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「宙の発明家」第三章二.ローザ②

●ローザ2

「!クライフ!」
かけだして、はだしのまま、冷たい廊下を走りぬける。
クラフのいる部屋は一番奥。正面にずっと暗い廊下が続く。
クラフのいる一階は、どの部屋も真っ暗だった。
「待って!」

ローザの声が遠ざかるのを感じながら、廊下の角を曲がる。正面に、玄関だ。その手前の警備員の部屋から明かりが漏れる。
ローザの声で誰かが気づいたのだろう、部屋の扉が開いて非常灯だけだった廊下に光が伸びる。
クラフは、左手にある階段を駆け上った。
ばたばたと階下がうるさくなって、クラフは追っ手が増えたことを知った。

二階の廊下は明るかった。一瞬目を細め、廊下の両側にある扉をちらちら選びながら、クラフはぺたぺたと走った。
二階は個人の研究室があるとかで、どの部屋にも入ったことはない。扉には何も書いていないし、廊下の壁も真っ白。貼り紙一つない。
適当に一つの扉を開いた。
「!誰だ!」
中には大きな本棚に囲まれたテーブル。そこには確か一度だけ会ったことのある男の人が座っていて、クラフを見るなり怒鳴った。
「お前!何してるんだ!」
「うわ」
すぐに扉を閉めて、クラフは再び廊下を走る。
外に出てみたい。
廊下の奥まで来ると、突き当たり。右手にある扉に、非常口、というランプがついていることに気づいた。人が扉から駆け出す絵が描かれている。
「外だ!」
廊下の向こうに、ローザと警備員だろう、大きな男の人の姿をちらりと見て、クラフは飛び出した。非常口の扉には鍵がかかっていない。
外は、ひやりと冷たかった。
夜なのに空気はどんよりとしていて、天気が悪いのだろう、星は見えない。
クラフは階段を降りた。
建物の裏手だろう、ところどころに灯されている外灯を見ながら、舗装された四角い場所を駆け抜けた。

「わあ、車だ!すげ、本物!」
思わず、外灯の下の赤い車に立ち止まる。
中をのぞいてみる。
きらりと速度計らしいものが見える。クラフは追われていることも忘れて、見入った。ドアを開けようとしてノブを引くと、大きな音が鳴り出した。

「うわ!びっくりした!」開かないので、隣の車を見る。
それから改めて、周囲を見回す。
駐車場には五台くらいのさまざまな形の車があった。全部で二十台分くらいの四角い駐車場は、クラフの背より高いフェンスに囲まれていて、出入り口には、機械仕掛けの門らしきものがある。今、ちょうど一台入ってきた。車の前に伸びていた棒のようなものが音もなく上がった。車が入ってきた。エンジンの音だ。
クラフは興味でいっぱいになって、自分の正面に走ってくるそれを、目を丸くして見つめていた。

「すごいな!」
車が止まった。
「何しているんだ!クライフ!」

まぶしいヘッドライトが消されて、クラフはかざしていた手を下ろした。車から誰かが降りてきた。
背の高い男のようだ。
「あ!カーチスさん!」

不意に後ろから抱きしめられて、クラフは転びそうになる。
「もう!ダメでしょ!」
ローザだった。振り向くと、すぐ横に、銃を構えた警備員が立っていて、見上げたクラフをにらみつけた。その警備員はビイとは違っていつもむっとした顔をしている。嫌いな人だ。

「連れて行きますか」
「いたい!」
警備員はクラフの肩をぐいとつかんだ。
冷たく言う男に、ローザは大きく首を横に振った。
「いえ、いえ、大丈夫。この子は何もわかっていなくて。ただ、退屈していただけなのよ」

「どうしたんだ?クラフ、何でそんな格好で出歩いているんだ」
カーチスが怪訝な顔で、話しかける。古英語だ。
クラフも同じ言葉で返す。

「ああ、ごめん、大丈夫。ちょっと、探検したくなっただけだよ!それより、カーチス、その車見たいよ!すごいよ、車。見てみたい!乗りたい!なあ、オレすごい興味あるんだ!」

