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「宙の発明家」第三章六.HOME③

●HOME3

白い壁、ダークグレーの三角の屋根。屋根の一番高いところには、ミッキーマウスの形の風見鶏が、遠く背後にある高速道路のオレンジの明かりに今は冷たくシルエットだけを見せる。
二階建てのその家の窓は、すべてに明かりがともっているようで、窓辺に置かれたメリークリスマスのライトと、スノーマンがぼんやりと光っている。レースのカーテンの向こうから、温かそうな灯りがもれる。
「これ、ほら、ミッキーのポスト、かわいいだろ!ボクお気に入りだったんだ」
懐かしいものを見つけて、クラフは嬉しくなる。



イルミネーションライトが、芝生の庭を照らしていて、かなり明るい。
庭の隅に小さい子供用のミニポルシェを見つけて、スミスが、クラフの肩に手を置いた。
十年前のものには、見えない。
他にも小さな子供がいるということか。
青年の表情がすこし緊張している。

「あんたが緊張してどうするんだい」
運転手が笑って、スミスの背をたたいた。
「は、はい。でも、十年ぶりなんだよね?クライフくん、緊張しないかい?」
クラフは、ぎゅっと口を結んで、傍らの青年を見上げた。
「行って来る!」
玄関に向かって少年が駆け出した。

「あんた、アホかい?あの子はずっと緊張してただろうが。でなきゃ、あんなにはしゃげないだろ」
「…それで、あなたもついて来てくださったんですね」
スミスは胸に手を当てていた。
クラフの気持ちを考えるだけで、どきどきしていた。

「情けねえなぁ、あんた。おっと、いけね、ほら」
運転手に促されて見ると、ちょうど、玄関の扉が開いたところだった。
細身の眼鏡をかけた若い男が出迎えたようだ。
二人も慌てて追いつく。
クラフは何も言えずに固まっていた。

「あの、すみません、こちらはクレア・ロイズさんのお宅ですよね?」
スミスが怪訝な顔をしている男性に尋ねた。
青年の営業用スマイルは相手を安心させたようだ。物騒な地域ではないが、夜の訪問者に警戒するのは当然だ。
若い男性は少し困ったように微笑んで言った。
「あ、いいえ。それは、以前住んでいた方だと聞きましたよ」
「引っ越したんですか?」

「いや、亡くなったって、聞きましたよ?高校の先生をなされていたとか。女性の方ですよね。確か一人暮らしで」

運転手は、クラフの肩を背後から支えた。
男は首をかしげて、表情のない少年を見つめた。
「詳しくは知らないですが。でも、この辺で亡くなったのなら、この先の公園墓地に埋葬されたと思いますよ」
「ありがとうございます」
スミスが丁寧に礼をいい、男が扉を閉めようとしたときに、男の背後に奥さんらしい人と小さな男の子の姿が見えた。
一瞬のことだったのに、クラフの印象に強く残った。
「クライフくん?」
扉が閉められたことにも気づかずに、クラフはスミスの声で我に帰る。

二人に、押されるようにして、庭を歩き、再びタクシーに乗った。
少年は黙り込んだまま、大きく見開いた目でぼんやりしていた。
二人も、何も声をかけられずに、ただ、冷たい夜の景色が流れるのを見送る。
イルミネーションが、きらきらと雨ににじんでいた。

墓地は、暗く静まり返っていた。
敷地内の小さな教会にスミスが駆け込んで、場所を聞き出してきた。普段は無人だが、クリスマスだからか明かりがついていたのだ。慌てて走る彼が不思議に思えて、クラフは何度も首をかしげた。

「大丈夫かい?」
スミスが何度も言った。
クラフはよく分からなくて、答えられなかった。

墓地は暗かったけれど、夜目の利くクラフには、その様子がよく見えた。
雨にぬれて、黒くぴかりとする墓石。
クリスマスだからだろう、リースの形の花輪が飾られているものもある。
不意に二人が止まって、クラフは躓きそうになった。
「ここだ」
どこかで、スミスの声がした。
墓石には、知っている人の名前があった。

