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「想うものの欠片」第一話プロローグ

すべてを見通す青年
すべてを愛する少女
すべてに優しい少年。
三人が出会ったとき、世界は大きく動き出そうとしていた。

産業が発達し始めた世界。
馬車と自動車が並走し、蒸気機関車が都市を結ぶ。

機関車整備工をしながら、建築技師を夢見る少年タース。
見ることのできないものを見、触れることのできないものを感じる美少女に出会ってから、すべてが変わる。壮大な冒険物語




「想うものの欠片」
第一話 プロローグ

その街の夕焼けは、大陸で一番のミモノであると評判だった。西へと低く続く丘陵地、その先に広がるリール海。西の果てまで続くそのエメラルドの海には、今まさに、沈みかかったオレンジの太陽が名残惜しむかのようにその色を水面に振りまく。
それはざわめく白い波と、丘陵地に続くオリーブの緑、家々のレンガ色の屋根を綺麗に染めて、すべてを一色にしようかとも思えた。
ゆらりと髪を揺らす風に青年は目を細めた。

肩でうねる銀色の髪を一つに束ね、黒い硝子の眼鏡の奥で、翡翠色の瞳が何かを見据える。隣に立つ少女は、柔らかい色合いの髪をふりんと揺らして、青年の美しい横顔を見上げていた。

彼らは、ティエンザ王国西端の街ポオトを見下ろす高台の宿に到着したばかりだった。
案内してくれた主人がうやうやしく退室すると、青年はまっすぐ窓に向かったのだ。しばらく立ち尽くしていたので、少女は傍らに自分の居場所を作った。
そうして美しい夕景にうっとりとし、嬉しくなって隣の青年の手に手を合わせようとする。
青年がポツリと言った。
「魚臭い」
美しいものはえてして、美醜に興味はないとも言う。青年は容姿に相応の無遠慮な感想を述べた。
「きれいなのに、シーガさま」
つなごうとした手を止めて、少女が面白そうに大きな瞳を瞬きする。
シーガと呼ばれた青年はきびすを返すと、窓を閉めなさいと少女に指示した。着ていた軽い生地のコートを脱ぐと、壁に付けられたフックにかけた。
少女が窓の脇にある開閉用のレバーをぐるぐると回し、それにあわせて、外に向けて開かれていた観音開きの大きな窓は、ぎしぎしと音を立てながら閉まっていく。海からの風が硝子の向こうに追いやられた。

「嫌な街です。昼間は海からの魚と潮の臭い風、夜には街から海ににごった空気が流れる。おぞましいですね」
青年の想像した夜の街は、酒場や観光客の織り成す酒と香水の匂いにも似た異臭、ごった返す夜店の食べ物、貧しいスリの子供、街角の娼婦、それらの街明かりをふんぞり返って見下ろす貴族たち。すべての営みが汚らしく感じるのだ。

「うふふ。シーガさまは人が嫌いですもの。でもシーガさま、夕焼けはきれいだと思いますの」
少女が名残惜しそうに引いたカーテンの間から顔だけ突っ込んで、まだ窓の外をのぞいている。室内はランプの灯りだけとなった。ランプオイルにラベンダーの香油を混ぜてあるのだろう、炎が揺らぐたび、かすかに香りがする。
「ミキー、私が嫌いだといえば嫌いなのです。お前の考えは関係ないですよ」
ミキーは小さく首をかしげた。
「では、私も嫌いになりますの。嫌な街ですの」
「…」

にっこりと満面の笑みをたたえた少女に、シーガはじろりと厳しい視線を投げる。それでも少女はニコニコしていた。
「価値観を同じくして相手に媚ようというそれが、私は嫌いです」
「はい、私も…」
「…相手になりませんね」
笑顔のまま同じ言葉を繰り返そうとするミキーをさえぎって、青年は自分の場所と決めたベッドに座り、そのまま横になった。

少女は、少し足りないところがあるのかもしれない。
年の程は十代前半に見える。やわらかな亜麻色の髪を二つに束ね、それが背の中ほどまでたれて揺れる。くりくりした瞳で青年を見つめ、ニコニコと嬉しそうに笑っている。白いレースの縁取りのあるブラウスに、黒いワンピース。その裾から黒い半ズボンが、ちょうど膝の上辺りまで来ている。少し大きいのだろうか、余計に少女を華奢に見せた。

