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「宙の発明家」第三章一.変わらない③

●変わらない?3

室内をもう一度、見回す。
ベッド、テーブル、机、本棚。本棚の横に小さな扉を見つけて、のぞいてみた。

狭いユニットバスだ。
室内が子供部屋のように飾られている割にそこはシンプルに真っ白だ。石鹸とシャンプーのボトルのミッキーマウスの絵がやけに白々しい。シャワーが浴びられるようになっているようだ。
「家には、帰してもらえないのかな…」



窓辺によって、ブラインドを開ける。まぶしい外光に目をつぶる。
クラフは思い出して、自分の荷物が入っているトランクをクローゼットに見つけると、中からゴーグルを取り出した。それをつけて、もう一度外を見てみた。

外の景色は、綺麗だった。
公園のような緑の芝生。大きな木が枝を揺らす。一階なのだろう、窓のすぐ下に、色とりどりの花が咲く花壇が見えた。
公園の中を横切る遊歩道に、人の姿がある。車椅子の老人。犬と走る子供。寄り添って歩く男女。
建物の姿はここからは見えない。
公園は、向こうに大きな森を抱えていた。みどり深い森。そしてその背景には、空。
空!
クラフは窓に頬を押し当てるようにして、空を見上げた。
空。
ゴーグルのせいでよく分からないけれど、多分白い雲が流れている、青い空。ここから、成層圏は見えない。対流圏の空気が太陽光を反射して空を青くし、代わりにその向こうの宇宙を見えなくさせている。成層圏に浮いている宙は、地上からでは見えない。あのどこかに、宙がある。
昼過ぎ、のようだ。静かで。
外ではたくさんの人が歩いたり、しゃべったりしているのに。ここは、一人きり、静かだった。

クラフは考えていた。
デアマンが研究所といっていた。宙の研究なのだろう。
オクトがクラフを実験に使った。なぜ自分なのか、クラフには想像がついた。
子供を使いたかったのだろう。
大人に逆らえない年齢。体格的にも、知力的にも、自由にできる年齢。
宙に成人を送り込めば、殺されるか、追放されるかなどの危険が伴う。宙の住人もバカではない。どこから来たとか、何の目的だとか、情報を得ようとする。それでは危険だ。
だから、何も分からなくて当然の年齢、五歳の子供を選んだ。
泣く子供を、理由もわからず殺すことは、あまりない。生存の可能性が高かったのだろう。
そうして十年たっても、十五歳。まだ、大人に対抗できるだけの体力もない。
連れ帰って、実験するにはもってこいの年齢。それが、五歳だった。
他人の子を十年も実験に使うなんてできない。クラフだから、オクトは誰にも邪魔されずにできたのだろうし、クラフが彼の子だから、十年放って置かれても、こうやって一緒に帰ってくる。他人であれば、十年も離れてしまっていては、言うことなど聞かないはずだ。
自分が、この実験にちょうどよかったのだと、父親の判断に心ならずも納得していた。


ブラインドを閉めて、ゴーグルを外すと一つため息をついた。
机の上の「空の羊」号を見つめた。両手に乗る大きさのそれは、細い麻の紐が付けてある。模型のコックピットの、小さなボタンを押した。
浮遊石の力を押さえていた遮断板が取れて、模型はふわりと浮き上がろうとする。
地上でもほとんど同じ浮遊力だ。成層圏でも、地上でも。同じなんだ。
クラフは紐を持って、風船のように宙に浮く模型を引っ張ったり、浮かせたり、横に動かしてみたりした。

