10
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
   

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

「宙の発明家」第二章 四.飛行機、友達、クラフ①

合流したキタキ。二人の黒猫は、クラフを救い出せるのでしょうか…

郊外の家は、小麦畑に囲まれた、のどかな村にあった。回りには民家は見えない。
まだ、緑色の穂が風にざわとうなる。
月明かりがそれを照らし、まるで寄せる波を見る思いだ。
クラフは、窓から、家の周りを眺めていた。
(外を見ても目印があるわけではない、これじゃ、どこだ、なんて指定できない。本当に、バカだな、セキア)
そんなことを考えながら、家の周りに見える、見張りたちを数える。
増えていた。館の中の各部屋の鍵を、クラフがすべて開けてしまった事で、ブール候は館の外の警戒を増やしたのだろう。今、クラフのいる部屋には、鍵がかけられてはいない。
昼過ぎにブール候が出て行ってからは、家の中はクラフ一人きりだった。
二階の部屋、今は月明かりだけの部屋で、クラフは再びベッドに横になった。
抜け出すことは出来る。だからといって、それが何になるのか。
クラフにとって、あの離れにいた時となんら変りはない気がした。ただ、セキアがいないだけだ。一人ぼっちなだけ。



ブール候は半年で飛行機を造らせようとしている。否定しても殴られるだけだった。あきらめて、必要な材料だけ伝え、とりあえず「もえ玉」と火薬を組み合わせた小さな爆弾を、提案した。
随分喜んで、ご機嫌で昼過ぎに戻っていった。
実験用の爆弾の試作品は小さなものだった。それでも、人に向けて使用すれば殺傷能力がある。そんなもの、本当に作るつもりはない。試作品をいくつかだけだ。本物と称して他は燃えないようにしておけばいい。ブール候はあれを飛行機に積んで、投下するつもりらしい。

折角だからと、午後からクラフは自分のためのもえ玉製作を始めていた。
ぺたっ葉もあると便利だけれど、材料がそろわない。
作業をするために一階の居間はソファーも何もかも隅に追いやって、代わりに地雷のように赤いもえ玉が並んでいる。乾くまでは、柔らかいから、手で拾うのもコツがいる。
乾かすのに一晩かかる。
もし、今ブール候が来たら、驚くだろうな、そんなことを想像して、クラフは少し笑う。
悪戯したくなってくる。以前、カカナもそれで慌てた。いつもニコニコしていたカカナを怒らせることが出来た。
わくわくしてくる。
「来ないかなぁ、おっさん」
眠れなくなってきて、暗闇の天井をボーっと見つめる。
何か音がした。クラフはまた、窓辺に駆け寄る。
ちょうど、家の前に、馬車が停まるのが見えた。ブール候だ。
「やった!」
嬉しげに、部屋を飛び出し、廊下の吹き抜けから下の居間を眺める。
ランプの灯りが近づいて、扉が開かれる。
樹脂の匂いと一面の小さな赤い玉に、男は立ち止まる。
それから、見上げた。
クラフのいる廊下から、階段が居間に続いているが、階段の下にも、もえ玉。
「見てみて、たくさん作っただろ!」
「クラフ、コレは何かね、ひどい匂いだ」
ランプを掲げてクラフの顔を見ようとしながら、ブール候は顔をしかめる。
「もえ玉っていうんだ。踏むと危ないから、だめだよ!こっち来ちゃ」
面白そうに笑う少年に、ブール候は足元の一つをつかんだ。
「あ、危ないってば」
赤い小さな玉は軽く握るとボロリと崩れ、ぼう、と小さな炎を発した。
「おお!」男は思わず叫ぶ。夜の闇にもえ玉の炎は白く光る。昼間見るよりずっと、大きな炎だ。
あははは!
吹き抜けの居間に響く少年の笑い声に、男は黙り込んだ。床の敷物のこげる匂いと煙が、暗闇の室内に漂う。
火傷した手を、ランプの明かりで見つめる。そして、見上げた表情が、ひどく恐ろしいものであることに、クラフはまだ気付いていなかった。
「明日になれば固まるからさ、今日は帰りなよ」
クラフは、フェンスにもたれかかって、見下ろす。男は部屋を出て行った。
「へへ」
クラフが、満足して、自分の部屋に戻ろうとした時だった。
ガシャン!と派手な音。
見ると、再び居間の扉が開かれ、ブール請が大きな花瓶らしきものを階段の下あたりに投げつけたのだった。
水が入っていたらしく、一瞬燃え上がったもえ玉もすぐにジュウと変な音を立てて消えた。
「あ…」
濡れた床を大またに抜けると、男が駆け上がってくる。
慌てて、クラフは部屋に逃げ込んだ。扉を閉めて、押さえようとするが、扉ごと突き飛ばされた。
「って、ひどい…」
言い終わらないうちに殴られる。
胸ぐらを掴まれて、数発。
気づいた時には、床に転がっていた。
ブール候は、クラフを見下ろし、息を荒くしている。
「ふざけるな、この家で、悪戯など、許さん」
「…」
「お前は、ただ言われたものを造っていればよいのだ!今度余計なものを造ったらただでは済まさんぞ!」
クラフは、じっとしていた。
男は、クラフの手を縛ると、そのまま床に転がし、部屋を出て行った。
「ちぇ…」
小さくつぶやく。苦い血の味に、少しむせた。
月明かりに、犬の形の毛皮が、照らされる。まるで外の麦畑みたいに毛皮がうねっていた。そこに、鈍く光る、デンワの残骸。昨日踏み潰されたそれを眺めて、クラフはまた、ため息をついた。

