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「想うものの欠片」第二話 ②




誰かと、話している。
他に人はいないように思っていたので、話しかけなくてよかったとタースは胸をなでおろした。数歩歩き出して。また、聞こえる声に足を止めた。
「いやですの!放して…」
鼓動が高まる。
これは?
何かが起きている。

重い静寂を押しのけるように、タースは向きを変えると一気に階段を駆け昇った。
正面の扉をぎっと開いて、目の前の書架の列を見回した。
どこだ。


何かの気配のするほうへ。響く足音も気にせずにタースは走った。
天井までありそうな書架がいくつも立ち並ぶそこは薄暗い。窓は掃除が行き届かないのか曇っていて、昼間のはずなのにまるでうっそうと茂る森に立っているかのようだ。
右手の奥。書架の間で、少女を見つけた。

こちらに背を向けて、誰かに話しかけていた。
相手の姿はここからは見えない。
「あの!」


振り向いた少女を見て。
タースは後悔した。


少年の中で何かが崩れてしまったようだ。
少女の美しい瞳に見上げられ、動けなくなっていた。耳元で鳴る心臓の音で息苦しいのに、肺は呼吸する方法を忘れてしまったかのようにじっとしている。
「どなた?」
少女の声で我に帰って、タースは大きく息を吐いて、それから吸い込んだ。
カビの匂いのする湿った空気も、今は美味しく感じた。
まだ少し、荒い息のまま、タースはなんと言おうか思案しながら口を開いた。
「え、ええと。その。声が聞こえて」
少女はにっこりと笑う。その首の傾げ方がまた、少年の心臓を躍らせた。
「ごめんなさいですの。図書館では静かにしなきゃですね」


「ミキー、いいから来なよ」
少女のものでない声、ちょうど十歳くらいの男の子の声のようなものが、少女の向こうから聞こえた。タースは首を傾けて、覗き込んだ。
「嫌ですの。ちゃんとお話してくださらないとシーガさまに叱られますの」
「おいらは知らないね、そんなの。いいからさ、ミキーも一緒においでよ、楽しいよ」
よく見えなくて、タースは二歩、少女に近づいた。
「あ、あの、あなた、この声が聞こえますの?」
少女が振り向いた。
その向こう。
金色のイキモノが立っていた。
「あ?なに、そいつ」
イキモノがしゃべったようだ。髭を揺らして、鞭のような尻尾をぺんと床に当てた。苛立っているかのようだ。


「お前こそ、なんだ?」
タースはそう言うと、思わず床に膝をついてそいつを見た。
金色の毛皮、タースのモモくらいまでの身長。小さな耳、長い髭、尖った鼻、前足はミキーの手をとり、後ろ足二つで立っている。
どう見ても、でかいネズミ。


声をかけられて、そのイキモノは飛び上がった。
そう、文字通り、飛び上がって、次の瞬間には尻尾の先が書架の向こうに消えるのが見えた。素早く走り去ったのだろう。
タースは何度も瞬きして目をこすった。
「あなた、ユルギアが見えるのですの?声が聞こえるですの?」
ミキーと呼ばれていた少女は、座ったままのタースの肩に手を伸ばした。ひどく興味があるようで、抱きつかんばかりの勢いに、タースは真っ赤になって立ち上がった。
「え?え?今の、ユルギア?動物の姿してた」
「あれはこの図書館のユルギアですの。悪いユルギアではないですが、遊びたがりで、何度遊んでも約束を果たしてくれなくて。困っているですの。シーガさまに頼まれて、昔の資料を探しているですの」
動物のユルギア。
そう聞いて、タースの表情は曇った。
「あれも、ユルギアなんだ」
「あの、あの!あなたもシデイラですの?」
少女が抱きついた。
思わず後ろにあった書架に背をぶつけたタースは一瞬見せた真剣な表情を消した。
それどころではない。
目の前の少女の柔らかな体に心臓がどうかなりそうなのだ。


