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「宙の発明家」第三章四.夢の国④

お休みしたので、少しまとめて更新です。
お付き合いくださいね!


●夢の国4

つんと顔を背ける。サングラスの少年が、見かけに似合わない幼い口調なので、前に並んでいた男性が怪訝そうな顔をして振り向いた。
クラフはその視線をじろりとにらみ返したが、サングラスの奥からでは相手に通じるわけでもなかった。
「ばか、ダメだって言ってるだろ!」
カーチスが列の脇のロープを無視して、手を伸ばしてくる。



クラフは一番奥に逃げて、それを振り払おうとする。
「いやだよ!あっちに並んでいたら、何時間かかるか分からないだろ!」
「だから、ハンディキャップパスにしろって言ったんだ!」
「うるさい!あっちに行けよ!」
クラフは腕を引かれ引きずられながらわめいた。

「あっちでローザが並んでくれている!だから、お前、わがまま言うな!」
「いやだってば!ローザ、そこにいるじゃないか!」
カーチスが振り向くと、ローザが片手にポップコーンカップを持ったまま、腕を組んで立っていた。
表情は硬い。
「ローザ、どうした?」
思わず手を離したカーチスの目を盗んで、クラフは逃げ出すようにゲートに駆け込んだ。
係りの女性にぶつかりそうになりながら、周りの迷惑そうな視線にもめげずに。クラフは建物内に入るとほっと胸をなでおろす。
その手の下の、人工の心臓がとくとくと、脈打っていた。

「なんだい、緊張しているのかい?」
すぐ後ろの男性が声をかけてきた。少し太り気味で、アトラクションの体重制限にかかるのかもとクラフに思わせた彼は、みっともなく伸びた髪をぐりぐりとかいて笑う。
「僕は今日五回目なんだ。知っているかい?六種類のテストカーがあるんだ、それを全部制覇しようと思っていてね」
マニアの人だ、とクラフはサングラスを取って見上げた。
「どうしても一番の大排気量の№3のに乗りたくてね。加速がすごいらしいんだよ!知ってるかい、ちゃんと六種類全部違うんだ。上手く出来ていてね、サスペンションの感触やブレーキの感覚とかね、最高時速は№3で時速98キロ、そりゃもう、最高なんだ!」

クラフはにこっと笑った。
「すごいな!どうしてもココに来たくて!ボク、前回来たのは五歳だったから身長足りなくてさ」
「そうだろう?でね、相談なんだ。もし君の番が№3だったら、僕と交代してくれないかなぁ」
ニコニコと笑う男に、クラフは舌を出した。
「やだ!」
「なんだ、ひどいな」
「だってボク、たぶん一回しか来れない。お兄さんは明日も来るんだろう?」
「ふん。まあそうだ」
この4つの大きなテーマパークを持つWDWに来る人はたいてい数日をかけて楽しむ。それが許されないクラフには、一分一秒、無駄に出来ないのだった。
どうしてもとカーチスが言うので、ランチの後のショーを観てからは「MGMスタジオ」に移動することを約束してあった。だから、時間がなかった。
クラフはこの未来をテーマとしたテーマパークが好きだった。
十年前からタイムスリップしたようなクラフにとっては、この未来は、紛れもなく輝いて見える。

薄暗い狭い通路を並んでいたクラフが、やっと、このアトラクションのプレショーのあるスクリーン前に来たときだった。
コンパニオンの女性が近寄ってきた。
「あの、クライフ・ロイズくんですか?こちらへ」
ニコニコ微笑む綺麗な女の人に、クラフは思わず引かれるまま脇の通路に入った。
「?あの、なに?」
非常扉のような重い扉が背後で閉められると同時に照明が焚かれた。
「わ、まぶしい!」
思わず目を閉じて、クラフはポケットのサングラスを探る。
「ごめんなさいね、君はこのアトラクションに参加できないの」
コンパニオンの女性は、派手なブロンドをきらりと揺らして、申し訳なさそうに微笑んだ。
「なんで…」クラフが睨みつけると、女性の背後から見慣れた二人組み。

「クライフくん、だめでしょう?」
ローザが大きな目で睨んでいた。
「お世話かけます」
カーチスがコンパニオンに挨拶をする。
「!何だよ!何で、邪魔するんだ!」
クラフはもと来たほうに戻ろうと駆け出す。
すぐに、カーチスの腕につかまって、もがきながら引き戻される。
「暴れるなって!」
「うるさい!ひどいよ!ひどい!」

後ろから羽交い絞めするカーチスの腕に噛み付こうとしたとき、ぎゅ、と抱きしめられた。
目の前に、ローザの白い胸。
甘い香水の匂い。いつもの消毒の匂いではなかった。
「…ごめんね」
クラフをはさんで正面にローザの黒髪を感じて、カーチスも思わず見とれる。
「…ひどい」
クラフはつぶやく。
分かっていた。
「仕方ないだろ。お前の心臓じゃ、許可されない。俺も、ローザも、保障できない。お前、だからハンディキャップパス、嫌がったんだな」
二人に前後から抱きすくめられて、身動きの取れないまま、クラフはがっくりと肩を落とした。

ハンディキャップパスを持っていれば、どんなアトラクションも並ばずに最優先で入ることが出来る。でも、それを持てば、入場制限のあるアトラクションでごまかしが効かない。クラフの心臓が偽物であること、それは、もっとも制限するアトラクションが多い。そう、心臓疾患を持っているとみなされる。
「ローザ、お医者さんなんだ、ねえ、お姉さん!主治医が一緒なのに、それでもダメなの!?」
クラフは、背後にいるだろうコンパニオンに向かって叫んだ。
「クライフ!」
カーチスがたしなめる。

