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「宙の発明家」第三章七.隠し事⑤

●隠し事5

午前一時。
静まり返った郊外の病院に、黒い大きな車が入ってくる。リムジンだ。ナンバープレートは分からないように照明が消されている。黒く張られたスモークの向こう。乗っている人物も、人数も分からない。
全部で3台。




病院の端にある三階建ての小さなビルの前につけると、前後の車から数名の大柄な男たちが降りてきて、早足で玄関までの通路に並ぶ。真ん中の一台から運転手が降り立ち、後部座席の扉を恭しく開く。

がっしりした体躯の、少し白髪の混じったブロンドの男。目じりのしわから、五十代前半のようだ。その跡から、白髪の老人。二人はどこか似ている。
ニービア元大統領。そして、フランク・ニービア大統領だった。
正面に出迎えたヴェデリット大佐は、敬礼し、大統領は厳しい表情のまま簡単な挨拶を交わした。

ヴェデリットの後ろから、ひょろりと現れたオクト・ロイズ博士に、ニービア氏は目を細めた。ヴェデリットに紹介されたときに、老人は穏やかに笑った。

「あなたが、クライフ君のお父さんですか」
オクトは苦い笑みを浮かべながら、握手をする。
「息子がお騒がせいたしまして」
「いや。今も、道中、大統領と話していたところだ。クライフ君には私は借りがあってね」
デビット・ニービア氏は、傍らの大統領を振り向き、笑った。
大統領もオクトを見てにっこりとする。
四人は歩きながら、話を続けた。

「あの、借りというのは?」
オクトの怪訝な表情に、ニービア氏は笑った。
「私がクライフ君と会ったとき、そうだ、ちょうど十二年前のクリスマスの頃だったね。私の番組に、クライフ君が出演してくれたんだ。まだ、三歳くらいだったかな?全米の視聴者を対象とした知力検査で、彼がトップだったんだ。すばらしい成績でね。私はぜひ、彼に会ってみたかった。アメリカを担う、次代の天才としてね」

テレビ局の有名な女性アナウンサーに呼ばれて、ちょこちょことステージに歩いてくる幼い子供に、全米が沸いた。子供らしいあどけない仕草で、ケント・ニービア大統領の正面に来る。しゃがんで視線を合わせた大統領を見て、少年は首をかしげた。
男性司会者が、「クライフくん、大統領閣下だよ。お会いできて光栄だよねえ」とクライフの頭を優しくなでた。
クライフは、困った顔をして、振り向いて、カメラの奥に心配そうに見ている母親を見つけて顔をしかめた。泣き出しそうな顔に見えた。

「おやおや、やっぱりまだ三歳の男の子だね」
大統領が少年を抱き上げた。
一瞬嫌がったクライフは、小さな声で言った。

「ボク、大統領より、お父さんに会いたかった」

その声は、会場の誰にも聞こえてはいなかった。大統領が子供を抱き上げた時点で、大きな歓声が沸いていたからだ。
「ママが、すごい人に会えるんだって言ったから、だから、来たんだ。ボク、お父さんかと思ったのに」

「そんな失礼なことを言ったのですか、あの子は」
オクトが目をやたらと瞬いて、苦笑いした。
「いや、気にしないでほしい。私はあの子の一言に救われたんだよ。あの当時迷っていた。すでに三期大統領としてこの国を支えてきていた。翌年に選挙がある。私は体調の問題もあったし、少々疲れていた。そう、ちょうど、孫が生まれたばかりでね。アメリカ大統領と言えども幼い子にとっては何の価値もないのだと、クライフ君の言葉で実感したんだ。
幼い孫にとって、私はどれほどの人間なんだろうとね。
おかしいことのように思われるかもしれないが。私には、引退の後一歩が踏み出せなかった。そこを、彼の言葉が背中を押してくれた気がしたんだ。胸を張って、家族のための一人の父親として、家庭に帰ることを決断した」

穏やかに笑いながら、ニービア氏は現大統領である息子の肩をぽんぽんとたたいた。
大統領は、目じりにしわを作りながら、笑った。
「私はその頃、上院議員をしていましてね、ちょうど助かりましたよ。息子の面倒を見てくれる信頼できる人物が家庭にいてくれるのだからね」
「おいおい、わしは子守かね」
「とても、すばらしい、自慢のおじいちゃんだと、アデルも言っていますよ」
親子が笑いながら話す中、ヴェデリット大佐が咳払いをした。

