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「宙の発明家」第三章七.隠し事⑦

●隠し事7

「ったく、俺はなにやってんだろうなぁ…」
愛車の運転席で信号が変わるのを待ちながら、カーチスはため息をつく。助手席にはデンワ。天井には飛行機。飛行機からたれる紐が、フロントガラスの視界をゆらりと横切る。



深夜の市街、信号で止まっていても、対向車も横切る車もない。
「完全に、酒酔い運転だ…頭いてえ」
右手で額を押さえた青年は、対向車線にいくつかのヘッドライトが並んだのを見た。
高級車が、数台。
黒塗りのリムジンのようだ。ナンバーは正面からでは見えない。
リムジンを前後の車で囲って走る。政府の重鎮だろう。
見送ってから、カーチスは信号が青になっていることに気づく。


研究所の警備室では、いつもなら一人のはずが、今日は五人も夜勤をしていた。
カーチスを見るなり、顔なじみになったビイが赤ら顔をさらに赤くして、窓口から青年を捕まえた。
「おい、なんだ?」
一瞬、酔っていることを指摘されるのかと警戒する。
「さっきなぁ!大統領閣下が来られたんだ!おりゃあ、あんな間近で見たのは初めてだったぜ!もう、何ていうか興奮してさ」
「大統領!?」
あのリムジンか。
「何しにこんなとこに?」
「さあねぇ、視察かなんかじゃないのか?それにしても、非番返上で出勤したかいがあったってもんだ」
カーチスはにやりと笑った。彼にこれ以上の情報はないだろう。
「そうか。良かったな!握手してもらえたかい?」
「そりゃ、まあ、無理さ」
ビイは少し残念そうな顔をする。
「けど、ご苦労様って声かけてくださったんだぜ」

「ふうん、俺なんか、基地で何度か会っているんだぜ!いいだろ!」
「なんだよ、お前、つまんねえ自慢するな!さっさと行っちまえ」
機嫌を損ねた男の肩をぽんぽんとたたいて、カーチスはいつもの部屋に向かう。
大統領の訪問。
明るく照明の焚かれた廊下に、自分の足音が響くのを聞きながら、カーチスはオクトたちの目論見がかなったことを想像した。
あの、まるでおとぎ話の中世の国のようなBSAに、軍を送るのか。


クラフの部屋の扉を開く。見覚えのある女性の後姿があった。
一瞬、躊躇する。
手元のデンワを握り締めた。
「よお」
遠慮がちな掛け声は、それでも十分ローザを驚かせた。
「!なによ!びっくりしたわ!どうしてここに!?もう、会わないって言ったでしょ」
立ち上がって、ローザは戸口近くでカーチスと向かい合う。
その表情は、思いつめたように悲しげだ。
それでも、黒い長い髪が、綺麗に光る。前髪と交錯する長いまつげ。その奥の深い瞳。
カーチスは突き上げてくる感情を言葉に代えようと、ぎゅと目をつぶって、息を一つ吐いた。
「君は、本当に俺のこと嫌いになったのか?急に、どうしたんだ?俺は、納得できない」
肩に手を置く。
「あなたがそう思うなら、そうなのよ。ね、放し…」
カーチスが強く抱きしめるほうが先だった。コトリと、デンワが床に落ちた。
「俺は、君のこと愛しているんだ!そんな、あいまいな返事じゃ嫌だ」
「…カーチス」

音がなくなる。
クラフは困っていた。目を閉じているために余計に想像が膨らむ。
ローザがカーチスを突き放しているのは知らなかった。
きっと、もし、ローザの嘘が大佐たちにばれたら危険だから、わざとそうしているんだろうと、予想はついた。
で。
今、どうするべきか。

静寂。その中で、クラフの心拍数を図る機械が、モニターに映す波型を大きくしていく。
その変化に、もちろんクラフは気づいていない。

二人はいったい。どうしちゃったんだ、そっと目を開けてみようかと、誘惑に駆られた。

ローザの唇を離し、ふと息をついた青年が、モニターの波形の変動に気づいたのと同時だった。
ぴぴぴ。
思わず、クラフは飛び起きた。

「!!」
少し動悸がして、胸を押さえる。
抱き合っている二人と目が合った。

ローザは顔を赤く染めて。
カーチスは逆に嬉しげに目を輝かせた。
「クライフ!!お前、気がついたか!」
「!…あ、ああ」
一瞬、ローザと目が合って、視線をそらす。
演技、続けるはずだったのに。
ぴぴぴ。
再び、デンワのコール。
気づいて、カーチスが拾い上げ、少年に渡しながら、そのまま抱きしめた。
「お前、本当によかった!心配したんだぜ」
「う、カーチス、酒臭い」
きっと、今のカーチスになにを説明したって無駄だ、そう考えてクラフは腹を決めた。本当のことを知らせる必要はない。