「可愛いわね、その飛行機」
驚いて、紐を放してしまった。天井にこつんと当たって、「空の羊」号は止まった。
「あ!」
「あら、ごめんね、ビックリさせちゃったね」

女の人だった。
手に食事のトレーを持っている。
白衣を着て、きりっと結った黒い髪。深い緑の瞳で、にっこり笑った。きれいな人だ。
「取らなきゃ」
クラフは、天井に張り付いたままの飛行機を取ろうと、椅子を引っ張り出す。
「初めまして。私、ローザよ。ね、クライフくん。それは後で取ってあげるから、ね、ちょっとこっちへ」
椅子を引きずったまま、クラフはベッドに連れて行かれた。
白衣の女性は、クラフの肩を押して、ベッドに座らせると、右手を持って脈を測る。
「なんだよ」
クラフは少しむっとして睨む。
「私はね、君のここにあるものを、造ったのよ。世界でたった一つしかない私の作品が、ここにあるの」
クラフの胸の真ん中をつんと指でつついた。

「お医者さん?」
英語では上手く単語が出てこない。人体工学、生体工学、人工臓器工学とでもいうのだろうか。
「そうよ、お医者さんなの。君の担当なのよ。美人で光栄でしょ?」
「東洋人なの?」
そう言いながらローザはクラフの目、リンパ腺を確認する。少しくすぐったくて、クラフは何度も瞬きする。
「ハーフよ。ほら、きれいな黒髪でしょ?」
そういって、少し頭を傾げて見せた。間近にある女性の胸元に視線がいって、クラフは目をそらした。

「飛行機取るんだ」
立ち上がろうとする。
「ちょっと待って。診察したいのよ。大人しくしていてね。怖くないからね」
やけに優しい口調で話す女性は、何も言わずにクラフの服を勝手に脱がしにかかる。

「!なんだよ!」
「大丈夫、怖くないから、ね?」
「っていうか、ふざけるな!ばか、自分でできるのに!」
真っ赤になって、クラフはつい、向こうの言葉で怒鳴った。
一瞬、ローザの言葉が止まった。やっぱり通じない。

「何?今の」
「…さわらないで、ボク、自分でできる」

クラフの英語は五歳児当時のままだ。読むことは出来ても、発音を習う相手がいなかった。あまり語彙も多くない上に、どうしても、子供の言葉になる。それは、幼い印象を与える。

「あれ?照れてるの?可愛い。ちょっと、傷を見せてもらうだけよ。痛いことないわ」
返って嬉しそうに作業を続けようとする。いたずら好きな大きな瞳で、ニコニコしている。本当に、幼い子供のように扱うつもりのようだ。

ローザ1へ続く♪
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ミナモさん♪

カーチス、いいやつですよ~♪
デアマンはキーマンです♪
で。オクト…。

面と向かったら…親子ですからね~やっぱり感情をもてあまして冷静ではいられないかも?
うふふ。
ローザさん。
彼女、どんな人なのか。
楽しみにしてください~!!

はぁぁぁ…。

クラフは、ほんとに頭が良くて感受性が強すぎるよね…。
切ないなぁ…。
分からないくらいが、この状況にはちょうどいいのに…。

カーチス、イイ味方になってくれそうですね。
デアマンも、案外悪い人ではなさそう…。

と、なると…。
………………オクトかぁ…。

10年ぶりに会えた父。
今は冷静に父の考えを冷静に分析したクラフだけど、
面と向かったらどうなっちゃうのかな??
ちょっと心配だな…。

それにしてもローザさん!!
魅力的だけど…………怪しい(笑)

ユミさん

ありがとう!
クラフくん、トキメキです!(大丈夫彼は十年前の言葉しか知らないんだから)ふふ(^^)
テッタくんと一緒ですね。ローザに甘えるの、きっといろいろと切ない思いが交錯するんでしょうね!

納得か~

クラフくん、自分が実験に使われること納得したんですねー(>_<)
うん、順を追ってよく考えていくと、それしかないという状況…。
正しいとか正しくないとか、良いとか悪いは別にして、「納得」
という言葉が、とっても重い一言に感じました…。

東洋系の美人ハーフ、ローザさんにドキドキするクラフくん、
かわい~。15歳って、ちょうど大人の女性にトキメク(←死語?)
時期ですよね~。学校の保健室の先生…みたいな☆
ローザっていう名前も、素敵だわ♪

コメントありがとう!