「あ、そうですの。シーガさまが買ってくださった新しいお洋服!着てみますの!」
荷物の入った大きなトランクが、宿の主人に運ばれたときのまま部屋の入り口の脇に置かれていた。思い出したのか、少女はそれの留め金を外した。
「嬉しいですの」
パチ。
「きゃ!」
トランクは中身の重みで片側が一気に開き、本やら着替えやらが少女を押しのけるように転がりだした。
「ミキー、何度目ですか」
「えへへ、びっくりした」
悪びれない少女をシーガは半身を起こして睨みつけていた。今は眼鏡を外していた。翡翠色のきれいな瞳に見つめられて、ミキーは少し頬を染めながら、いそいそと転がった荷物を拾い集める。
「いっぱい転がっちゃった。大変大変♪」
半分がぱったり開いてしまった大きなトランクを、どうしようかと少し思案し、立ったままのもう半分を横たえようとする。
「ええと」
半分にもまだ、革のバンドで不自然にとどめられた荷物が残っている。

ライトール公国の名店レザンの革職人によって作られたものだ。それ自体が重厚なつくりで、荷物を合わせれば少女の体重をはるかに超えているのではと思われた。
「危ないですよ」
「んきゃ!!」
青年がつぶやくように言ったとたん、少女は倒そうとしたトランクを支えきれずに、下敷きになりそうになって、床にしりもちをついた。重いトランクはドンと階下まで響く音を立てる。
「やん、びっくりしました」
「…」
それでも青年は一向に手伝おうとはしない。少女が再び転がりだした雑多なものを拾い集めるのをじっと見ていた。

コンコン。

少女がトランクを広げている目の前、部屋の扉がノックされた。
「誰です?」
物憂げに、シーガはごろりと転がってうつぶせになると、組んだ腕の間からじろりと扉を睨んだ。
「シーガ様、お迎えの方がお見えです」
宿の主人のようだ。
シーガが何も言わないうちに、ちょこちょことトランクの向こうに回りこんだミキーは、扉を開けた。
「おや、お嬢さん、取り込み中にすみませんね」
宿の主人がミキーの肩に手を置く。主人の足元には小さな少女のものだろう、靴下がきれいに丸められたまま、転がっている。
「いいですの」

ミキーがにっこり笑い返すと、宿屋の主人はまるで少年のように頬を染めた。少女の愛らしい笑顔は、あらゆるものの心を奪う。冷たい視線でそれを眺めている青年を除いては。
「迎え、とは」
青年の言葉に我に帰ると、主人は照れたようにちらちらと少女を見ながら言った。
「ロゼルヌ卿のお使いでございます」

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脳内願望人さん♪

こちらこそ♪すっかりご無沙汰していて。のぞいたら面白い記事だったのでつい。コメントを…。
長い物語が多いですから。宙の発明家。ブログ記事は、探しにくいですね(笑)
もうちょっと、工夫しなきゃです♪
また、お時間のあるときに遊びに来てくださいね!

どうもお久しぶりです。
発明家君シリーズを見ようとしましたがパソコン音痴が発動してしまい・・・。
なので連載中のこちらを見ました。キャラクター達が可愛いですね、世界も綺麗と思ったら内情は複雑ですし。
おもしろかったです!

要さん♪

おお!早速コメントありがとうございます!
長いプロローグですが(笑)この世界を知っていただこうという(説明文よりは若干ましかと…^^;)
またコメントいただけると嬉しいです♪

「想うもの」の物語の舞台は、近代化の進む世界なのですね。まるで近世近代のヨーロッパの雰囲気を思わせる世界観が素敵だと思いました。
そして、そんなこの世界で始まろうとしているシーガさんとミキーさんの物語。果たしてどのようなものになって行くのか
今後の展開が気になるところです

かやさん

コメントありがとうです♪
忙しい中ありがとう!
うふふ、連載どんどん進んじゃうので、ごめんなさいって感じですが。時間のあるときにゆっくり読んでくださいね♪
そうか、不機嫌シーガさまとシンさん。二人そろったらどんな風になるんだろう(笑)絶対、キケンなことになる気がする~(^^)

