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「宙の発明家」第三章九.天才は永遠に②

●天才は永遠に2

あの、宙に迎えに来たときのオクトの口調だ。
あの時の、迎えに来てくれたのが自分の父親だったと分かったときの切なさが甦った。
とくとくと、心臓が脈打つ。



「あの、お父さん…明日、ボクはここを出て行くよ」
父親がふと、ため息を吐いたような気がした。
暗闇はちょうどよかった。クラフはともすればあふれそうになる涙をこらえる。
「あのさ。俺がずっと、向こうでずっと、父さんに会いたかったのは本当なんだ。だから、父さんが迎えに来てくれて、…その、理由とか、研究のこととか関係なく、俺…」
そこで、クラフはオクトが肩を震わせていることに気づいた。
低く、低く。
笑っていた。


「!父さん…?」
オクトが何かを構えた。
ひゅ。
クラフの立つ右側の壁に、弾が打ち込まれた。硝煙の匂い。
「父さん、何してるんだよ!」
ひゅ。
一発が、壁の時計に穴を開けた。暗闇の中で、こちらが見えもしないくせに当てずっぽうに撃っている。
どこに、当るかも分からないのに。死んでもいい、苦しんでもいい、ということなのか。
そんなにも、憎いんだろうか。
涙がこぼれた。
「父さん!」
「私はお前の父親なんかじゃない!」
同時に、窓のブラインドがシャン!と開けられた。月明かりに、窓を背にするオクトの影が見える。

「養子にはなったけど!でも、父さんは、本物のお父さんは一人だよ!」
「くくく」
正常な、精神状態とは思えなかった。あの、弁護士とのやり取りのときにも、やつれて疲れ果てた顔をしていた。青ざめて、どこか生気を欠いていた。研究が出来なくなったことで、どこかが壊れてしまったのだろうか。
笑い続けるオクトを、クラフは何度も涙をぬぐいながら見つめた。
どうしたらいいのか、分からない。

オクトは、白衣のまま、ゆらりと本の山の中に立っていた。
月明かりで、今はクラフの姿が見えているだろう。オクトは銃を構えていた。

クラフは一歩横に移動しようとして、時計の破片を踏んだ。

パキ。

「!」
ジリリリリリ…!!
耳を突き刺すようなものすごい音が鳴り響いた。
警報だ。建物中を震わす。廊下でばたばたと走る音。ビイが何か怒鳴っている。
扉が開いた。
「クライフ!火事だ、逃げるん…」
暗闇に一瞬躊躇したビイがクライフの姿を見つけ、駆け寄ろうとした二歩目。
倒れた。

「!ビイ!」
駆け寄る。大きな警備員は、動かない。
揺すった。肩を起こそうとした手に、べっとりと黒いものが付いた。
「!ビイ!なんで、父さん、どうしてこんなこと!」
「お前は生きていてはいかんのだ!天才は一人で十分だ!私は誰よりもあの世界のことを知っているのだ!お前などに、私の気持ちは分からん!!」
「ビイ!」
オクトの声は、警報にかき消され、叫んでいるクラフには届かない。廊下を駆け抜ける誰かの怒号と、足音がかろうじて聞こえた。
ドン!どこかで何かが地響きを立てた。
「…爆発?」
床についた膝に振動を感じて、クラフはびりびりと震えるような天井を見上げた。二階だろうか。ばらばらと、何かが落ちてきた。

警報が止まった。
ドン!
再びどこかで爆音が響き、クラフは肩をすくめた。
オクトが、何かに気付いたように銃を扉のほうに向けた。非常時のためか自動扉は開いたままのようだ。廊下からの赤い点滅するライトが、室内に流れ込む煙を不気味に照らした。暗い室内。
クラフは煙の匂いにむせる。
嫌な匂いだ。

またどこかで、何かが引火してはじける音が響いた。ガラス片の飛び散る甲高い音。
何が起こっているんだ、クラフは両耳を塞いだまま、顔を上げた。

「!博士!止めてください!」
少し小柄な、白衣の男が煙と一緒に室内に飛び込んできた。
座り込んでいるクラフの前に男が立ちはだかった。
「!?なんで?デアマンさん!」
オクトが、撃とうとしてカチリと弾切れの音を響かせたのを確認して、デアマンは突進する。太った体をオクトにぶつけた。
「!」
どん、と、二人は本の山の中に倒れこむ。
「父さん!デアマンさん!?」

クラフは駆け寄ろうとして、ぐらりと視界が鈍く揺れるのを感じた。
踏みとどまって、左腕の感覚がないことに気づいた。
左手を右手で触れる。ぬるりと、暖かい液体が触れた。先ほどから耳鳴りがひどいと思っていたそれは、腕の痛みだった。動かそうとした。
例えようのない痛みに吐き気がする。
「うぁ…」
その場に座り込んだ。
本の山の中から、のらりと太った背中が起き上がった。いつの間にかけむりが入り込んでいるからか、その姿はかすんで見える。
デアマンだ。
「ロイズ博士。諦めてください!逃げ切れるものじゃありません!」

