10
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
   

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

「宙の発明家」第三章七.隠し事④

●隠し事4

少年に与えたかわいい子供部屋を後にすると、デアマンはまっすぐ二階にある研究室に向かった。ずんぐりした風貌の彼は人懐こい笑みとは裏腹に、無口でけっして自分の感情を表に出さなかった。




静まり返った深夜の研究所内。何の飾り気もない蛍光灯が長い廊下を白く見せる。
デアマンは、両開きの扉の前に立ち、扉の中心部にある認識装置に指を置いた。
小さくピと電子音が鳴ると、扉は音もなく開いた。強化ガラスの向こうは、オクト・ロイズ博士の研究室だ。廊下よりずっと明るい室内に、いつもと同じようにデアマンは瞬きする。
小さな四角い部屋。窓はない。
向かって正面にオクトのデスクと書棚。作業机を隔てて、右側にデアマンと同僚の小さなデスクが島を作る。先日のクラフの処置について助手三人は協力できないと言い張り、その場で休暇を取るように言い渡された。
オクトはなぜか、デアマンにだけは残るように言い渡したのだ。このクリスマス休暇の時期に毎晩の当直を命じられた。別にある宿舎に戻ることも出来ない。
ふん、とデアマンは口元をゆがめた。苦い笑み。
オクトは他に住むところなどないはずなのに、ここ数日は出張だと言って出かけたきり、音沙汰もなかった。

助手の机の脇には、壁面を埋めるように解析装置が置かれている。四角い書棚のようなそれは、天井まで高さがあり、棚一つ一つにきっちり装置が詰め込まれている。四つのモニターと入力部。上部に埋め込まれたモニターは常に衛星からの映像が送られてきている。
コンピューターの前には作業机。上には書類一つない。この仕事は、紙に残してはならないと指示があるため、殺伐とした研究室は、まるで誰も使っていないかのように見える。

デアマンはコンピューターの前に立ち、補助電源装置の裏に隠したハードディスクを取り出した。小さなものだ。葉書程度の大きさで、厚さは一センチ。コンピューターのモニターをオンにすると、表示されていたデータ書き込み完了のメッセージを閉じた。
ハードディスクをコンピューターから切り離すと、このデータ読み取り記録を消すために、キーボードを操作し始めた。

静まり返った室内に、カタカタとキーボードを打つ音が響く。
どんな小さな痕跡をも残さぬように、念入りにデアマンはコンピューターの操作履歴を確認していく。
膨大なデータファイルの一つ一つに残される、アクセスの痕跡をそれと分からないように消していく作業は時間がかかった。

ピリリ、とデアマンの白衣のポケットが、赤い光に透かされた。取り出した携帯電話を片手に、デアマンはオクトのデスクの前、肘掛の付いた大きなイスにどかりと座った。
回転させると小さくキィと鳴る。それが小気味よい。
表情は、嬉しそうに笑っていた。
「ああ、私だ」
「…」
「完了した、ああ。それは出来ないね。まずは安全を確認できなくてはね。ちゃんと、家を用意してくれ。そうだ。ホテルなんかじゃダメだね。ああ、そうだ。二人分だ」
「…」
「そうか、もう少し。待ってもらおう。いや、まだだ。別に誰も値を吊り上げようなんて考えてないさ、他に交渉もしてない。そこは信用してほしいな」
丸い鼻を癖なのだろう、指の背で軽くこすると、にやりと笑った。



ケープカナデラル空軍基地(フロリダ)は、その年の最後の数分を楽しむ兵士たちで盛り上がっていた。
カフェを会場としたパーティーで、カーチスは売店の女の子と散々飲んでいた。
「ねぇ、あっち、行きましょうよぉ」
まだそばかすの残る、二十二、三の彼女は、コートのポケットに両手を突っ込んだ子供っぽい仕草で、胸の開いたワンピースをコートの襟元からちらつかせる。
カーチスは右手で彼女の肩を抱き、左手に持つビールをぐいと仰向けに飲み干して、空き缶を投げ捨てた。
乾いた音が思ったより響かずに、寂しく鳴る。
会場の食堂から、テラスに出た。
数日前の異常な寒さは去った。この地方の冬は本来暖かい。ふわりとした風が心地よく髪をすく。

