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「想うものの欠片」第一話プロローグ 6




「あのね、私、競技場の工事のお手伝いに来ているの」
「え?」
少年たちの笑顔が曇った。


ルーファが少女の肩に手を置いた。
「あのな、俺たち漁業会の仲間は競技場の改修に反対なんだ。建物自体は何にも問題ないんだ。なのに、商業会の奴らが、客を呼ぶためにもっとたくさん人が入れるようにするって言う話だ。結局奴らは金儲けだけなんだ。伝統ある競技場を壊すなんてさ。お前の父ちゃん、工事業者なのか」
ミキーはこくんと頷いた。
「確か、隣町から呼んだって聞いた。この街じゃ、引き受けるとこがないからな」
ルーファが淋しげに手を離して、一歩下がった。


「じゃ、お前は何の用でここに来たんだ?」


「あの、お願いがありますの。工事は今止まっていますの。もうずっとお手入れしていないのに競技場の芝がとっても綺麗だから、遊びたい子に来てもらいなさいって言われたの」
シーガさまに、とその一言は小さくなる。

「入れるのか?」ルーファが目を丸くする。
競技場は街の代表チーム専用だ。漁業会の会長である父が大会の前の花束を持つ役を一度だけやらせてくれた。それ以来、足を踏み入れていなかった。
ボール競技を楽しむ少年たちにとって、その競技場は憧れだ。


「本当なのか?本当にあのきれいな芝生の上でボールを蹴ってもいいのか?」
「はい。壁は壊れかけているけれど、芝生はとっても綺麗なの。まるで誰かがそこでボールを蹴ってくれるのを待っているみたいだって言って。誰でも使っていいって言ったの」
なるべくたくさんの人に、そう手紙にはあった。
だから、目に付いたボールを蹴っている人すべてに声をかけるつもりだ。

ルーファの表情が明るくなった。
普段は見ることしか出来ない芝生の生えた球技場。そこでボール競技が出来る。少年たちは互いに見合わせると、ルーファが頷いたのをきっかけに歓声を上げた。
階段を駆け上って、まるで競争のように礼拝堂の前に置かれた自分の自転車にまたがる。自転車のないものは誰かの後ろにしがみついた。


「俺の自転車に乗せてやるよ」
ルーファはミキーの手を引いた。
少女の手が真綿のように柔らかだったので、思わず手を離す。
「うふふ」
笑うミキーと目が合って、真っ赤になるとついて来いとつぶやくように言って先に階段を上る。ミキーはチョコチョコとその後に付いていった。


自転車は心地よい午後の風を切って走る。
「うわー、気持ちいいですの!」
「お前、軽いな!誰も乗せてないみたいだ」
少女がそっとルーファの腹に手を回すので、少年はドキドキしていた。
甘い香りがする。


競技場は繁華街を通り抜けた先、南の丘にある。
もともと高台にあったルーファたちのテリトリーから競技場まで、ずっと緩やかな下り坂だ。
石畳で時折自転車はごとごとと揺れたが、そのたびにミキーはキャと笑った。通り沿いの建物は、広い通りに出ると急に大きくなった。どれも三階建てくらいで、尖った屋根、やはり赤い窓枠に白い壁。隙間もないくらいびっしりと並んで、パン屋さんだったり花屋さんだったりする。軒先に風見鶏が付けられたカワイイ磁器のお店にミキーは目を吸いつけられる。
「素敵」
「ん、まあ、な。俺たちとは、人種が違うんだ」
「ジンシュ?」
「ここいらは商業区。俺たち海区の住民とは生活が違うんだ」
「と、止めて!!」
ミキーが急に大きな声を出した。


「何だ!?」
ルーファは慌ててブレーキをかける。バランスを崩しそうになって手にじわりと汗をかきながら、何とか通りに立つ街灯の柱にぶつからずにすんだ。
「びっくりするな、危ないだろ」
ルーファが後ろを振り向くと、少女はちょうど、ぴょこんと飛び降りたところだ。


「ルーファ、惜しかったよ!みっともないとこ見損ねた」
声のしたほうは、公園だった。奥には教会の蒼い尖塔と十字の御印がある。公園はそのまま、墓地と隣り合わせになっている。


美しい花壇に囲まれて、死した者への楽園を約束するかのようだ。白い腰高のフェンスに囲まれた敷地には並木が風に揺れ、その木陰では犬を散歩させているご婦人が、日差しを避けるための小さな傘を肩に乗せていた。
優雅な休日の昼下がり。ミキーの泊まっている宿のあたりとは印象が随分違う。


