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「想うものの欠片」第一話プロローグ 4


翌朝ミキーが自分のベッドから起き出した時には、すでに青年の姿はなかった。
慌ててブーツを履くと、真っ白な膝までの夜着の上にブラウンのニットコートを羽織ると部屋を飛び出した。
「どちらに?シーガさま?」
二階にある部屋のすぐ前は吹き抜けを囲むように回廊があり、少女は木製の手すりに寄りかかると、階下の宿の主人に声をかけた。
「あの、おはようございます!」

主人は声の主が分からなかったようで、きょろきょろと禿げかかっている頭をかきながら見渡す。
「ええと、今行きますの」
少女が階段を降り始めて気付いたのか、主人がカウンターから出てくると階段の途中のミキーに挨拶した。
「おはようございます。どうなさいました、慌てて」

丁度主人と同じ目の高さのところでミキーは留まると、結っていない髪を思い出したのか慌てて前髪を手でなでる。
その仕草がかわいらしく、主人は表情をほころばせた。
「あの、あの、シーガさまがいらしゃらなくて!」
少女は大きな瞳に涙を浮かべていた。
「シーガ様よりご伝言をいただいておりますよ」
「あ、あの、シーガさまはどちらにいらっしゃいますの?」
少女の手が主人の手を両手で包んだ。羽織っただけのコートの胸元で白い夜着がちらちらとのぞく。
「大丈夫ですよ。シーガ様はお出かけです。ロゼルヌ卿からのお迎えがいらして」
「お、お帰りは?何時ですの?どうしてミキーを置いていかれたのですか」
少女は泣き出しかけていた。

「落ち着いてください。お手紙を預っておりますよ。こんな可愛らしいお嬢さんを置いていかれるはずはないでしょう?すぐにお戻りになりますよ」
「…」
「本当に、心配をかけて、悪い方ですねシーガ様も」
主人は心からそう思った。この少女が青年の従者なのか二人の関係は不明だが、見知らぬ宿に一人残されて不安がることは十分承知のはず。それを黙っておいていくのだから、無愛想な青年の性格を疑いたくもなる。
ぶつぶつ言いながら主人はカウンターに戻って、その奥から紙を丸めた筒を取り出した。細い白絹のリボンで結んである。
ミキーはそれを両手で受け取る。

服の袖が長いためか、指が三本しか見えない。いじらしく感じて、主人は目を細める。少女はぺこりと礼儀正しくお辞儀して、部屋で読むつもりなのか階段に向かう。
その後姿に、主人は朝食を運ぶと声をかけた。
少女は一旦、階段の途中で止まり、下から手を振る主人に、小さな手を振って応えた。

無愛想な青年のお供にしては、少し変わっていると主人は思う。青年の様子から裕福な家庭であることは確かだ。普通、貴族の子息は同年代の従者を伴うものだ。護衛でもあるし話し相手でもある。女性を伴う場合は恋人だったり伴侶だったり。それでも身分の高い人々は男女二人では旅をしない。必ず従者が付く。

自動車で移動するにしろ、馬車で移動するにしろ、大衆の利用する乗り合い馬車を使うはずのない彼らは、運転手あるいは御者が必要になるからだ。二人が黒い小さな馬車で到着したことは知っていたが、御者の姿はなかった。

御者だけ安宿に泊まらせることもあるが。
それにしても、様子から兄弟ではない。親子ほど離れているわけではなさそうだが、恋人には幼いだろう。お供にしては頼りない。
少女の鈴の音のような声を思い出す。今年十五になる自分の娘とは随分違う。
「何、にやにやしてんだい?」
キッチンの奥から、おかみさんがエプロンで手を拭きながら出てきた。
「あ、いやなんでもない」
「おかしな人だよ、熱でもあるのかい?顔が赤いよ」
言われて初めて、主人は自分の頬が火照っていることに気付いた。
本当に不思議だ、熱でもあるのだろうか。
「あれ、本当に熱があるよ」
女将さんが額に手を置いて驚くと、主人は急にけだるくなる。二階の客に食事を運ぶよう頼むと自分はカウンターの奥のイスに座りこんだ。何度も自ら額に手を置いて不思議そうにため息をついた。


