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「宙の発明家」第三章五.取引①

●取引1

クラフは、緊張していた。
車内は広くて、大柄の大人が四人並べるくらいだ。向かい合わせの席は遠く、間にテーブルがある。冷蔵庫がついているのに気付いて、クラフはちらちらとそちらを見つめる。本来なら車に乗るのはすごく楽しい。とくにリムジンは真ん中にテーブルを据えたつくりで、ミニバーのカウンターもある。興味は尽きないが、はしゃぐ雰囲気ではない。
両側を大きな黒いスーツの男たちに囲まれて、正面に父親。



クラフは、サンタミッキーの帽子を取ると、乱れた前髪をくしゃりとかき混ぜる。
正面のオクトは、相変わらず、何となく嬉しそうな顔のまま、でもクラフには目を合わせない、不思議な態度のままだった。
クラフはどう接していいのか分からずに、どきどきしていた。
「楽しかったかい?」
オクトは車窓から夜景を眺めながらポツリと聞いた。
クラフの中では、自由にして欲しいなどの恨み言が渦巻いている。
それが多すぎて、結果、口をつぐんでいた。
カーチスの言っていた、考えて取引、そうしないとすべての目的は果たせない気がした。
迂闊に自分の希望を訴えれば、逆に利用されてしまいそうだ。

ホテルのロビーは、深夜のためか人影はまばらだった。
マネージャーがオクトと握手を交わし、それから珍しそうにクラフに目を止めた。スーツ姿の男三人に囲まれて立つ少年は、仕立てのいいコートを着ているものの、足元はスニーカー、手にはミッキーマウスの帽子。高級ホテルのここでは、少し眉をひそめられる。
オクトが、睨み返すクラフの視界から、マネージャーを奪い、何か小声で話していた。
マネージャーの表情は一変し、ニコニコすると一行をボーイに引き渡した。
部屋は、広かった。
最上階なのはエレベーターの数字で知った。
「うわー!すげー」
クラフがまず最初に窓辺に駆け寄るのを見て、まだ若いボーイが笑った。
「当ホテルでもっとも美しい眺めの見える部屋です。ご満足いただけましたか」
「うん!すごい、綺麗だ」
ニコニコ笑って、振り返る。無邪気な少年は印象に残る大きな眼をしていた。

翌朝、この町にしては珍しい寒い朝だった。ここ数日続く寒さは、例年の気温からすれば随分低く、当ての外れた旅行者は見た目にも寒そうなようすだ。コートでも買い込もうというのだろう、ホテルの一階にあるショッピングモールでまだ開店前だというのに数人がうろうろしている。
青年は、夜勤明けの眠い目で私服に着替えて帰ろうとしていたが、店の前で中を覗き込もうとしている東洋人らしき客に、声をかけた。
自分がこのホテルのボーイであることと、店の開店時刻までには一時間以上あることを何とか身振り手振りで伝えると、不満そうに彼らはホテルの部屋に戻っていった。
高級ブランドの並ぶそこを、ちらちら眺めながら、ふと昨日まで見ていたショーウィンドウの景色が、変わっていることに気付いた。
子供のマネキンが裸同然で冷たい視線を外に向ける。
店の顔でもあるショーウィンドウを、いくら売れたからといって、こんな風にしておくことはまずない。それとも、時間外に何か特別な注文でも入ったのかと、首をかしげた。
あくびをしながら、報告すべきか迷っている矢先に、その店の店長が、早足で歩いてきた。
挨拶を交わす。
「いつもより早いですね」
「ええ、ほんとう、嬉しいことだけれど、困っちゃうわね」
「ここ、どうしたんです?」
恰幅のいい女店主が、派手なブロンドをゆらりと揺らしながら笑った。
「昨日遅くにチェックインしたお客さんがね、買い占めたらしいのよ。さすがに、違うわね、あるところにはあると言うか。どうせなら、もうちょっと高価な品を仕入れて置けばよかったわ」
商魂たくましい女性に、青年は笑った。
そうか、あの子供のための服なんだ。
金髪の少しやせた十代前半の少年を思い出した。景色を見て、小さな子供のようにはしゃいでいた。
プレジデントルームを一週間押さえているのだ、金持ちだろう。
WDWにリムジンで通うのだろうか。羨ましいことだ。クリスマスだと言うのに夜勤を買って出てしまった自分をのろいながら、お人よしの青年は帰途についた。