お久しぶりです。

お久しぶりになってしまいました。以前訪問した時から「宙の発明家」を読もう読もうと思っていたのですが・・・叶わずに連載終了されたご様子・・・おめでとうございます!><
新作の方を先にちまちまと読ませてもらいますね!!
シーガさまの銀髪がどうしても我が家のシンにかぶります・・・髪型も近いですよね・・・wなんだか嬉しいです♪
シーガさまと寝起きのシンを比べたらいい勝負でしょうね(笑)今後の不機嫌に期待してます(笑)
一方のミキーちゃんは可愛らしいです!仕草が思わず助けたくなるほど、愛らしかった・・・!勝手な予想なのですが・・・今後、重要なキャラになりそうですね!影設定(?)とかありそうです・・・!
この作品だけでも最後まで付いていきます!亀以上の遅さで読んでいきますが、更新は期待しています。
お体に気をつけてがんばってくださいね♪

ユミさん

うれしい!
らんららもユミさんの小説大好きです!!
シーガさま、冷たく行きます!どこまで冷たい奴に出来るか、らんららの課題でもあります(笑)
またぜひ、きてくださいねー♪

いよいよですね♪

最初の美しい情景にどっぷりはまってしまいました。
静かに始まった物語、シーガ様の冷たいほど落ち着いた態度…
から一変、ミキーのおっちょこちょいぶりは、ちょっとほっとしました^^
これから更新が楽しみです~♪
また読みに来ますね!!
また大作になりそうですよね。らんららさんの小説は、内容が濃くて
読み応えがあるので、好きですv-238(告白みたい^^;)

chachaさん

ありがとう!
シーガさん、こんな性格です(^^;)
らんららのなかで美青年=クールなのです(^^)
とことん冷たい人にしますから♪ご期待下さい!

うわっほーーい!><

新作だ!新作だぁ~~い!^^
もぉすっごく素敵です☆街並みの描写が本当に素敵です!!><
しかもしかも・・・
ミキーちゃんが本当に可愛くて!!!
語尾に「の」ってついてて愛らしいです~☆なんだかマスコットキャラクター的な存在(笑)
可愛いなぁ~いいなぁ~こんな子欲しいなぁ~(←え?笑
シーガさま・・・なんだか、らんららさんの作品では今までにない程の冷たい性格の持ち主・・・?(笑)
いえいえ、美少年な上に眼鏡!!ぶはっ!!(←鼻血の音)
いいですね~いいですね~^^
どんな物語になるのか本当に楽しみです☆
もぉバンバンUPして欲しいです!(←!!

続きが待ち遠しい~~^^お待ちしております♪
そして、「宙の発明家」の続編も楽しみにしております~☆

kazuさん♪

早速のコメントありがとう~v-345
昨日は開放感に浸りながらpcに向かったものの、読みやすくするために文字間隔の変更を試みていて…気付けば午前2時…v-405
でもでも!寝不足でも今日は早起きしちゃいました!
もったいないですから!ブログに浸りまくりの週末の予定です!引きこもりますよ!!
シーガさま、性格がこんななので、あまり語ってくれなくて、苦労しています。ミキーちゃんも仕切るタイプじゃないし…。プロローグでは、まだ二人。
第二話から三人になりますので…♪
お楽しみに…
そして、クラフ君たちの続編。
ふふ。プロットは作りました(早!!^^;)
ええ、単純な短いお話ですが。楽しいものにしますから!まっててねー!

おめでとうございます☆

新作「想うもののかけら」、始まりましたね!!
おめでとうございます☆
らんららさんの新しい物語、とっても楽しみに読ませていただきました♪
不思議とノスタルジー・・・、雰囲気が凄く素敵です。
クールなシーガ様、愛嬌たっぷりの可愛いミキーちゃん。
うーん、シーガ様の冷たい態度が素敵・・・
冷たい態度でも、ちゃんと「危ないですよ」とか注意を促してて。
そういう人に、自分だけ許されて側にいられる幸せっていいなぁ・・と・・・、はっ空想に浸っちゃいました(笑

ロゼルヌ卿のお使い!
シーガ様がどんな人なのか、ミキーちゃんは?
紹介にある、3人とは・・・?
ドキドキしながら、続き待ってます~

あ!!あとあと!
宙の発明家の続編!!楽しみにしてます!!!
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Author:らんらら
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