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「宙の発明家」第三章八.逆転③

●逆転3

クラフが気づいたとき、真正面の白い天井に「空の羊」号の模型が張り付いていた。
紐がゆらりと揺れる。
ふと、手に持つデンワの感触を確認する。
ちゃんと持っていた。




体を起こそうとしてあちこちがきりきりと痛んだ。
顔に何か張られているようで、上手く目が開かなかった。
「クライフくん、気がついた?」
ローザの声。狭くなった視界で、クラフは部屋を見回した。
変わらない、もとのままの部屋で、ローザと、そして隣にカーチスもいた。
「なんだ、カーチス、仕事ないのか?暇なのか?」
クラフは、カーチスが駆けつけたことを覚えていないのだ。青年の表情が厳しいために、つい、口調は冗談交じりになる。
「ああ、今は非番だ」
そっけない。
なにを怒っているのか。
「カーチス、そんな態度しなくても。ごめんね、クライフくん、私たちが嘘をついていたことで怒っているのよ」
クラフは顔のガーゼを手で確認しながら、まだ少し、腫れている唇で笑った。
「なんだ、自分だけ知らなかったから拗ねてるんだ」
「!うるさい!お前、オレがどれだけ心配したか!」
青年がどれだけ心配してくれたかは、その表情でわかる。目覚めたときに嬉しそうに笑ってくれた。だからこそ、あの時は言えなかった。

「ごめん。あの時、父さんに隠していることを話せって迫られたとき、ローザが手を握ってくれて。助けてあげるって、手のひらに文字を書いてくれたんだ。だから、オレ、最後まで言わないで済んだんだ。仕方ないよ、あの場でカーチスに知らせる方法なんかなかった」
青年が苦い表情のまま、ベッドに近づいてきた。
「一発殴らせろ」
「!やだ、カーチス!」
慌てるローザの遮る手を止めて、クラフは笑って言った。
「い・や・だ」
「!この!」
振り上げられたカーチスの拳を、クラフは両手で受け止めた。拳はそこで、ぴったりと止まった。
「へへ、でかい手だね」
嬉しそうに笑う少年に、カーチスは拳をぐりぐり押し付けながら、ため息をついた。
「すまなかった。俺がもっと早く、助けてやれば」
「カーチスのせいじゃないから。カーチスはずっと、言ってくれただろ?意地を張るのはばかげているって、俺のために一生懸命説得しようとしてくれた。俺は、ずっと黙っていて。俺が自分で決めたことだと、そう思ったから、カーチスは黙ってみていてくれたんだろ。俺のこと、信じてくれたんだ」
カーチスは腕を組んで、傍らのイスに座った。
「前に言っていたよね、男は大切なものを守るために、何かを犠牲にすることが出来るんだって。それが、無謀に思えたとしても、そうしなきゃならない時があるって」
「あ、ああ、言ったかな、そんなこと」
青年は珍しく、照れたように視線をそらした。
カーチスの背後で、ローザが目を丸くして、それから微笑んだ。
「何?二人して変だ」クラフが笑った。

「…ま、とにかく、お前腹が減っているんだろ、ほら。食べろよ」
カーチスは、傍らのテーブルに置かれていた食事をトレーごとクラフの膝の上に置いた。

「やった!チキンだ」
クラフは口元のガーゼもろとも食べてしまいそうな勢いで、噛み付く。
ローザは笑った。
「ふふ、一応点滴もしておいたから、食べ過ぎると後でもたれるわよ」
「んー」
少年は目の前の食べ物に夢中だった。
「まあ、とりあえず、上手く行ったってことさ。お前の計画通りかは知らんが」
青年が蒼い目を細めて笑った。
「?どういうこと?!あ、そうだ、あの後どうなったの?父さんたちは?」
「そうね、覚えてないわね」
ローザが、汚れた手をティッシュで拭いてくれながら説明してくれた。
「大統領が、約束を守ってくださったのよ。あの時、黒い服の男が入ってきたでしょ?ペンタゴンから派遣されてきたのよ。監察総監直々の命令でね」

