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「宙の発明家」第三章三.檻の中の狼①

●檻の中の狼1

カーチスは、首を横に振った。
「悪い、俺はあそこに行ったのはパイロットとしてなんだ。ただ、それだけの仕事だった。お前のこととか、これからの計画とか、俺は知らないんだ」
「俺さ、あの後、一度も父さんに会ってないんだ。なんだかさ、帰って来た意味ないよな、これじゃ」
クラフがまた一口、ケーキを食べた。
紅茶を飲んで、最後に皿に残ったクリームを綺麗にフォークでさらって舐めるまで、カーチスは黙ってみていた。

「お前、帰ってきて、やりたいことって何だったんだ?」

クラフは顔を上げた。
「まず。親に会う。小さい頃のガールフレンドに会う、もっといろいろなことを勉強する。ほら、車とか、いろいろな技術のこと。それから、えーと。ディズニーワールド、だな」
「WDW(ウォルトディズニーワールド)か」
「うん、そう。オレ、小さい頃何度か行っていてさ、すごく好きなんだ!子供っぽいって笑うなよ。それから、勉強したら、また、宙(そら)に戻る」
そこで、カーチスは目を丸くした。
「戻る?」
「うん」
「なんで?」
「え?だって、友達いるし」
「いや、でもさ」
「おかしくないだろ?」
「…あの、さ。お前が宙と呼ぶ、あそこ。こちらではBlank Spot of Air、「BSA」ってコードネームでさ。軍の機密なんだ。関係者しか知らない。勝手に行ったり来たりは出来ない」
「変なの。オレ軍人じゃないし、関係者でもないから関係ない」

クラフは歯を磨きに洗面所に向かった。その背に、青年が話しかける。
「…クラフ、悪いことは言わない、それはあきらめろ。お前はこっちで生きていくべきだろ?父さんも母さんもいるんだ、な?」
「…じゃあ、さ。オレに普通の生活、返せよ」
クラフは歯ブラシをくわえている。視線は鏡の中の自分のまま。
カーチスは黙った。
「無理だろ?だったら、オレ、自分のしたいように生きるんだ。オレ、宙で幸せだったんだぞ」
クラフは、穏やかに笑っていた。


翌日から、ローザの態度は一変した。
診察と視力の訓練以外は顔を出さないし、必要最低限の言葉しか話さない。
「あのさ」
クラフがたまりかねて、訓練用のゴーグルを外して、ローザに声をかけた。
「悪かったって言ったよ、その態度はひどいよ」
「はい、今日の訓練はおしまい」
そう言うなり、遮光カーテンを開けた。
「う!」
クラフが、まぶしくて顔を手で覆っても、閉じてくれない。
「さ、部屋に戻るの」
「まぶしいよ!閉めて」
「本気で怒ってるって言ったでしょ?クライフくん、誰かに嫌われたことないの?あんな悪戯して。わがままで」
「閉めてってば!」
「いやよ。自力で帰りなさい、部屋までね。今度は逃げ出しても手加減してもらえないわよ。気をつけることね」
冷たく言い放つローザの表情は見ることが出来ない。
クラフは顔を手で覆ったまま、手探りでゴーグルを探すが、それは取り損ねて、テーブルから落ちた。立ち上がって、拾おうと座り込む。
分からなくて、テーブルの角に頭をぶつけて、今度は頭を抱えてしゃがみこんだ。
「いたい、ひどいよ!そんなに怒ることないだろ!」
「許さない」
「ボクが小さい子供じゃないとそんなに嫌なのか?」
クラフの英語もだんだんさまになってきている。
「違うわよ!小さい子の振りして甘えようっていう考えが嫌なの」
「悪かったな!五歳じゃなくて!そっちが勝手に思い込んだのに!もういいよ!止めた!オレもう、我慢できない!」
そう怒鳴って、クラフは目をつぶった、よたよたと部屋を出ようとする。
途中、何もないところでつまずきそうになって、よろけて壁に頭をぶつける。
「って、畜生!」
壁を蹴り返して、怒鳴ると、クラフは何とか壁沿いに手探りで扉を見つけ、外に出る。
また、転んだ音が廊下に響いた。

開け放された扉を忌々しげに見つめて、ローザは再び書類に向き直る。
訓練の結果は思わしくなかった。

水晶体に入る光量を調整する筋肉、虹彩(こうさい)に、変異が起きていた。一定の明るさを超えると対応できなくなる。眩しいのだ。逆に、通常より暗い場所での視力が高い。
このままでは、昼の陽光を裸眼で見ることはかなわない。
それが、宙の世界の大気成分のためなのか、環境のためなのか。まだ、分からない。

偽物になってしまった心臓と肺。取り戻すことの出来ないものが、また一つ増えたのだ。
ふ、とため息をつく。
どうやって、告げるか。迷っていた。

檻の中の狼2へ続く♪
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ユミさん

そうなんです!この状況をいかに打開するのか…うーん。
クラフくん、力ないからなぁ…

そっか~

クラフくん、まだお父さんだけじゃなくお母さんにも会えて
ないんだよね!せっかく戻ってきても、診察や訓練、あとは
部屋に閉じこもっていなきゃいけないなんて、かわいそうv-217