ブール候は、奥の寝室にこもって、何かしているようだ。昨夜も、そうだった。
クラフが昨日の昼間入り込んだとき見た、あの部屋は、とても人がくつろぐ場所ではなかった。それなのに、ブール候はそこで夜を明かす。
「変だよ、カカナ。お前のお父さん、変だ。どんどん、変になっていく気がする。まるで、何かに追われているみたいだ」
カカナはきっと、分かっていない。けれど、知らせる方法が今はない。
あちこち痛い体を起こして、クラフは縛られた手で、朝に備えてカーテンを閉める。目が覚めたときに日がさしていては、眩しくてたまらないからだ。窓辺に立って、一瞬、空を眺める。

「!クラフさま!」
遠くから見つめる建物の窓に、少年の姿を認めて、思わずセキアは立ち上がりかけた。
隣で肩を抑えるキタキ。
「セキア様、だめです。今は、まだ」
「しかし!」
次に見たときには、カーテンが閉められ、少年の姿は見えない。
「落ち着いてください。本当に、ピーシ様のおっしゃる通りですね。聖守護士であり大教皇の黒猫でもあるセキア様も、あの子供には弱いのですね」
「!別に、慌ててなどいない!」
「今は、中にブール候がいらっしゃいます。警備も厳しい。待ったほうがいいでしょう」
不満そうに、腰の剣に手を置く聖守護士を、キタキは抑えた。
「…キタキどの、ピーシ様をご存知か」
「…ええ。いずれ、お仕えする方です」
キタキが目を細めたことに気付く。
「…セクトール候は、長兄のセレクさまを後継に推していらっしゃると聞いたが」
「さて、そうかもしれませんね」
ふふと、含んだ笑いをするので、セキアはキタキを睨んだ。
「気持ち悪いな、お前」
「いえ、あなたほどではありません」
「何がだ!?」
「どんなお立場であろうと、守りたくなる相手に出会えるのは、幸せなことだとそう申しております」
「…、意味が分からん」
ふんと、鼻息を一つ吐き出して、セキアは、キタキに背を向けた。
自分より少し年下の、それでも身分はずっと上に当たる青年の背を面白そうに見つめてキタキは微笑む。
少しだけ、おいてきたピーシの顔を思い浮かべた。
苦々しい顔をして。それでも、納得してくれた。

<<応援お願いします!↓>>

 続きはこちら!(^^)
「宙の発明家」第二章四.飛行機、友達、クラフ②
関連記事
スポンサーサイト

いらっしゃーい(^o^)

アポロちゃん、忙しいのに遊びに来てくれてありがとー♪
クラフくん、頑張ってるでしょ?
誉めてやって、誉めてやって(*^_^*)

(;▽;)やっと会えたぁ

いやはや。私がクラフ君にね☆
ブール候怖い。でもクラフくんナイス☆と思ってしまう私。
なんだか私のもやもやがクラフ君で救われた感じです^^
また続き読みにきますね!!