「かんさつ、そうかん?ってだれ?」
「国防総省、ペンタゴンにある部署でね、軍の内部監察をするのよ。軍の内部で非合法なことが行われないように。またちょうど、あの場面だったから。話は簡単だったわ。博士と大佐はしばらく停職処分が言い渡された。博士はここに住んでいるものだから、まだこの建物内にいるけれど、この部屋には警備のものがついているから大丈夫よ。大佐は自宅に戻ったわ。普通なら裁判沙汰なんだけど、BSAのことが明るみに出ないように、何がしかの手が打たれるんだと思うわ」
そういってローザはにこりと笑った。
「大佐みたいな人はね、組織に逆らったりしないのよ。方針が変わればそれに従うわ。今後、私たちに害をなしたりはしないはずよ」
笑うと、きりりとした瞳がちょっとタレ目風になって、可愛い。
クラフの肉を食む口が止まった。少し考え込む。
「クライフ、ロイズ博士のことは気にするな」
「そうよ、博士には博士の生き方があるんだから、ね。もう、お父さんだなんて思わなくていいのよ」
あの時、少年に銃を向けたオクトを脳裏によみがえらせて、ローザは何度も瞬きした。クラフには、伝えられない事実だ。
心配をかけまいと思うのか、少年は笑って、話を変えた。
「な、ローザはどうなるの?仕事、変わるのか?」
クラフは少し冷めたスープを口に運ぶ。スプーンからたれた雫があごに付くのも気にしないようだ。
「国立の心肺血液研究所へ、派遣と言う形かしら。どんなところでもいいのよ。私の研究が役立つところならね」
「…ここから、いなくなっちゃうのか?」
ぷぷ、とカーチスが噴出した。
「!なんだよ!」
「お前、なに甘えているんだよ。お前だって、いつまでもここにいなくてもいいんだぜ」
「え?」
ローザがあごを拭いてくれる。大人しくされるままになりながら、クラフは目だけきょろきょろと、二人を交互に見つめた。
二人とも、ニコニコと笑っていた。
「なんだよ?」
「大統領が、ね。あなたの保護者になってくださるって言うのよ。博士からの親権の放棄と養子縁組の手続きが終われば、もう、ここにいなくてもいいの」
養子?保護者?大統領が?
二人は嬉しそうに少年の驚いた顔を見つめている。
「大佐も手の出しようがないさ、お前の背後には大統領がいるんだからな」
「?保護者…そんな、子供みたいな」
「十五だろ?お前、子供じゃないか。少なくとも、この国じゃあ、二十歳過ぎるまでは保護者が必要さ。それが、大統領なんだぜ、お前、代わって欲しい奴は五万といるぜ」
まだ、きょとんとしているクラフの頭をローザがなでた。
実感がわかないだろう。科学には詳しくても、制度には無知だ。

「えーと。どういうこと?」
「つまり。普通の生活ってやつを、手に入れたわけだ」
「あら、ぜんぜん、普通じゃないと思うわよ」
ローザは笑った。
「とにかく、クライフ君、大急ぎでそのどうしようもない食事のマナーを何とかしなくちゃ、大統領にも嫌われちゃうわよ」
「そりゃそうだ!」
二人に笑われながら、クラフは手元のチキンを見つめる。
大統領が、お父さん…?
一瞬、セキアの顔が浮かぶ。



逆転④へ続く♪
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ふふふでごまかすコメ返し♪

kazuさん
わぁい!
喜んでくれました!?そう、やっと。逆転ですよ!永かった!
そうね、浮かんだのがセキアなのは、らんららもよく分からないのだけど(笑)
ここに嬉し涙にくれるうっとうしい奴が一人…
セ>クラフさま…v-406
ふふ、沢山!楓さんの反応が笑える~!!
セ>…一号二号って、節操のない、…楓さんv-389
沢山出るといいねぇ(遠い目)
セ>やる気無しですか?v-403
さぁ、ねぇ。v-391