女のきつい香水の匂いと風になびいて絡みつく髪が、いらいらさせた。
ローザの、少し消毒のにおいのする白衣を思い浮かべて、ふ、と鼻で笑った。
「なあに?何が面白いの?」
「いや」自分自身をあざ笑って、カーチスは無理やり女の唇を塞いだ。
いらいらする匂いが、鼻を塞ぐように暑苦しく、カーチスは酔いと勢いで胸の痛みを押さえ込んだ。

カーチスがよろめきながら、一人自分の部屋に戻ってきたときには、すっかり年が明け、いつ聞いたか分からないがカウントダウンと歓声が耳に残っていた。
「最悪だぜ」
くくく、とまた、自分を笑い、ベッドに突っ伏した。
それでも、柔らかな枕の感触に、ローザを思い出す自分が情けなかった。
ぴぴぴ。
「るせえ!」
一瞬枕を投げつけようとして、やめた。
枕をもう一度抱きしめた。
デンワは、鳴り続ける。

「うるせえ!」
デンワを取り上げ、通話ボタンを押すと怒鳴る。
「…何度もうるせえよ。あいつは、眠っちまったんだ、もう、起きないんだよ」
『あの、…なんていっているか分からないけど。セキア、この人のこと?この間言ってた白い人間の一人って』
セキアという男ではないようだ。
カーチスは一瞬、思考が止まった。

『あの、どなたですか?クラフはいませんか?僕、カカナといいます。クラフの声を聞きたいと思ったんだけど』
「あ、友達か?クラフの」古英語を使った。酔っているほうが発音がスムーズな気がした。
声からして、クラフと同年代の少年だろう。カーチスはいつの間にか、ベッドの上に胡坐をかいて座り、デンワを抱えていた。
「あいつ、助けてやってくれよ。俺はもう、どうしようもない」
『え?』
「そうだ、この電話のかけ方を教えてくれ、クラフのところでまた、かけなおすよ。あいつに、声かけてやってくれよ」



隠し事⑤へ続く♪
関連記事
スポンサーサイト

v-360桜さん
煮えました?
ふふふ。ええ、いろいろと嫌な奴がたくさん出てきます!
カーチス、弱い男に成り下がっております(^^)男が弱ければ女ががんばるしかない!!ふふふ♪
こんな彼がいずれ役立つときが来るんだろうか…

v-360花さん
アネモネ!!来ますか!?
おおーーー
どきどき、どんな人だろう!?
オクトとか懺悔しちゃいそう(笑)
そうそう、こういう人たちにはいずれ天罰が!!
地位と名誉を望む人には、それなりの懲らしめ方があるので…
もう少しで逆転ですよ!!待っててください!

・゚・(*ノД`*)・゚・。

カーチスさん…。辛い気持ち、凄く分かりますよ。
でも、荒れてもホントにしょうがない。今、クーちゃんを物理的に助けられるのは、カーチスさんかローザさんぐらいなんですよ!
オクト…オクトォォ!!ホントに許せない!地位とか名誉とか、そんなものに子供を巻き込むな!!
小物デアマンも、何か余計なことしたら、ただじゃおかないから!アネモネ、レッツゴーですよ!

あぅ…

こう、久しぶりにムカムカしました!
腸が煮えくり返りました!
オクトとか大佐とか、小物のくせに何か企んでそうなデアマンとかぁぁぁぁ!

そしてカーチス!
クラフは頑張ったのに、大人のお前が荒れてどーするっ!!
どうにもできない自分の無力さに自己嫌悪するのは分かるけど…。
数少ない味方なんだからっ!

