08
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
   

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

「想うものの欠片」第一章プロローグ 16

16

「私には大勢の声が聞こえます。ユルギアたちの声です。彼らは好きなことをいっている獣に過ぎませんが、その中から得る情報も多い。たとえば。競技場が壊れた後に国が鉄道を敷設しようとしていること。それに伴って、この街に大きな金が流れ込むこと。そして、そのためにあなたは管理人を手にかけたこと。ああ、あなたは平気ですね。すでに二十年前に一人殺していますから」
ドン!と、ロゼルヌが机を叩いた。
「…なにを、言っている?」
にやりと、シーガは美しい笑みを浮かべる。翡翠色の瞳は笑っていない。
「薬、飲ませましたね」
次の瞬間には、ロゼルヌはシーガの目の前に迫っていた。瞳の奥に暗く揺れる影に、シーガは殺意を感じた。人間の思念ほど複雑で醜いものはない。それを聞くことの出来ないことが残念でならない。
「くく」
シーガの瞳はそこで笑った。


「あれは!私も飲んだのだ!外国の珍しい薬だと!それを飲むと試合に集中できるのだと言われた。私は風邪気味で調子の悪かったジエにも、一粒与えた。もちろん私も飲んだのだ!まさか、それが原因だなどと!誰も証明できる者はいない」
骨ばったロゼルヌの大きな手が伸ばされる。肩に触れる寸前で、シーガは一歩下がる。
「では、なぜあなたは怯えているのですか?二十年前ジエの後に試合に出たあなたはほとんど走らなかった。恐れたのでしょう?ジエの二の舞を踏むことを。そして先日、ジエのユルギアにあなたは異常に怯えた。ご自分で認めたようなものでしょう」
「貴様は!」
「別に私はあなたが誰を殺そうとかまいません。政府に訴えるつもりもない。ただ、約束は守っていただきたい、それだけです」


青年は面白そうに笑っている。
相手が怒鳴ったり気分を悪くすればするほど、面白みを感じるらしい。
アラン・ロゼルヌは憎憎しげに青年を睨んでいたが、ふと、表情の力が抜けた。
目を細めた。
「では、私がお前を殺してもかまわないということだな?」
「…殺せるものなら、ですが」
青年は近づく領主を、腕を組んで見守っていた。
青年の黒いコートがふいに揺れた。
風はない。
「止めた方が、いいと思います」


青年の落ち着き払った様子にロゼルヌ卿は何を思いついたのか、机の方に戻った。引き出しから銃を取り出した。そのまま、にやりと笑って青年に銃口を向ける。
銃身の短い銃。ライトール公国御用達のレミント社製、高級品だ。
「いいか、黙って出て行くなら、命は助けてやる。貴様にやる金はない」
くくく。
シーガは笑う。
「ここで死ぬなら、それが私の運命なのでしょうね。ですが、あまり、そういう気はしないのです。なにしろ私は、神に愛されているようですから」
ふいに、館が揺れる。
「!」
ガシャン!
部屋の隅に立てかけられていた額縁が倒れた。
「また地震ですね、危ないですよ」

青年は笑う。
ロゼルヌはシーガの頭上で揺れるシャンデリアを見上げた。クリスタルのこすりあう甲高い音がまるで小鳥の群れのざわめきのように聞こえた。
かと思うと、不意に派手な硝子の割れる音が耳を突き刺す。それは、人の思考を一切断ち切るような癇に障る音だった。肌のあわ立つ感覚にシーガの笑みも消えていた。


何かがロゼルヌの背にのしかかった。
弾みで銃を一発。それは目の前の黒檀の机に醜い穴を開けた。
ロゼルヌは絨毯を目の前に見ていた。
膝をついていた。
何かがのしかかって、動きが取れない。
体を起こそうと右腕を背後の何かに押し当てると、鋭い痛みが腕と足首に走った。
「う、なんだ?」


「それは神の使徒を描いたステンドクラスですか。お怒りに触れた、ようですね」
見上げるとシーガが机越しに上から覗き込んでいた。銀の髪にステンドグラスを透かした赤い光が揺れた。背後の大窓から割れたステンドグラスの半分ほどが落ち、のしかかっていた。分厚いガラスをケイムと呼ばれる金属でつなぎ合わせたそれはとてつもない重量になる。
それが、膝をつく男の背を覆うようにのしかかっていた。鋭い破片で切れた足はどろりと赤い血を流していた。
ロゼルヌは青年をにらみつけた。
青年は小さく息を吐いた。


「私は殺されないで済んだようですね。代金は、そうですね、その銃をいただきましょう。貴方が良心の呵責に耐えられずに自殺などしないように、丁度いいですね」
「く、私は、何も悪いことなどしていない…た、助けてくれ」


ロゼルヌ卿はシーガが机を回り込んで、床に落ちている銃をそっと拾い上げたのを悔しげに見つめていた。伸ばした手は完全に無視されていた。そして。拳銃、青年の手、腕、肩、顔に視線を動かして、翡翠色の瞳と目が合うと、ロゼルヌ卿は力を失ったように顔を伏せた。
男が握り締めた拳に何を思うのか、シーガはまた小さく笑う。