楓さん

イラスト、喜んでいただけて嬉しいです(*^o^*)
ええ、やはりメラニスさんにはかなわない…f^_^;
さて、いよいよ救出!何か起こる…その通り。期待に応えなくちゃ!ふふo(^-^)o

ええ、たぶんメラニスの方が怖い(笑

こんばんわ。
軽く噂の楓です♪イラストありがとうございました!!何度でも言わせて頂きます!!!
で・・・ブール候。
時間がない・・・って言ってましたし、やはり何かに追われているんでしょうね。最近そのことばかりが気になっています。
表の顔とクラフに向ける顔のギャップもまた印象的で、早く真実が知りたい!!!でも、きっと何か事情があるんでしょうね。カカナの事を思うと、まったくの悪人ではないはずだと、僕も強く願っています。ええ、ええ、きっとメラニスの方が遙かに怖い人間なはず!!!そうであって!
いよいよ救出劇・・・
これまたどんな展開になるのか、興味津々です。ブール候が寝静まってからこそっと・・・巧くいくんでしょうか?何となく何か起こりそうな予感が・・・

chachaさん

そう、メラニスさん、こわいですね!v-12
ブール候はそこまで怖くないです、多分(笑)クラフくんはちょっと痛い思いしてるけど…なんて言うとセキアに怒られそうですねv-398
この二人の黒猫。
次回、クラフくん救出なるか?
ふふ。
期待を裏切らないように、がんばります!!v-411

花さん

ふふ!花さんにそういっていただけると嬉しい!!キタキ、セキア。二人は似ていますよ。キタキのほうが、ずっと達観していますが(^^;)
きっと、ピーシの小さい頃から、じっと見守ってきたんです。
さて。
次回、ええ、救い出しに行きます。
ブール候もますます活躍(?)しますよ!

こ、怖い@@;

ついさっき、楓さんの所でメラニス怖いなぁ~と思っていたら・・・
こちらでもブール候がめっちゃ怖いです(泣)
でも・・・一体何があったんだろう??追われてるようだ、ってクラフが感じたみたいだけど・・・??
何かありそうですね><

それと、やっぱりデンワは使えなくなってましたか。踏み潰さなくってもいいのに!どんどん変になっちゃってますよ、本当!

セキアとキタキ、いい関係なのかな?それとも・・・
キタキはピーシに仕える気でいるみたいですね^^
「守りたくなる相手に出会えるのは、幸せなことだ」
温かくって力強い言葉ですね^^
言われた当人達が羨ましいです☆
セキアの動揺ぶりには毎回笑わせていただいてますよ~(笑)微笑ましいです。

いよいよ救出か!?
楽しみにしてます^^

あぁ、久しぶりになってしまったけど、もう大好きだ!セキアさんもキタキさんも。
守りたいと思える人に出会えるってことは、幸せなこと。ウンウン、そうだよね。キタキさんもセキアさんも似たもの同士なんだ。ただ、キタキさんは自覚して、セキアさんは自覚してないってだけで。
ブール侯の横暴にも、今はしぶしぶ目を瞑ろう。うん、きっと次回、2人が力を合わせてクーちゃんを助けてくれるもんっ。
「肝心な時に甘えて下さらないのですか。」
セキアさんの微妙な親心に、たまらずポチして帰ります☆
Secret

プロフィール

らんらら

Author:らんらら
のんびり小説を書いています
日記ブログはこちら♪

ランキング参加中です♪

クリック よろしく~♪

FC2Blog Ranking

最近の記事+コメント

FC2カウンター

リンク♪

小説ブログの皆様

カテゴリー

ブログ内検索

RSSフィード

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。