ありがとう!!

v-360kazuさん
荒れてますよ!
ふふふ、最初からクラフくんのこと気に入ってくれていただけに、不甲斐なさには皆さんからブーイングですが(^^)
本当にセキアもクラフくんのことになるとちょっと、見境ない感じになっちゃいますから…いったい、いつからそういうキャラクターになったんだろ(笑)
カーチスさんの行動が、功を奏すか…!?
ふふふ。
お楽しみですね♪

v-360楓さん
であまん、怪しいですか!
ええ、かなりですよ、彼は。
ある意味重要人物!!小物のくせに(そう言う作者だ…^^;)
であまんを残したオクト、彼にとってそれはほぼ当然の行為なんですよ、ふふ。
さて。
カーチスさん、本当に唯一何とか出来そうですが…いきますか?いくかなぁ?
ふふふ!!

あ、そうか、次回あたり…むにゃむにゃ…

v-360ユミさん
ありがとう!!
勢いです、まさに!!後からどうやってローザに言い訳するんだろこの人…らんららの恋人なら許しませんが(笑)
クラフくん、目覚めるでしょうか…!?
どきどき。
カーチス、役立たずと怒鳴られるのか、よしよしと褒められるのか!?


v-360chachaさん
ふふ、やっぱり、とは。さすが♪いらない人物は出したくない性格のらんららですので…二人分が鍵です。デアマン、さえなくて詰まんない奴ですが。重要です!!
嬉しいです!
ふふふふ。
カーチスはもう、だめです!v-389ほっときましょ(ひどい?笑)

デアマン!!

うぬぬ・・・やっぱりコイツは何か裏があったわけですね!><
電話の相手は誰??
何のデータを抜いたんだ!!?@@;
そして、二人分って・・・誰と共謀してるんだーーー!?
クラフは眠ったまま。
その周りでは、じわりじわりと動きがあるようで・・・
うぅ!目が離せませんよぅ!><

カーチスさん、本当荒れまくりですが(笑)
何やってんだ!本当にも~@@;
気持ちはわかる、わかるんだけど、だから行動にうつすべきなんじゃないの!?
そう、カカナに助けを求めたように・・・
うん!^^良かった!カカナの声で目覚めるといいんだけれど☆
kazuさんも言ってますが、相手がセキアじゃなくて良かったね~(笑)

うぅ…

カーチスさん、いや~~!!
荒れちゃう気持ちは分かるんですけど、勢いに任せて、
そんなのって…。どうにか自分を取り戻して欲しいです!!

あ、でもカカナくんからの電話で、少しは戻ってきたかな?
一緒になって、クラフくんを救おう!!
みんなで協力すれば、そう仲間の声を聞けば、クラフくん、
目覚めるよね?!

むむぅ・・・

であまん・・・やっぱ怪しいぞ。
電話の相手は?
何のデータを抜いた?
どうやらオクトは何者かに出し抜かれようとしているのかな?あるいは切り捨てられようと・・・?
でも、であまんを残したのはオクトか。
・・・
怪しいな。
そしてかーちす・・・お前・・・はぁぁぁ
しっかりせんかぁっ!!!!!
こっちの世界でクラフ君を何とか出来そうなほぼ唯一の人間だというのに何じゃそのテイタラクは?!!
・・・でもまぁ、カカナ君に助けを求めるあたり、どうやらそろそろやる気になってきたか?ふふん♪
いっとく?
いっとけーーっ!!

くくぅ・・・

カーチスさんが、めちゃ荒れてる・・・。
うーん・・・。
どうしようもない状況に、自暴自棄になっちゃってる。
そこにタイミングよく、セキアさまじゃなくてカカナくんが電話をかけてきた。
カカナ君でよかった。
冷静に、落ち着いて話してくれるから。
セキア様じゃ怒鳴り合いになっちゃいそうですね(笑
助けを求めた、カーチスさん。
クラフ君、カカナ君たちの声に反応してくれるといいな・・・・。

そして、デアマンさん・・・。
様子見にきただけかと思ったら・・・、やっぱり裏がありそうですね。
一体何を売りつけようと・・・・。
BSAの情報だったら・・・、宙の危険が増えちゃうのに・・・。
Secret

プロフィール

らんらら

Author:らんらら
のんびり小説を書いています
日記ブログはこちら♪

ランキング参加中です♪

クリック よろしく~♪

FC2Blog Ranking

最近の記事+コメント

FC2カウンター

リンク♪

小説ブログの皆様

カテゴリー

ブログ内検索

RSSフィード

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。