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「宙の発明家」第三章八.逆転①

●逆転1

「ちょっと!カーチス、放して」
ローザの手を引いて、カーチスはぐんぐん歩いた。とにかく外だ。研究所内の廊下はどこも監視カメラがついている。モニターの前の警備員にサービスしてやる必要はない。



そう、ふわりとした酔いの中にいるカーチスが考えたときに、ちょうどエントランスの手前、警備員室からビイが出てきた。
カーチスは嬉しそうに笑って、ビイに声をかけた。
「よ!聞いたか?あいつ、起きたんだぜ!めでたいんだぜ!」
「!!」
ローザが慌てたときには、もう、遅かった。
ビイは大きな口で笑った。
「そりゃよかった!」
「んで、ちょいとローザ借りてくぜ」
「それもよかった!ハッピーニューイヤーだぜ!」
満足そうにビイが笑う。
「お前も早くハッピーになれよ!」
一言多い酔っ払いに、ビイは苦笑いしながら、詰め所に戻る。

「ちょっと!」
エントランスの前に停めてあった自分の車に無理やり載せようとするカーチスにローザは怒鳴った。
「どうしてこんなことするのよ!」
「怒る顔もかわいいな」
面白そうに笑いかけるカーチスを、ローザは本気で突き放そうとする。
「違うのよ!」
「なにが?」
強引に抱きしめられて、ローザは上目遣いでにらみつけた。
「だから、クライフくんのこと…」
青年が笑った。
にっこりと、嬉しそうに。
「本当によかったよなぁ。俺、何にもしてやれなかったけどさ、けど、嬉しいぜ。あいつ意地っ張りだからなぁ。兄弟はいないけど、いたらあんな感じがいいな」
カーチスの蒼い瞳が外灯の光にきらめくのを認め、ローザは黙った。
「本当に、よかったなぁ!」
嬉しそうに、酔っているからか同じ言葉を繰り返す。ひどく素直に喜びを表現する青年に、ローザは小さくため息をついた。
クラフが目覚めたことは、まだ、オクトたちに知られてはいけなかった。ビイは報告してしまうだろうか。あの様子では、そうも思えないけれど…。
嬉しそうに笑うカーチスに、それを言うのは酷な気がした。彼は、知らなかった。ローザとクラフが示し合わせていたことを。知らずに、その上突き放されて、随分苦しんだはずだった。

ローザは背に回された暖かい手に、優しさがこもるのを実感していた。頬に当たる青年の心音が、とくとくと規則正しく心に伝わる。
軽薄な態度の少し年下の青年が、酔った末に見せる素直な表情。急に愛しく感じられて切なくなる。
「ローザ、会いたかった…」
甘えるように額をローザの額に擦り付ける。
こんな姿のカーチスを、初めて見た。不思議と嬉しい。
「…分かったわ。私が運転するから、ね?」
そう言って青年を見上げたローザは、穏やかに笑っていた。
カーチスを送って、直ぐに戻ってこよう。
直ぐに。
ちらりと振り向いて、ローザはクラフのいる部屋のあたりを見る。



セキアたちの声に元気をもらって、二人を待ちながら、クラフは起き出して立ち上がった。久しぶりに動かす手足は、少し感覚がおかしくて、クラフは部屋の真ん中で大きく伸びをする。
確かめるように、手足を曲げては伸ばす。
気持ちよく息を吸って、はく。
ベッドの上に置いた銀色のデンワを見て、表情が緩む。
よし!
レポートの準備に取り掛かった。大統領を納得させるだけの報告が出来なくては宙の安全を確保できない。

静かな夜だった。
クラフはこの日が、一年の始まりであるなど知らなかった。
そう、今が何時なのかも、知らないのだ。
幸いにも、ちょうどその頃、警備員のビイは深夜の勤務を終えて、仮眠室で横になっていた。
彼には、カーチスから聞いた話を誰かに報告する義務などなかった。
丸い体を狭いベッドに横たえて、真っ暗にした部屋でたまにいびきなどを響かせている。


パソコンの使い方はローザに教えてもらった。
クラフは器用に両手の人差し指で文章をつづっていく。
「計算は速いけど…文章面倒くさいなぁ」
すでにある資料を、分かりやすく編集しなおすだけだが、どこまで説明をしていいのかが分からない。
どれが専門用語でどれが基本的なことなのか。クラフには判断がつかなかった。
うー、と少しうなって。
クラフはパソコンをそのままにして、ベッドに寝転んだ。
空腹感を覚えた。
お腹の辺りを押さえて仰向けのまま目を閉じる。
点滴だけだったために、目覚めた今はひどく胃が主張する。
ローザ、遅い…。
少年は目を閉じたまま、眉をしかめた。

