年前、甘い香り・・・それってカカナの・・・?ちゃうですかね???

楓さん

うーん!慎重な読み!!さすが!
キタキは、セクトール候の命令できていますので…。言葉どおりかどうかは、本人しか分からないという…。
そのあたりも承知で声をかけるセキアの考えもまた、一筋縄ではいかない気が…。
おとな、ですから。
それにしても、キタキ、みんなの期待を背負ってしまった…そのあたりはらんらら、ちょっと予想外。(やけに人気あるぞ…^^;)
キタキとピーシ。二人の関係はどうしてもセクトール候がからみます。ふふ。
楽しみにしてくださいねv-344

アポロちゃん

セキアに萌え萌えですかv-344
らんららもそんな気分でうきうき書いてます!!
クラフくん救出。上手くいくんでしょうか!!キタキは本当に、味方になるんでしょうか…。
ふふふ。お楽しみにv-392

キタ━━━━(゚∀゚)━━━━━!!!

キタキ来たぁ!!
そういえば、キタキさんとピーシ君の関係ってセキアさんとクラフ君の関係に似てるって書いたことあったような気がしたんですが・・・・
ここまで似てたのかぁぁ!!
そして、キタキさん人気高けぇぇ!!!
ま、僕もその一人ですが(笑

もし、セクトール候の狙いがクラフ君をモトサヤに戻すというのならば、セキアさんの言うように、他の者は動かない方がいい。事を荒立てて明るみに出れば、決して元通りにってわけにはいきませんからね。それを分からない大教皇様でもなかろうに・・・何を考えてらっしゃるのやら。セキアさんの苛立ち、最もですね。

しかし、あのセクトール候がキタキさんを遣いに出すと言うことは・・・もしやピーシが思うほど、セクトール候は居丈高で冷酷なだけの政治家ではない、ということなのでしょうかね。それともキタキさんこそくせ者?・・・いかんいかん、いつもの悪い癖ですね(汗

(゜∀゜人 わぁい

キタキこんなところで登場!
びっくりした!
やヴぁいですよ。萌え度倍増ですw
電話が通じなくて不安状態のセキアの行動。かっこいい。
ほんとらんららさんのキャラにアポロ萌え死にしちゃいますょぉ。
さぁクラフ君救出大作戦だぁ!!
がんばれ~(>∀<)

kazuさん

セキアさんと大教皇、いいコンビですv-345
皆さんがこの会話を褒めてくれるので、思わず、セキアの若い頃って、どんなだったろうと、想像しちゃいました!
さて、このあとどうなるのか…。
うーん!上手く描けているかな!!どきどきですよ!
kazuさんを満足させたい!!v-42

chachaさん(^^)

キタキ、ポイント高いですね!
ふふ。
裏切らないでね…思わずドキとしました。
いえ、彼は実直な人です(^^)
いろんな意味で…。

大教皇、相変わらずです!彼がいると場が和んで。セキアにはちょうどいい上司ですよ!!

キタキさんが、きた!!
キタキさん、いいですね。
セキア様と共に、クラフ君助け出してください!!

chachaさんと同じく、大教皇様のセリフで噴出しました。
みんなできたら、迷惑です・・・。
セキア様、大教皇様に向かって(笑
それほど、セキア様がクラフ君の事で思いつめてるってことですよね。

肝心な時に、なぜ、甘えてくれないのですか

セキア様の、心の叫びに聞えます・・・。

キタキ~~!

キター!(あ、シャレじゃないですよ笑
この人、ピーシの話の時、好きになりました^^
すっごくイイ人!しかも・・・泣かせてくれた人でもあります;;
セキアと一緒にクラフを救ってあげて!キタキさん!><
裏切らないでね!(笑)

セキアと大教皇様のデンワ、笑いました^^
あ、ごめんねセキア、セキアは真剣なのにね(笑)
大教皇様が「わしも・・・」って言った時特に笑いが^^ぷぷぷ。
でも、みんながクラフを助けたいと思っていることがとってもわかります。
心配しているんだよね☆
ここはひとまず、セキアとキタキさんに任せて・・・
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