声の主はルーファと同じくらいの歳の少年で、金色の髪をさらりと流して、腰に手を当てて笑っていた。
「シド、うるさい!」
ルーファがにらみつけた。
「あの、シドさんもボール蹴りするんですの?」
ミキーがちょこちょことそちらに向かおうとするので、慌ててルーファはミキーの手を取った。柔らかな白い手は長いブラウスの袖に隠れている。力を込めれば折れてしまいそうなくらい、はかなげだ。


「誰だよそいつ、ルーファの女か?」
シドが腰の高さの木の柵に上半身を預け、ゆさゆさ揺らしながら笑う。
「なんだよ、シド、誰と話しているんだ」
シドの後ろから、シドと同じ海の色のシャツを着た少年たちが集まってきた。

皆同じ服装だ。足元は膝下までの綿の靴下に高級な革の運動靴。ルーファはきゅと唇をかむ。海区の少年で靴下を持っている子は一人か二人。ほとんどが裸足に兄弟のお下がりの靴をはいていた。
裕福な商業区の子供たちは、自分たちとは違う。けれど、生粋のポオト人である俺たちは、どんなやつらより強い。そう言い聞かせられて育っていた。


バラの生垣に囲まれた緑の芝生の広場で優雅にボールを蹴るやつらとは友達になんかなれない、それが海区の少年たちの掟だ。
商業区の少年たちを睨むと、ルーファはミキーを引っ張って、その場から放そうとした。


「うわ、すげ、カワイイ」
「誰だよ!その子」
「ルーファ、お前乱暴するなよ!」
「そうだよ、放せよ!」
「嫌がってるだろ」
わいわいと騒ぐ少年たちに、今度は大人たちも集まってきた。
少年たちのボール蹴りを見に来た親たちだろう。今日は、商業区の休日だ。
「何を騒いでいるんだ、シド。あ、やあ、ルーファ。こんなところで珍しいね。おや、その子は見かけないが…」
シドの父親が隣に立つと、被っていた帽子を取って、まじまじとミキーを見つめた。


「こんにちは、スタリングさん」
ルーファは憮然としたまま挨拶を交わす。一応父親の面子もある。苦手な商業会の会長でも、下手な態度で父親の格まで下げるわけには行かない。
「ミキー、この人が商業会の会長さんで、ランカ・スタリングさんだ。シドのお父さん。スタリングさん、この子、競技場の工事関係者の方の娘さんなんだ。ミキー、ええと」
「ただのミキーですの」
にっこりと微笑まれると、スタリングさんも少し頬を赤くした。
「あの、皆さんボール蹴りをしますの?」
「あ、ああ、そこの赤毛のチームみたいなへぼじゃないぜ」
シドが言って周りが笑った。これ、と父親はたしなめてはいるものの、表情は笑っていた。


ルーファは悔しげに拳を握り締める。つないだ手にそれを感じて、ミキーは隣のルーファを見あげた。次に、大人たちを見た。
「競技場で、一緒に遊びましょう」
ミキーの言葉に、静まり返った。
「芝生がとってもきれいだから。今なら誰でも遊べますの」
「競技場は…、よくないよ」
それは、ルーファたちが見せた反応とは少し違った。
シドは顔を青ざめさせていた。


「ミキー、こいつらまで呼ぶことないさ。行こうよ、俺たちだけでやろうぜ」
「ま、待てよ!ルーファ、あそこは、その」
シドは柵を乗り越えて歩道に止められたルーファの自転車を押さえた。
「なんだよ、邪魔すんなよ」
眉を険しくする赤毛の少年に、シドは何度も瞬きして、真剣に見つめた。
「シド、放っておけよ、自業自得さ」
少年の一人が言う言葉に、シドはきっと睨み返した。
「バカいうなよ!死んだ人もいるんだ!あんな危ないところ、子供だけで行っていいわけないだろ!」


言い返すシドに、一番驚いたのはルーファだ。自転車にまたがったまま、蒼い目をまん丸にしていた。
「なんだ、それ」
「ルーファ、お前の仲間だけで行ったのか?止めたほうがいいぞ!あそこ、ユルギアが出るんだ!もう、何人もけが人が出ていて、だから、工事も街の業者は請けないんだ!」

次へ 

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要さん♪

ふふ。ユルギア、ミキーちゃんもユルギアは嫌いですが、今回は行かなくちゃならないのです♪
ご期待に添えるといいなぁ~♪

漁業会の仲間が反対している競技場の改修にかかわっていると言うミキーさんの言葉を聴き、彼女と少年達の間に一瞬、険悪な空気が流れましたがミキーさんの競技場に入れると言う一言で、再び良い雰囲気に戻ることが出来て良かったと思いきや、競技場に入ろうとしたミキーさん達をまた新たなユルギアに関わる難題が待ち受けていましたね。
果たしてこの後どうなるのか
次回の展開に期待します

