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「想うものの欠片」第二話 ①

プロローグではシーガ、ミキー、そしてこの世界をご紹介しました♪さて、やっと三人目の主人公、登場です…


第二話「トント、そして三人」


「タース、これ、昼飯に持っていけよ」
床に膝をついて車輪の下に顔を突っ込んでいた少年に、四角い顔の男が声をかけた。
少年は太い車軸に手を突いて、ひねるように突っ込んだ右手でその奥でボルトを締めなおしていた。
絶え間なく動く機械の音で、聞こえないようだ。
男は面白そうに笑うと、手に持っていた紙袋を少年の道具の脇においた。ひとつ伸びをして。昼の休憩に向かう。


そろそろ暑い季節だ。
眩しそうに男が見る天井はガラス張りで、雨の日も風の日も作業にもってこいだが、暑い季節は蒸し風呂で、地獄のようだ。むき出しの鉄骨の梁が長く続く。そこに這う電線が、ところどころ金具で引っ掛けられている。
電線の先は最新式の発電機だ。彼らの整備する機関車と同じ蒸気で発電する。
工場長のゲーベルさんがティエンザ王国の工業都市に注文したものだ。そんな遠い街で買わなくたって、僕たちだって作れるのに、男はそう言った少年を思い出した。
タースはまだ十五歳。これといって資格は取っていないが、飲み込みは早い。
彼が二十歳になる頃には立派な機械工になっているだろうと男は踏んでいる。娘は一つ上の十六歳だが、下手な街の若者に引っかかるくらいなら、タースにやったほうが安心できるというものだ。
少年が一緒に働き始めて半年。仕事にも慣れてきて、人となりにも納得した。そろそろ、家族に合わせてもいい。タースの家族にも会ってみたい。
勝手な想像をしている親方セルパの企みなど気付きもせず、少年は今、修理中の蒸気機関車から体を引っ張り出した。

ちょうど昼の時間を知らせる教会の鐘が三回鳴らされた。


「ふあ、腹減った」
タースは工具をキレイに布でふき取ると、大切に工具箱にしまった。借りている道具だ。大切にしなければいけない。そういったところがセルパに気に入られているとも知らず、タースは工具箱と傍らにあった紙袋を持って工場を出る。
途中、出入り口にある工具置き場にきちんと返すと、嬉しそうに袋の中身をのぞいた。


「やった!ハムだ!」
淡い海の色の瞳を輝かせて、歩きながらハムと玉ねぎのサンドされたパンを取り出す。かぶりつく。ピクルスが少し辛くて、それがまた食欲をそそる。
セルパ親方の奥さん、エイナの手作りの料理はいつも美味しい。
工場を出て、少し歩いて港の見える高台の公園に来る。少年は公園の水道の蛇口をひねると、顔を半分ぬらしながら飲む。
そうしてまた、一口、サンドウィッチをかじる。
お行儀のいいことではないが、普通の十五歳。気にするはずもない。
昼の時間の公園は案外、人が少ないものだ。ざっと今見渡しても、視界に入るのは図書館の守衛だけだ。皆、自分の家に昼食と休憩のために帰る。少年にはそれはなかった。帰っても、誰がいるわけでもない。

公園のいつもの木陰に座ると、食べ終わって伸びをするまで足元の鳩が三回首をかしげた。紙袋を丁寧にたたんで脇に置き、そのまま、被っていた帽子を顔の上に載せてごろんと横になる。


ライトール公国。首都のライト公領は大陸一の都会。公国を横断するトラムミスと、縦断するトラムティスの二つの鉄道を結ぶ駅がある。駅周辺は大きな建物が立ち並び、たくさんの人と物が集まる。大聖堂、三つもある大学。国の機関の建物は政府庁舎と裁判所と税務署。国立の図書館に美術館。それらには漏れなく広い公園が付いていて、この時期はジャスミンが白い小さな花を咲かせる。揺れるたびに強い芳香が漂う。
少年の横たわる公園も例外ではない。


少し強すぎる花の香りに、寝ていられなくなってタースはむくりと起き上がった。
顔を洗って、図書館に行こう。そう思い立つ。そう、この公園は図書館の庭にあたる。レンガの大仰な建物は四階建てで、入り口の大きな三角屋根には学問の神様とやらのレリーフが刻まれている。肩で鳩の世話をしながら、学びたい者を例外なく見守っているようだ。
ぬれたままの手で黒い髪をかき上げて、タースはそれを見上げた。
貧しい彼が入れてもらえる政府の建物は、ここと刑務所くらいのものだった。
静かな図書館で、いろいろな国のいろいろな街の歴史、そしてそこの建物の絵を見るのが好きだった。いつか、建築士になろうと、少年は考えていた。いろいろな街に行って、歴史ある建物の修復をするような仕事。けれど、それには資格がいる。大学に行かなくては資格試験を受験することも出来ない。働いて、お金をためて。やりたいことがたくさんあった。