表情の乏しい人だと、クラフは思っていた。
穏やかだけれど、何の感情も抱いていないような、友達にはならない人だと。
その彼が、今、似合わない怒鳴り声を上げていた。
その声はうわずって、かすれている。
咳き込む。
「だまれ!」
どんと、デアマンを押しのけて、殴りつけるとオクトが起き上がった。
丸い白衣の背は、うめいて、動けずにいる。

「もともとはお前の計画だろう?デアマン!研究データを元手に、クライフを連れて亡命するつもりだったろう?お前に私を責める資格などない!私は一人で行く。クライフは私の身代わりにここで死ぬのだ!誰か分からないくらい、きちんと焼いてやるよ」

クラフは、煙にむせながら、二人を見上げた。目がしみて、何度も右手でこする。
「父さん」

にごった空気の中、オクトがぬっと目の前にいた。
息が苦しい。
「お前は死ぬんだ」
言葉の意味と同時に、首を絞められていることに気づいた。ちりちりと、目の奥が赤く瞬く。
クラフは体の力が抜けるのを感じた。


天才は永遠に③へ続く♪
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コメントありがとうです!

ユミさん
悶々ってv-407
オクト、最後まできっちり悪役ですよ!
そうなれば、後は悪役を倒してめでたしめでたし!?
かな?ふふふー!v-391
後少しです!見守ってやってくださいネ♪

chachaさん
ビイ、警備員のくせによわっ(笑)
デアマンさんも微妙ですね~、なんて、ふふふー。v-391実は、…いえいえ、さて。クライマックスが近づいてまいりました!最後まで凶悪なオクトさん、立派に悪役をやりとおしますよ!うーん、ドキドキしてきました!
心臓!?v-405ローザさん、出番です!!待機してますよ、いくらでも心臓ばくばくさせても大丈夫!?

kazuさん
はい!オクト改心説は裏切らせていただきました!!
というか、改心されてクラフくんが納得しても、読者は納得できないだろうと…。ま、彼なりのブラックな理由はありますが。クラフくん、ピンチです!!
ふふふ!誰でも…セキアさんの名前が出るところがkazuさんらしくて好きv-344
あと少しです。見ていてやってくださいね~v-392

オークートォォォォッ

やっぱりオクトはオクトだ!!
ある意味、最後まで悪役でいてくれと思っていたので、やっぱり改心しなかったかと思って・・・思って・・・・
「お前は生きていてはいかんのだ!天才は一人で十分だ!私は誰よりもあの世界のことを知っているのだ!お前などに、私の気持ちは分からん!!」
・・・クラフ君に聞えなくてよかった。
本当によかった。
でも。オクトはクラフ君の首を・・・。
デアマンさん!ビイさんっ!!てか、カーチスさんとローザさん!!
あぁぁ、誰でもいいから助けて!!
・・・セキア様!!!

うきゃーーー!!><

く、くく、クラフがぁぁぁ!><
やばいぞ!これやばいでしょう!!死んじゃうよーーー><
ビイがまず駆け付けてくれて、良かった、助かった、なんて思ったのにすぐ撃たれちゃって・・・;;
どうしよう?どうしよう?ってドキドキしてたら、デアマン登場!
よし、この人はどうやら味方だ!これでクラフは助かる!^^と思いきや・・・
またもややられちゃって><(泣)
く、クラフの首に手を伸ばしたオクト。
煙が立ち込めたこの部屋で、クラフが!クラフが危険なことに!!!><
どうなるんですか!?誰か他にも助けは来てくれるんでしょうか!!?;;

オクトのばかーーーーー!!(怒)
何が天才は一人で十分、だ!!ばかばか!!
そのひねくれた根性、叩きなおしてやるわーー!!(怒)

そして、爆発が何度も起こってましたが・・・あれは一体??@@;
らんららさん・・・はぁはぁ、心臓が持ちません(笑)

もんもん

してます(笑)
クラフくんは、あんなヤツでも、父親として最後まで信じていたって
いうのに、オクトは結局、自分が一番可愛くて、自分の才能だけを
認められたくて、そのためには、クラフくんが邪魔で…。
父親になる資格なんて、最初っからなかったんですよ><
クラフくんのお母さんが亡くなったのだって、なんかオクト怪しく
思えちゃうよ!!

ビイさんも撃たれて、クラフくんも負傷して、デアマンさんも
危険な状態…?誰か、助けに来てあげて。
そう、カーチスやローザ、クラフくんを守ってください!!!
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