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「宙の発明家」第三章五.取引②

●取引2

ルームサービスの朝食にかぶりつく少年を見つめながら、オクトは苦笑していた。
クラフが頼んだサンドウィッチは食べやすい大きさに切られた、上等なものだったが、少年はそれを分解してしまって、中身を一つ一つ確認し、見慣れないものを発見すると喜びの声を上げた。



「これ、なに?これ。このすっぱいの」
「ピクルスだよ」
「これは?ハム?ベーコン?なに?」

鴨肉のスモークをスライスしたものに、ちょっとかじりついて味を確かめている。
「……クライフ。もう少し、落ち着いて食べられないかな?今日はお前に合わせたい人がいてね、昼食を一緒にと思っているんだ。こんなこと、しないでほしいな」
「ん?誰?」
「ヴェデリットさんという方だよ。私の上司に当たる人だ」
「父さんと同じ、研究者?」
「いや、軍人さんだ」

「…ね、父さんって、いつもはあの病院の中の研究所にいるんだろ?他の、例えばさ、もっと大きなケープカナデラル空軍基地とか、ペンタゴンとか、行かないの?ボク、行ってみたい!だって、父さんの作ったあの飛行船だって、どこかの基地にあるんだよね?」
オクトは厳しい顔になった。
クラフもその態度にむっとして、睨んだ。

「父さんは宙のこと、BSAのことを調査しているんだろ?それでオレを使って調査してさ、監禁してさ、強制的に協力させようとしているんだ。少しはオレの希望をかなえてほしいよ」
クラフの言葉は、二人のSS(シークレットサービス)らしき男には理解できない。古英語だ。

「では、お前の希望をかなえてあげれば、協力してくれるのかい?約束だよ?」
オクトも言葉を合わせた。
「…何でもってわけには」
言いかけて、クラフは視線をそらした。まるでその言葉を待っていたかのように約束を迫る父親に、不安がよぎる。

「なんだい?もう、お前を向こうに送ろうなんて考えていないんだ、安心しなさい。ただ、われわれの知りたいことを教えてくれればいいんだよ。言葉も、上陸する方法も我々にはある。もちろん、武器もね」
クラフはスープスプーンを落とした。
はねたスープが頬につくのも気にせず、父親を見つめた。

「なあ、あの。二度と行かないって、約束したんじゃなかったか?その条件で、オレを返してもらったんじゃないのか?」
オクトがコーヒーカップから顔を上げて、にやりと笑った。
朝食はいらないのだろう、先ほどからコーヒーだけをすすっている。

「うそ、なんだ。騙したんだ!なあ、戦争とか、しないよな?だって、あっちには何にもないんだ!平和なとこなんだ!」
「お前の協力次第だろう?」
これは、脅迫なのか。クラフは測りかねて何度も瞬きする。
「お前が協力してくれて、この件が片付いたら普通の生活に戻れるんだよ。長い間、衛星からは観測されていても、実態のつかめなかったBSAと国交を結ぶんだ。成層圏に人類の新たな基点が出来る。実はね、クラフ、成層圏を航行できる乗り物を作ったのは私が初めてなんだよ。私はね、天才なんだ」
恍惚としてオクトは自慢話を始めた。

BSAが発見されたのが二十年前だと言うこと、さらに五年後、そこが何もない空間ではなく、人間らしきものの暮らす土地であることが、衛星の映像で確認されたこと。
しかし、そこにたどり着ける方法がなかったために、混乱を避けアメリカ合衆国はそれを伏せていること。
本来なら、成層圏を航行できる乗り物を作ったオクトは世界的に有名になってもおかしくはなかった。しかし、その技術が公表されれば、成層圏にあるBSAの存在が明らかになってしまう。
そのために、オクトの発明は隠され、アメリカ空軍とNASAの一部でのみ知られていた。
BSAのおかげで私はノーベル賞を取れないでいるがね、NASAでは私は有名人なんだよ。
そう言って、オクトは話を結んだ。

クラフはあの飛行船を思い出していた。飛行船のような動力を使わない乗り物でなくては、酸素のない成層圏を飛ぶことは出来ない。つまり、燃料を燃焼させるエンジンの類は無酸素空間では一切利用できない。

