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「宙の発明家」第三章八.逆転④

●逆転4

二日後に、再び大統領の訪問を受けた。
傍らに弁護士もいた。
今回はきちんとした応接室で大統領と向き合った。
昼間の日差しを避けるために厚いカーテンを閉めてくれて、クラフはスーツを着せられて、大きなソファーにちょこんと座った。
大統領は、穏やかに笑って、会うなりクラフを抱きしめた。
まるで、本当の子供にするように。
それが、すごく不思議で、クラフは以前あったときよりずっと、緊張していた。




大きなソファーの向かいに大統領と弁護士が座った。
クラフは、落ち着かずに、ふかふかした絨毯に靴のつま先をずるずるとこすりつけていた。
「緊張しなくていいんだよ」
弁護士の男性がニコニコと眼鏡の奥の細い目で笑いかける。
その時、応接室の扉が開いた。
「!…父さん」

博士は、少年の視線を受けても、表情を変えず、青白い顔をこわばらせたままクラフの隣に座った。
クラフは隣に座る父親をじっと見上げている。
やせた頬。ひげを剃ったばかりなのだろう、そこだけやけに白い。
一気に白髪が増えたようで、少年は見ていられなくて目をそむけた。
まだ、殴りかかってくるあの表情のほうが、ましだった。情けない顔を見たくはなかった。
ひざの上に行儀よく乗せた手を、ぎゅっと握り締めた。
そんなクラフを、大統領はじっと見つめながら、目を細めた。
弁護士が、話し始める。
「さて、オクト・ロイズさん、双方の同意を確認するためにお呼びいたしました。ご足労ありがとうございます」
「…書類は、もう、送りましたよ」
そっけない言い方のオクトに、弁護士は苦笑いする。
「申し訳ありませんね、規則なのでね。こちらの書面に、必要なことはすべて書いてあります。あなたが、クライフ君の親権を放棄すること。そして、二度と、彼に近づかないこと。彼の持つすべてに対して何の請求もしないこと。ま、大まかに言ってそういうことですね。同意いただけますか?」
二度と、会えない。
クラフはうつむいた。
何度も、何度も瞬きをする。
「大丈夫かい?クライフくん」
大統領が、声をかけた。
「君が嫌なら、一緒に住まなくたっていい。ただ、書類上の保護者となるだけでもいいんだ。君が成人して、一人で何でも出来るようになるまでの支えだと思えばいいんだ。もちろん、私も、私の家族も君と一緒にいたいと思っているのだけどね」
穏やかな大統領の声に嘘はない。きっと、守ってくれるんだろう。
いつか、宙に帰るまで。
「…あの」
言いかけたクラフの言葉を、オクトが遮った。
「お前に発言する権利はない」
「!父さん!?」
「一人で生きていくことの出来ない子供のくせに、お前に親を選ぶ権利などない!」
クラフは、唇をぎゅっとかみ締めた。
「…ロイズさん、よろしければ、サインを」
弁護士が、少し眉間にしわを寄せて、書類をオクトの前に置いた。
オクトは無表情のまま、さらさらと署名すると、乱暴にそれをつき返した。
「確かに。では、今日から、クライフくんは、正式にフランク・ニービア氏の養子となりました」
弁護士がまだ何か話そうとしているのに、オクトは乱暴に席を立つと、部屋を出て行った。
それを立ち上がって見送るクラフを、大統領が抱きしめた。
「すまない、こうしなければ君を守れないと考えたんだよ」
クラフは、首を横に振った。
「いいんだ、あんなの、父さんじゃない…だから」
大統領は、再びぎゅっと少年を抱きしめた。


部屋に戻ると、カーチスとローザが来ていた。
クラフの顔を見るなり、二人とも笑った。
泣いたことが一目で分かる。クラフは目を赤くしていた。
「よお、終わったのか」
「ああ。ボク、大統領の子供になった」
「いつから行くの?」
「明日。大統領はこの後予定があるからって、帰った。ボク、荷物まとめないと」
「そうね。手伝うわよ」
「ありがとう」
いつになく、おとなしい少年にカーチスは何も言わなかった。

カーチスがスーツケースを三つほど手配し、クラフは宙から持ってきたさまざまなものをベッドの上に広げていた。床は本が占領しているからだ。
ぺたっ葉や、もえ玉。あのクマのぬいぐるみもあった。今見ると、とても小さく感じた。子供の頃は、抱きかかえることも難しいくらい大きかったのに。

「ね、今夜は三人でお祝いしましょ!」
ローザが部屋に散乱した本を大きさ別に積み上げながら言った。
「お祝い?」
「そうよ。三人の新しい生活が始まるんだから」
「三人の?」
問いたげな少年にローザが笑った。
「私たちね、婚約したのよ」
クラフの顔に、笑顔が戻った。
「すげー!!やったじゃん!カーチス!」
「まあな」
照れる青年に、クラフは笑う。
やっと、何かが変わっていく実感を得た。それも、よい方向に。
これでよかったんだ、クラフはクマのぬいぐるみを抱きしめた。



