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「想うものの欠片」第一話プロローグ 3



出迎えた男は工事責任者のダーレフといった。日に焼けた腕を差し出して半ば強引にシーガと握手を交わした。
「しかし、なんですな、予想していたよりずっとお若い」

ひげの下で笑う男に、シーガは黒い眼鏡の奥から睨んでいた。
「こんな、生っちろい腕で、本当に大丈夫なんですかねぇ」
「あなたのその言い分は私を選んだロゼルヌ卿をも批判しているように感じられますが」
シーガの一言にダーレフは肩をすくめて、人の悪い笑みを浮かべた。
「こりゃ旦那、お気を悪くなさったのでしたらすみません。ま、見てください、この有様で」


男が歩く後を、シーガとミキーがついていく。
競技場の敷地は、鋼鉄のフェンスで囲まれている。大理石の彫像を左右にあしらった門から入っていくと、石畳の歩道に沿って小さな石の灯篭が心もとなくろうそくの炎を揺らしていた。炎につれて揺られるシーガの影をまたいでみたり、踏んでみたり。ミキーは楽しそうについてくる。

「経費削減って言う奴ですかね、きっかり、日付が変わる頃に燃え尽きるようにされているんでさ。テントだけは、何とかランプを許していただけましたがね。なんですな、このポオトの街は豊かだって聞きましたが、領主がこれほどけちだとは思いませんでしたよ。これじゃ、街の業者が請けないわけですな。私の町はここよりもっと小さいですがね、領主さんが発電機を造らせましてね。町の仕事を請けるときには、そいつのおかげで夜も明るくてね。助かりますよ。仕事柄あちこちの町に行きますがね、今じゃ都会と田舎じゃまったく違う。いや、私の町が都会だなんて言っている訳ではないですがね」

男は外壁の石材を積み上げた山の脇を抜けて、テントの脇を通り過ぎる。そこから先は灯篭がないために、ダーレフの持つ小さなランプ一つになった。

「工期が決まってるんでね、こっちも慌ててるんです。そんで、宿の親父に到着次第知らせてほしいと伝えてあったんですよ。ロゼルヌ卿は商工会の連中と会合とかでしてね。まあ、何を話し合っているやら、怪しいもんです。知ってますか、旦那、この街で商売やるには商工会にかなり払わなきゃなんないそうですよ。ま、おかげで娼婦はそれなりの玉が揃っていますがね」

「うっとうしい限りですね」

「ですよねぇ、商工会がこんなに力を持ってる街は珍しいですよ。俺の街なんか、茶飲み会に毛が生えたようなもんでして、いえね、従兄弟がそれに参加してましてね」

「…少し黙ってもらえますか」

どうやら青年がうっとうしいといったのは、男に対してだったらしい。男は袖を引き、口に人差し指を当てている少女に今やっと気付いた。
「あ、こりゃ、すみません」
少女がにっこりと見上げる。

その大きな瞳は闇の中でランプの光を受けて艶やかに見えた。赤い唇が妖艶ですらある。男はごくりと生唾を飲み込んだ。
袖を掴んでいた少女の手を取ろうとした。
するりとかわして、少女はちょこちょこと青年の脇に駆け寄る。
ダーレフは胸を押さえた。鼓動が高まっているのだ。心臓でもおかしくしたのかもしれない。

月明かりもない夜。
どんよりと湿った空気にシーガは辟易していた。
その風には、海のものでも人のものでもない何かが含まれている。
ダーレフは簡単に作られた木の柵をぎしぎしと動かし、その隙間を通り抜けて壊れかけた競技場の正面入り口に二人を案内した。

そこにも大理石の彫像が二つ黒い影となって立ち、数段の階段を上ると立派なアーチが出迎える。彫刻は美麗で、ところどころ古びてはいるものの荘厳なそれは壊すには惜しいものだ。神殿にも似たつくりだ。切り出した石だけで組まれたそれは、自重でアーチを支えている。内部はさらに暗く、足元も見えないシーガとミキーは、知らず知らずに手を握り合って歩いていた。

「立派でしょう、この石は遠いゴーランの街から切り出して運ばれたそうです。今じゃ同じものを手に入れることは出来ないんでね、できるだけ再利用するって話ですよ。しかし、旦那、そのけったいな眼鏡はなんです?そんな黒いんじゃ、何も見えないんじゃないですか」
男は、足元を確認し、二人にも見えるよう、出来るだけランプを持ち上げながら振り返った。

「すべてが見えたからといってどうなるものでもありません」
青年の言葉に、ダーレフはまた肩をすくめた。
「ほら、コレですよ」
男がランプを左右にゆっくり振って見せた。

