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「想うものの欠片」第一話プロローグ 7




ユルギア。
それは不可思議な現象や物事の根底には必ず関っているといわれている。伝説の存在。
人間が恨みなど強い思念を持つと生まれるのだ。地域によっては神に逆らった人間が命を落とすとユルギアに生まれ変わるなどとも伝えられる。何かよくないことが続くと、悪いユルギアに付きまとわれているなどとうわさされるのだ。
実態はあまり知られていない。


ルーファはにやりと笑った。勝ち誇った表情だ。
少し大胆になって、荷台に横向きに座ったミキーの手を自分の腹に回させると、少年たちに余裕の笑みを向けた。


「ユルギア?何言ってんだよ、信じてるのか?そんなの。弱虫だな!俺は行くぜ。もう皆先に行っているんだ」
「ルーファ!」
「ミキー、行くぞ」
少女は慌ててルーファにぎゅっと捕まる。
「みなさんも来てほしいですの」


ミキーの言葉にシドは思わず数歩下がる。表情は怖いものを見た顔だ。
ミキーはにっこり笑った。
「大丈夫ですの」
自転車がぐんと進みだして、ミキーの澄んだ声と長い亜麻色の髪がゆらりと流れていく。見送る少年たち。


ルーファは三区画ほど離れた競技場の大きな影をまっすぐ見つめていた。
「な、ミキー、お前はユルギアを信じるのか?」
「ユルギア?はい、信じますの」
「本当に、いると思うか?目に見えない力とか、死んだ人間の怨念とか、普通じゃないイキモノとか」
「はい。神話にもたくさん出てきますの。ルーファは怖くないですの?」
自転車のスピードが上がった。


「ユルギアの物語はさ、人々に対する戒めのための空想上の生き物だって言うぜ。悪いことをしてはいけないっていう。神に逆らうものは人間ではいられないんだ。でもさ、神様だって、いるかどうか怪しいんだ。本当は神様って礼拝堂や聖堂にはいなくて、みんなの心の中に正しい神様はいてさ、それを信じて祈るんだ。あ、コレは親父の受け売りだけどな」
「心の中にもユルギアはいるんですの?」


「神とユルギアは違うさ。俺の親父は海の男なんだ。海に出るとさ、本当に、人間なんかちっぽけだって思い知らされるって言っていた。危ない目にあったり、嵐に出会ったりすると神に祈る余裕なんてないんだって。生きることのほうが大切に思える時だってあるんだ。それで精一杯働いて無事に戻れた時に、心から神に感謝するんだ。だから親父は礼拝堂には行かないけど、いつも心の中でお祈りしているんだってさ。商業会の連中はバカにするけど、親父は牧師さんより神に近いところで生きているんだと思う」


少年が話す父親の姿を想像して、ミキーはうっとりと目を閉じる。心地よいお話を聞いている気分だ。
「お父さんのこと大好きなんですね、素敵ですの」
「へへ、なんか、照れるな」


競技場の前は丸い模様を大理石で彩った広場で、その真ん中を曲線を描く水路が横切っている。ぐるりと競技場を囲むように作られた、馬二頭分くらいの幅の水路だ。
昨日見た灯篭は、それを渡る橋の欄干にある魚の姿を模したかわいらしい彫像だった。競技場の正面に向かう橋の下では、山から海への水だろう、心地よい音を立てて流れている。海に向かって傾斜しているこの街では、雨水を逃がすための水路があちこちにある。


橋を渡ったところにダーレフが立っていた。
橋の真ん中に立つ少年たちと睨み合っている。
少年たちはルーファの姿を見つけると、口々に早く来いよと騒ぎ立てた。


「このおっさん、通してくれないんだ」
「どうなってんだよ、入れるんじゃないのか?」
ルーファが自転車を止めて後ろを振り返ったときには、すでにミキーは橋に向かって走り出していた。いつ自転車から降りたのか、ちっとも分からなかった。
「おじさま、シーガさまのご命令なのです」
道を開けた少年たちの真ん中をミキーが駆けつけると、ダーレフは眉をしかめた。
「俺は感心しないぜ、お嬢さん」
「大丈夫ですの。シーガさまの言う通りにしないととっても怖いですの」
少女が男の手を取って、大きな瞳で見上げる。その真剣な表情に、ダーレフは再び鼓動の高まりを感じて、思わず手を引いた。


「入っていいですの?」
男がしぶしぶ頷くと、ミキーは後ろを振り返ってルーファに笑いかけ、自らも男の脇を抜ける。
「ありがとうございます!」


にこやかに少年たちに挨拶されて、男は黙ってその姿を見送っていた。
それから、自分の手を額にあてた。
くらりとめまいまで感じる。少女に感じる動悸もおかしい。微熱があるのだが、それももしかしてあの黒い植物のせいなのかもしれない。そう感じたダーレフは、この際、仕方がないとシーガの方針に従うことにした。