クラフは目の前のカーチスを見上げて、ニコニコ笑っていた。
「ああ、そうか。初めてなんだな、見るの」
「小さい頃見たけど、あの頃はよく分かってなかったからさ。な、エンジンはなんなの?燃料は何?ガソリンじゃないやつ?ほら、電気のとかかな?ね、オレ、十年前の知識しかないからさ、教えて欲しいよ!」

「あ、ああ。いいけど、クラフ。その、お前、それより後ろ…ローザ、何をそんなに怖い顔しているんだ?」後半は英語になっていた。
「!」
クラフは、思い出した。
いつの間にか、抱きしめていた女性の手はなく、振り向くと警備員と同じくらい、怖い顔をしたローザが睨みつけていた。
「あ、あの…ボク」


カーチスは笑い転げていた。
クラフの部屋に戻って、テーブルでコーヒーを飲んでいた。
ローザにとカーチスが持ってきたケーキに、クラフは満足げな顔で舌鼓を打つ。
「笑えないわよ!私はすっかり、五歳児くらいの知識しかない可哀相な子供だと思っていたのに!」
「だから、ごめんなさいって。ね、これ、美味しい」
クラフはふた切れ目の紅茶のシフォンケーキに、たっぷり生クリームをかけた。
「五歳児なわけないだろ?ローザ、十五歳ともなれば大人だぜ?」
「うん、オレ、オトナ」
「お前、何でそんなことしたんだ?そう言う趣味か?」
面白そうに目を細めるカーチスに、思わずクラフは飲みかけた紅茶を噴出した。
「やだ、クライフ!だめじゃない、ほら、汚れちゃったわ」
ローザはティッシュでクラフの口元を拭く。
それはまるで、小さな子供にするような仕草。
「あ」
気づいて、ローザはニコニコしているクラフを睨んだ。
手に持っていたティッシュを、クラフの顔にぽんと投げつける。
「もう!」
「お前、ローザに優しくしてもらって、甘えてたんだろ!いやらしい笑いになってるぜ」
「うん、たくさん甘えた」
悪びれもせず、再びケーキを口に放り込む少年を、カーチスはこつんと小突く。
「だって、いい匂いするし。女の人って、いいよな」
少し照れくさそうに笑う少年に、今度は箱ごと、ティッシュが飛んできた。
「本当に、怒っているのよ、私は!君がそんな子だとは思わなかったわ!」
ローザはぷいと席を立って、部屋を出て行ってしまった。
「あれ?そんなに怒らなくてもいいのに」
「ばか、お前、からかいすぎだぜ」
そういいながらも、カーチスはくすくすと笑い始めた。
「なんだよ?」
「いや、ローザもあんな可愛い顔するんだな」
「!惚れてるの?」
今度はカーチスが変な顔になる。
「へー!そうだよな、こんな夜中にケーキ届けるためにわざわざ来るくらいだもんナ」
「うるさいぞ、お前。いい女だろ?」
カーチスが切れ長の瞳をとびきり優しくして微笑む。クラフは少し、寂しげに笑った。
「いいなぁ」
「なんだ?お前好きな子…」
言いかけて、カーチスは黙った。
クラフにそんな出会いがあるわけがなかった。

「好きな子はいたよ」

カーチスの視線をどうとったのか、クラフは笑った。口の脇にクリームをつけて、その笑顔はあどけない。
「でも、ぜんぜん。カッコイイやつに取られた」
「ま、そのうち、いい子に会えるさ」
カーチスが微妙に視線をそらしたことに、クラフは気づいていた。
「あのさ。オレ、いつになったら、自由になるんだ?」

檻の中の狼1へ続く♪
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ユミさん

ありがとう!
クラフくん、機械ヲタですから(^^)
そう言うおもちゃを与えてくれれば、多少は元気が出るんでしょうけどね。
らんららはコメントいただいて元気が出ます!ふふ、嬉しい!!