図書館に入る前に、作業服のズボンを数回たたいて埃を落とす。
守衛は黙ってそれを見ていた。
太い柱の間を抜けて暗いエントランスに入ったときだった。ちょうど、タースと同じタイミングでエントランスに入った影があった。
見ると少し年下くらいの女の子。黒いワンピース、その下に半ズボン。足元はこの暑いのに膝下までのブーツ。髪はマロンクリームみたいな色で二つに縛られていた。
歩くたびにぴょこぴょこと音がしそうなほど、その姿はお人形のようだった。見とれていたタースは、二つ目の柱の脇を過ぎるときに、柱の横に立ててあった受付の案内看板に膝をがちとぶつけた。
「って」
くすくす、といつもの顔の受付の女性が笑った。
「タース、なにを見とれているの」
手招きされたので、仕方なくタースはガラス張りの向こうにいるジャムさんの前に立った。


ジャムさんは十五のときからもう二十年近く、この図書館の受付をしている。半年前から、昼の時間に顔を出す少年に、何かと話しかけてくる。昼休みは客が少ないのに外出させてもらえないからつまらないという。元来おしゃべりなのだろう。
「今の子、カワイイでしょ?最近よく見るのよ」
「あ、そう」
気にしないフリをしつつも、少年が少女の後姿をじっと眼で追っているので、女性は噴出す。
「ふふ、声かけてみたら?同じ年くらいじゃないかしら。いつも三階の古書のコーナーにいるのよ。ほら、あのフロアなら人がいなし。ちょうどいいじゃない!滅多にいないわよ、あんなかわいい子」
小さな硝子の窓から無理やり手を伸ばして、少年の二の腕をバシバシと叩く。
人のことより自分の結婚のことを心配するべきじゃないのか、と思ったものの、タースにはそれを口にする勇気はない。
「いいって、そんなこと出来ないよ」
「んま!男の子でしょ!?十五にもなって、女の子に声かけることも出来ないなんて、恥ずかしいと思わないの?」
急に憤られても困る。
「だから、さ、別に…」
「そんな勇気のない男ばかりだから、世のいい女は苦労するの!」
誰のことを言いたいのか、少年は的が外れ始めたジャムの話から逃れようと、とりあえず頷くことにした。
「わかったよ、ちょっと見てくる。それでいいだろ」
口とは裏腹に意外だったようで、女性は一瞬あっけにとられ、それから顔を赤くして、行ってらっしゃいと手を振った。


「なんだか、なぁ……」
階段を昇りながら、タースは少し伸びた黒い髪をかき混ぜた。
女の子が気にならないわけではない。一応、男だ。
でも、初対面で、ちゃんと顔を見たわけでも話したわけでもない。
何の情報もないのに、そうそう、上手な誘い文句があるわけでもない。最後の踊り場で手すりに手を付いた辺りで、嫌に緊張している自分に気付いた。
本当に、声をかける必要なんかないのに、なんだろう。
自分が馬鹿に思えて、後数段で三階というところで、立ち止まった。


やっぱり、止めた。
向きを変えたところで何かが聞こえた。
少女の声のようだ。凛としたきれいな声で、それは小さかったけれどはっきりと聞き取れる。
「お願いです…」

次へ 

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要さん♪

ありがとう~♪
タース君シーガ様よりは扱いやすそうでしょ?
ふふ。
毎日読んでくれて、本当に感謝です!

第二章で3人目の主人公、タースさんが登場しましたね。工場で働く彼は、なかなか少年らしい明るい雰囲気の持ち主だと思いました。
そして彼に声をかけてきた少女は、一体誰なのでしょうか?!
次回の展開に期待します

ユミさん♪

コメ返しかいている間にコメントをいただきました♪
ありがとう~タース君、いい子でしょ?
らんらら的にはジャムさん目線で見てしまうんだけど…ジャムらんららとでも、呼んで下さい(笑)
ミキーちゃんはああいう子だからきっと、いい感じ?ふふ、早くもご対面、ええ。ミキーちゃんだけじゃないんです。
次回、お楽しみに、です!