ミキーは、部屋の端に置かれたテーブルを、明るい窓際に引きずってくる。よいしょと小さく声を出しながら、イスをそこに添える。テーブルの上をハンカチで綺麗にふき取る。

イスに座ると、先ほどの筒になった書簡をそっと置いた。
嬉しげにリボンをそっと引く。
つるりと解ける瞬間を楽しむように目を細める。
「うーん、シーガさまの香りがするの」

くんくんと深く鼻で息を吸って、それからにっこりと笑う。ニットコートのお尻のあたりがむくむくと動いた。ふわふわした髪の中から、たれた大きな耳がピクリと姿を現していた。
小さな物音も彼女の大きな耳には届く。白いウサギの耳のようなそれが、ぴくんと立ち上がった。
階段を誰かが上ってくる。
部屋の前に立った。

慌ててイスからおりると、髪からはみ出した真っ白な耳を慌てて隠した。コートのすそからちらりと見える白い尾も数回なでるように押さえつけると、少女は戸口の前に立った。
ちょうど、ノックの音が響いた。
「お嬢さん、お食事をお持ちしましたよ」
「はあい」
開くとすぐに目の前に少女がいることに驚いたおかみさんが、トレーをひっくり返しそうになってミキーは慌てて支えた。
「ありゃ、すみません」
「いいんですの」
トレーを受け取ると、ミキーはにっこり微笑んだ。
女将さんは一瞬、目を見張って少女の手を見た。少女はありがとう、と笑って扉を閉めた。
トレーをテーブルではなく床に置くと、ミキーは再び嬉しげに書簡の乗ったテーブルに向かう。

「わかっちゃったかなぁ」

そうつぶやいて、自分の手を見つめた。小さな白い手。そこには、少し長い関節のない柔らかな指が三本だけ。表面は艶やかな絹、中は真っ白な綿。三本指の手のひらを握ったり開いたりしながら、少女は再び開きかけた手紙に向かう。

「シーガさまがおそばにいれば、ばれないのになぁ」
もう一度手紙に移った青年の香を楽しんで、それから開く。
中身を読んで。何度も大きな目を瞬きした。

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要さん♪

コメントありがとうございます!
ミキーちゃんの素性…うふふ~♪
秘密だらけですが、そうか指三本かって、思ってやってください。いずれ、それは明かされますが(^^)

突然姿を消したシーガさん。彼が姿を消したことで、ミキーさんは不安を感じていますね。果たしてシーガさんが何処へ消えたのか、次回の展開に期待します。
この章で、ミキーさんの謎めいた一面が現れましたね。彼女が一体どんな素性を隠しているのかも気になるところです

花さん

ありがとー!!
ふふふ、?だらけでしょ…だんだんと。この世界とシーガ様たちを紹介するためのプロローグです。説明文でばしっと片付けるのもいいのですが、それじゃ情緒にかける(?)かなと。謎めいたクールな青年、不思議な魅力の美少女、のつもりです(笑)いずれ化けの皮…いえ。いえ。

新連載開始☆

待ってました、らんららさんの新連載!
今回もなにやら不思議なお話。傍若無人なシーガさんに、けなげに仕えるミキーちゃん。ミキーちゃんが可哀想っ、なんて思っていたら…おろろ?ミキーちゃん、何者?ていうか、者??うさぎさん??
それにシーガさんも、見えないものが見える人みたいで…むむぅ。何書いてよこしたの、ねぇねぇ?
とまぁ、皆さんはハートマークをたくさん飛ばしておられるみたいですが、バカ花の頭の中はハテナがいっぱいで。いやっ、ミキーちゃんをギュウってしたい気持ちは、無論アリアリですよ!?でもシーガさんが恐いから…まぁ、存分に睨ませますけどw(壊
展開に大期待です!!