取引②へ続く♪
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ミナモさん

そうそう、忙しいですよね!
(ミナモさんの新作!!らんららも駆けつけなくては、と思いつつ~><;)

ホテル…いいなぁ~(←おい?
プレジデントルーム…いいなあ~(憧れを小説にする奴です…笑

がんばりますから♪まだまだ、こちらに戻ってやりたいこと全然出来ていませんからね。
クラフ君、もともと我慢強いほうじゃないし(笑

お久しぶりです♪

らんららさん!
GWに入って、やっと少し時間が取れそうです♪

もう、続きが気になって気になって…。
えへ。
また、ゆっくりと読ませていただきますね~!!

取引。
クラフに、そんなことが出来るんだろうか…。
ってか、して欲しいけど。
これ以上利用されたり…は、可哀想すぎて…(涙)

高級ホテルでのシーン。
ドキドキを煽りますね~。
う~ん、どうなるんだろ???

楽しみ楽しみ。

ユミさん

ホテルのお兄さん!キーマンというか。いてくれてよかったって感じですね!いい読みですよ!ふふ、そんなには嵐じゃないかもしれないですが…
いよいよ、バトル開始なんです。こちらも…上手くかけているといいんだけど!
しかし。シムジン、プレジデントルーム…いいなぁ…。

穏やか過ぎる?

このホテルでのできごと…。
って、まだ何か起こったわけではないけれど、一見とても
穏やかな雰囲気ですね。豪華なホテルのプレシデントルーム。
キレイな夜景…。
本当なら、とても満ち足りた1週間になるんでしょうけど。

何が起こるんですか~?
嵐の前の静けさっていう雰囲気が漂っていて、怖いです!!
そう、ホテルのお兄さん!キーマンになりそうな予感ですね~。

コメントありがとう!

花さん
頭よくなりました?クラフくん。この辺から彼らしい活躍、します!
お人よしの彼。いてくれてよかったって。そう思いますよきっと(うふん)

chachaさん
ありがとう!夢の国。楽しい分、そこから現実に戻るのは淋しいですね!本当に、いつもディズニーランドから帰るときにらんらら、淋しいーって、思うので。その辺を表現してみたかったです!
伝わったのなら嬉しい!
取引…じつは、らんらら、このために交渉術の本とか買ったのだけど。どうも、らんららがだめでした。よくわかんない。世の中には交渉するために、いろんな駆け引きをするんですね。らんららの無能振りがクラフくんの今後に響かなければいいのですが!

うはぁ☆

いや~とっても読み応えありました^^
やっぱりらんららさんの描く世界、夢があって心が優しくなれますね!
クラフとローザも仲直りできて・・・うんうん!良かった!^^
でも~、カーチスとローザがくっついたのはいいけれど、クラフをほったらかしにしないでよ~(笑)
うん、おめでとう^^

ほっとしたのも束の間、オクトが久々の登場ですね!
一体何の為に・・・??
何だかオクト、クラフとどう接したらいいのかわからないのかな?@@;
クラフも今回ばっかりはぐっと我慢して、相手の出方を見ていますね。

いつか「宙」に帰る。
その言葉、セキアやみんなに聞かせてあげたい!
いつも、クラフはみんなのことを、宙のことを想っているよって^^

これからの展開はどうなっていくんでしょう??
「取引」がテーマ。
クラフ、天才を発揮して上手く取引するんだぞ!!^^

何となく怪しげな雰囲気…。ちょっと眉を潜めてしまう花です。
クーちゃんは大人だと、改めて思いました。逆に利用されてしまうかもしれないから…。頭いいです。
そしてお人よしの青年、もしかして今後のクーちゃんに何か影響が…?
人工心臓の回にウルウルしながらも、先の展開にドキドキの花でしたっ。
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