コメント返しつつ眠りそうならんらら…

chachaさん♪
うふふ、可愛いでしょ?大人しめの彼、ちょっとタウくん。ええ。楓さんのとこのタウくんは「いい子」的バイブルですから!v-392
そうです、ミキーちゃん、早速登場♪
シーガ様の意地悪…ぷぷ、ある意味当っているかも!
さて、タースくんとミキーちゃん、いい感じになるかな?


楓さん♪
お願いします…ぷぷ!そう来ますか!ええ、妄想楽しんでください(笑)
タース、楓さんのツボでしょ?むっつりかは分からないけれど…そうですね、ある意味彼の特技にぴったりな時代です。でも、…そうね、そう。よい時代、ふふ。
彼にとって、よい時代、かぁ~(遠い目)v-391
何気に思わせぶりをしつつ。
さて、次回、楽しんでいただける内容だといいな~♪


かいりさん♪
ありがとう~!!待っていてくれました?
タース君いい子なんです!彼がいないとお話が進まないんです(笑)
三人の掛け合いですか…かなりv-404、いえいえ。どういう出会い方をするのか、特に今回脇役決定のシーガ様はええ、本気で冷酷に行きますので♪その掛け合い…v-391
ある意味楽しいかもしれない(笑)
そうです、ミキーちゃん、一目ぼれさせるの、特技です!その才能、らんららも分けてほしいくらいです!


takagaさん♪
そうそう!!笑えます!!そう。おじさんに好かれてしまう!でも、同年代の女の子にはちょっと引かれる、ヲタ系な、いい子!って、どういう設定でしょ(笑)
図書館の出会い…ええ、出会いますとも!!まだまだ、この話はこの場所が鍵ですから!
コメントありがとうございます!v-392

うわ~い

タースくん!!機械いじりが好きで、埃と汗にまみれて!
まさに男の子って感じがして、好きです♪好感持てます。
ミキーちゃんとも早くもご対面?ですかねぇ。
声かけられるのかしら…?あぁ、でも簡単に声かけれらない
ところが、また心くすぐられますよ~☆
続き、楽しみです!!

遂に出たな、“なんだかオジサンとかに好かれてしまう気の良い機械イジリ系の少年”め!(笑)ラピュタに行っちゃいそうな(行かない)
そして、とってもお節介で暇そうな“いい女”登場ですよ。

なんでしょうね、図書館は「出逢い」の予感がする場所です。ずっと後になって、「ああ、最初はあの図書館だったなあ」みたいな場所なんだろうか?この図書館は……?

待っていました♪

らんららさんこんばんは!
続き待っていました~♪そしてタース君待ってましたー><!!
あのイラストの子ですね!可愛い~vV
この3人の掛け合いはきっと楽しいんだろうなぁと今からワクワクです!
や、やっぱり私の大好きな3角関係!!?(笑)
タース君はとっても純そうですね^^
きっとすでにミキーちゃんに人目ボレ!?うふふ~
続きを楽しみにしています!!

ミキーちゃんか?

ん?
そこにいるのはミキーちゃんなのか?
お願いします・・・
うおおおおおおおお何だ?!
ま、まさか・・・
お願いします・・・や、止めて下さい・・・ああっ・・・やめ・・・ピー(バカ丸出し自主規制)・・・
・・・
いやぁ。
そりゃないぜセニュール・・・(こら
ま、それはそれとして。
タース、いいですね。いいですよ。
もしや、機械ヲタですか?にやにや・・・
もしや、むっつりですか?(おぃ
人物紹介にあったように、機械いじりが好きなんですね。まさに時代の申し子・・・ホント良い時代に産まれたね~タース君。
オイルにまみれた作業服が眩しいっす←妄想(笑

こんにちわ☆

やったぁ!とうとう三人目の主人公!タースくんですねっ^^
まぁ~可愛い☆女の子に話しかけるだけで緊張しちゃって~^^
クラフとは大違いだなぁ(笑)

ちょっと機械いじり系な彼なので、タウくんを思い出しました(笑)
こういった子は本当、信頼も人望も厚いでしょうね^^

ミキー、ですよね?やっぱり誰もが目を奪われるほど可愛いんだろうなぁ☆イラストも見ましたが、私でさえ顔がポッと赤くなっちゃいましたもの(笑)

何をお願いしてるの?ミキー。
もしやここにもユルギアが・・・?もしくはシーガが意地悪してる??(笑)

お久しぶりです☆

すごいのみつけましたよ♪
http://jeeee.net/url/13750.html
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