お母さん。

そう、気づいたときから、視界はぼやけて見えなくなった。
「大丈夫かい、クライフくん?」
「ま、そっとしておいてやんなよ」
運転手の声に、クラフはいつの間にか自分にかけられていた運転手の上着に気づいた。それを脱いで、返そうとする。

運転手は無言で受け取ると、もう一度、少年の背にかけた。そして、ぎゅっと抱きしめてくれた。
顔に当たる雨が、温かく頬を伝った。うまく目を開けられず、何度も、何度も瞬いた。
「お母さん……」
少年は震えていた。
小さな嗚咽は、冷たい雨の闇に吸い取られる。



それより一時間ほど前。
ケープカナデラル空軍基地内のカフェで、青年はサラダをつついていたところだった。先日のデートの成果を同僚に披露しながら。
そこに、携帯の連絡が入った。
「おい、カーチス、さっそくお誘いか?熱いねぇ」
テーブルを囲む同僚が、口笛を吹く。
「まあ、そうひがむなよ」
カーチスはちらりと送信先を確認すると、そこを離れた。

ローザからではない、ロイズ博士だ。

HOME④へ続く♪
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花さん

セキアさん…いてくれたらきっと、いっぱい泣いちゃうかも~v-409
ふふふ。ボート、お分かりですね、さすがです!いえね、もうちょっとひねりたかったのだけど、上手い言葉が見つからなくて…。
詩的…♪嬉しいです!くーちゃんが聞いたら「俺天才だからさぁv-391」って言いそうですね!

そんなぁ…折角会えると思ったのに、、、(ToT)
ほんのわずかな時間しか過ごせなかったお母さん。胸の中の温もりは、もう触れられないんですね…。
クーちゃん多分嫌がるだろうけど、こんな時こそセキアさんがいてくれたらなー、と思う花です。。
>「3人乗りのボートに、4人乗ったら沈むんだ」
なぞなぞなんて、バッカじゃない?って思っちゃいましたよ。ホントに、ただ事実を述べてるだけなのにねぇ…。
その通りだと思いましたよ。クーちゃん詩的っ。

ユミさん

ありがとうー!!
すっかり残業まみれ(笑)のらんらら、朝子のこともきになっているのに!!でもでも。時間のあるときにじっくり泣かせてもらうんだから…と我慢してます…v-409

くーちゃんのお母さん…どこかで…それは、クラフくん君の胸の中でv-217いえいえ…お母さんには死んでいてもらわないとv-217
もの書きたるもの、時には非情でいなくてはv-217

そっか~…

お母さん、亡くなってたんですね。とても残念。
母子の感動の再会…で、お母さんにクラフくんの味方
になってもらいたかった。
でも…クラフくんが一瞬で強烈に印象が残ったシーン。
なんだろ…。わたし、お母さんは別のとこで生きてるような
気がします♪
もしや、会えないように監禁してるとか。

それにしても、スミスさんもだけど運転手さんもいい人。
クラフくんを支えてあげてください!!

おはようございます2!

あわわ、時間がなくて楓さんのコメ返し中途半端になっちゃった…ごめんなさいー!!

chachaさん
そうですね♪スミスさん、運転手さん、二人の存在があってくれて、クラフくんよかったです♪(さすがにらんららもそのあたりは温情派ですから…v-377)スミスさん、カーチスさん、みんなの期待を背負っていますね♪どうかなぁ?
v-367そうですねぇ…ちょっとティッシュ必要かもです、もうしばらく…。

龍くん
ごめんね、レスすらなかなか。というか、精一杯なんです今!
仕事がね…v-404
必ず読みに行きますよ!!
待っててねー!!