「誰も、あなたが悪いなどと言っていませんよ。ご自身がそう思っているだけです」
助けようともせず立ち上がった青年に、窓からの風が吹いた。
風に乗って、階下の避難民の声が響いた。


「おい、スタリング、大丈夫か。お前、寝てなくていいのか?」
「ルルド、来てくれたのか」
「ああ、船の修復を手伝ってくれれば、魚をやるぜ。今日は街の奴らに食わせるってんで、張り切って漁に出たんだ。大漁だぜ」
「ああ、いいだろう、何人か募るよ。助かる、商業区はほとんど全滅だからな」
青年は広い屋敷の遠く離れた庭で二人が固く握手したのを感じながら、部屋を後にした。
ポオトの街は一つになりかけていた。
肩を震わせ、動けずにいるロゼルヌ卿のことなど、彼の意識からなくなっていた。
風とともに青年の耳にたくさんの音が入り込む。
視界に映る余計なものを見ないために、再び黒い眼鏡をかけた。
その銀の髪にまとわりつくように風がからんだ。
「魚臭い…」
眉をしかめる。

続きに雑記書いてみました↓

第一話プロローグ、次で終わりです♪ 




雑記。。。

久しぶりに、サイト更新しました♪最近、すっかりシーガさまに夢中で、進んでいなかった…だめですね~
やっと、「蒼い星」(完成版^^;)も後一話。がんばってサイト、仕上げます…。久しぶりに読み返すと、うむ~このシーンは好きだったなぁとか。あ、へたくそ、とか(笑)
処女作だけにいろいろと、思い出されますね♪

さ、これからお仕事です!明日はお休み、だから、今日は一日ご機嫌♪
関連記事
スポンサーサイト

要さん♪

ありがとうございます!
すでに、要さんのコメントが日課と架しているらんららです♪
そうなんです…シーガ様。かなり聞こえる人です。
彼の能力はまだまだ、キチンと表現しなきゃいけないですが。それはまた、もう少し先になります。
プロローグも後一話…楽しんでいただけると嬉しいです!

シーガさんは、ユルギアの声を聞くことが出来たのですね。そして彼が話す20年前の過去で、ロゼルヌさんが競技の前に薬を飲んだことが明らかになりましたね。ロゼルヌさんはかなり、用心深い人物なのだろうと思いました。
第一話プロローグも、次回でクライマックスなのですね。
次回の展開に期待します

コメントありがとう~♪

ユミさん♪
ふふ~シーガ様、もっともっと冷たく行きます!
地震はいいところで起きました!これは意味が多少はあるけれど…まだまだ、先の話で。決してシーガ様にそんな力があるわけではないですね。
彼がそんな力があったら、うっとうしいユルギアを消すために、さっさと競技場壊すでしょう。やりますよ、彼なら。
街の人たち、いい感じですよ。たくましいですね♪
そう言うの書きたかったので…伝わるとうれしいなぁv-10

楓さん♪
ふふ、好きです?シーガさま。冷たいですよ~♪かなりSですし。書いていて楽しいですが(笑)
彼が何者か、は。彼本人も知りたいところでしょう。
地震は起こせません(笑)そんな力を持たせたら危ないです。何するか分かりません(><)
プロローグのエンディング…、ま、こんな感じになってます~的な。
(いい加減な雰囲気をかもし出しているなぁ…^^;)

謎多き少年・・・

ですねぇシーガ君。
好きですけどね。この冷たさがまた何とも(笑
ちょっとどこかで人間と距離を置いているような、そんな印象を受けます。決して蔑んでいるわけではないんでしょうが、達観しているというか、何というか・・・
マジ何者?
地震はシーガ君が起こしている?
それとも、それを予知できる能力を持っている?
もしやルシェミ・・・笑
風の効果が抜群ですね。
彼のコートが揺れるとき何かが起こる。
次回、プロローグのエンディング?笑、楽しみにしていますぜぃ♪

シーガ様!!

シーガ様の独特の冷たさ、も~、もう少し優しくなって~と
思っていたのですが、ある意味それは必要なのかもしれない
ですね!!ロゼヌル卿を助けたところで、改心するとは思えない
し…。
地震は、シーガ様が起こしているのかと思ったのですが、
そうじゃないんですよね~?抜群のタイミングだったなぁと^^
ポオトの街が1つになっていく。いいですね!!大漁に期待♪
シーが様は嫌そうだけど(笑)
Secret

プロフィール

らんらら

Author:らんらら
のんびり小説を書いています
日記ブログはこちら♪

ランキング参加中です♪

クリック よろしく~♪

FC2Blog Ranking

最近の記事+コメント

FC2カウンター

リンク♪

小説ブログの皆様

カテゴリー

ブログ内検索

RSSフィード

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。