08
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
   

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

「宙の発明家」第三章七.隠し事②

●隠し事2

つかつかと歩み寄って、オクトはクラフの頬をたたいた。
「お前は!勝手なことばかりしおって!」
「うるさい!ボクが戻ってきても知らん顔して避けてたくせに、逃げ出したボクを自分で迎えに来る勇気もないくせに!都合のいいときだけ父親面するんだ!」
クラフは反撃しようと、父親につかみかかった。
「待って!」
「止めてください!」
ローザとカーチスが二人を引き離した。




「止めるなよ!カーチス!母さんが死んだこと、教えてくれなかったんだ!隠していたんだ!なのに、ボクが母さんに会いたいってこと利用して、交換条件を出した!そんなの、父親じゃない!」
「黙れ!お前こそ、私たちの計画を台無しにした!」
「母さんは何で死んじゃったんだよ!!どうしてだよ!教えてよ!」
少年を抑えるローザの手に、温かいしずくが落ちる。
ローザは思わずクラフを抱きしめた。
「……どうして、だよ」
ローザは一瞬、再開した子供を思い出した。七歳の彼も、こうして何かを押さえ込むように、言葉少なく泣いた。
抱きしめる手に力が入る。

「知りたければ、邪魔はするな。私に従えば、教えてやる」
オクトの言葉に、ローザは振り向いた。クラフも、顔を上げた。
少年の父親は、白髪の混じった茶色い髪を軽くかきあげ、眉間のしわを深くして睨んでいた。
「博士、そんな…」
ローザの言葉をさえぎるように、クラフが叫んだ。
「ボクは知っているんだ!BSAについて誰も知らないことを、ボクは知っている!でもそれは、大統領にしか話さない!そう決めたんだ!それを知ったら、こんな研究全部おしまいになるんだ!」
「ばか…」小さくつぶやいたのはカーチスだった。
手の内を明かしては、不利になる一方だ。
だが、今のクラフにその余裕はなかった。仕方なかった。
「…なぜ、大統領なのかね」
ヴェデリット大佐が、静かな口調で尋ねた。
「…大統領なら、あんたたちを止められるから。きっと、大統領が知ったら、止めてくれるから。宙と国交を結ぶとか、軍隊を送るとか、そういうの絶対ダメなんだ!宙はあのままでなきゃいけないんだ!」
「お前は、私の邪魔をする気か!」
再び暴れ始めたオクトを、カーチスが抑えた。
「落ち着いてください!」
「ロイズ博士」
にらみ合う親子と止める二人。それを、ヴェデリットだけは、じっと見ていた。
口を開いた。
「大統領を、お招きしよう」
皆がいっせいに、大佐を見つめた。
「ニービア氏を通じて、大統領との極秘裏の会談を打診された。ニービア氏はお前に興味を示している。だが、お前と話はさせない。お前は我らに話せ。いや、話してもらう」
冷たい視線に、ローザがごくりと息を飲んだ。
「子供に、乱暴は…」
カーチスがかすれた声で訴えた。
「…ふん。確かにな、後味は悪いだろうな。ま、なにを選んでも同じだが。ローザ、薬を用意しなさい」
「あの!」
目を丸くして、ローザが縮み上がった。
「蘇生装置とスタッフを用意するんだ。君にもいい実験になるだろう?君の作品がどの程度耐えられるのか、楽しみじゃないかい?」
「薬って、…何?」
クラフが、胸に手を当てていた。大きな目をローザに向けている。
ふんと鼻息をはいて、オクトが話し出した。
「自白剤と呼ばれるものだ。正式にはそういったものはなくてね。目的に応じて、薬剤を使い分けるんだ。基本的に、大脳を麻痺させるわけだ。
記憶にある一つのものを、拒絶しようとする意思だけを抑制し、言葉にして話させるのは、ひどく難しい作業でね。効果にも個人差があるからね。言語中枢を麻痺させれば言葉が出なくなるし、呼吸中枢にまで達すれば、呼吸も止まることがある。しかも、強い薬だからね、後遺症は避けられない」
「ロイズ博士…」
カーチスが、青い顔でにらんだ。
「まあ、うまくいけば、植物状態くらいは保てるかも知れんな」
「!あんた!それでも、父親か!?」
カーチスにつかみかかられても、オクトは表情を変えない。