楓さん
ちょいエロですか?っふふふ。
おっと、健全さを欠いてはいけませんね!
クラフくんも迷惑してますね(^^;)
クラフくんの視力。視力というより、目の機能そのものですね。暗闇から急に明るいところに出たときの、あの、眩しさ、すごく不快ですよね。それのひどいものだと思ってください。つまり、瞳のこう彩が機能しきれないわけです。眩しすぎて、あけていられない。
といったあたり。
淋しい一人きりの世界から、外の明るい世界をのぞき見る、その感覚はリンクしている龍くんのとこの小説ですごく感動していて。いつか、ちゃんと書いてみたいと思いつつ、こんな風にしか描けていないです(^^;)

chachaさん
本当に、冷静に判断している様子のクラフくん。でも、どうだろう。この先…。クラフくんこの状況に負けないといいのだけど!
カーチスさん、唯一の味方。カーチスさん、一押しです!

kazuさん
コメントありがとう!
向こうでテッタ君も喜んでます!
自分の意思で存在する。ドキッとしました。
そうですね、クラフくん、すっかり拉致られ慣れてしまっているけれど。普通ならもっと、悩んだりしますね。
ローザ、彼女が味方になるのかどうか…期待してください!

クラフ君・・・

お二方も書いてらっしゃいますが、クラフ君の自由じゃない現状と、ふと覗いて見えた緑の芝生・お花・自分の意思で存在している人たちとの対比が、本当に切なく感じますね。
宙で監禁されていても、外の世界を間近でみているわけじゃなかった。
こうも近くに自由な人々を見ると、余計寂しくなりそうです。
お父さんが自分をおいていった理由。
それを、説明されなくても自分で理解できてしまう。
それも辛い。
分からなければ、分からないだけに文句も言えるのに。
そしてそして、美人なお医者さん!!
もう15歳ですもん、クラフ君!
自分でできますよっ。
思春期の男の子にとって、反発したいし恥ずかしいですよね;;
早く英語が普通に話せるようになれればいいですね。

気持ちが

クラフの、自由じゃない、寂しいという気持ちが、部屋を見回した時に見える物に対して反映されてますね。
そして・・・やっぱり頭いいですね^^そこまで考えがまとまっちゃうなんて。
自分でもあまり出したくなかった答えに辿り着いちゃったんだろうけど・・・
でも、きっと自分の父親だもの。どこかで気持ちが分かり合える時がくると思うから・・・
今の状況に負けないでね、クラフ^^

ローザさん、ドキドキなお医者様ですね☆
と言っても、人工の心臓を作った人だから・・・またちょっと違う意味合いなんでしょうが。
言葉が通じないのが一番はがゆいことでしょうね><
カーチス通訳してよ!(笑)
本当にここまで子供扱いされて、必要以上に優しい態度をとられたら・・・逆に何か怖さを感じますね@@;ゾゾッ

ローザさん今度お茶でも・・・ぐほぉっ!!

うーむむ。
楽しそうな外界と、閉ざされた密室のクラフ君の対比がなんとももの悲しいです。
ふと思ったのですが、
クラフ君の視力はいったいどのくらいなんでしょう?
向こうの世界でも日中は眩しくて外に出られなかった様子を見ていて、たぶん地球よりも光量が多いのかなと勝手に推測していたんですが、地球の太陽すらまぶしがるということになると、クラフ君の目そのものに問題があるのか、単に向こうで10年間も暗い場所で生活してきたために、それに目が慣れてしまっているだけなのか・・・後者ならいずれは地上ではゴーグル無しに外を闊歩できる日が来るんでしょうが。。。と、ふと心配になりましたです。
ローザさん登場ですね♪
おおう。ちょいエロ親父としては仰け反って喜ぶシチュエーションですが、年頃のクラフ君にしてみれば、ちょっと恥ずかしすぎる設定ですね!!服くらい自分で脱げるしっ!!みたいなね。笑
ローザさんがマッドドクターなのか、良心的なお医者様なのか、今後の展開に注目でっす☆
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