おはようございます!!

kazuさん
泣かせてしまいましたね…どうしよう、これからどんどん、らんらら嫌われるかも…
よしよし、泣かないで♪ほら、v-377
ええと、ほら、v-367
kazuさんの「一人暮らしと思われてしまうほど…」いい読みですよ!!んー!そう受け取っていただけるとすごーく後にいい♪
カーチスさん、どうでしょうね?見守ってやってください!!

楓さん
そうなんですよぉぉ!!
生きてる?いえいえ、そんな、面倒な…(ガツッ!!v-217
は、今、なにか、セキアさんらしき影が…何だか、痛いような???
疲れているのかなぁ…
楓さん繊細な部分、気づいてくださって嬉しいですよ♪(思い出の家に住んでいた家族の姿に、ええ、クラフくんは自分を見ました…幸せだった頃の)って、今不幸なのか…そうか!!気づかなかった!!
v-217

どーも

宙の発明家、もう少し余裕が出来たら一気に読ませてもらいますね。
それと、君がためよーやく更新しました。
お時間がありましたら是非読んでみてください。

えぇぇ;;

クラフのお母さん・・・亡くなってたんですか!?;;
最初、そんなに古くなさそうなミニポルシェを見た時、「まさか再婚!?」って思って・・・
それなら辛いなぁとか思っていたら!!
亡くなっていたなんて!!><
どんなに変わっててもいい、もし、冷たく追い返されたとしても、その方が良かった。まだ、生きてるんだから・・・
クラフ、相当きましたね、これは。
タクシーのおっちゃんも、スミスさんも、行きずりの少年にここまで優しくしてくれて・・・
人の温かみが側にあると、余計に泣いてしまうもんですよね、こういう時って;;

オクトは黙ってたんですか。
でも、大佐は「まだ会わせてないのか」って言ってた・・・
知らないのかな?@@;
あ、墓石に会わせてないのかってことだったんですかね。

どっちにしろ、クラフが逃走してまで会いたかったお母さん。
せめてもう少し早くに教えてくれていれば・・・

カーチスのもとに電話がかかってきましたね。
また、何やら動く気配が・・・><

はぁぁぁぁぁぁ・・・

亡くなってましたか、お母さん。
・・・ほんとに?←と疑ってみる(笑
切ねぇなぁ。
お母さんは息子を亡くし(とオクトから説明されている)、オクトは研究ばっかと寂しい想いをしながら亡くなったんでしょうね。彼女を殺したのはオクトみたいなもんですね。やっぱダメだあいつ。叫ぶのを通り越して素で腹が立つぜ。
かーとすに電話?
あ?
どっこいそんな電話無視しちまいな、かーちすの旦那よぉ!
>男が扉を閉めようとしたときに、男の背後に奥さんらしい人と小さな男の子の姿が見えた。
これ辛い。
これは凹む。。。涙
しかし、考えようによっては、ますますこれでこっちの世界にクラフ君が残りたいと思う動機は無くなったわけで・・・いよいよBSAに向かって前進あるのみっ!!ですね。

そそそ・・・そんなぁぁぁ

涙で画面が歪んでます・・・・v-406
そんな・・・まさか亡くなっていたなんて・・・・・。
大佐がオクトにまだあわせてないのか・・・といっていたけれど、あわせたくても会わせてあげられなかった。
オクトさんは研究に専念していて、後から住んだ人に1人暮らしとおもわれてしまうほど、お母さんは1人だけで暮してた。
突然、突きつけられたお母さんの死。
お母さんが今のクラフ君にとっての、希望だったのに。
明るく温かい場所だったのに。
・・・・うわぁぁん、らんららさん~
そんなぁ・・・そんなぁぁぁぁ
スミスさんがいてくれてよかった。
100ドルをあっさりもらったタクシーの運ちゃんも、ちゃっかりやさんだけど、優しくてよかった。
理解できなかったクラフくんが、墓石の前で涙を流す場面。もう、私がこらえられなくなりましたよーv-406

カーチスさんに、連絡が行きましたね。
オクトから。
・・・このあとどうなっちゃうんでしょ・・。
泣きながら待ちます・・・・
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らんらら

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