あの植物に絡み取られた通路を抜けて、暗がりから日差しのある競技場へと少年たちは駆け込む。
昨夜感じた恐ろしさも今は微塵も感じられない。ミキーは不思議そうにそれを見上げた。気にせずに通り抜ける少年たちの瞳は、まっすぐ緑の芝生に向いている。心がまっすぐだからかしら、と少女は首をかしげた。

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ユルギアは、まだまだ謎に満ちた存在が不確かな物なのですね。そんなユルギアの存在を、ミキーさんは信じているのですね。彼女が何故ユルギアを信じ続けるのか気になる所です。
ミキーさんは少年達と、徐々に仲良くなってきていますね。
彼女の丁寧な言葉遣いは不思議な容姿に似合ってとても可愛いと思います

ユミさん♪

ふふ、そうですね。
自分では到底かなわない大きな力に突き当たったとき、自然とそれに畏敬の念を覚える。こう、雄大な景色を見て感動するのと同じだと思うんです。そういう心は大切だなと。
常には「宗教」=「近寄らない」ですが(笑)

今回はこの世界で言う「神様」という定義が、重要になってきます。
これも、ある意味、読者の皆さんへの布石だったりするので、心に留めてもらってすごく嬉しいです♪

うまくいえないけど

なんか、わかる。
神様って本当にいるかいないかわからない。けど、自分の中にある
信じてるものとか、気持ちにまっすぐでいることが1番なんでしょうね。
ルーファのお父さん、かっこいいな~。本当にニンゲンはちっぽけ。
周りに何もない大地や上空、海(には出ませんが^^;)にいると、
自分の考えとか、ぐちゃぐちゃと悩んでいること、自分の存在すら
小さく感じます。
争いなんて、バカバカしいって。
商業会の人たちにも、一度そういう経験をしてほしいものです。

お言葉に感謝ですの♪

chachaさん♪
そろそろ、ユルギアさんたちを出さなきゃですね!
そうそう、幽霊とかモンスターとか、精霊、神…人が思い描くものって様々で。でもそう言う固定観念のないものにしたくて。勝手に命名したわけです!名前も思いつき!(笑)
ダーレフ、もう、やられっぱなしでス!幸せなヤツです。


楓さん♪
恋!!!ふふふ~
いい年こいて本当に。ミキーにどきどきするなんて!
ダーレフさん、倒れなきゃいいけど(笑)
ユルギア、抽象的ですね。簡単に恨みつらみの詰まった幽霊ってわけでもないのです。
いろいろと、います。プロローグが終わったら、ちゃんと用語集(?)作りますので♪しばしお待ちを!


kazuさん♪
ユルギアがはっきりしなくて、ごめんなさい!
目に見えないはずでも、シーガさまには見えている。実体がないはずなのに、植物になっている?
だんだんと出てきます、今回のユルギアさん。
どんなヤツか、ミキーちゃんどうなるのか。見てやってください!(^^)/

ミキーちゃん・・・

愛らしい・・・^^;
やられてますね、みんな(笑
何を隠そう、私もですが♪
シーガ様の命令(笑 を、忠実に守ろうとする、ミキーちゃん。
伝説上の存在、ユルギア。
ルーファくんのお父さんの考え、私も賛成です。
ただ、目に見えないもの。
ユルギアも神様も。
でも目に見えないものだからこそ、絶対いないと言いきれないところもありますよね・・・。
信じることが、一番大きな力かなって思います。
伝説上の存在・・・、シーガ様には全て分かっているんですね
ユルギアに違いない・・・そう、シーガ様、いってらしたから・・・。
うわぁ、ドキドキします~
毎日更新、お疲れ様です!
続き楽しみにしています☆

ダーレフ(笑

手を額に当てて、
目眩がする?微熱がある?
恋だぜ、恋。
うははっ
いい年こいて何やってんだよ~おっさん・・・
う・・・
ミキー・・・ですの・・・か、可愛い←お前がやられてどうする(汗
ユルギア
謎めいてますね。
抽象的すぎて実態が掴めないというか。
その存在をしり、対処法まで知っていそうなシーガ君。
彼はいったい何者???
そして今彼は???

ふむぅ

ユルギア、いろいろな説で伝わってはいても、実態はまだ謎のままなんですね・・・
その実態を知ってそうな、シーガくんとミキー。
はぅ~真相が知りたくでウズウズです(笑)
でも、そういうものって実際、数多くありますよね。
幽霊だって、信じる人と信じない人がいるし、信じる人の中でも、いろんな幽霊像を語っているし。
神様だってそう。
ルーファのお父さんのような考え方、私は好きです^^
いい親子関係を築いているんだろうな。ふふ☆

そして、ダーレフさん、またミキーの魅力(?)にやられましたね~(笑)
何かしら、ミキーには力がありそうですが・・・
ふふ、それをユルギアのせいにしている辺り、やっぱり気づいてはいないようで^^
実際どうなんでしょう??とっても気になるところです☆
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