「あの、大統領閣下。まことに申し上げにくいのですが。クライフは、体調を崩していましてね」
二人から、笑顔が消えた。

大統領と元大統領に紹介されて、ローザは小柄な体をますます小さくして、挨拶した。
「クライフくんの主治医です。彼は今、眠っていまして」
少し、緊張した面持ちの女性は、あの子供部屋のベッドに横たわるクラフの前に、大統領を連れてきた。

クラフの口元につけられたマスク、青白い顔。傍らの大仰な機械が、心拍数を静かに伝えている。
険しい表情のニービア氏は、大統領の隣に立って、クラフの顔を覗き込んだ。
「あの、大統領に、お話したいことがあると、彼は言っていまして」
ローザは背後に立つオクトと大佐をちらりと見た。
「ああ、君たちは席を外してくれんかね」
ローザの視線に何を思ったのか、ニービア氏が後ろの二人に声をかけた。
「え、しかし…」
いいすがるオクトの前に大柄なシークレットサービスの男が立ちふさがった。
ヴェデリット大佐とオクト・ロイズ博士は互いに見合わせ、部屋を出た。
二人の後に続いたシークレットサービスが扉の前で守る。

ローザは小さなため息とともに肩を落とした。
クラフのマスクを外した。
「お二人の来訪を知って、二時間前に、中和する薬を点滴に入れたのです。クライフくん、ね、起きて。大丈夫よ」
ローザは少年の肩に手を置いて、声をかけた。

大統領も、ニービア氏もほぼ同じ身長で、似た体系。肩を並べて、少年をじっと見詰める。先ほど、ヴェデリット大佐の説明で、二人は大いに機嫌を損ねた。大佐は、クライフは人工臓器の不具合で脳死状態なのだと説明した。

「おお、クライフ君」
少年は、目を開けて、数回ぼんやりと瞬く。元大統領をそれと認めたのか表情を緩めた。
「ニービアさん…この間は、どうも」
起き上がろうとするクラフをローザが制した。
「だめよ、まだ、動かないほうがいいわ。麻酔とはいえ、長時間だもの、心臓によくなかったはずよ」
「うん、ありがとう、ローザ」
「なにがあったのかね?」
ニービア氏は眉をひそめた。
ローザは細い眉をきりりと引き締めて、まっすぐニービア氏を見つめた。
「彼らは、クライフを死なない程度に永遠に眠らせてしまおうと考えていました」
「え?そうなの?俺の知ってること話させるつもりじゃなくて?」
ローザの説明に疑問を返したのはクラフだった。

「ええ。自白剤は可能性が低い。もし本当に、君に話をさせたいなら、拷問のほうが早いもの。彼らが指示した薬剤も、神経を麻痺させる可能性の高いものだった。私は、命令に反して、麻酔で彼を眠らせ、計器の調整を狂わせて、クライフくんが植物状態になったと見せかけたのです。そうすることが、彼にとって一番安全でした。
ニービアさん、大統領閣下、彼らは何をしてでもこのプロジェクトを進めたいのだと思います。だから、あの世界で十年間生きていた大切な検体であるクライフ君を死なせるわけにも行きません。けれど、クライフ君に邪魔されても困る。だから、彼らは自白剤を使って永遠に眠らせようとしたんです」


隠し事⑥へ続く♪
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コメントありがとうございます!!

v-360chachaさん
ふふ、そう言うことなんです!助手たちが全員拒否しても、彼女だけはそばを離れられなかった。子供と重ねたり、喧嘩したり、感情的になったりしていた分、彼女が一番クラフくんを身近に思っているんです。客観的に見ていたカーチスさんよりずっと、ね。
さて、大統領。らんらら、会ったことないんで(笑)こういう感じ?ってかなり妄想です。
クラフくん、うまくできるかなぁ…

v-360楓さん
うふふぅ。ローザさん、やりおります!強いです!
そう、それに引き換え…カーチスさん…チューとかしているわけです、酔っ払っているし。最初から冷静なオトナのはずだったのに、その枠を超えられない自分がいやなんですな。すっかり酔っ払い。手に負えませんな、もう。失恋気分の男性は酔っ払うとかなり情けない。うん。(見てきたかのような…?)
まだまだ、楓さんのお叱りを受けないと反省できそうにないですよ♪

おおローザよっ!!

