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「想うものの欠片」第一話プロローグ 13

13


「畜生!誰だ!ルーファになにしたんだ!」
そう怒鳴って、人の波を無理やり掻き分けて飛び出した男がいた。先ほどまで大人たちの言い争いの中心になっていた目立つ男だ。
ルーファの父親だろう。同じ赤毛で、日に焼けてたくましい。


「何言ってる!勝手に倒れたんだ!勝手に入るな!試合中だぞ」
審判をしていたレットが男をさえぎりながら怒鳴る。丸く太ったレストランの店主は、背の高い赤毛の男を全身で押さえつけようと手を広げた。
「貴様、ちゃんと見てろよ!」
男は審判に掴みかかる。


「ルルド、審判は絶対だぞ!」
背後からの野次に、ルルドと呼ばれた男は声のしたほうを睨んだ。商業者たちの白い顔がいっせいに男を見ている。
「急に倒れたのよ!」
「いいから、早く誰か!」
「ちゃんと食わせてるのか?腹へって動けないんじゃないか」
若者が揶揄を飛ばす。
「やあねぇ」
ルルドが後ろから組み付いて止めるレットを、殴り飛ばした。その勢いのまま、揶揄した青年に掴みかかる。
どよめきが広がる。
「なにすんだこの野郎!」
ルルドに商人たちが詰め寄ったときには、漁師たちもそれを左右から囲むように集まっていた。


「ルーファ!」
「おい、しっかりしろよ!」
大人たちにかまわず、少年たちは集まってぐったりしたルーファの肩をゆすった。
「ルーファ」
シドが助け起こす。
「触るなよ、シド!」
テデがシドの肩を突き飛ばそうとして、かわされて転びかけた。
シドはそんなこと意に介せず、ルーファの額に手を当てる。
「ひどい熱だ、ルーファ、俺だ、シドだよ、分かる?」
「なんだよ、お前!」テデがシドの背後から手を伸ばそうとしたが、他の少年が止めた。
少年たちは皆、敵味方関係なく、じっと見守っている。
テデも頬を赤くして、ルーファの方に向き直った。
「お、俺だって、心配なんだ!」口を尖らせた。


ミキーが駆け出そうとするのを、シーガが留めた。
ワンピースの襟首をつかまれ、少女はあん、と残念そうに振り返る。
青年は厳しい表情のままだ。
「近寄ってはいけません」


オトナたちがいがみ合う中、ロゼルヌ卿だけがシドの脇に膝をついて、ルーファの様子を見てくれた。
「大丈夫、脈はある。皆落ち着いて!ひどい熱だ。ランカ、ルーファを病院に!」
ロゼルヌ卿がきびきびと指示を下した。
「ルーファ!」
その様子に気付いたのか、赤毛の日に焼けた大男がシドから奪い取るように少年を抱き上げた。
「俺が運ぶ!」
ルルドが怒鳴る。
その手をロゼルヌ卿はしっかりと掴んで引き止めた。


「ルルド、車のほうが早い!私の車、ああ、ダメだ、今日は馬車だったな!シド、君は付き添ってくれ、ランカ!車で来ているか?」
「父さん、早く!」
ジエの消えた場所で膝をついたまま呆然としていたスタリングの肩を、シーガが叩いた。
「!は、ああ、はい!」
ランカ・スタリングは立ち上がると手招きするシドとロゼルヌに駆け寄っていった。
「商業会の恩は受けないぞ!」
少年の父親は止めるロゼルヌ卿を振り払った。


「スタリングさん、そんな荒くれ者に車を出してやることはない!昼間から酒臭い息をしているんだ!酔っ払いめ」
レットが向こうから怒鳴った。大人たちはまだ言い争いや掴み合いを続けていた。
「そうだ、お前たち漁業会が街の品を下げているんだ!どうせ病院の金だって払えないさ!」
口々に悪口を言う商人たち。
「なにを言ってやがる!お前らが店の看板を下ろす時間に俺たち漁師は起き出して漁に出るんだ!お前らが休日なんていっている今日だって俺たちは一仕事終えてきているんだ!一日の終わりに酒飲んで何が悪い!」
「お前ら商人が潤うのは俺たちが命張って港に荷を運ぶからだ!偉そうにしやがって!」
漁師たちは日に焼けた腕を振り回して怒鳴り散らす。
興奮してしまっている大人たちは、二つの塊に分かれて互いを罵り合っていた。


「醜いな」
シーガはルーファに近寄ろうとするミキーを押さえたまま、街の人々から離れて競技場の真ん中に向かって歩いていった。


赤毛の少年を抱き上げたルルドは、シーガたちと反対に、競技場の出口に急ぐ。あの、通路だ。他の通路は工事用に閉鎖されていた上から植物に絡みとられ、どこも使えなくなっていた。シーガは競技場の真ん中に立つと、耳を澄ます。
同じものが、ミキーにも聞こえていた。
苦しそうなルーファの息遣いすらも。少女は息を詰めてじっと聴覚に神経を集中させていた。