楓さん
オクトに父親らしいこと?…ふふ。
ふふふふふ。v-391
いえ、何も言いません。
これからのコメ返しは本当に、ブラックで臨みます!エンディングですか!うふーv-414
今から悲劇に変えるのも簡単ですよ、どうしましょうね?


chachaさん
そう、たくさん、登場、セキア戦隊です!(笑)
セキア>一人でいいんです!v-390
たくさんいればみんなに分けられるのに…多分ほしい人いるよ。
セキア>私がたくさんいても、クラフさまはお一人ですから!!
…意味わかんないv-389
放っておいて。
chachaさんもオクト改心説ですか!ふふうふふふふうふ!!
みんな優しいんだからぁ!そうしたらきっと、クラフくんが一番嬉しいでしょうねぇ。あ、でもでも。ここで幸せになっちゃったりしたら、宙に帰らなくなるかも!
セキア>はぁあああ!?v-405
「宙」を見たい…うーん、エンディング気に入ってくれるかなぁ!(^^)

ユミさん
そうです!「自由だ!」って。ふっふふふ。
そうですねぇ。クラフくんが学校行くところとか、普通にスポーツやるところとか。…想像できない!?
うん、スポーツは無理かも(^^)
さて、残りあと少しです!気に入ってくれるかなぁv-345

きゃ~

やっと自由を手に入れたのね、クラフくん!!
あ、自由には行動できないかもしれないけど、心は自由?!
とにかく、いままで辛すぎるほど辛かったから、これからは、
自分の考えや発想を大事に、そして仲間(宙の仲間も、
地上の仲間も!)を大切に生きてね♪

どうしようもない食事のマナー(笑)
ローザって面白い…!

↑楓さんがっ!(笑)

わはははは><
セキアがいっぱい出てる~!
しかも○○戦隊○○レンジャーみたいに登場してる!!(笑)
うん・・・と、やっぱりセキアは一人でいいです><

で、
クラフ、そうか!大統領の養子に!?
これは凄い!すごいぞクラフ!^^
でも、私も楓さんが言うように、オクトの改心を密かに期待しているんですが・・・
無理、かもですね。彼は本当、実の息子に銃口を向けるなんて最低な人だもの。
それを覚えてなかったから良かったものの・・・

ローザとカーチス。
登場当時から、二人はクラフの為に力になってくれそう!と思ってましたが、良かった☆やっぱりそうなってくれて!^^
二人の関係も上手くいって嬉しいです~☆

クラフにとって「親」は、セキアなんだろうなぁ。
ずっと、育ててくれたんですもん。
大統領は凄いけれど、親はやっぱり、ここまで育つ間に愛情を注いでくれた人だと思います。
だから、セキア。
早く会いたいでしょうね^^てか!私も早く「宙」を見たいです!(笑)

よっしゃ!!

ども、セキア1号です。
ども、セキア2号です。
ども、赤セキアです。
黄セキア、青セキア・・・
・・・
すみません。
kazuさんのご要望に応えてみました←意味をはき違えている。
オクトがクラフ君に銃を向けたことを彼は知らないんですね。良かった。
でも、叶うことなら、オクトには改心してもらい、一度でいいから父親らしいことをしてもらいたいと切に願ってしまいます。
大統領が保護者・・・
最強ですね。
でも、やっぱしクラフ君にとって父と呼べるのは、セキアさんしか居ないでしょう!!
飛べ!クラフ!!
故郷(宙)に向かって!!
ああ、
何かエンディングを勝手に想像して涙が・・・

わぁい☆

逆転!!
大統領、やってくれましたね!!
もう、恐い思いもしなくていい。
オクトに脅されなくてもいい、普通の生活が出来る・・・。
宙の仲間とも連絡取れるし、研究に没頭できますね!!
大統領がお父さんになってくれた。
その時に、浮かんだのはオクトではなくセキアさまの顔。
きゅぅぅん・・・
そうよね!クラフ君!!
やっぱり、セキア様よね!!
やっぱりセキアさまらぶです~
早く、セキアさまが沢山出てきてくれないかなぁ・・・
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