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「宙の発明家」第二章 四.飛行機、友達、クラフ②

■■二人の黒猫。その、真意は…■■


「行くぞ」
セキアは潜んでいた小麦畑の中を、低い姿勢のまま走り出した。
「セキア様?」
「ブール候はお前が来ていることを知っている。わざわざ目立つのに馬車で来ただろう?明日にはクラフさまをあれで移動させるつもりだ。時間がない」
「…ブール候にお会いになりましたね」
「ああ」
麦畑の切れ目で、一度止まる。
「わざと、ほのめかしたのですか?われ等の存在を」
「さて、な」
セキアはふんと笑った。



「何を、お考えですか?」

答えないセキアに、キタキはため息混じりに言った。
「ブール候を、動かして、クラフに接触させるために、ですね」
「知りたくはないか?何ゆえ、クラフさまを誘拐するのか…ブール候程の方が、このような危険を冒す理由を」
キタキは言葉を発しなかったが、同意を得たとセキアには感じられた。

黒猫としての彼らには、情報を得ることも任務の一つだ。
何事もなかったかのように処理したいと願ったのは、カカナ。それは彼の都合であって、セキアのものではない。
カカナが願う方法を取ると、セキアが約束したわけでもなかった。
セキアは最初から言っていた。
クラフを救い出す。ブール候が抵抗すれば、それなりの行動をとる。その考えは変わっていない。

そして、ブール候が誘拐した理由が何であるのか。それは、今後の政治的な動向に影響を及ぼす。なかったことにするのは可能でも、知らなかったことには出来ない。
黒猫であるが故。
キタキも、それは同様だった。


二人は別邸の敷地を囲む大人の背丈ほどの塀を、裏からそっと乗り越える。
裏口に見張りとして立っていた騎士を、すばやくセキアが倒す。
躊躇のない行動に、キタキは少し呆れ顔で、それでもついていく。
裏口を強引に破り、セキアは丁度、キッチンの前に出た。捨てられた皿が、山積みになっている。洗っていないために、食べ物の匂いが漂う。
一瞬顔をしかめ、鼻に手をやりかけて、ふと胸から下げたデンワの存在を思い出した。今、鳴ってしまっては困る。
そっと、床に置いていく。

「この、匂い、なんでしょう」
キタキが、顔を赤くして声を出さずにむせていた。

「足元に、赤い玉があったら、気をつけろよ」

セキアの言葉に男は首をひねる。
静かに大理石の床を進む。キッチンの扉を開くと、向こうはダイニング、さらにその向こうに、暗がりの広い部屋が見えた。
二人が進むにつれ、匂いはひどくなる。セキアにはかいだことのある匂い。そして、それに、何かのこげる匂いが混じる。

冷え切った夜の空気。静まり返って、何の音もない。
ダイニングを過ぎて、居間に足を踏み入れた。ぼ、と明るい炎が足元に上がる。
キタキが気付かずにもえ玉を踏んだのだ。
「!」
さすがに黒猫、声を出さないキタキに、セキアは目を細める。
一瞬の炎の灯りの中、床一面の赤い玉が見えた。
それの造る長い黒い影が床をはって、キタキはぎょっとした顔をしていた。

セキアは、そっと、足元の赤い玉を触ってみる。
かなり固まってきているようだ。
そっと、手に取る。
キタキがその様子をじっと見詰めている。
セキアがそれを、少しはなれた場所にそっと置くと、キタキも足元の一つを同様に動かす。
二人はもえ玉地雷原の中に、一筋の道を作りながら、進む。

階段下の割れた花瓶をよけて、二階へ。
吹き抜けの天窓から、月明かりが二人の影を廊下に落とす。
館内に警備がいない様子に、セキアは案外簡単だと感じていた。
確か、外から見えた、クラフさまの部屋は、ここ。
鍵はかかっていない。

そっと、扉を開いた時だった。
ぴぴぴ!