だからこそ、今でも成層圏観測は衛星からの映像や観測データ、そして、観測装置を積んだ無人の気球で行われる。気圧が地上の数十分の一と言われる成層圏で気球は数倍にも膨張し、限度を超えて破裂するのだ。
その環境を通り抜けて航行してきたあの飛行船は、確かにすごいものだ。クラフの興味を誘った。
同時に、まだ、戦闘機を送るほどの科学力はないことを知って、内心安堵した。

どうやって、飛行船を作ったのか。飛行機を作る自分と同じ問題を抱えて、それを解決してきたはずだ。わくわくしてくる。
お父さんは、やっぱりお父さんだ。
「すごいな!ねえ、オレ、聞きたいことがたくさんあるんだ」
「それが、お前の希望かい?答えてあげたら協力してくれるかい?」

一瞬浮かんだ笑顔も、消える。

「!ずるいよ!!そんなのフェアじゃない!オレの方が知らないことたくさんあるんだから!なんでもかんでも、条件にされたら、オレ何にも聞けないだろ?」
そこで、オクトは笑った。
そういう笑みを、どこかで見たとクラフは感じていた。
こちらが何をどういっても、ただ、笑っている。表面上は。
そうだ、ブール候。
「もういいよ!」
クラフは表情を固くして、立ち上がると自分の寝室に向かおうとする。
オクトの合図でSS(シークレットサービス)の一人が立ちはだかった。
「…どけよ」
「クライフ、お前はまだ、何の力もない子供なんだよ。さ、お行儀の悪いことは止めて、静かに食事をするんだ。ランチでこんなことをしたら、ただじゃすまないよ」
黒いスーツの大男に強引に席に座らされて、クラフはテーブルに転がるスプーンを睨んでいた。

「仕方ないね、ほら、ナイフとフォーク、使ってごらん」
リビングルームから、ナイフとフォークの不器用な音が響いていた。

取引③へ続く♪
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ミナモさん♪

ありがとう♪
やっぱり大人は強い上にずる賢い…オクトにはしっかり悪者をしてもらいますよ~♪
クラフ君…どう出し抜くのか。
勝てるのか!!

クラフ「ま、任せておけって!」
セキア「…賞賛はあるのですか?」
クラフ「…オレ、天才だし。皆に会うって言っただろ」
じじい「…くーちゃん(涙目)」

太刀打ち出来るのかなぁ?

う~ん。
そうでなくても、子は親には勝てる事が少ないのに…。
クラフは太刀打ちできるのかな?
この、一枚も二枚も上手なお父さんに…。

こうなってくると、これも計算だったのか?って思っちゃいます。
語学力が拙いクラフ。
その状態で戻ることも、計算の内だったのかな?…なんて。

あぁ…。
クラフ…頑張って!
お父さんに、負けないでっ!!!

ユミさん

ありがとう!
ふふふ、オクトさん!いったいどういう父親なのかって…本当に、父親という自覚はなさそうですが(^^)
ますますパワーアップしちゃうかもです、この父親!もう、皆からくぁーv-359とか、ごるぁぁあv-355とか、反感買いまくってます!

普通のお父さんなら、子供が知りたいという欲求を満たして
あげるのにね…まぁ、コトが大きすぎて、教えて上げられない
ことだってあるけどさ~。でも、クラフくんにばっかり条件つけ
ちゃって、今までも辛い思いさせてきたのに、これ以上はやめて~。

クラフくんがサンドウィッチを分解している姿、かわいいです。
やっぱり発明家^^というか、どうなっているのか、それが何か、
知りたいというクラフくんの行動、子供ならではですよね!!

ホーリ先生!

深夜に、大丈夫ですか?お忙しいんですね!
ありがとうございます!
ええ、嫌な奴です!クラフくん、頑張りますです!
成層圏を飛べる飛行船の設定、結局こそこそっとぼかしています。力不足ですね。いえ、想像だけでも発明できたら、そりゃ天才ですね…(^^;)らんららこそ、ホーリ先生のリアルな知識と壮大な想像力を尊敬してます!

このおやじ・・・

何とも身勝手な奴と言うか・・・
こりゃクラフ君も一筋縄では行かないぞぅ!