お言葉、ありがとー♪

kazuさん♪
真っ白な綿!皇かな絹!!v-10
いい予想♪さすが!いずれ、彼女の生い立ち(?)は出てきますが、当分先です!
でもそんなところです!(どんなところだ?^^;)
す!鋭い!!v-405
ちりばめた一個目でピピッとkazuさんアンテナ動きましたね!宿の主人の熱!!ええ、愛らしさにどきどき!!憎い奴ですミキーちゃん!ふふふ♪


chachaさん♪
うふふ、ウサギちゃん、ええ。それも当り!!
うんうん、うんうん!(素直ならんらら、思いっきりうなずいてます!)
人間じゃないですの♪指三本で、絹で出来ていて。そして、ウサギさん。でも、心の中身だけは…ヒミツv-392
なでなで大歓迎!!
chachaさんにいい子いい子してもらったら、柔らかお手手できゅっとv-345
あ!!
シーガさまが睨んでいる!!
に、逃げて、chachaさん!!キケンキケンーv-399


ユミさん♪
おお、続けてコメ、ありがとうです!
そうです!ミキーちゃん小動物系!
もう、これでもかってくらい可愛らしく行きます!!
冷たい人がちょっと優しさ見せると、女は弱い!!ええ、分かりますの!!(←誰?^^)

シーガさまの手紙…みんな期待してるなぁ…意地悪心がむくむくと!!v-391

ミキー:?お手紙の中身ですの?見たいですの?
いやん、恥ずかしいですのーv-346
らんらら:さ、皆さんに!
ミキー:いやんv-345
らんらら:あはん♪…じゃない、ほら、いい子だから、ね?アメあげるから!
シーガ:v-359餌をやるな!!


楓さん♪
わははは!!
うさぎ来ました!!v-407
つ、ツインテールですね!!ええ、そうです!ちょっと低い位置ですが!(お耳を隠すために…)
とことん、男心をくすぐる設定で!!楓さんのリクならミニスカートもいっちゃう?
メイド服も?って(笑)すべてシーガの趣味です!!

シーガ:…v-359
ミキー:シーガさま?お顔怖いですの。魚臭いですの?
シーガ:馬鹿がいる、ここに。

今、真面目にメイド服、使えるシーンを想像しました(笑)第二話からの主人公くんに思いっきり萌えてもらうためにも!!

シーガ:v-359v-359
ミキー:あ、…。
ゲシ、バキ、ボコ!!…

ぎゃああああああっ!

うさぎキタ━━━━(゚∀゚)━━━━━!!!
・・・
うさぎ、なの?
ドキドキ・・・
途中まで読んで階段のシーンで、
「きっとミキーの髪型はツインテールだ」と萌えていたら、
うさキタ━━━━(゚∀゚)━━━━━!!!
・・・
う、うさぎなのかな?
ドキドキ・・・笑
シーガ君といるとばれない・・・
つまり、彼が結界のようなものを張っている?
ますます謎めくプロローグっ!!!
でも、やっぱミキー可愛い。あふぅ♡←変態?笑

ミキー!!いったいどうして指3本?
人に変身している動物さんなの??
ミキーちゃんがもしも動物なら、うさぎとか可愛らしい小動物を
想像しちゃうんですけど!!

あぁ~、シーガ様からの手紙、早く読みたいです~。
だって、あの冷たいシーガ様が置手紙をしていってくれるなんて☆
それだけで、感激ですの(←マネ)
続き楽しみ~~v-10

うっきゃ~~><

ミキーちゃん、めっちゃ可愛いよ~~!!
と、言いますか、言いますか??@@;
ミキーちゃんったら、そうなの??え!?そうなの!!?
人間じゃなかったのね!?
あわわわ・・・まだ、そうだ。まだどうかはわからないけれど。
ウサギちゃんだぁ~~!!ふわふわだぁ!!^^
耳、撫でてあげたいです~☆
尻尾摘みたいです~(←それはダメ。笑

シーガくんの手紙には何が書かれているんだろう?どきどき☆
大きな目を何度も瞬き・・・きゅんっ!です(笑)^^

なな、なんと?

ミキーちゃん!ミキーちゃんは・・・愛らしい・・ぬ・・ぬいぐるみ・・・ちゃん?
表面は絹、中は真っ白な綿・・・!
3本のみの、指!
そして、宿のご主人がミキーちゃんと話して手に触れて・・・そのあと、微熱が出たのは・・・?
それは・・・それは・・・?
ミキーちゃんの愛らしさに、どきどきで・・・?
それとも、ミキーちゃんになにか・・・・?

シーガ様のお手紙に、何が書いてあるのか、楽しみです~
ミキーちゃんの愛らしさに、おいらもやられてます、のkazuでした♪
Secret

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らんらら

Author:らんらら
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