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「想うものの欠片」第一話プロローグ 5




「ごちそうさまでしたの」

少女がカウンターにトレーをことんと置いても、誰も出てこない。きょろきょろと見回し、人影もないので、ミキーはくるりと身を翻して飛び跳ねるように宿の玄関に向かった。楽しそうに宿の玄関の泥落としにブーツを二回こすり付ける。朱に塗られたかわいらしい木枠の扉を押し開くと、高い位置に付けられた小さな鐘がちりりんと鳴る。


正午過ぎの街は、暖かい日差しの下、穏やかに静まり返っていた。
少女は白いレースの縁取りのついた絹の帽子を目深にかぶり、白いブラウスに黒いワンピース。その下に黒い半ズボンという昨日と同じいでたちで宿の前の通りに立った。高い場所にあるこの宿からは、緩やかに下る入り組んだ細い路地や家々の屋根、広場や公園で子供たちの遊ぶ姿が手に取るように分かった。


街の繁華街は港から程近い辺りに湾を囲むように広がっている。ここからは小さく屋根が見えるだけだ。東の山に向かって街並みはだんだん古く、くたびれてくる。周辺の家々には漁の後だろう、網を長く伸ばして繕う漁師の姿が見えた。魚のにおい、昨日シーガが嫌がっていたものはこれかしら、とミキーは遠くからそれを眺めた。
少女はこてこてと歩き出し、石畳の白い石を選んで踏みながら広場を目指していく。


街の繁華街に近づくたびに街は新しく小奇麗になっていった。石造りの白い壁、オレンジ色の屋根。窓の木枠はどれも赤い色で窓枠には決まって白と黄色と紫の小さなビオラが植木鉢ごとつるされていた。何軒も連なっていると、とても綺麗だ。
花の香りに、くんくんと嬉しそうにしながら、少女は程なく目指す広場までたどり着いた。


それは教会の隣にあった。
教会の礼拝堂の脇の細い道から回りこんで、石段で五段数えて降りると、針金で作られたフェンスで囲まれた四角い広場があった。柔らかい土の感触にミキーは二度、足を踏みしめる。
四角いそこは、ボール競技の小さな練習場のようになっていた。
十数名の少年たちがボールを蹴って追いかけている。


「お前、なんだ?」
ミキーの後から石段を降りてきた少年が、丸い鼻をこすって立っていた。


「あのね、お願いがあるんですの」
十五歳くらいだろうか、黒髪の日に焼けた少年はミキーの顔を見るなり、真っ赤になって、数歩、後ろに下がった。
「テデ!何してんだ、遅いぞ!うちのチーム五人しかいないんだ、負けてるよ」


丁度、転がったボールを取りにきた別の少年がミキーの隣で立ちすくんでいる少年に声をかける。
テデと呼ばれた彼は、まるで魅入られたようにミキーから目が離せない。
「何してるんだ、誰だこいつ。よそ者と話してると親父に怒られるぞ」
日に焼けた漁師の子だろう、赤毛の少年は駆け寄るとテデの腕を引いた。怪訝な顔をしてテデが見つめる少女を睨んだ。が、それも長く続かなかった。

少年の青く澄んだ瞳に、ミキーはくん、と首をかしげて微笑む。白い頬、艶やかな唇、そして吸い込まれるような瞳、亜麻色の巻髪がゆらと揺れて、日差しの反射なのかまぶしくて仕方ない。赤毛の少年は凛々しい眉をだらしなく下げて、何度も瞬きした。


分かりやすく言えば。恋に落ちていた。


「お、…お前、どっから来たんだ、誰なんだ?」
たどたどしく言葉をつなげて、そこまで言うと、少年はやっと息を吸った。
「何だよ、ルーファ。誰だよそいつ」
「おい、試合途中だぞ」
「なに、どうしたんだ?」
口々に好き勝手なことを言って少年たちが駆け寄ってきた。
あっという間に、ミキーは八歳くらいから十六歳くらいまでの少年の輪の中心にいた。
みんな、ぽかんと、口を開けて少女を見ていた。


「ミキーといいますの。昨日、この街に着いたの」
にっこりと少女が微笑むと、ルーファと呼ばれた少年が、赤毛をかきむしりながら笑った。
「あ、あのさ、もしかしてこの街に住むの?」
「すげー、可愛い!」
少年たちは互いに押し合って前に出ようとしていた。
「見えないよ」
「おい、前に出るなよ!」
「押すなって!」
「ルーファ、お前父ちゃんに知らせないとさ、新しい住民は登録が必要なんだ」
テデが赤毛の少年の長袖のシャツを引っ張る。
「何処に住むの?」
「海区だよな!挨拶に来たんだろ?」
「まじかよ、お前の父ちゃん、漁師なのか?」


いっせいに皆に声をかけられて、ミキーは困惑した。
「まあ、待て!いっぺんに話したら困っちゃうだろ!俺が代表で話す!」
ルーファがミキーの正面に廻ろうとする少年たちを背中で押さえると、少年より頭一つ小さいミキーを覗き込むように見つめた。