クラフくんの体の一部がどんどん奪われていって…!
ホント、普通の生活をさせてあげたいよ~~。

kazuさん

宙の世界で、クラフくんは幸せでした。
うん、第一章と二章を書いた意義があったというものです!そうなんです。
最初の原案は、宙の世界はあんなに人を出さないつもりだったし、セキアさんともそこまで仲良しにしなかったんですけど。それではあまりにもクラフが可哀相だから。
大切な人、会いたい人がいる。待ってくれている。それは、クラフくんの心の支えです。
そーちゃんにとっての清香さん、kazuさんにとっての旦那様v-345とか?ふふふ。帰る場所、そこが幸せな場所であることに感謝しなくちゃですね!
今はちょっと、淋しいけど、そのうち楽しいこと、しますよクラフくん。
なんていったって、わがままな天才ですから!悪戯を叱られたって、平気なんです!

chachaさん

おおう!白髪!?早速美容院で染め…ガツ!誰のせいかって、申し訳ないです(^^;)責任持って抜きます、一本残らず(笑)
クラフくん、苛めまくってますよ。ほら、可愛いと苛めたくなる。今は我慢ですよ!クラフくん、chachaさん!いつか彼の思うとおりに、すっきり解決!ハッピーエンド?
大丈夫、ティッシュはお母さんと再会のあたりまでしまって置いてください。

闇商人さんへ(^^)

ぷぉっぷぉっ…(打ちにくい…)15歳眼球セット、本物でしょうね?
ガラス体は亜鉛濃度の高いクリスタルガラス、瞳の色はそうね、綺麗なグリーンとか。支払いはギル?ミスリル?…って買うな!(笑)
そうかぁ。気づきませんでしたよ、本気で。ローザさんなら作れるかも。
「彼女とカーチスだけはお仲間になってくれそうな」…さすが楓さん。微妙なとこ、つつきますね!エロい!(こら^^;)
ローザさんとカーチス。二人がいないとクラフくん、大変ですから。仲間にしておかなきゃです!

うーん

おいたのお返しがきちゃいましたね;
確かに、クラフ君のいたずらには頭にきたかもしれない。
でも、最初クラフ君が抵抗したのに、それでも5歳児として扱ったのはローザさんなのに(笑
かなりご機嫌斜めですね。

クラフ君の、宙で幸せだったんだぞ・・・の言葉。
ジーンときちゃいました。そうだよね、クラフ君。
向こうでは、確かに人質だったし、自由ではなかった。
でも、それでも。人、として扱ってもらえてた。
こちらの、人体実験のサンプルとしてじゃなく。
お父さんにもお母さんにも会えず、自由もない。
何のために帰ってきたのか・・・・

・・・・、心肺の次は、眼球・・・。
ローザさん、悩んでますね。
そのやるせなさが、怒りに影響してそうです。
クラフ君を宙に戻してあげたい。
そうすれば、少なくても眼球は変えなくてすむのに。

ぷぉっぷぉっ

って!笑っちゃいましたよ!楓さん!(笑)

クラフ、本当に可哀想だよ・・・;;ウルウル。
どうして自由にしてあげないんだろう?
お父さんもお母さんも、どうして我が子を心配して様子を見に来ないんだろう・・・?
そもそも、お母さんの存在がこちらに来てからハッキリと出てきてませんね@@;
もしや・・・
いやいや、まだ何も考えないとこう(笑)

こうやってみると、本当、クラフの言う通り「宙」での生活の方が自由でしたね。
みんな優しくって、楽しい人達ばかり。
元気にしてるのかなぁと、ふと、思ったりします^^
ローザさんも冷たくなっちゃって><
仕方ないけれど、でも、そこまで怒らなくっても~うぅ。
誰が味方で誰が敵か。
クラフの目を治すことは出来ないのかな・・・?
心配事が多くて、chachaは白髪が増えましたよ(笑)

ぷぉっぷぉっ。←chachaさんごめ・・・

ふふふ。では目も取り替えませんか?
ええ、目も擬態化するってことで。
お安くしておきますよ。
心臓と肺をそうしたように、彼のお父さんならそれくらいできるだろうし。ね、ローザさん、どうぞ良くお考えくださいな。ええ、ええ、決して不良品など滅相もない。きちっと純正の、ぴっちぴちの15歳の眼球セットをご用意致します。はい。
・・・
クラフ君、こっちに来て良いこと無しですね。
車が見れたことくらいでしょうか?
あげくローザさんには冷たくあしらわれ・・・
でも、彼女の態度の裏は、どうにも思わしくないクラフ君の目のことで思い悩んでいる節もあり、やはり彼女とかーちすだけはお仲間になってくれそうな・・・ですね。
それと、
やっぱしクラフ君は宙に帰りたいんですね。てか、自由にセキア産やカカナ君やピーシ君と交流したい。でも、それはきっとこのままでは叶わない・・・ぐむむ。この先どういう展開が?!!
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