「だ、あの、僕は違うよ!その」
「違うですの?」
「シデイラの血は、流れてるけど」
少女はタースの腹にしがみ付いたままだ。
「あ、あの……」
「シーガさまと同じ匂いがしますの」
うっとりとした様子でミキーは亜麻色の髪を何度も少年の胸にスリスリとする。
たまらなくなって、そっと突き放すと、タースは荒くなった息を落ち着けようと胸に手を置いた。


「あの、お茶しますの!一緒に」
少女は長すぎる袖の下から三本だけ指を見せて、少年の手を握り締めた。
少女に請われるまま、タースは階段を降りて、ジャムさんが何か言っているのも耳に入らずに図書館の一階にある喫茶コーナーに入っていった。

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要さん♪

はい、タース君一目ぼれ!
すっかり舞い上がっております!
ミキーちゃんとの出会いは彼の運命を狂わせますが(すごい、重い言い方みたいだわこれ…結局、誰かと出会うことは人生を変えますから、どんな出会いでも♪)
ふふふ。続きをどうぞ♪

タースさんが出遭ったのは、ミキーさんだったのですね。彼女と出遭ったタースさんの心中の気持ちはまさに「初恋」そのもので微笑ましいものがあると思いました。
そして、ミキーさんと喫茶コーナーに入ったタースさんは、この後どのような行動を取るのか
次回の展開に期待します

楓さん♪

お帰りなさいですの♪
お風呂ですの?ごはんですの?
って、女の武器?(笑)
いいなぁ、らんららも家にミキーちゃんほしい…
家事やってもらうの♪

ミキー:嫌ですの!

おいおい(汗

女の武器フル活用ではないか!!
ミキーちゃん!!
そ、それは罪ってやつですの!!!(←
・・・
すみません、恒例の週末不在開けではしゃいでます(笑
続き、読みます!!

かいりさん♪

うふふ、あの会話でミキーちゃんとシーガ様だとしたら…v-402いやぁ、想像してしまいました(笑)
無邪気天然の美少女と、見るからにS的な美青年…やばい~それはかなり、男性読者をそそります(笑)
タース君とシーガ様、どんな出会いを果たすのか…ご期待ください♪

タース君!!

かっわいい~!!きっとずっと赤面してますよね!!
ミキーちゃんたらこの間シーガ様に注意されたばかりなのに!
人間には刺激が強いって!!
でもそこがまた可愛いんですが(笑)
声の相手はシーガ様かと思ってちょっとドキドキしちゃいましたが(おい)ユルギアだったのですね!
早くシーガ様VSタース君のシーンが見たいです^^♪
私は…今のところシーガ様派♪
続きも楽しみにしていますね!!

いえいえ、とんでもありません~
ありがとうございます!m(__)m

Takagaさん

あれ(@_@)忘れてるし(>_<)ごめんなさい~とろとろしている奴です!もちろんリンク歓迎です!

実際、幼年期のテムくんって大きさあれぐらいなのか?と悩んでしまったニンゲンですよ、僕は……。
やっぱり絵の力は絶大ですからね~!テムくんはあんな姿なんですよ、恐らく(無責任に頷くニンゲン)

ユルギアは思念……ああ、なーるほど。そいつは厄介な感じですね。本人の生前の思考が影響するんですかねー?その内、タニシとかゴカイとかゲンゴロウとか出てくる訳ですかあ。そんな姿のユルギアが(んなわけない)

らんららさん、リンクの件はどうでしょうか?(小声)

コメントありがとう~♪

chachaさん♪
うふふ~恥ずかしいシーンですよぉv-402
もう、タース君、ずっとこんな顔⇒v-402しっぱなし!!
ミキーちゃん、ぎゅっとしたら気持ちよさそうですよね、絹に綿。でもタース君はそこまで考える余裕ナシです(^^)
気付くのはいつでしょう…(遠い目)
そうそう、いずれシーガ様が…でも脇役宣言したからしばらくは大丈夫(?)
タース君にはいろいろとがんばってもらわなきゃです!