入り口のゲートを抜けるかどうかというあたりだろう。向こうには開けた芝の原が月明かりに夜露を光らせていた。その手前、建物の石組みを覆うように黒々とした植物の根のようなものがはびこっていた。床の石材を浮き上がらせ、壁を突き抜けている。それは、太いところでは大人の胴ほどの太さがあり、細く伸びた先は火箸ほどだ。幾重にも分岐し、崩しかけた城壁の石を抱え込んでいる。

「これですよ。見たことない木でしてね、コレに斧を入れた職人は皆何かしら怪我をするんで。もう、わしのとこじゃ怖がって誰も手を付けたがりません。一週間手を付けられずにいる間に、ずんずん伸びましてね。今じゃ、この競技場の建物内側を覆いつくしているんです。本当の根っこが何処にあるのかもわからない次第で」

ダーレフは天井に這う植物を見上げた。ぎしり、と木の根が動いたように感じた。軽口を叩いていた男も一瞬表情を引きつらせ、木の根が抱え込んだ石がボロボロと小さな欠片を落とす場所を大きく迂回した。
それに習うように少女も見上げた。

シーガだけは、天井には視線を向けず足元の木の根をじっと見つめ、深いため息をついた。
「どうです、旦那。どうにかなりますかね」
「…ロゼルヌ卿に、話さなくてならないな」
「へえ!コレが何だかお分かりですか!」

感心したようにダーレフが大きな声を出した。
その声は反響して、奇妙な山彦のような声を返す。
「静かにしなさい。とにかく、今日は帰ります。ロゼルヌ卿に明日馬車で、いいですか、馬車ですよ。迎えに来るように伝えてください」
「へ、へえ!」
シーガがダーレフのランプを奪い取ってきびすを返したので、男はおびえたように高い声を出して青年の後を小走りに追いかける。
同様に、慌てて走り出した少女が転びそうになるのを助けながら。
いつのまにか少女は怯えて無口になっていた。何度も、振りかえっては競技場を見つめた。

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振替休日さん♪

ありがとうございます!!
らんららものろのろとあちこち周っていて、ご無沙汰になってます(^^)
文章が!?嬉しいです♪
いえいえ、らんららも何がいい文章なのかよく分からないまま、模索しているところです。
長いですが、ゆっくり楽しんでいただけると嬉しいです♪

初めまして

この前はコメントありがとうございました。

訪問が遅くなりました。


文字での表現の仕方が上手ですね。

自分の文章の幼稚さを思い知らされました・・・

ミキーちゃんのキャラもとてもいいです!!これからも少しずつ読ませていただきます。

シーガさん達のたどり着いた町は、商工業者たちが力を持っている街なのですね。果たしてダーレフさんに案内されたシーガさん達の前に現れた不思議な樹の正体は一体何なのか、そしてミキーさんが何故突然無口になってしまったのか
次回の展開に期待します

おお、天猫さん♪

ご訪問ありがとう!
うふふ、らんららは現代のほうが苦手…現代に絡めるってのは好きですが(^^)確かに現代の方が書きやすいところもあります。設定考えなくていいから♪
前回の「宙の発明家」が現代につなげた話だったので、今回はまったく異世界。
不思議のある世界にしました。
それでも、やっぱり、魔法を出すのが怖くて(魔法の定義ってすごく難しいでしょ?苦手なんです)この世界には魔法使いとかいないです。不思議な存在、はあるけれど、どれも「ああ、こういうのってありそう」って言うものにしたい。
プロローグでは皆さんにこの世界ってこんな感じ、と見せておきたいのだけど、なかなか、文章力がなくて(><)
ひやひやしながら、皆さんのコメを見ているのですよ!
とりあえず、ダーレフさん、いましたか!(笑)どこかで見たな、と思わせるヤツ!
らんららも好きです、このヒト。
また、遊びに来てくださいね~♪

おじゃまします。

う~、時間の都合でここまでです。続きは後日に絶対に読みに来ますね。
しかし、キャラクターもいいですが、作品の雰囲気がなんかもう素晴らしいですね。世界観は中世ですかね。旅商人やら商工会やら干し肉や収穫祭やら天猫的にツボな時代です。
エポックファンタジーを書いている方はあまりいないんじゃないかな?私は現代専門で。世界設定とかめんどくさくて。ほんとに凄いです。
あと、ミキーちゃん可愛いです。テイクアウトは出来ますかね?
しかし、今回まじではまったのはダーレフさん。いるよ!!いるよ!!こんなおじさん!!タクシーの運ちゃんとか床屋のおっちゃんとかで!!
続きもまた近々。でわでわ~。

ユミさん♪

うふふ、ありがとー♪
シーガさまの性格、だんだん明らかにしていきますv-391
手をつなぐ…いいですよね!
くせで誰にでも触れる、深い意味はないけど肩に触れたり、手をつないだり。まるで、お母さんに触れていないと不安な子供のようで、そういう女性は男性の気持ちをくすぐるそうですv-344ミキーちゃん、そういう子になってほしくて♪

あれれ・・・?