「なんだ、お前はまだいたのか」
オクトの不機嫌な言葉に、デアマンは丸い顔を向けた。いつもの穏やかな表情のまま、オクトと同年代の助手は言った。
「本当に、クライフ君は大統領の養子になったのですか」
自分の机に向かいかけていたオクトは、歩みを止めた。
無言で、助手を睨んだ。
「なんだ、デアマン、やけに嬉しそうじゃないか」
皮肉に歪む笑みが、やせた顔に張り付いていた。
デアマンは眉をひそめて、それでも穏やかに言った。
「いえ、決してそんなことは」
歩み寄るオクトに向き合うように、いすを回転させた。
見上げるとオクトは直ぐ目の前で見下ろしていた。
「ふん、お前の考えていることは分かっているんだ!薄汚い豚め!」
「…」デアマンは表情を消して上司を見つめていた。

天才は永遠に①へ続く♪
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皆さんのコメントにどきどきしますよー!!

kazuさん
ふふ、そうですね♪本当に、最初からセキアさんのこと応援してくれて嬉しいです!感謝感謝ですよ!
さて、オクト。どうでしょうか。
皆さんのオクトに対する感想が、どんなものなのか。気になるところですよ~♪後、デアマンさん。悪役らしく散ってくれるかどうか!ふふv-391
ふふふ~


ユミさん
そうですね、クラフくん。帰ったこの世界は、期待したものと全然違ったけれど、失った十年を取り戻すのはこれからですからね~ふふふ。
オクト改心説。基本的に、らんららは性善説ですからね~v-398
カーチス、ええ、やるときはやる!幸せになってほしいものです♪
うーん、いつものことですが、エンディングが近づくとすごく、ドキドキしますよーv-393


楓さん
深い読みです!楓さんが改心説や実は思いやり説を考えてくれている間に、奴は…
そして。デアマンさん。
くーーーー。v-393どきどきするなぁ!楓さんがラストをどう思ってくれるのか!!
もう、なんていうか!そうなんですよ、ええ、ええ。言えませんが(><)
匂わせずに平然とコメントすることが難しいので、心をブラックにして、口を閉じます!!
実はセキア説!そこは、笑っておきますv-407


chachaさん
ファスナー!!ぷぷ!v-398
かわいいかも?いや、可愛くないか。クマのぬいぐるみから出てくる、いやそれは大きさが…。想像してしまいました!!
ふふ、オメデトウをもらうと、何だかうれしいですねぇ!
ハッピーエンドなるか!!
なるか?
ふふふv-391
らんららは口にファスナーです!

うわっはは!

か、楓さん、それだったら凄いマジック見れますね~~(笑)
デアマン、実は背中にファスナーが・・・
チーーーー・・・・(ファスナーを下ろす音)

セキア>クラフ様!!

て、わっはっは!!><
想像して大笑いしました(笑)

で、ですね(笑)
まずは、クラフ逆転成功おめでとう!^^
オクトの件を考えると素直に喜べなかったりもしますが・・・
いやいや、これで良かったんだ。
今のままのオクトじゃ、クラフは危険な目に遭わされ続けていたかもしれない。
大統領が父親か・・・
まさに敵ナシ!ですね~^^ふふふ☆
そして、カーチスとローザ、婚約おめでとう!!><
良かった~やっぱり二人には幸せになって欲しかったですので。
案外お似合いカップルですよ^^
カーチスの押しにローザは負けた感じにも見えますが(笑)
良かった良かった☆

デアマンは本当に謎のままだな・・・
オクトが言った言葉、何か知ってる!?@@;

深読みするならば・・・

クラフ君を大統領の下に行くよう踏ん切らすために、オクトが一芝居打ったとも考えられなくもないですが・・・
いやいや、
奴がそんなことするわけないか(ふっ
でも、もう少しだけ見守ってみたいと思います。
それは、デアマンの事が気になるから・・・
彼一体何者なんでしょう?
ちょい役かと思いきや←失礼(苦笑 なかなかどうしてしぶとい・・・いや、ここにきて存在感を増してきましたよね。
ま、まさか・・・
中からセキアさんが出てきたり・・・
いやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいや(笑
最後の最後まで目が離せませんっ!!

良かったんだよね?!

クラフくん、本当はちょっと寂しいのかなぁと思いつつ…
これで良かったんですよね!!
ホント、オクト改心すると思っていたのに、やっぱり
変わらないんだ。
それはそれで残念。でも、生きてる間に後悔する心を
持って欲しいものです。

そして、カーチス&ローザ!!婚約おめでと~ぅ♪
一時は、カーチス、どうなっちゃうの??って心配だった
けど!!もう迷わないでね~~。

そろそろエンディング。寂しいですね。
素敵な終わりを期待してます☆

逆転!!

逆転!!!しましたね♪
クラフ君と、オクトの立場。
カーチスさんもかっこよく逆転してくれたし♪
・・・青セキアさまがいいかな・・・
・・ううん、いいえっ!セキアさまは唯1人!
クラフくんを本気で心配するセキアさまが、私は好き・・・・v-10
うふ☆

最後まで、オクトはオクトでしたね。
このあと、変わっていくのかなぁ。
皆さんの改心説にも心動かされながら、悪役らしく散ってくれとかおもうkazuもいたり。←禪の生みの親ですから!ブラック心もってるです!
そしてデアマンさん。
一番謎ですね。
裏を察しているような、オクトの言葉。
逆転が終わって・・・最終章にはいるんですね・・・。
もう直ぐ終わってしまう・・・。
寂しいけれど、続きが気になってもう・・・。
更新楽しみにしています!
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