「いやだよ!ずっと、ずっと乗りたかったんだ!十年前に悔しい思いしたのに、なのに!二度と乗れないなんて、いやだ!」
絶望的な気分でクラフは足をばたばたとさせる。カーチスの大きな足を何度も踏みつけた。
「こんな、こんなんじゃ、来た意味がないよ!カーチス、ひどいよ!オレを苛めたいのか?意地悪したいんだろ?そうだろ?せっかく目の前にあるのに、オレは一生、乗れないんだ!何がプレゼントだよ!ひどいよ!」
「クライフ!いい加減にしろ」

ゴツ、と拳を額に受けて、クラフは地団駄を止めた。
顔をうつむかせたまま、荒い息をしていた。
泣いているのかもしれない。
「…さっき、ミッションスペースで遊んだじゃないか、平気だったんだ。なのに…」
「あきらめろ。お前、それが分かっていて、ローザにわざとチケット買いに行かせたんだろ」
確かに平気だったと、カーチスも思う。しかし、ローザがそこに気付いてしまったからには、今日はもう、クラフの参加できるアトラクションは限られてしまうだろう。実際、このアトラクションには心臓疾患のある子供の死亡例があるのだから、許可できるはずはなかった。


夢の国⑤へ続く♪
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コメントありがとう!!

たくさんお休みしちゃって、かなりのんびりムードのらんららです。今も異様に眠くて…なんだろ。春だからかな?

kazuさん
そうです、クラフくんはそれを恐れていたんです。分かっていたから。ですよね。宙では何度も発作があって。
自分の体に不安を持っている、でも。今しかない。
誰のせいでもないんですよね。でも、このままじゃ。
いずれ、クラフくんと対決させますよ!!
すべての原因を作った彼と!

chachaさん
ばれました?そう、あれも一芝居。もちろん、久しぶりに、というか。物心付いてから初めて自由に遊べる状態だから多少、本音もあるけれど。クラフくん、いろいろと考えているわけです!
カーチスだけなら、きっと許してくれたかもしれない!「テストトラック」らんららも行って見たい!!!

ユミさん
ほんと、楽しい夢の国もちょっと、切ないエピソードになっちゃいました。もともとは自由に遊ばせて上げるつもりだったのだけど、資料を調べているうちに。あ、何、心臓疾患の子供、死亡例?マジですか!クラフくんダメじゃない!って。
ある意味、らんららが一番ショックでした!なんでって、フロリダ出身にしたのも、すべてこのディズニーワールドで遊んでもらうためだったんだから!!
ごめん、クラフくん!!

楓さん
3倍速コーヒーカップ…死、死にますそれv-12
シャー専用なんですか?なるほど、やっぱり赤い色のカップなわけですね!天間博士…。
博士との対決、必要ですね!!カーチスもローザも雇われの身。うーーん。いったい誰がクラフを救えるのか!!
って、らんららだけですか…ZZZzzz



残念っ!!!

クラフ君残念っ!!
あとちょっとだったのに~!!
いーじゃん、イージャン乗せてあげなよ!!
かーちすぅ
ろーざぁ~
ダメか・・・やっぱダメかぁ。
さすがに死人が出たことがあるとあっては叶わぬ夢ですかね・・・
可愛そうに。あんなに楽しみにしていたのに・・・残念っ!!
それにしても憎むべきは人工心肺!!
なんでクラフ君がこんな思いをしなきゃならんのですかぁ!!
うおおお、天間博士!!←まだ言う。笑
よおおおおおしっ!!!こうなったらいつもより3倍早くしたコーヒーカップに乗せてあげて下さいっ!!←シャア専用か?笑

なみだ

胸が締め付けられるほど、悲しくなっちゃいました(>_<)
だって、ずっと楽しみにしていたのに。
ここにつれてきてもらっても、そのほとんどが楽しめ
ないなんて、残酷です!
ただ、カーチスさんの言うことも分かるな~。
乗せてあげられないなら、せめて、他のものでクラフくんを
満足させてあげてください!(かなり力入ってます!!)
だって、普段、クラフくん耐えてるんだもん…。

辛いよぅ;;

クラフ・・・前回のミッキー達との戯れでかなり楽しそうだったのに><
私も思わず笑顔になっちゃいました☆
ドナルドが好きなもので(笑)
あぁ~何だか本当、その時の様子が目に見えてわかります^^

でも、クラフはずっと乗りたかった「テストトラック」に挑戦する為の一芝居だったんですね^^;
カーチスとローザの目を盗んで向かう為に・・・
なのに、こんなにもずっと乗りたかったアトラクションに乗れないなんて。
しかもこれから先、一生無理だなんて・・・
この気持ち、カーチスとローザ、わかってる!?
今回ばっかりは、クラフの味方ですよ!!
カーチスとローザのばかぁ!!><

おはようございます

クラフ君、切ないなぁ・・。
寂しいな・・・。
自分でも、自分の心臓がもたないかもって分かっていてものりたかった、昔からの夢。
目の前にして、乗ることができない。
しかも自分のせいではなくて。
辛い・・・、ですね。
そのクラフ君を見ているクラフ君の体のことを知っているローザさんは、とても辛いでしょうね。その二人を見ているカーチスさんも、辛い。
何で、こんなことになっちゃったんだろう。
そう思うことしかできない。
切ないですよ~、らんららさん!!
Secret

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