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「宙の発明家」番外編 ③

恋の予感…でしょうか!?




「君、名前は?」
「なあに、あんた」
少女は黒い艶やかな巻き毛をゆらっと揺らして、大きな緑の目を瞬く。
クラフはますますどきどきして、嬉しくなっていた。


「オレ、クラフ。君の名前は?」
「……リント」
「!か、可愛い!」
感動したのか、クラフは胸の前で拳を握り締めて喜ぶ。
少女はいささか、気味が悪くなったらしく、口をへの字にして、無視して歩き出そうとした。
「あ、あの、待って。オレ、きみのこと気に入った!一緒に歩いていい?」


恥ずかしすぎて、ピーシは近寄れなかった。
少しはなれたところから、半分顔を隠しながら、それでも見失わないように後をついていく。
少女がどんどん歩くのだが、クラフは盛んに話しかけている。
どう見ても、脈はないだろう。
ため息をつきながら、ピーシは進む。
そのうちクラフが手をつなごうとして、叩かれた。
「いて」
自分のことのように痛がって、頬を押さえる。
周りから見れば、ピーシのほうがよほど怪しく恥ずかしい奴なのだが、本人は気付いていない。一人でクラフたちの様子に合わせて、うわ、とかひゃ、とかつぶやいているのだ。


そのうち、少女が怒り出し、クラフは困ったようになだめている。
「もう、誰か助けて!」
少女の叫びに、周りの男たちがクラフに詰め寄った。
「あ、まずい」
ピーシは慌てて駆け寄った。


「ええと、オレは!」
背の高い若者に突き飛ばされそうになってクラフがよろける。
クラフは街の少年たちに囲まれていた。
「気味悪いヤツだな!真っ白だ」
「なんだ、その黒い眼鏡!」
「よそ者だろ!悪さするなよな!」


「待ちなさい!」
息を切らせてピーシが駆け寄ると、クラフは助かったと言わんばかりにピーシの後ろに回りこんだ。
「おい、クラフ……」
あきれるピーシ。
「何だよ、あんた…」
言いかけた街の少年が口を閉じた。ピーシは学校の制服だ。そこに通うのは貴族の師弟ばかり。身分が違うのは直ぐ分かる。
「ピーシ様」
誰かが言った。
セクトール候の、と後ろで誰かがひそひそと話している。


ピーシはにっこりと少年たちに微笑みかけて、それからその後ろでムットしている少女に声をかけた。
「すまない、連れが迷惑をかけた。ちょっと、変わっているんだ。可愛い子に目がなくて」
ピーシの言葉に、少女は少し頬を赤くする。セクトール候は、今やこの世界で一番の権力者。そのご子息ともなれば、少女からすれば王子様だろう。
実際、ピーシは自覚がないだけで、十分女の子にもてる要素を持っている。


「ピーシ様、ご家族の方ですか」
いつの間にか集まっていた商人たちの輪の中、果物売りのおじさんが目を丸くしていた。
「え、ああ、そんなところ」
あいまいに頷くピーシ。
「え、じゃあ、もしかして、バカな父親って…」
「何のことだい?」
果物売りに首をかしげるピーシ。が、視界の隅でクラフがまた、少女のそばに行こうとするので、その腕を掴む。
「だめだ!帰るよ!今日はリスガが料理してくれるって言ってたろ?手伝わないと怒られるよ」
「え~」


二人を見送りながら、果物売りのおじさんは首をかしげた。
「変な奴、真っ白だよ、あんなの初めて見た」
「ピーシ様のご親戚かしら」
「カーさん、なんか聞いたのかい?」
盛んに首を傾げる果物売りに、誰かが声をかけた。
「んー、それがな。そうだ、きっとそうだ!あの子はセクトール候の隠し子に違いない!」
どよめきが市場に広がった。
セクトール候、それはピーシの父親、この那迦の街を治める賢老士だ。



「もう、さんざんだった。僕は二度と付き合わないよ」
食卓を囲みながら、ピーシの話に腹を抱えて笑うカカナ。リスガもデザートをテーブルに置きながら手が震える。
「やあね、クラフったら。知らない子から見たらほんと、ヘンタイよ」
皆に笑われてクラフは拗ねていた。
目の前に置かれたデザートのパイを、むずっと手で掴むと席を立って、ベッドにもぐりこむ。
「やだ、クラフ、そんなとこで食べるつもり?」
「行儀悪いなぁ」
「……」
なにか、もごもごといっている。既に口には目いっぱいのクリームパイ。


「セキアさん、何とか言ってやってよ」
リスガがセキアに話を振るが、男は黙ってコーヒーのカップを置いた。
先ほどから、一言も口を利かず、一人で別世界にいるようだ。
「もう!クラフもクラフだけど!セキアさんも本当に、最近変よね!別世界もいいけど、ちゃんとクラフのこと世話してよ!私お掃除しないから!」
「まあまあ、リスガ。僕が手伝うから」
カカナにそういわれると、リスガは声を荒げたことに少し恥じらいを感じながら、彼の隣に座った。
「美味しいよ、これ」
「ふふ、カカナ好きだと思って」
「うん、最高、さすがだね」
ピーシは一人で見回した。
黙り込むセキア、拗ねているクラフ。
いちゃいちゃする二人。