階下で、置いてきたデンワが鳴り出した。それは静寂の中に響く。
がたんと、奥の主寝室で音がする。
二人はさ、と室内に滑り込んだ。デンワの音のほうへ、廊下を走り去る足音。扉のかすかな隙間をランプだろう、灯りが一瞬走った。
キタキがまず窓のカーテンを開けた。セキアは月明かりでベッドを確認して、眠り込んでいたクラフを抱き起こす。
「!え?」
「クラフさま、私です、お静かに」
セキアは、縛られた少年の手首を、鋭いナイフで開放しながらささやいた。
「キタキ、お前はクラフさまを連れて逃げろ。私はブール候に用がある」
「…セキア様、独り占めは困りますよ」
キタキの視線が鋭くなる。キタキの手は懐に。ナイフを潜ませていることをセキアは見抜く。
「ふ、素直に目的を言うはずもないと思ったが…クラフさまを手にかけるなら、ブール候との話し合いが済んでからにするがいい」
セキアが目を細め、クラフを自分の背後に庇う。
「もちろん、そのつもりでございます」
キタキの丁寧な口調に、クラフはぞくぞくする。
二人の黒猫がにらみ合ったときだ。

ダン!と、派手な音に続いて、扉が開かれ、小さなランプを持った男が立ちはだかった。
「逃がさんぞ!」
ブール候だ。階下から、警備の騎士が駆け上がってくる音が聞こえた。たまに、わーと叫ぶのは、もえ玉を踏みつけたのだろう。念のために階段にいくつか置いてきていた。

「ブール候、セキアです。あなたの今回の所業、今なら黙って見過ごします。クラフさまは返していただきます」
セキアの落ち着いた声に、ブール候はランプを高く掲げ、にらみつけた。

「やはり、そのために来たのか」
「外の騒ぎを静まらせてください」
「だめだ、クラフは必要だ。返さん。ここだ!」

ブール候の声に、警備兵が飛び込んでくる。あっという間に、室内の半分を埋めた男たちに、セキア、キタキ、クラフは囲まれている。

「怪我をさせたくない、クラフをこちらに渡すのだ」
「何ゆえ、飛行機にこだわるのですか!あなたほどの方が、こんなことをして何の意味があるのか、何を失うのか、お分かりでしょう?」

セキアの声に一瞬、囲んでいる兵がひるむ。
明かりのない室内は、ランプを掲げ持つブール候の表情しか分からない。まるで唯一の神のようにその姿は力強い。

「私は、すべてを一つにするのだ。この世界をな。そのために、クラフの発明は必要なのだ。よいか、子供は傷つけるな、後は…殺せ」
候の低い声に、兵が飛び掛ってきた。
セキアはクラフをベッドの上に押しやると、キタキと二人で背後に庇う。
ナイフで一人、二人と応戦する。三人目の時には、腰の剣を抜いた。

「セキア、強い!すごいぞ!」

興奮して、嬉しくなって、ベッドの上のクラフは時折捕まえようと手を伸ばしてくる警備兵に枕を投げたり、蹴りつけたりして応戦する。暗闇では夜目の効く二人の黒猫、そして室内を把握しているクラフに分がある。
一人の鼻先に蹴りが決まって、嬉しくなってもう一人、とクラフが身を乗り出したところを、他の兵に足をすくわれた。
転んで、足首を捕まえられた。
「わわ、セキア!助けて!」
シーツにしがみついて、クラフは叫ぶ。

セキアは手にしていたナイフを投げつけ、クラフは返り血を浴びながら、青い顔をしてベッドの奥に逃げ込む。セキアは既に何人倒したのか、室内はごろごろと兵が横たわる。
残っているのは今、キタキに切り付けている男ひとりになった。
その背後に、ブール候が立っている。手に持った何かに、ランプを近づけた。
「!?」
クラフは彼の手に、小さな丸くて黒い、試作の爆弾があることに気付いた。
「セキア!危ない、ふせて!」
言うなり、毛布を掴んで、ブール候に投げつけた。
候が爆弾を投げつけたのと同時だった。
毛布は爆弾を抱え込んだまま床に落ちた。導火線の火にぬらりと燃えあがる。クラフがさらに上から枕を乗せようと、枕を掴んだ瞬間だった。

ドン!
一瞬の閃光。
空を裂く音に、真っ白な煙。

ばらばらと、何かが崩れている。ベッドの天蓋がギシリと軋んだ。
クラフはぐんと腕を引かれた。
ベッドの奥の壁にもたれて座り込んでいた。壁にぶつかったのか、頭がくらくらする。耳は反響音を残したまま、使い物にならない。幸い枕が背中辺りにあって、怪我はしていない。
「あ、セキア…」

無理やりベッドから引き摺り下ろされて、相手が違うことに気付く。
「来い、お前は、逃がさん」
千切れた毛布が、ブール候の肩に貼り付き、燃えて火傷したのだろう赤くただれた皮膚が破れた服からのぞく。