「待ちなさい!私の車に」
スタリングだ。
「スタリング、お前の車などに乗せん!」
ルーファを抱き上げたままのルルドにスタリングが追いすがった。
何度振り払われても、執拗に赤毛の漁師に掴みかかった。
「頼む!二十年前と同じにしたくない!」
「!?」
ルルドがかつての名選手、ランカ・スタリングをにらみつけた。
「二十年前?あんたは、確かに名選手だった!皆に応援されて、ポオト人の誇りだった!それが、今やこの街に移り住んだ他所者の味方じゃないか!金持ちになると変わるんだな!あんたの親だって爺さんだってみんな漁師だったのに!」
何の関連もないことだった。


傍らに付き添ったシドが顔をしかめた。
「ルルドさん!父さんは毎年この日に、二十年前に亡くなったジエ選手のお墓に会いに行っているんだ!ルルドさんたちは行ってくれたの?応援したって言うけど、チームの勝利のためだけだろ!父さんはジエ選手を助けたかったんだ!今だって、ルーファを助けたいんだ!俺だって、同じだ!ポオト人は情に厚くて友達を大切にするんだろ!」


地鳴りがした。
「俺はルーファを友達だと思ってるんだ!職業とか住んでいる所とか関係ないだろ!」
怒鳴りながら、気付くとシドはよろけてルルドにすがるような格好になっていた。
「え?」
「なんだ?」ルルドは周りを見回していた。
「地震だ!」
地面が揺れていた。圧倒的な力で何もかもが揺り動かされる。


「!いかん!」
ロゼルヌ卿が叫んだ。スタリングたちはちょうど壊れかけた通路の中だった。
ルルドの足元にも拳ほどの石くれが転がってきた。


「危ない!」
「崩れるぞ」
ルーファを抱えたルルドは庇うようにその場に座り込んだ。シドも、スタリングもロゼルヌ卿も。
天井から土煙を上げて崩れた石が落ちてくる。
さらに揺れが激しくなった。

次へ 

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要さん♪

シーガ、活躍なるか…(笑)
そうですね、彼はどちらかというと傍観者に近い…。
うむ~、要さんを満足させられるといいのだけど(><)

突然倒れてしまったルーファさんを皆が運ぼうとするその途中に、地震が発生しそうですね。果たして突然の出来事に、シーガさん達はどう動くのか。

次回の展開に期待します

楓さん♪

ええ地震です!!
二つに割れてしまっている人々、一つにするはずのスポーツ!でも、やっぱりダメってことで!
地震ナわけです!
街の歴史や人々の生活。そこに、少しだけ、影響を与える、シーガたちはまだ、単なる傍観者に過ぎません。
いずれ、歴史は動くわけですが…
まだ、プロローグですから♪(なんてのんびりしたおはなしなんだろ…)

わお

地震キタ━━━━(゚∀゚)━━━━━!!!
これはやっぱしユルギアのせいでしょうか???
大人達のいがみ合いは・・・
醜いけど、まぁ分かる部分もあってですね・・・
特に漁師と上流階級っていうか、そう言う人たちって何処に行ってもこんな感じですよね。それぞれ誇りをもち、自分達の街を愛し・・・でも時に意見が食い違う。それに、本当に街を食い物にしている上流人が乱入したりするともう収拾がつかなくなるという・・・はぁぁぁぁぁ
しかもこの時代って産業革命期っていうか、そういう時代ですから、新たな文明を受け入れ時代に乗り遅れないよう街をよくしようとする人と、昔ながらの街を護ろうとする人が対立する、格差が生まれる・・・いがみ合いのネタはいくらでも転がってますよね。
そんななか、唯一心をひとつにできたもの。
スポーツ。
そこに焦点を当てたらんららさん。
巧い。
プロローグの結末、楽しみにしています♪

ユミさん♪ありがとー!!

続けてコメントうれし~♪
そうですね、大人たちはそれぞれ家族を背負って生きてきているから、それを否定されたら引けません。特に、サッカーの応援してたりすると、すごいですよね(笑)
ブーイングしながらストレス発散というか…♪らんららも分かります。

ええ、地震など起こしてみました。
これからちょくちょく、揺れます(←ナニそれ^^;)
みんながどうなるのか…シーガさま、そろそろ働くのか?
働かないのか?
期待してください♪

ウン…

大人たちのいがみ合い、確かに醜い。
だけど、理解はできるかな。一度いがみ合ってしまうと、どうしようも
なくなってしまいますよね。子供のほうが、大人に見えたりする。
シドかっこいいよ!!助けたい気持ちは、誰だって持ってる。
ルーファ、ただの高熱だけなら助かりますよね??
あぁ、でも地震だなんて!!しかも、壊れかけた道路の途中に
差し掛かっているなんて、タイミング悪すぎです。これって、ユルギアのせい?
どうか、皆が無事でありますように…☆
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