takagaさん♪
「かび臭い…」変でした?いえ、かなり大げさにタース君の感覚が鈍っていることを表現してみました!(って、そこまで考えてないくせに^^;)
ネズミのユルギア、じつは、ちょっと変です。ええ。後で正体が出てきますが。実際ユルギアは思念です。ネズミにそんなたいそうな想いがあるわけがない!そう、文庫本三冊で退治されちゃう存在ですし(笑)
タース君、そう、ただの機械ヲタでは、もてないので(笑)多少、主人公らしくしてあります。

chachaさんのところで、おお、takagaさんのイラストでテム君?どんな感じ~?って楽しみに思っていたので。いいですよぉ~そんな、特別な表現もなく描いたものだし。こういう犬もいる(笑)、って言われればそんな絵ですし♪(でも、そう思うと、皆さんのテムくん像に影響してしまったような気がして、ちょっと、気がひけますね…^^;)
これから行きます!楽しみです~♪


ユミさん♪
ミキーちゃん、基本設定の性格は誰にでも抱きつきたがるんです…シーガ様のように触っても平気なヒト=嬉しい=抱きつく!というわけです。
深い意味はありません(タース君が知ったらがっくりでしょうが…笑)タース君にとっては、コレがどんなことになるのか…ある意味、彼の人生を動かしてしまうことに?

あ~れ~

ミキーちゃんてば、よほど嬉しかったのかな。
シーガ様と同じ匂いがするんだ?!だったら、タースくんの
方がきっと優しいよ~^^
突き放したりしなそうだもの。いまは出会ったばかりで恥ず
かしがってるんだろうけど。
タースくん、ミキーちゃんの指、ちゃんと見たのかなぁ。
3本でビックリしなかった??
ドキドキしちゃって、それどころじゃなかったかな…?

いろんなユルギアがいるんですね~。
シーガ様はユルギア使いみたい…^^

蚊がブ~ン……

“カビの匂いのする湿った空気も、今は美味しく感じた”

↑らんらら節ですなあ

ネズミのユルギアが登場!
うーむ、図書館にはネズミとか居そうですねえ。そんなのに出会ったら、僕はハードカバーを3冊投げ付けて、最後に文庫本を叩き付けます。そうですね、「シャーロック・ホームズの冒険」にしましょう。

ばしっ!


タースくん、血統者ですか。ただの“オジサンに好かれる機械イジリの少年”ではないのですか。ニクい小僧ですね。コンニャロめ。

蚊は危険ですよ。奴等は最後の吸血鬼です(?)


さて(なんだよ?)chachaさんのところのテムくんを描かせていただいたのですが、ど~しても、らんららさんが描かれたイメージから脱却できずに……そのまんまのデザインで描いてしまいました。事後承諾申し訳ありません。

それから、ご迷惑かもしれませんが、こちらでリンクさせていただいても宜しいでしょうか?何卒、宜しくお願い致します。

ああ、色々と書いてしまいました。長いコメントです。

うははは~^^

タースくんのどきどきが本当に伝わってきて、こっちまで息苦しくなっちゃいましたよぉ~~~もぅっ!(笑)
ミキーちゃん、いや本当に可愛いっ!!><
タースくんもそりゃぁどきどきしっぱなしです♪

動物のユルギアもいるんだ。
でも確かに、幽霊だって色んな形があるから不思議はありませんが^^
タースくんは見えて、声も聞こえて。もしかして触ったりも出来るのかな??

あぁ~ミキーに胸のトコで顔すりすりされたい~~!(変態@@;

でもタースくん、ミキーちゃんに浮かれている場合ではないぞ。
この後シーガ様と出会うんだから・・・(笑)
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