割れた窓、崩れかかった壁。月明かりがやけに青く照らす。
セキアは、床に倒れていた。
その向こうに、もう一人の仲間の男。

「せ、セキア!」
叫ぶと、セキアが少し動いた。
夜風がふわりと、室内にこもった火薬臭い煙を揺らす。
ブール候もセキアが動いたことに気付いた。
剣を構えて、腕にクラフを捕まえたまま、動けずにいる聖騎士に近づいていく。
「セキア、セキア!逃げろ、セキア!!」
クラフがどれだけ名を呼んでも、セキアは上手く動けない。キタキがセキアの前に這い寄って、折れた剣を構えた。
やっとセキアは膝をつき起き上がると軽く頭を振る。まだ、聞こえていないようだ。
「止めろ!おっさん、止めろよ!」
クラフが空いている手でブール候の剣を持つ手にすがりつく。膝蹴りを食らって、動けなくなる。
「…つ、やめろ!俺、何でも作るから!セキアを殺すな!!…お願いだから!」


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 続きはこちら!(^^)
「宙の発明家」第二章四.飛行機、友達、クラフ③
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kazuさん
難しい展開です(><)書くのも大変だった…コレで上手く収まりがつくのでしょうか!!
どきどきです!
セキアさん、kazuさんの祈りにちゃんと答えますよ!

chachaさん
そう、爆弾、作らせといてそこで使うか!?って感じです!(^^)
クラフくん、こんなときにはぜんぜん役に立ちませんね…こんな弱い主人公初めて書きました。この場面になって、「つ、使えない」と愕然としてしまったv-12変わりに、セキアさんががんばってくれるんだけど…。
どうなるでしょうか!

楓さん
キタキさん、人気高かっただけに微妙な状態です(^^)
黒猫ですもん、信じちゃダメよv-345
そうですね、カカナにしても、クラフにしても、大人の政治の問題で振り回されているんです。ピーシががんばってお父さんと戦ったのも、あんまり功を奏していなくて…オトナって。(作者が言うなって…^^;)
とにかく、ココを、どう乗り切るのか!カカナくんに思いが届くか!!??

花さん
そう、大人たちはしがらみで生きていますよ。汚い生き物ですv-389
カカナくんのお父さんを思う気持ち、報われるといいのだけど…。
らんらら、大人だからなぁ…(^^;)

うわぁ。。
戦闘シーンはドキドキハラハラ、クラフを只管守ろうとするセキアさんにキュンとしながら見てたのですが…一転、とんでもないことに;;
ホント、楓さんじゃないですけど、えらいこっちゃですよ!
脅しに、大人に負けないでクーちゃん!ピーシ君たち始め、読者の皆も応援してるから!

えらいこっちゃないですかっ!!

やはり・・・キタキさん一筋縄ではいかなかったですか。ふむむ。キタキさんを送り込んだのはセクトール候の好意からか、はたまたキタキさんに裏があるのか?と思っていましたが、どうやら後者?
純粋に生きようとする少年達に、大人達の様々な思惑が嫌でも絡みついてくる・・・まさにこの作品のテーマ←と勝手に思いこんでいる(笑 に沿った展開になってきましたね!!しかし、まだまだブール候やキタキさんには語られていない裏(というか本音?)がありそうで・・・
一人残されたカカナ君は今頃どうしているのでしょう?クラフ君の叫びよ、セキアさんはもちろん、カカナ君にも届け!!!南無~!←仏教?笑

おぁぁぁぁ!!

ヤバイですよ!この展開はヤバイです><
セキア強い!このまま一気に・・・と思ったら形勢逆転!?
ブール候め、爆弾使いやがった~~@@;
キタキも何考えているのか不安です・・・
クラフをどうにかするつもりなのかな;;

最後のクラフの言葉にかなりジンときました;;
セキアのことを本当に想ってて、自分を犠牲にしてでも助けたいって気持ちが伝わってきて・・・
ブール候の悪事を早くみんなに暴いてやりたい!!><
続きがめちゃめちゃ気になります!

むむ~ん・・・。
なんだか物凄く、大変な展開に・・・。
キタキさんは、クラフ君を暗殺しに放たれたのですか・・・。
それとも、何か隠していることが・・・?
体を使った戦い以外にも、精神的な戦いが繰り広げられていて、とても、はらはらしてます。
クラフ君大丈夫?そして・・・セキア様!!セキア様は!?
キタキさんがセキア様をかばって・・・、お願い、セキア様!助かって!!
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