不意に、誰かが肩に手を置いた。
「!?」
思わず目を開けそうになって、慌ててぎゅっと閉じる。
誰か分からない、けれど、自分を起こそうとしていた。
「マスクは、どうしたんだ…」
男だ。ローザじゃなかった。
男はクラフを抱き上げる。
少し、心もとなくよろめく。思わず閉じたまぶたに力が入る。何か、ベッドより硬いものの上に横たえられた。
眠ったフリをしたまま、クラフはされるがまま、じっと我慢していた。
男が離れた。
何か、カチャカチャと音がした。
クラフはそっと、目を細く開いた。
目の前に、白い背中。
オクトではない、丸い背中。
「…?」
誰だろう。
小さな担架のようなものに寝かされていた。ちょうど、男の腰くらいの高さで、男の肘が目の前で動いている。
寝たふりをしたほうがいいのか、クラフは迷った。向こうで、パソコンの画面がちらちらと揺れている。不意に、男が振り向いた。
「!あ、クライフ…」
デアマンだ。
手に、なにかベルトのようなものを持っている。カチャカチャ鳴っていたのは、それだ。
あの白い部屋に連れて行かれたときのことを思い出した。
あの時と同じように拘束するつもりなのか!一瞬、そう感じたクラフはそこから飛び降りた。デアマンを突き飛ばす。
「うわ!」
「嫌だ!」
そう叫んで、クラフは部屋の反対側に向かって走った。扉が、開いてくれれば!
扉の真ん中の黒いセンサーに手をかざそうとする。
「待て!クライフ!」
背後を振り向いたのと、扉が開いたのとが同時だった。
伸ばした手が空を切る。
そのまま、扉の向こうに転びかけて誰かに突き当たった。

「な!」
オクトだった。よろけて、クラフを抱きとめる。
その後ろに、大佐。
ばれた!
オクトの手を引き剥がして、脇を抜けようとしたクラフは、大佐に腕と背中を掴まれた。
「放せ!!」
「お前!気がついたのか!?」
大佐に羽交い絞めにされて、クラフはもがいた。
オクトが驚いたように目を見開く。
クラフは睨みつけた。
ローザが言った。永遠に眠らせようとしたんだと。そうなってもおかしくなかった。
さぞ、がっかりしたんだろう。
クラフは生きていて、そして、目の前の父親を蹴ろうと、足を振り上げる。
大きな瞳に反抗の色を感じ取って、オクトは少年の頬を叩いた。
「ロイズ博士!」
その背後、部屋の中から、デアマンが顔をのぞかせた。
「あの、乱暴は…」
「貴様、何をしている。こんなところで!」
オクトに肩をドンと押されて、デアマンはよろけながらも愛想笑いのようなものを浮かべた。
「あ、いえ、通りかかったら、声が聞こえたんで、のぞいてみたら目覚めていたんです。今お知らせしようとしたところで」
薄い笑みを浮かべた表情でそう話すデアマンを、オクトはバカにしたように眺めた。
「お前、こいつに何かしたのか?」
「え?何のことでしょう?」
とぼけるデアマンは、穏やかな表情のまま、数歩、後ろに下がる。
「ふん、クライフに知られてもいいのか?臆病者が!お前は」
「ああ!そういえば博士、博士にペンタゴンの司令部から伝言が」
へらへらと悪びれないデアマンがまた、二散歩後ろに下がって言った。
オクトは顔をしかめた。
「なんだ」
「弁護士を派遣したと」
「何?」
「さあ、私も分かりませんが、そういっていましたよ。それじゃ」
ゆらりと、太った体を翻して、デアマンのそれはけっしてカッコいいわけでもなかったが、クラフはなぜか目が離せなかった。
デアマンは何をしていたとも告げずに今、ちょうど、階段の向こうに消えていった。


「さて、お前はこっちだ」
クラフは再び自分の部屋に引きずられていく。
部屋の真ん中にあるストレッチャーを見て、オクトが顔をしかめた。
「なんだ、なんでこんなものがある。クライフ、お前は知っているのか?」
クラフは黙って首を横に振る。
ブツブツと言いながら、オクトは身動きでいないままのクラフの診察を始めた。
目、リンパ腺、心音。
そのうち、クラフはあきらめて、じっとしていた。
医者のようなことをしている父親を、上目遣いで睨んだ。
「あの、お腹すいた」
背後で押さえつけていた大佐が笑ったようだ。
一瞬揺れたのが感じられた。