口元に笑みすら浮かべる父親を睨んで、クラフは、涙があふれそうになるのを我慢していた。手が震えている。
ローザが、その手をぎゅっと両手ではさむように握った。
クラフが女性に何か言いたそうに顔を向けたとき、涙がこぼれた。
「嫌なら、話せばいいんだ。今ここで。そうだろう?クライフ」
少年は目を閉じた。うつむいて、それからかすれる声で言った。
「…いやだ。話さない」
「クライフ!お前、それじゃ、どっちにしても、BSAを救えないだろ!お前が死んでしまったら、意味ないだろう!」
カーチスが肩を激しくゆすった。
それでも、クラフは頷かなかった。



白い部屋に、クラフは横たわっていた。
ここに来た時、最初に眠っていた変な白い部屋。
透明な箱のようなものは今はなくて、ごく普通の手術台に、寝かされている。
眩しい照明。
「サングラスほしい」
ポツリといった言葉に、答えるものはいない。
人の気配がしていた。
頭も、腕も足も。何かで固定されていた。無理に動かすつもりもないけれど、ただ、目だけで周囲を見渡すことに、クラフは疲れてきていた。
頭を動かそうとしてギシと何かがきしんだ。
人の争うような声が聞こえた。男性のようだ。オクトと何か言い争っている。
カーチス、かな。オレのために怒ってくれているのかもしれない。
ぼんやりとそんなことを考えていた。
ちらりと、ローザの姿が見えた。青白い顔で、悲しげにクラフに視線を投げたが、それも一瞬で、ドアの開く音とともにそらされた。
「ったく、腰抜けが!」
「あの、なにか」
ローザが低く問いかけると、オクトは鼻息も荒くクラフを見下ろすとにらみつけた。
「ふん、助手はなしだ、ばか者どもが!」
「…あの、本当にこれでいいのですか?」
ローザの言葉が静まり返った室内に響いた。助手、デアマンを含めて三名いる。全員に拒否されたのか。それでも、やるというのだろうか。

「ふん、こいつが話せばすぐにでも止めてやる、そうだな?クライフ。私だってこんなことはしたくない。お前が意地を張るから悪いんだ」
耳をそばだてていたクラフの顔に影がかかった。
嫌でも視界に入るオクト。彼はクラフに顔を近づけて覗き込むと、にやりと笑った。
「いやだ、話さない!」
「博士、やはりこれはいくらなんでも」
「ローザ、君がやらないなら私がやる。このままここで、爪でもはぐか?」
オクトの手がクラフの動けない手首を掴んだ。
ピクリと、震える。
「くく、痛みはない、薬の方がいいだろう?」
クラフは目を閉じた。冷たいオクトの手の感触が離れた。
「好きにすれば、いいんだ」

静かにとくとくと鼓動を感じる。この心臓が本物じゃないように、感情に合わせて大きくなる鼓動だって偽物なんだ。この感情だって本物じゃない。悲しくなんかない。悲しんでなんかやらない。
あんたなんか、お父さんじゃない、オレには親なんかいない
自分に言い聞かせるように少年は思う。