いつだったかローザさんに、よりにもよってあなたがそんなことに荷担するとはどういう事かっ!!こらこらぁああ!!てなことを書いた記憶があるのですが、浅はかでした。ごめんなさい。
ローザさん、この機会をうかがっていたんですね!!それも巧妙にオクトを騙し、自分はあなたの忠実な部下で、クラフ君を植物人間にしましたという風に見せかけて!!
や、やりおるわぃローザめ!!!←誰あんた?
それにひきかえ・・・
かーっちすっ!!!!!!!!
他の女とゆきずりでチューとかしてる場合かごるぁぁぁああ!!・・・て、あっ!もしかして今カカナ君にクラフ君を目覚めさせてもらおうとこちらに向かっている?!!

良かった><

クラフ、植物人間になっちゃったかと本気で思ってたので・・・;;
で、奇跡でも起きるんかいな?と^^
そうか!ローザ!あなたは最高!!(笑)
いつオクトや周りの人にバレるかわからない状況の中で、自分の信じた答えに従って動いた。
それは正しいことです!^^
良かった、本当に良かった☆
ドキドキだったでしょうね、ローザとしては(苦笑)

大統領、元大統領と対面することが出来たクラフ。
何を伝えようとしているんだろう??
「すごい人」=「お父さん」
と思ってた、幼い頃のクラフ。
胸が締め付けられる思いで読みました;;
オクト、この話聞いても、何とも思わないの・・・?
そこまで人間腐ってたら、もう救いようがないぞ!><(笑)

v-360ユミさん
ええ、ええ、クラフくんも小さい頃には可愛かったんですよぉ!
(セキア<v-219今もです!!)
ローザさん、危険を冒しました。カーチスに知らせないのも、もちろん、思いやりですから♪自分しかいない、と。母は強しです!!
大統領は今後思いもかけない(多分)行動に出ます!
ええ、どうなるかはもちろん、ヒミツ♪

v-360kazuさん
ローザさん、基本的にカーチスより冷静ですから(笑)
ええ、地位と名誉の悪者にはそれよりもっと上の地位の人が必要なんです!
大統領がどうでるか。ふふふ。
お楽しみです!!
クラフくん、小さい頃はお父さんを待っていたんですねぇ。
生意気なくせにいじらしいでしょ?そこに、某セのつく人とかがはまるわけです!
(セキア>v-359なにか?それが、なにか?v-414

さすが!!!

やっぱり、ローザさんは凄い!
手を下すのなら、自分の手で・・・と思ってましたが、そうではなくて。
自分が助手につくことで、クラフ君を助けようとしていたんですね。
もし一歩間違ってオクトにそのことが知れたら、大変なことになっていたのに。
そしてうまくいった!
クラフ君は、望むとおり大統領と元大統領だけに、話をすることが出来る!!
大佐もオクトも、大統領の命令・・そして目の前では、ローザさんにもクラフ君にも手は出せないでしょうし♪
昔、クラフ君が凄い人をオクトだと思っていたのが、とてもいじらしいです。
オクトも苦笑いで返してますが、内心嬉しいはず。
そんな子供に、手をかけて!!
しかも、永遠に眠らせようとしていたってことをクラフ君は知って・・・、どう感じてるんだろう・・・・。
切ないなぁ・・・・
大統領!元大統領!!
2人を守って!!

クラフくん、お父さんに会いたいって言ってた時があったんですね;;
3歳のころ…その頃の、クラフくんの気持ちや思いを返してほしいです。

ローザさん、凄腕ですね^^オクトの目をごまかして!!
こんなこと知れたら、自分の身が危ないだろうに…。
とても嬉しくなっちゃいました♪クラフくんのこと大切に思ってて…。
カーチスさんにも知らせることができればいいのにな~。

今回のオクトのやり方を知ったニービア大統領、オクトに対して、
どう出てくるのでしょう。クラフくんの味方になってくれるのかな?

目覚めたクラフくんと、ローザさんの優しさに涙・涙でした。
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らんらら

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