10
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
   

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

「宙の発明家」第三章五.取引③

●取引3

食事が済むと、クラフはシャワーを浴びて、着替えるように命じられた。
ずっと、つまらなそうな顔をしてサングラス越しに外を眺めてばかりいた少年に、オクトは念を押すように言い含めた。



「いいかい、お前は彼に、BSAについて話すんだ。自分からは何も言わなくていい。彼の質問に素直に答えるんだ。いいかい?ほら、知りたいことがあるといっていたね。教えて欲しければ、言うことを聞くんだ」
数人の仕立て屋が呼ばれた。同時にたくさんの服が持ち込まれた。
呆れ顔で見ているクラフの前で、それらが広げられた。
白いシャツ、品のいいジャケット。毛の入った柔らかな織物のパンツ。黒、チャコールグレー、ダークグリーンの入ったチェック、折柄の複雑なものや、皮のアクセントをパイピングいてあるもの、レースが上品に効いているニットやベスト。
毛皮のついたロングジャケットや帽子。何もかもをクラフの体にあわせて仕立て屋が直すのだという。次々と、いくつものパンツをはかせては裾上げの待ち針を打っていく。
そうしているうちに、最初の一本が仕上がってくる。
まるで、人形になった気分だと、クラフは思っていた。
始めのうちは髪の色がとか、肌の色が綺麗だとか、瞳の色にはこれがぴったりだとか、おだてるような口調で褒めていた職人たちも、数をこなすうちに無口になる。クラフ本人も飽きてきて、無口になっていた。
やっと、一通り、着尽して、クラフは開放された。
白いぱりっとしたシャツ。胸のポケットとボタンホールのところに少しレースが縫いとめられていることが気になったが、それは生地と同色で、わざと平面的な装飾のみに使われていて、それほど、派手でもなかった。
カフスの周りを飾る白いレースも、まあ、そういうものだと思えば我慢できた。
クラフには地上のファッションなど知る機会はない。自覚もあるので、それほど服装に関して不満はなかった。
金髪を散髪し、綺麗に整えて、スタイリストがクラフの髪に何が甘い匂いのものを塗りたくってまとめた。
クラフはその人の耳にピアスを見つけ、カーチスみたいにピアスをしたいと言い出し、オクトが不機嫌になり、スタイリストは慌てる。
結局、ピアスは穴を開けるのだと、痛いからダメだと説得され、クラフは口を尖らせながらもあきらめた。

客はトマス・ヴェデリットと名乗った。
すごく背の高い、筋肉隆々の男性で、黒いスーツの下に収まっている立派な体躯をクラフは想像できた。
顔は首が太いせいか、小さく見える。
太い眉はまっすぐで、小さな目は黒い。
頬骨と額の少し出た感じの、ごつごつした印象の顔だった。
クラフとオクト、ウェデリットの三人で二つ目の小さなリビングの丸いテーブルを囲んだ。
そこは、クラフが最初に入った広いほうとは違って、窓はなく狭い。日差しが苦手なクラフは、返って窓がないほうが気楽だった。

シャンデリアの光を、スプーンやナイフがちらちらと弾く。薄明かりに調整された室内には、スープの匂いが立ち込めた。
黒い革張りのチェアに座って、クラフはおとなしくスープを口に運ぶ。
パセリのみじん切りを散らされてあって、本当は吐き出したいくらいまずかった。
皿が置かれてしばらく飲まずに睨みつけていたら、オクトが「どうした?食べないのかい?」といったので、今は無理やり飲み込んでいる。鼻をつまんでいると思い込むことで少しは飲めた。
途中、むせたのをウェデリックは笑って見つめ、慌てることはないし、そんなに緊張することもないのだと、低い穏やかな声で言った。
おもわず、パセリをかんでしまって、ぎゅっと目をつぶったクラフは、泣き出しそうなくらい情けない表情で、男を見上げた。
男の目は油断ならない笑みを浮かべていた。
「クライフくん、君の体験してきたことはとても重要なことなんだよ。教えて欲しいんだ」
クラフは男をじっと見つめた。
「私たちはね、あの場所の環境については調べてあるんだ。大気組成から気象、公用語。しかしね、あちらの政府や文化、宗教などの組織については、皆目分からなくてね」

クラフは綺麗に整えられた前髪の下から、明るい茶色の瞳で男を見上げた。
「あそこにはいくつの国があるのかね」
クラフは目を数回ぱちぱちとさせ、ふと、息をついた。
「国の概念はないよ。土地を城壁で囲んで、それ以外は何もないから。確か、8万平方キロメートルくらいだと思う。七つの街と二十一の村。人口は約…」
ごほん、とオクトの咳払いで、しゃべり過ぎだと気づく。
「いや、いいんだ、続けてくれたまえ。人口はどのくらいなのかね」
「大佐、子供のいうことですから、そういったことは、私たちにお尋ねください。信頼に足るデータとは」
オクトが口を挟む。
「ロイズ博士、私はこの子と話がしたいのだ。第一、君たちのチームがどこまで分かっているというのだ?この子の話すデータを検証することも出来ないのだ、否定もできまい」
「は、はあ」
オクトの表情は悔しさで歪んでいた。年齢で言うと、父親と同じくらいのこの軍人をクラフはじっと観察していた。大佐、と呼ばれていた。
私服なので所属は分からないが、内容からすれば空軍だろう。カーチスが空軍であることを考えれば、直属ではないにしろ彼の上司に当たるはずだ。どちらにしろ、当たり障りのないことを話すしかないと腹を決めていた。
オトナなんだから。協力した代わりに、聞きたいことを聞いて、それからクリスマスプレゼントを要求するんだ。クラフはそう考えていた。