クラフくんは、素直で可愛いわ♪
カーチスさんもローザも優しくて素敵だから、
きっとお似合いですね~。

それにしても、「そのうち良い子に会える」とカーチスは言うけど…
もしかして、もう決められた人がいるとか??
それとも、そんな出会いはないけど、慰め??
気になる~。
クラフくん、自由になれないんだろうなぁ。車を見ただけで、あんなに
はしゃぐクラフくんに、
涙が出そうになりました。
もっといろいろなモノを見せてあげたい!!

コメントありがとう!

楓さん!
羨ましい!?甘え放題、夜は一緒に手をつないで寝るのv-345
いかに中身がちょいエロ親父さんでも体五歳児じゃあね、何も出来ません!それでもよければ!!って、なんてこと書いているのかしら!!いけない、つい、楓さんにつられてしまうぅ(><)人格崩壊!?
青いキャンディでオトナに戻ったクラフくん、この状況をどうするんでしょうか!!

chachaさん
ええ、楓さんのコメ、素敵過ぎてつい、らんららも崩壊…(><)クラフってば、結構リスガちゃんのこと、本気だったわけですね、子供ながらに…カーチスと会えて、さて、何か変えられるでしょうか?
ふふ。
語りすぎはよくないですね…黙りますよ、この辺で。

kazuさん
コメントありがとう!!
みんな、元気かなぁ?
クラフ、あいたいだろうなぁ!きっとkazuさんみたいに、思い出していますよ、今頃…(TT)
自由になりたくてなりたくて、でもうまく行かなくて。ここに、カーチスさんがいてくれることが唯一の救いかも…


うむむ

脱出成功!と思ったら、カーチスさんにあえて。
ほんと、会えたのがカーチスさんでよかったですね。
だからこそ、あまり大事にならなかったのかなと思いました。
ローザさん、カーチスさん・・・・。
恋人同士?それとも両思い?
うふふ、いいなぁ。
紅茶のシフォンケーキもいいなぁ(笑 大好き☆
リスガさん、カカナ君、ピーシ君・・・・そしてセキア様!元気かなぁ。
好きな子いたよ、で、思い出してしまいました。

カーチスさんに聞いた、クラフ君の問い。
いつになったら自由に・・・・。
そうだー!いつになったら、緑の芝生にお日様の下に・・・!!
カーチスさん、どう答えるのか、ドキドキですね。

↑楓さん・・・(笑)

楓さんのコメント、いいですね!相当やられました(笑)

クラフが演じてたこと、バレちゃいましたね^^
でも、思ったよりことが大きくならなくて良かったです☆
ローザには申し訳なかったなぁ・・・
でも、きっと心配してくれてたんですよね。親身になって^^優しい人ですもの、きっと☆

外には出れたので、脱走成功!?^^ふふふ。
出会ったのがカーチスで良かった良かった☆
でも、最後の会話。
楓さんも言ってますが、やっぱりクラフが自由になるにはまだまだ時間がかかりそう・・・
いや、ずっと自由にならないなんてことも・・・?><
ローザさん、カーチスさん、クラフの気持ちをわかってあげて!自由にしてあげて~!;;

かーちすぅ・・・ぷすぷす。
やっぱローザちゃんはかーちすと付き合ってたのね。
それにしてもクラフ!!
確信犯ですな。笑
いくら逃げ出すタイミングを計るためとはいえ、五歳児レベルになりすまし、ローザちゃんの母性愛を胸一杯に・・・うおおおおおおおおおおおおお!!!クラフーーー!!!何て羨ましいことをするんだ!!ボクだって、いつでもちびっ子になったり元に戻ったりできるクスリがあったら即購入するのにぃぃぃ!!!ギブミーめるもちゃん!!!←最低。
コナン君を思い出しました。
あと、Oh!透明人間も。←おい。汗
「ま、そのうち、いい子に会えるさ」
と言いながら、微妙に視線をそらすかーちず。。。
それって、クラフ君が自由になることは今後もないということを、かーちすはうすうす分かっているってこと?そして、それを読み取ったクラフ君。最後に一言、カマ掛けましたね。
どうする、どうなる??
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