シーガ様とミキーちゃん、いつの間に手と手を取り合って~。
暗闇だからできたこと??読んでてドキドキしちゃいましたv-238
シーガ様って、静かなのが好きなようですが、お喋りさんたちに
囲まれちゃって^^;いつも大変だわv-356

ミキーちゃんは、木に何かを感じたのかしら?
続けて読みにいきます♪

chachaさん

ふふふ♪ありがとう!
ダーレフさん、本当に語る語る(^^)
シーガもミキーも話さないですし、口を開けば文句ばかりなので、あんまりシーガの台詞聞きたくないかなぁと。
かなり、歪んだ性格かも?
黙っていてくれれば、それでいいです、美青年は!
変わりにミキーちゃん、がんばって活躍しますよ♪

こんにちわです☆

あっはは!いやいや、私もツッコミ入れてたトコなんですよぅ~^^
ダーレフさん、ちょっと喋りすぎでは・・・?
やっぱり、シーガくんに睨まれちゃいましたね(笑)ぷぷ☆
ちょっとずつ、シーガとミキーちゃんの性格を知っていって、あぁ、こんな時はこういう態度をとるんだろうな、と先読みするのが結構楽しかったりします^^(笑)
いいですね~シーガくん、楓さんが前言ってたツンデレ具合がよく出てて(笑)

ミキーちゃんと手をつないでいた辺り、シーガくんもなかなか頼れるじゃないか~と思っていたけれど・・・?
む?らんららさんがkazuさんへコメントしているのを読むと、どうやら・・・逆!?(笑)そうか、シーガくんは結構怖がりなのか(笑)いや~いいです^^
次の展開もますます楽しみですよ~☆

それにしても、この木は一体何なんでしょう??真相知る時が楽しみです♪^^

コメントありがと♪

kazuさん♪
ふふ、シーガさま実は怖がりって設定にしたくて(どういう性格なんだろ^^;)ミキーちゃん、この後がんばりますので♪
今回のは設定と世界を以下に理解していただくかがカギで…ダーレフさんのものすごい、長台詞もひとえにキャラクターが無口なせいです…(^^;)
だんだん、分かってきます。
プロローグのくせに長めで申し訳ないけれど…。
延々とこの世界の説明文をかくよりは、楽しめるかと。

楓さん♪
正体不明の輩を退治…退治、というほどのことは出来るのかどうか(^^)シーガさまは謎だらけ、それでいて無口で語らず、です!
なので、ミキーちゃんで心をほっとさせてほしいなぁと♪
ギルド…さすが楓さん!
歴史背景をすっと頭に浮かべてくださるあたり、らんららも楽で(^^;)助かります♪
上手く、描ききれると言いのだけど!!
プロローグが終わったら、世界の設定など、説明を作ろうかと想っています!楓さんのとこを参考にさせていただきますねー!!

むむ

商工会が力を持つ街・・・
すぐにギルド?と思いました。
中世ヨーロッパを彷彿とさせますね。
それはそうと、
ミキーちゃん・・・
不思議な子ですね。
人の心を虜にしてしまう不思議なチカラ、でもシーガ君には効かない・・・いや、実は効いているのか?
シーガ君には植物の根の正体が見当ついているようで、
それはミキーちゃんも同じ?
いや、具体的に何かは分からなくても感覚でやばいと感じている??
まだまだ謎めいてて先が楽しみです♪
シーガ君はツンデレならぬツンツンだそうですが、
こういう正体不明の物体を退治?する彼には、
そう言う人物設定がよく似合いますよね~☆

うふふ~

シーガさまとミキーちゃん。
やっぱりいいですね~
うふふ~
知らずの内に手を握り合って・・・
信頼しているのね!!なんだかどきどきのシーンなのに、その文を読んだ時、微笑ましく思っちゃいました。

海のものでも人のものでもない何かが、含まれている風。
緊張感漂いますね・・・
そして、謎の草。シーガ様には見当がついていて・・・
すっごく気になります~~!
続き楽しみにしています!
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