「この選択は、間違ってない」
瞳をぎゅっと閉じたままクラフが言った、この言葉だけはローザにもはっきり聞こえていた。

意識のある状態で使用しなければならないために、少年は手足を拘束されていた。
いざというときに使う目的なのか、傍らには医療機器が並ぶ。単調な音を響かせて、波長が心臓の鼓動を伝える。静かな室内には、機器の冷却ファンや小さな機械音がはっきり聞こえていた。
人の気配を感じて、クラフは目を開いた。
手術着のローザの顔が見えた。
こちらを見下ろしていた。
じっと見つめる大きな瞳に、クラフは少し、お母さんを思い出した。
何かが、首に打たれた。
ちくりとしてすぐに、視界がぼやける。

焦点の合わない目で、空中を見つめる少年に、オクトが話しかけた。
「クライフ、聞こえるかい?聞こえたら、返事をしてごらん」
その声は頭に響いて、気分が悪い。耳がおかしくなったのかもしれない。
現実感が遠のく。
「…父さん」そう呼んでしまう事に苛立ちを感じながらも他の言葉が浮かばない。
「違うよクライフ、私はこの国の大統領だよ。君が会いたがっていただろう?」
「…あ、え?」
気持ちが悪い。違う人の声にも聞こえる。
「話してごらん。私に話したいことがあるんだろう」
「…う」
「なんだい?」
「…さん」
「クライフ?」
「…きら、い。父さん、キライ…」
むっとした表情になって、オクトはローザに二本目を要求した。
小さくため息をついて、薬剤を準備する。
同時にローザは機器に表示されるデータを確認する。
「早くするんだ」
「…」
ローザは、眉をしかめて、二本目を注射した。
冷たい感触。
意識が遠のく。
クラフの目から、涙がこぼれた。

「クライフ?聞こえるかい?」
「…」
ぼんやりとした表情。声に対する反応はない。
「指は動かせるかな?」
オクトが少年の手を持つ。力なく、指はこわばったまま、動こうとしない。
「下肢の麻痺が認められます」
ローザが報告する。
次に少年の瞳孔を確認した。
呼吸も心音も安定しているが、何の反応もない。意識障害に陥っているのは明らかだった。
ローザはオクトを見つめて、頭を横に振った。

「ふん。役立たずが」
男の言葉に、ローザは思わず、拳を握り締めていた。
「まあ、いい」
オクトはかぶっていた手術着を脱ぎ、いつもの白衣に戻っていた。
「これで、邪魔だけはされなくなった。君の心臓はいい出来だね。生身だったらこうは行かなかったかもしれないね」
外したマスクをぐしゃと握りつぶして、ローザは男が部屋を出るのを見送った。


隠し事③へ続く♪
関連記事
スポンサーサイト

コメントありがとうです!

遅くてゴメンナサイ~
皆さんのお怒り、嬉しいです!くーちゃんのこと心配してくれて…。

chachaさん
メラメラを抜いてしまいましたか!?
すごいぞ、オクト!
卑怯で小物の分だけ、ダークポイントアップしている!!
怒ってください!きっと、空のかなたからセキアさんが…(うそつきです、ごめんなさい…)
クラフくん、どうなるのか。
見ていてやってください!

ユミさん
怒ってくれてありがとうv-408きっとセキアさんも喜んでいますよ!!
クラフくん、いろいろと考えています!だから、今は怖くてもつらくても宙のみんなを守る気持ちが支えています。
自分自身を勇気付けようとする、あの独白のシーン、感じてくれて嬉しいです!

楓さん
おお!楓さんのゴルァッ!!をいただきましたよ!!恐るべしデスか?ふふふ。
でもでも、メラメラさんよりずっと、小物ですから。オクト。
メラメラさんが現れてふふふ~なんて笑いながら指先をちょいと動かすだけで、彼は消えます♪
ここ数回、楓さんはカーチスさんにイライラしてますね!うむ。考えてみたら、大して行動しない奴。遊びに連れて行ってくれるけど、助けてはくれないかも…。
あれ?味方じゃないのか?
らんららも分からなくなってきましたよ…。

kazuさん
ローザさんの気持ち分かってくれて嬉しいです!やはり子を持つ母!!
自らの手でというのは怖いけれど、最後までちゃんとそばにいてあげたい、その後もずっと、見守りたい!その気持ちが彼女をこうさせています!(そう思うとカーチスふがいないな…)楓さんが苛立つのも、頷けるような…

しんじられない!!