「ほら、こっちにも心配している奴がいるぜ」
カーチスがデンワを指差す。そして、すっと離れるとまた、ローザを抱きしめた。
「あのさ!そういうことするなら他でやれよ!」
「おお、じゃあな!」
「ちょ、ちょっと、中尉…」
「中尉ってのは、やめようぜ、な」
振り返りつつローザもカーチスとともに部屋を出て行った。

『……』
先ほどから、小さく聞こえているデンワの向こうの声に、クラフは応える。
「だれ?」

『クラフさま!私です!カカナ様はカーチスさんの連絡を待てと言うのですが、待てなくて、その。大丈夫なんですか?何か、危険な目にあって眠らされていると聞きましたよ!』
慌てた声のセキアがどんな顔をしているのか、クラフには分かる。
それがどれほど嬉しいことか、セキアはきっと分かってないだろうけれど…。大統領と話すことが出来て、一歩前進した。
それも、嬉しい。
「セキア、なんだよ、オレは大丈夫だってカーチスが伝えてくれたと思ったのに」
『いいえ、彼は信用できません!お迎えにあがります!空の羊号、完成したんですよ!それでお迎えに!』

クラフは目を細めて、デンワを両手で握り締めた。

「ありがと。あの、さ。もうちょっと、やらなきゃならないことがあるんだ。気持ちは嬉しいけど、こっちでもう少し、がんばるからさ」
『…』
セキアが黙った。
「どうした?まだ、だめだよ、こっちの世界の飛び方とかさ、方角とか、座標とか。お前、分からないだろ。危ないし、まだだめだよ」
『クラフさまやけに素直ですね。何か、悪いものでも食べたんですか?本当に、クラフさまですか?』
少年は頬を赤くした。素直…ほとんど言われたことのない言葉だった。
「!うるさい!オレが感謝したらおかしいか!?」

『いえ、元気がないように感じられて、気になるだけです。いつもどおりなら、何も心配などしません。この間も、泣いていたでしょう?』

デンワを片手に、一人照れたり顔をしかめたりしながら、少年は膝の上の毛布をぎゅうと握り締めていた。ぼやけてしまう視界を何度も瞬いてクリアにしようとする。
「…ばか。オレだって少しは、大人になったんだ。セキアの声、聞けて、嬉しいんだ」
ふと、つないだ手の感触を思い出す。
拳をぐ、と握って。
息をゆっくり吐き出した。肩の力が抜けて、クラフは笑った。
にじんだ涙をぬぐう。
「頼りにしてるんだ。帰りたくなったら、連絡するからさ。それまでにお前はまず。高所恐怖症、治さないと」
『え…』
『クラフ!任せておけよ!僕たちがセキアを特訓してやるよ!お前、無理するなよ』
ピーシだ。

『そうだよ、クラフ。操縦も、六分儀の使い方も、全部セキアに覚えさせるからさ!待ってるよ!つらくなったらいつでもデンワしなよ』
カカナが笑いながら話す。
『待って、ください!!その、そのぉ高いところは!』
情けないセキアの声にクラフは笑った。
久しぶりに、心から笑った。


逆転①へ続く♪
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ブラックらんらら、仕事を後輩に投げる投げる!もう、丸ごと、ファイルにポンとして、ほれ、やれ!さあ、やれ!って感じですv-8なのに、つい、付き合って教えてしまう…余計時間かかっているかも!v-12
ノー残業を胸に秘め今日も、「ごめん、遅くなる」メールを同居人に入れるらんらら…
哀愁漂っちゃいますか…?

kazuさん
ふふふ、カーチスさん、そう言う人です!強気、強引、でもしっかり愛情たっぷり…それ、女性のツボをつきますよね♪
そして!セキアさん、この人のデンワの声がなかったら、お話がひどく寂しく感じると思いますよ(^^)
今からでも直ぐに来ますから!クラフが、「来て」って一言言えば、もう、直ぐにでも!
お仕事で見張っていなきゃならなかったあの頃に比べて、今は思うとおりに行動できますからね!うーん!クラフくんに、幸せ…
いえ、何も言いません。
言えません~