お言葉ありがとう♪

kazuさん♪
シドもルーファも格差社会に生きてます!!(笑)
そういうのが子供にも影響する、それは仕方ないのかもしれないですけど。その辺、ちょっとテーマです…(カタい ^^;)
シーガさまの言葉、というか命令ですよ、きっと。その意味はたくさんの人が集まってから。ささっと、ささっと更新して読んでいただきたい~と。
今日もがんばります!


chachaさん♪
そうです!シーガはミキーちゃんの効果v-344、よぅく分かってます!利用するべきは利用する!ユルギア、だんだん出てきます。待っててください♪
そう、根源はオトナ。それはもう、利害関係はあるでしょうが、それを子供にまで押し付ける。悪気はないでしょうけど。
ふふ、毎日更新、がんばります!っていうかプロローグのくせに長い!!と。らんららも思います…^^;


楓さん♪
おお!!そうそう!シドさんお名前借りてます!v-346
うちのシド君がそのレベルまで達観できるのはいつのことやら(笑)
いいヤツです!ルーファも分かってますが。なかなか。
仲間の手前ってやつもあるわけで。
チーマー?は大変。
ふふ、ウサ子ですか!可愛い♪大人気です!ええ、願望そのもの!
一度でいいからもててみたい~♪という(笑)


ユミさん♪
ふふ、そうです。今回はいろいろと平行してます。すでにシーガさま別行動してますし。ミキーちゃん、ええ、この愛情いっぱいウサ子は割とたくましい(笑)
あま~い言葉?ふふふ、あまーい!!
シーガがそんなことするわけないのです!冷徹ですから♪冷たく冷たく、アイスクリームって言うより霜!ですから
シーガ:…v-389(殺意)
ミキー:霜、白くてサクサク、踏むの大好き♪
シーガ:…v-359

ざわざわ

ちょっといろんなことが起こり始めてますね。
ユルギアが出て、死者が出ている競技場。
でも、ミキーちゃんがいるから何か起こっても、大丈夫なような気がする
んですけど?!
それより、それより~!!シーガ様からの手紙は、皆を競技場に
呼ぶことだったんですね~。あま~い言葉はなかったのですか??
あ、ないか…。
皆が楽しく遊べるといいんだけどな~。

シド!

僕の小説では、すっかりお年のナゾナゾ灯台守なシドですが、こちらでは何と若くはつらつとした~♪
さっそくお気に入りキャラになりそな予感。
いいヤツっぽいし。
漁業界と商工会・・・
ま、往々にしてそう言う格差ってありますよね。
インプリンティングされた意識の差はなかなか埋めづらいものでしょうが、そこはそれ、子供達の柔軟な頭で解決できてしまったりするモノですよね。
がんばれ、
ルーファ、そしてシド!!
さてさて、ユルギア・・・
はたしてシーガ君は何を思ってあんな手紙をウサ子?ちゃんに渡し、子供達を誘導しようとしているのでしょうか・・・
にしてもウサ子ちゃん・・・
大人気ですね♪
女の子から嫉妬を買いそうですが、女の子もぽわーんてなっちゃうのかな?笑

なるほど~

シーガくんのお手紙の内容、みんなを競技場に呼ぶことだったんですね^^
ミキーの魅力でみんなあっという間についてきちゃうでしょう(笑)
でも、そうそう、まだ謎めいたままの<ユルギア>が出る所へ、なんでシーガくんは人を呼ぶんだろう??@@;
大丈夫かな・・・どきどき。
そこの真相が気になります~><

はぅ、やっぱり格差があったわけですね。
みんな平等に・・・なんて言っても、なかなかそうもいかないんでしょうが・・・;;
大人たちがそんな差別的な態度をとったら、子どもたちも真似するに決まってるのに!
うぅ~その根性叩きなおしてやりたいわっ!><

毎日更新、とっても嬉しいです!!やったぁ!^^
けど、ご無理はなさらないでくださいね~☆

シドくん、ちょっとやな奴~と思ったら、いい子でした☆
漁業区と商業区。
生産者と消費者。
その格差。歴史を感じますね。
きっとそういう風に生きてきているから。
刷り込まれた価値観は、なかなか消えない。
そういうものって、分かり合うの難しいですよね。

ミキーちゃんのいうシーガ様の言葉。
なるべく沢山の人を競技場によんで、遊んで欲しい。
それが、シーガ様の手紙の内容なのですね。
その理由が、すんごく気になります~☆
毎日更新、お疲れ様です♪
楽しみにしてます~~☆
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