「はあ、僕、帰るよ」
誰も止めようともしない。
ひどく疲れた気分で、ピーシは上着を持ってセキアの肩を叩いた。
「明日、一緒に行ってやれば?せっかく、髪が黒くなったんだから」
セキアは少年を見上げたが、きゅと口を閉じた。
「じゃ、オヤスミ」
「ひーふぃおやふみー」クラフがベッドから手を振る。


セキアは、ベッドで寝転んだままパイをかじる少年に視線を向けた。
目が合った。
ふん、と拗ねた少年は口を尖らせて睨み付ける。
「……」
視線をそらし、セキアは立ち上がった。
それをみて、一瞬身構えたクラフだが、男がそのまま外に出て行くので、口に含んだパイを慌てて飲み込もうとした。
「ふが、待って、セキア、けほ、何処行くの?」
「少し、夜風に当ってきます」
追いすがろうとしたクラフはベッドから数歩歩いただけで、立ち止まった。


セキアがひどく怒っているのが、よく分かった。
クラフは思い出してバッグからセキアのために取っておいた燻製の肉の塊をテーブルに置いた。
「リスガ、これ、しまっておいて。セキアにあげるんだ」
「あら、どうしたの、それ」
「ハムだ、これ高かったろ?」
カカナが手に取る。小さいが、鶏のモモ肉を骨ごと一本塩漬けにし、燻製にされたハム。高級品だ。クラフが通貨を持っているはずはなかった。


「もらった」
「本当?」
リスガが目を丸くして、それからカカナを見た。
カカナも同じことを考えたようで、リスガの視線に小さく頷いた。
「ね、クラフ、明日僕が一緒に行くよ」
クラフは驚いた顔をしたが、にっこりと笑った。
「うん!」

⇒続きは6/16更新、こちらから♪

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風花さん

ピーシくん、いつか幸せにしてあげたい気も…いい子ですよ~(^O^)
セキアさんはどうやらダメです(^O^)何かあるのか、すねているのか!
この後挽回できるかどうか…見ていてやって下さい。
コメントありがとうございます!

楓さん

相変わらずぺったり熱~いリスガとカカナです(^O^)
セキアさんの態度?いや~鋭いです(^^;)
ま、いつもならギャーギャーと世話焼きでうるさいですから!(^^;)うむ~鋭い。今後の展開、想像出来ていたりして(@_@)ドキドキ

Kazuさん

うふふ~セクトール候どんな顔するんでしょ。セキアさんの態度…多少意味ありです(^O^)
クラフくんの恋、らんららも北の空から見守っています~!

バカ真面目なセクトール侯、あらぬ疑いかけられちゃって、ピーシ君大丈夫かしら?(笑
ホント、ちゃんとモテ要素入ってるのにねぇ…?運がないのか、周りが個性的なのか…き、きっとその内、ね!
ていうかセキアさん、どしたの?反抗期の子供を前にして、親がスネてちゃいけないでしょー…って、何か隠してる感じ?むむむ?
こらっ、そこの2人!イチャイチャしてないで、しっかりクーちゃんとセキアさん見張っててよ!

なんか・・・笑

リスガちゃんとカカナ君は・・・
相変わらずというか、輪がかかったというか(笑
ま、いいんですけどね。
明日は一緒に行ってくれるって言うし。
ピーシは、何というか良い意味で丸くなったなぁと思います。昔から優しいところはあったけど、もっと冷たいというか、鋭い感じだったのに。やっぱ、お父さんとの確執が取れつつあるということなのかなぁ?良かったよぉ。
・・・隠し子騒動な心配ですが(笑
にしても不可解なのはセキアさん。
こんな煮え切らない人ではないはずなのに・・・
きっと何か隠してますよね。
何だろう?
自分の事?それとも、クラフ君に関わる事?
後ろめたい事?照れくさい事?
何だろ~・・・

クラフ君^^;

あー、セクトール候・・・おこるかな・・・笑うかな^^;
よもや、クラフ君が隠し子と噂されるとは思ってないだろうし@@;
噂って広がるのが早いですからね~^^;
なんと言うか、お気の毒様・・・

リスガちゃんとカカナ君は・・・、熱々ですね^^
ピーシ君!気持ちは分かる!(笑
きっと私もその場にいたら、逃げだします♪
うーん、セキア様が怒っているの・・・当然といえば当然だけど・・・
クラフくんをほおって置いたのがいけないんだもんね!
一緒にすねてみます(笑

クラフ君とリントちゃんの恋・・・、果たして・・・???
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