楓さん♪
いーでしょ、ちぅ!!ふふふ!カワイイ、ちぅって言い方♪
あんなことやこんなこと!ええ、多分、楓さんの期待通り!(楓さんとこのポペットさんといい、カーチスといい!!春ですねぇ♪他の方が指摘しない部分にあえてメスを入れるコメント、お互いのちょいエロを感じます…)
そろそろ?ど派手に?
うむー。
どうしようかなぁ~♪

ふふ、前回のコメ返し、でも、あの台詞は使いませんでした。楓さんの言うとおり、クラフくんは一生懸命やるんですよ、きっとね。多分ね。
ラストシーン、楓さんがどう感じるのか…今からどきどきですねぇ…(><)


chachaさん
泣かせちゃいました!?
いえいえ、お返しですよぉ!いつもらんららも職場で泣いています!
課長と席が近くなって、ごまかしが聞かなくなっているので困ります(^^)
カーチスみたいな強引な奴、いいですよね!
勘違いは困るけど、こう、押してほしいときに押してくれる!それ、大事!!
分かりますよ~(^^)
こっちでやらなきゃいけないこと。うん。
上手く解決できるかなぁ…。
ふふふ、ゴールデンウィークでラストのつもりです!あと少し!がんばりますよ!(って、タイマー公開ばかりなんだけど…)

クラフ~~;;

そうか!久々に心から笑ったのね!あぁ!私がどれだけ嬉しいかわかる!?(笑)
そのうえ、私がまた会社で読んでるのに鼻水まで流しながら泣いたの知ってる!?(えぇ~@@;笑

良かった・・・こっちに戻ってきてから、やっぱりクラフ本来の元気さがないなぁと思ってたので><
あ、WDWの時ははしゃいでましたね(笑)
それでも、あぁ、クラフ。なんて素直なんだ!セキアが対応に困ってるぞ!(笑)^^

カーチスも何だかんだで憎めないなぁ><
こんな、ちょっと強引(?)にでも言い寄る人って、タイプだったりします(←ナニ暴露しちゃってるんだ!笑
ローザとカーチスも幸せになって欲しいです^^

まだ、こっちでやることがありますね。
それを全て終わらしたら・・・宙へ帰る!^^
みんなが待つ、クラフの本当の「故郷」へ!
頑張れみんな~~><
終わりがじわじわと近づいてきているのがわかりますよ~!;;

こぉぉおらぁぁあああ!!

かーちすっ!!!
ききき、貴様という奴は!!!
ローザさんにちぅ・・・ちぅをぉぉ!!
クラフ君が意識を戻したと喜ぶやいなや、電話がかかってきたのをいいことに、すぐさまクラフ君はそっちのけにしてローザと別部屋であんなことやこんなことを!!!←いやそこまでは・・・汗
許せんぞかーぢず!!貴様だけはどうあっても許せん!!こうなったら意地でもクラフ君を助け、BSAに真の平穏をもたらすまで許さんぞ!!!←誰お前?笑
で、ですね。
クラフ君、大人になったね。
てか、もう強がりが言えないほどセキアさんのこと、そして宙のことが恋しくなってるんだろうなと思いましたよ。ホントこっち来てからいろいろあったからさぁ・・・
ねぇ、らんららさん、もういいじゃん。もうそろそろど派手に花火打ち上げて、どどーんと彼を宙に返してあげましょう!!
ってああ!!
したらこのお話終わってしまうのか?!!
びーえす。
この前のコメ返見ました。
それも一つの考え方・・・ある意味クラフ君らしい答えかなとも思いましたが、でも結局彼は自分が居なくなってからのことも必死に考えて、死の間際まであれこれずっと手を動かして居るんだろうなとも思いました♪

むふふん・・・

いやんカーチスさん☆
愛に生きてますね、もう(笑
でも、ローザさんにははっきりというカーチスさんがあっているかも♪
ローザさんは、カーチスさんの事を思って突き放してるんだもん。
強気なカーチスさんいいですね。
こうであって欲しいな♪
そしてそしてセキアさま!!!
やっぱりセキアさま!!!これでこそセキアさまぁぁぁっ!
何のしがらみも危険も状況も、全てをかなぐり捨ててもクラフくんのもとに駆けつけようとするセキアさまの言葉が、クラフくんにはとても幸せで。
ピーシくんもカカナくんも!
クラフ君の、仲間、ですね。
いるべき場所、そう感じます。
早く宙に戻れますように!
クラフ君に幸せが待っていますように!
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