取引④へ続く♪

関連記事
スポンサーサイト

楓さん

深いー!
読みますね!へへへ。らんらら、浅い人間ですから♪なーんだって、怒らないでね(^^)
アンチ同盟、誰でも自由参加ですよ!
でも、楓さんアンチメラニス同盟はダメですよ!入れてあげないv-8マー様復活の手土産がないと♪って、でもマー様の生みの親はやっぱり楓さんだからなぁv-344ドキドキさせられてるしなぁv-398感謝感謝なんですよ、いつも「ひどい!」って叫んでるけどね♪

らんららもアンチオクト同盟は入れそうにないですね。特にこれから先、皆さんを「いやー!!」って言わせようと画策中…。

むむ・・・

アンチオクト同盟・・・惹かれる♪
でもなんか入れてくれなさそう・・・涙。
大佐、微妙ですね。
僕はむしろオクトさんにかすかな希望を見た思いがしたのですが、気のせい・・・かな?
クラフ君が思わず人口を言おうとして待ったをかけたオクトさん、それを制し、知りたがった大佐・・・彼が空軍の大佐であると言うこと、アメリカはあわよくばBSAを無条件降伏させようと企んではないかと危惧している僕にしてみれば、大佐にあそこの内情を明かすのは得策でないような気がしてなりません。そして、オクトがそれを止めた・・・
単なる派閥抗争のせいなのか、もっと別な思いがあるのか分かりませんが、この一件に関して言えば、オクトはクラフ君の味方だったように思えるのですが、いかが??

chachaさん

おお!よかったね、オクトさん。理解者(?)が一人!うん、どうでしょう(^^)オクトさんにはオクトさんの理由はあるかもしれないけどね♪深読み、ありがとうございます♪(らんららの性格を見抜かれている気がする…v-347
大佐、彼はある意味…いえいえ、むぐぐ…言えない、今は言えない…。

kazuさん

おお!アンチオクト同盟!?あちこちで巻き起こる「うげー」な展開に、アンチ同盟春の強化月間かもですね!さらに暴れるオクトさんにご期待ください(笑)
でも、クラフくんだって負けてない、はず!がんばりますよ、待っててください!
やられっぱなしなんて、クラフくんの性にあわないハズ!
ヴェデリットさん…(メンドクサイから大佐で)いい人、かな?どうかな?ふふふ♪そんな、らんららお人よしだから、悪い人はかけないですよぉ(ふふ…)v-391

クラフ:応援ありがと♪

花さん
お♪心優しい青年、来てますね!そうですね、この状況。彼の存在が救ってくれるといいのだけど、いかんせん、お人よしのただの従業員ですから!ふふ。いずれ、出てきますけどね♪
ヴェデリットさん、いい人か悪い人か?むむ。らんらら、そう言う観点で見たことなかったなぁ(おい^^;)
皆さんの判断にお任せします!

ユミさん
ふはっはは!「あげてる」太文字設定までしていただいて、怒りが伝わってきます♪クラフくんに、自由かぁ(遠い目…)
でも、がんばりますよ!ただ、やられてるだけじゃ、わがまま天才の設定が泣きますから!!


と、コメ返し中ですが、同居人を起こす時間になってしまった!!

うーん・・・

オクトって、本当に嫌な奴だなぁ~^^;
でも、クラフのお父さんだし、何かしら訳があるのだと信じていたい気もします・・・
ので!今は目を瞑っておくことにしますね(笑)
それに、kazuさんが言ってるようにきっと自分よりもクラフの方が知ってることが多いから・・・ちょっとムッとしてるんでしょうね@@;

で、ウェデリットさん。この人はまだまだいい人、悪い人、という区別がつきませんが・・・
いい人であって欲しいなぁ><
そしてクラフが宙へ行くのに力を貸して欲しい!
う~ん、ドキドキしております☆

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

オークートーめー

ますますオクトを嫌いになりそうな、感じですv-359
アンチオクト同盟作ろうかしら(笑
普段は着せてもあげない(いや、クラフ君はきたくないでしょうが)服をその場しつらえで作って、おとなしく食事をさせて。
聞かれたことに答えれば、話しすぎだという。
クラフ君は人形じゃない!!
いうことを聞いていって欲しいことだけ話して・・・、自分の子供でも自分よりも知っていることが許せないんですね。
大佐、いい人そうだけれど・・・・
いい人であってください!

喋りすぎか~^^;
せっかくクラフくんが話してあげてるのに、オクトの横槍…。
ねぇ、大佐、クラフくんと2人きりで話したらいいのに。
クラフくん、いったいいつになったら自由にできるんだろう(>_<)

う~ん、やっぱりオクト、嫌いだ…。
子供だからって、舐めるんじゃない!クーちゃんはそこらの大人よりよっぽどオトナだぞっ!
トマスさん、いい人ならいいんだけど…偉い人って、立場とか鑑みて、横暴気な人多いからなぁ。協力した代わりに、ちゃんとプレゼント、もらえるんだろうか?あんまりそうは思えないけど…。
頼みの綱は、あの心優しい青年だよっ!クーちゃんをしっかり助けてあげてね!
Secret

プロフィール

らんらら

Author:らんらら
のんびり小説を書いています
日記ブログはこちら♪

ランキング参加中です♪

クリック よろしく~♪

FC2Blog Ranking

最近の記事+コメント

FC2カウンター

リンク♪

小説ブログの皆様

カテゴリー

ブログ内検索

RSSフィード

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。