オクトは眉間のしわを深くしたが、ため息を一つついた。
「まあ、いいだろう。大人しく待っていろ。大佐、ありがとうございます」
後ろからの手が離れた。
クラフもため息をついた。
少し痛む腕をさすった。
「クライフ、分かっているんだろうね?お前は死ぬところだったんだ。素直に、隠していることを話すんだ」
ヴェデリット大佐はクラフの頭をぐいぐいと押す。
相手の反応を想像しながらも、クラフは言うしかなかった。
「…いやだ」
ぐんと金髪をつかまれ、思わずクラフは痛い、と叫んだ。
かえって大佐を面白がらせたようだった。
そのまま、ベッドに突き倒された。
のしかかる大男にかなう術はない。

「大佐、私に考えがあります」
にやりと笑って、オクトは傍らの医療機器をぽんぽんとたたいた。
「なんだ、また、薬か?」
数発、クラフの頬を殴って、大佐は顔を上げた。
クラフは、ぐらぐらする痛みの中で、オクトの声だけを聞いていた。

「ローザに、話させましょう。あれはきっと、知っていますよ」


逆転②へ続く♪
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ユミさん

コメントありがとうー!
ハッピーな二人♪本当に、カーチスったら…でも、らんらら、どうも彼を憎めなくて(笑)
この後…。ちょっと、大変だけど。大丈夫ですよ、ユミさん!らんらら、残酷なこととか怖いのとか苦手ですから!
スッキリするはず!!(^^)b

うわ~

ひどいことに…なっちゃってるじゃないですか。
カーチスってばー!!ちゃんとローザの話を聞かないと!
こんなことがオクトに分かってしまって、ローザ、何らかの
処分がくだるのでは??
出て行ったHappyな2人だけど、このあとのことが心配で
不安で、泣きそうです(>_<)
続きを読むのが怖い。

コメントありがとうございます♪

kazuさん
カーチスは恋に目がくらんでおります(笑)許してくれるんですね、kazuさん優しい♪(^^)
いい加減、らんららも、作者として何とかしてあげなくちゃと思うのですが。動かないんですねぇ、彼は(笑)
デアマンさん、この人、変です。何者なのか、何をしたいのか。そして、大統領。何をしてくれるのか…ふふ。
お楽しみ、です!

chachaさん
カーチスのせいでばれたりしたらそれこそ、メラニスさんが派遣されちゃいそうですから(笑)救っておきました♪ローザは、…どうでしょうか(笑)ああ、最近らんらら、ブラックですもの、何するか分かりませんよ!!
ローザがカーチスに抱いた気持ち…分かってもらえて嬉しい♪らんららも、こういうときの男の人には弱いです…キュンときますね!男性の楓さんにはかなーり不評ですが(笑)

楓さん
妄想しすぎv-391らんららはそこ、サービスしませんので、セルフでお願いします♪
ふふふ。デアマンですか。あの小物ぶりは実は嘘で、本当は…って、期待させても裏切りになるかな(笑)サブタイトルとは裏腹にブラックらんらら、ますます悪さをいたします!ええ。ブラックですから♪(いつかの楓さんみたいになってきたなぁ…)

だからいわんこっちゃない!!

かかかかかっ・・・
かーちす!!!!!!!!!
お前はいったいどんだけ僕をイライラさせたら気がすむんだ??ああっ??!
ローザのことしか考えてない!!
お前今頭の中ローザのことで一杯だろ?
クラフ君のこと喜んでいる気持ちは本物でも、それでこうなってこれからどんなことになるかと考えたら・・・ああああああああああああああああああああああっ!!
かーちす!!!
で、
デアマンはいったい・・・?
彼の素性と目的が非常に気になるです。

おわぁぁ!><

カーチスのばかばか!><
でも良かった~てっきりカーチスが言ったばっかりにバレちゃうのかと思ってたから^^;
デアマン、一体何をする気だったんだ??
クラフをどこかに移すつもりだった?@@;
それはどこに!?そして彼は一体何者!?><
デアマンの今後の行動が気になる所です・・・。

そしてそして!!
つ、ついにオクト達にバレちゃいましたね!!;;
ここここれってどうなってしまうんでしょう??
ローザ、まさか自分が居ない間にこんなことが起こってるとは思いもしないでしょうね・・・
てか、逆に帰ってきたら危険な気がするのですが><

ローザがカーチスに対して抱いた気持ち、うんうん、わかるなぁ^^
そんなに素直に気持ち伝えられたら、グラリときちゃいます(笑)
でも、やっぱりカーチスは活躍せずに終わりそうですが(笑)^^ぷぷ☆

ぎゃぁぁぁぁっ!
ばれた・・・、ばれちゃいましたよ・・。
カーチスさん、あまりに嬉しかったのも分かるし、お酒を飲んでたのも分かる・・・。
それに状況も知らなかった。
直ぐに。そう心で決めて、カーチスさんを送っていったローザさん。
まさかこんなことになっていようとは・・・。
デアマンさんは、なにをしたかったんだろう・・・。
ペンタゴンから派遣された弁護士。
大統領からの助けだといいな・・・!!!
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