「お前、ずるいぞ!」
背後からの年上の少年に、ルーファはきっと睨み返した。
「文句あるのか?」
ルーファは年上の少年と同じくらいの身長がある。少年にしてはがっしりした腕を胸の前で構えて見せた。喧嘩したいならするぞ、という意思表示だ。少年たちの中で中心的な存在なのだろう、年上の少年も口を尖らせつつ一歩下がった。


「俺、ルーファっていうんだ。親父が漁業会の会長なんだ。この街で分からないことがあったら俺に聞いてくれよ、何でも教えてやるぜ」


ミキーが帽子を少しずらして、少年を見上げると白い頬が日にさらされて眩しい。いっせいにおおーと、少年たちのため息がもれた。
少女は真っ白な柔らかそうな頬を薄桃色に染めて、くるりとまつげの長い大きな瞳で少年たちを見つめた。柔らかな亜麻色の巻き髪が頬と胸元に揺れる。少女が瞬きするたびに、少年たちは吸い込まれるように見入った。
幾人かは、初恋とはこれだとばかりに胸を躍らせたに違いなかった。

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要さん♪

ありがとうございます♪
らんらら、子供を書くの大好きですから♪
ミキーちゃんの目的は…うむ~引っ張りすぎかな?v-356

ロゼルヌさんの迎えと共に姿を消したシガーさんを探しているうちに、ミキーさん達はテデさん達少年のグループに入り、すっかり溶け込めたようですね。
子供同士の彼らの会話は、本当に微笑ましい者があると思いました。
次回の展開に期待します

桜さん♪

ありがとう~♪
お仕事お疲れ様です!
ミキーちゃん、皆さんに可愛いといわれ自分のことのようにv-217喜ぶらんららです!
シーガさま、うふふ、らんららには珍しくつめたぁーい性格にしてみまして…当分先まで出てこない(おい^^;)
ミキーちゃんを見守ってやってください♪

こんにちは!

お久しぶりです。
やっと新作にコメントが残せますっ(号泣)

はぅ~、ミキーが可愛い☆
その可愛さにナニか秘密がありそうですvv
そういえばシーガどこにいった……。
シーガ探しに続きを読みに行って参ります☆

お言葉ありがとう!

kazuさん
かっくらってますか!(笑)
らんららもかっくらって、眠くなってシンデレラでした!
ミキーちゃん、そうです、常にこんなことになるわけです!でも彼女には何の悪気もなく。そう言う生き物だと思ってやってください。
そう、「お願い」に意味が(…さすが!いいとこつくぜ!←だから、誰?)

ユミさん
朝早くありがとう!!長と同じ時間にらんららも起きました♪日曜はもったいなくて寝ていられない~(^^)
一気に初恋の人に!!いいですねぇ、こんな風になってみたい♪願望はいりまくりです!
どうして広場、どうしてお願い?(もったいぶってないで、さっさと話せよ)←だから、誰?(^^;)

chachaさん
ふふ!そうでしょ?ミキーちゃんになってみたい♪って女性陣には思ってほしい!そしてそして、男性には思いっきり萌えてほしい!!(…そういう企みか!性悪だ、ほんと。俺はカナエ一筋だからな!いくら可愛くたって、目の前にミキーちゃんが来たって…)←テッタ!?なんでいるの!?
(出張…)
こいつは無視して。
そう、町並みに違いがある。この街の成り立ちに関係があって。
それは、今後にもちょっと影響があって。さすがです!読んでくれますね♪嬉しい~

うわぁ~~!!

一度でいいから、こんなにモテてみたい!!
と、何とも違う所ではしゃいでいたchachaです(笑)
ミキーちゃん可愛い~~☆
そしてそして、やっぱりというか、ミキーちゃんには何かしら人の心を奪う力があるみたい??^^
む、でもシーガくんは冷たかったなぁ。あ、彼は特別なのかもしれないけど(笑)
初恋ってこんな感じかも!読んでるこっちまで顔が赤くなっちゃった~きゃっ☆

そして、描写が本当に素敵です!毎回言ってるかもしれないけれど、本当に素敵です!><
とってもキレイな街並みだろうなぁ。でも、古い家と新しい家が建てられている場所は分けられているんですね。ふむふむ。

おぉ~

ミキーちゃん、一気に何人もの初恋の人にv-238
シーガ様、この様子を見たらきっとヤキモキしちゃうはず?!
テデくんとルーファくん、あ、テッタくんを思い出しました^^
そうそう、わたしも思いましたよ。ミキーちゃんはどうして、広場に
やってきて、テデくんに何をお願いしたかったのかって。
続き楽しみにしてますね~~。

☆☆☆

読んでる私まで魅入られちゃいそうです~v-10
ミキーちゃん、なんて愛らしい・・・。
しぐさも言葉遣いも、ドキドキしちゃいます。
でも、話し掛ける度、誰かと会う度にこうなっちゃミキーちゃんもやりにくいんじゃぁ^^;
いえ、私としては羨ましい限りなんですけれど☆
ミキーちゃんは、最初に会ったテデくんに何を「お願い」したかったのでしょうか。
うふふ、なんだかほの~んとするお話に、酒かっくらって今起きてブログ徘徊してるkazu、のほ~んとさせていただきました♪
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