オクト!!
宇宙服も何も着せないで、成層圏のかなたへいってしまえ!!
そんなに宙に行きたいならね!!
本望でしょうよ!!
・・・・かなり怒ってます。怒ってますよオクトに対してめっちゃめちゃ!!v-412
ひどすぎます!
もうなくなっている母親をだしにして、クラフくんをおとなしくさせて!
なくなっていることがばれても、まただしにつかう!
どこまで卑怯なの!!
他の人が拒否しても、クラフくんの実験に加わったローザさん。
きっと、オクトの手にかかったらひどくされてしまうと思ったからなのかな。
あぁっ!でも!
それでも、辛いですよこの展開!!
うわぁぁぁんv-406

ゴルァッ!!!怒

「知りたければ、邪魔はするな。私に従えば、教えてやる」
うーん、凄いなオクト。
死んだ母親をまだダシにして更にクラフ君に迫るとは。
むむぅ。メラニスに通じるモノがありますね。いや、chachaさんの言うとおり、オクトが生身の人間であり、クラフ君の実の父親と考えると、もはや人間離れしたメラニスよりもいっそ恐怖を感じます。
おそるべしらんららさん。
しかしかーちすもオクトぶん殴って懲戒免職になるくらいの肝っ玉を持って欲しい物だとついつい八つ当たり気味に思ってしまうのです。ましてやローザさん・・・ダメですっ!!立場が立場なのは分かりますが、助手さえみんな拒絶するこの拷問に、よりにもよってあなたが手を貸すとは!!!

サイテイ

なんてサイテイなヤツなの!!!!!
読みながら、身体がカーーッと熱くなって、なんか多分
顔が赤いと思います!!心臓もドクドクしてるし、両手が
拳になってます。

こんなヤツ、お父さんじゃない!
そうだよ、クラフくん。
お母さんも亡くなって、身内はいないかもしれない。
それって、すごく寂しいこと。でもね、こんな身内より、
クラフくんには、宙に仲間がいるから大丈夫。
そうやって、みんなのことを守ろうと、大切にしようと
しているのと同じで、きっと宙のみんなもクラフくんのこと
大事に思ってるよ♪

「この心臓が本物じゃないように、感情に合わせて
大きくなる鼓動だって偽物なんだ。この感情だって
本物じゃない。悲しくなんかない。悲しんでなんか
やらない」

↑この部分で、涙ホロリですv-406

どうなってしまうのか、とても気になります…。

こんなにも腹の立つ人間、人生で初めてですよっ!!><
メラニスも腹立つけど、オクトはとうとう、その上をいっちゃいました!(笑)
な、なんだこいつは~~~!!><
クラフが可哀想で、本当に、ローザとカーチスの気持ちもわかる。
そばにいたら、ギュッと抱きしめて、オクトに対して反発心をぶつけると思う。
それでも、かなわない。
立場的に不利な状況って、こういう時どんなアクションを起こした所で役に立たない。
オクト・・・あぁ、オクトめ。
忌々しいぞ、本当に・・・--;

クラフ、2本も打たれて大丈夫なんでしょうか;;
そして・・・誰かクラフを助けてくれる人は現れないのでしょうか??><
羊号はまだ完成してないのかな!?
セキアが来てくれたら・・・って、思ったりしてます^^
Secret

プロフィール

らんらら

Author:らんらら
のんびり小説を書いています
日記ブログはこちら♪

ランキング参加中です♪

クリック よろしく~♪

FC2Blog Ranking

最近の記事+コメント

FC2カウンター

リンク♪

小説ブログの皆様

カテゴリー

ブログ内検索

RSSフィード

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。