こんばんわ♪
またまた一気読みしてしまったホーリです。

今後の展開が大きな山場となりそうですね。
しかし、このおやじ。何考えているんだか!
きっと自分主義に凝り固まった奴なんだろうなぁ~。
それはそうとクラフのお母さんは、どんな人なんだろう?
クラフにとって今後の鍵はお母さんなのかな?

らんららさんの小説読んでて、兎に角「旨い!凄い!素晴らしい!」と思わずにはいられません。
自分の未熟さを痛感しますわ。(苦笑)

こめんと嬉しい♪

kazuさん
毎回ありがとう!テッタくんも喜んでおります!
くらぁぁぁ!って感じですか!ですね!
クラフくんのこと、絶対子供だ何て思っていない…きっと!
説教、食らわしてください!

chachaさん
オクトかなり嫌われてますね!いいんです!そう!彼は汚れ役!
クラフくん、微妙な気分ですが、気を抜いてはいけない相手、そこはがんばらないと!カーチスさんにも言われたしね!自分の向けたい方向に流れを変えるために。じっくり観察する、相手を利用する。
クラフくん、出来るかな?

桜さん
膝かっくんですか!らんらら、それ、やられたことないんですよね!
ドキッとしちゃう?ちょっとやな感じになる?
宙のこれから。クラフくん、大変ですね!ううん、これ、悲劇にしたくはないけど、でもうまく行く可能性低そう…


楓さん
波乱万丈!?楓さんのところでも言えた義理ではない!?まさか!!!き、気になる!
ええ、アメリカ相手です!勝てるか!勝てませんv-389クラフくん、どうするのか!
っていうか。気になる!マー様!!!
すみません、らんらら、もう、行かなくちゃ!マー様の下へ!!

ちゃ~~~・・・ちゃらっ!アチョー!!

燃えよドラゴンです。はい。
オクトやばし。
です。
クラフ君のこと、完全に格下の取引人としか見ていないですね。それでも親か?クラフ君の親なのか?本当に?えー嘘だろ??さいてーだね。サイアクだね。お前一回○んでこいって感じだね!←自主規制
・・・
ちょっとすっきりしました。
どうもあちこちのBlog小説で波瀾万丈の展開が繰り広げられていますが、ここでも・・・うるぁぁぁぁあああああ!!!な展開に!!!ゲホゴホッ・・・かくいう僕も言えた義理ではありませんが。うふにま♡
桜さんがおっしゃってますが、科学レベルの異なる国家間で対等の国交を結ぶことはまずあり得ないですよね。ましてや、百戦錬磨のアメリカ・・・ダメだ・・・クラフ君の絶望が伝わってくるようです。
にしても、成層圏の話、ほんとらんららさんは努力家というか作家魂を感じますわ~。勢いと知ったかで書いている僕とは大違いでふ。汗

サンドウィッチの分解は、私も小さい頃よくやりました(笑)
挟む具によってはお皿の上がぐちゃぐちゃ…!

国交ですかー…。
科学技術レベルの異なる国(世界)が、対等の関係を結ぶとは考え難いです…。

オクトに膝かっくんして、さらに背中に跳び蹴りしたいです!!(←危険)

同じく!!

ムッカァ!!!><
何だこのオヤジ!!(笑)
クラフのこと、ただの便利人とでも思ってるのか!!?
最悪だーー!><

この人、ちょっとでも気を抜くと上手く騙されそうですね@@;
クラフはそれを感じ取った。
だから、下手に頷くことは、しない。
そうそう、その調子だクラフ!
実のお父さんでも、君を実験台に使った奴だぞ!
心を許すのはまだまだしちゃいかんぞ!!(笑)

宙もなんだか危ないんですね、そう考えると。
オクト、真の望みは、何??
ヴェデリットさん、どういう人なんだろう??
続き、楽しみにしてます^^

む・・・むっかぁぁぁ

ええかげんせぇよ・・・お父さんや・・。
はっ、すみません。汚い言葉遣いを・・・
・・・・しっかし・・・こう、オクトさん。
自分至上主義?なぜそこまで自分を賛美して、自分の子供をそこまで押さえつけるかなぁ・・。
クラフ君が、可愛そうすぎて・・・。
自分の意図していないところで全てがうすんでいて、宙を蹂躙する道具に自分がなろうとしている。
かぁぁぁっ、もう、オクトさんを前に説教したい気分です!!
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