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「想うものの欠片」第二話 ⑤


ライラは食事はいらないと言って、二階の部屋に入ったきり、降りてこない。気にはなったが、親方が放っておけというので、とりあえずタースは目の前の美味しい料理を胃に収めることにした。
「タース、明日はまだ、体を休めるべきだぞ。仕事への復帰はあさってからだ」
「親方、でも僕は……」
「いいか、タース。お前がなんであろうと、俺は今まで半年お前を見てきて、頼りにしているんだ。週末までの今の仕事、あれはお前に任せたんだったな?」
「あ、はい」
「任せたんだから、ちゃんと最後までやれ。それにな、お前の腕を見込んでやってほしい仕事はたくさんあるんだ。寝込んでいる暇なんかない。一人暮らしなんだろう?ちゃんと食ってないから熱なんか出すんだ。なんなら、お前、借りているアパルトメントを引き払って、ここに来い」
少年はエイナの顔を見た。
エイナは穏やかに笑った。
「でも……」
タースは言いよどんだ。
「ライラのことは気にしなくてもいいさ。恥ずかしいんだろう、あの子はどうも、晩生でね」
「あら、あの年頃はあのくらいでちょうどいいんですよ。これでタース君にそつない挨拶でもしようものなら、いつの間にそんな娘になったのかって、あなただって驚くでしょ」
奥さんの言葉に、親方は少し顔を赤くした。先ほどから飲んでいる麦の酒のせいではない。
そんな顔のセルパを初めてみて、タースは少し笑った。

家では、お父さんなんだな。


美味しいスープをもらって、体が温まったところでシャワーを借りた。エイナは熱を心配したが、仕事で埃だらけのまま、あの部屋にいるのは気が引けた。タースは少しだぶついたセルパの夜着を引きずるようにして、階段を上る。向かって右側の扉が少し開いて、暗い階段の踊り場に部屋の明かりが漏れた。ちょうど部屋を出ようとしたのだろう、ライラが顔をのぞかせて、慌てて引っ込めた。
息を潜めて扉の向こうにいるのが分かる。タースが、部屋に入ってしまうのを待っている。
二つの部屋は向かい合わせ。階段を真ん中に左右に分かれる。タースは階段を昇りきったところで、立ち止まった。
「あの、ごめんね。君の生活を乱したいわけじゃないんだ……その。親方も奥さんもすごくいい人たちだよね。二人が本当の親だなんて、君がうらやましいよ」
扉の向こうから、返事はなかった。


「……、お休み。明日僕は家に帰るよ。朝早く出るから。気にしないで」
自分の部屋の扉を開けたとき、背後でも扉が開いた。
「タースって言ったわよね。私のせいで出て行くのは止めて。あてつけみたいで嫌だわ。それに、パパとママはいい人だから、きっとあなたのパパとママにもなってくれるわ。私は別にそれでかまわないの。兄さんが家を出てから、二人して私にかまうの、少しうっとうしいくらいだったから。ちょうどいいわ」
口調は冷たいものの、ライラは決して嫌な顔をしていなかった。照れたように目をそらす。
タースも笑い返した。
「ありがとう」
「別に、私があなたに何かしてあげるわけじゃないんだから!」
「うん、でも、嬉しいから」
そこで、少年はだるいのか、扉に体を預けた。
「あ、ごめんね、早く寝てね、そうだ、ちゃんと窓閉めた?母さん、いつも昼間に開け放つくせがあるから。気をつけないと夜の間に震えるはめになるのよ」
そういってライラはタースの脇を抜けて、タースの部屋に入ると窓を閉めた。カーテンを揺らす夜風に室内はすっかり冷え切っていた。
「ほらね」
腰に手を当てて笑うライラは、かわいらしく見えた。
「ありがとう」
部屋の入り口の脇においてあるランプに、マッチを擦って火を灯すとそれをタースの枕元に持ってくる。ベッドサイドのテーブルに置いて、少年を改めて見つめた。
ライラは目を丸くしていた。
「タース、あなたって」
タースはだるいのでベッドに座り込んでいたが、ライラの前で横になるのは気がひけるのか、膝に両手を付いて、首をかしげた。
その様子に、ライラは少し慌てたようだ。
「な、なんでもないわ。でも、シディって、もっと恐ろしい感じの人だと思ってた」
目をそらせるライラに、タースは笑った。
「僕、半分はライトール人の血が流れているから」
「そ、そうなの。だから、そんなきれいな黒髪で、瞳も、翡翠色っていうより、もっと青みの勝った不思議な色なのね」
タースはライラの頬が赤くなるのを黙って見つめていた。

容姿の事を女性に褒められることはたまにあった。図書館のジャムさんも、不思議な瞳の色だと喜んでいた。それが、女性には受けがいいのだと気付いたのはもっと幼い頃だ。
かといって、それでどうにかしようというほど、興味のある女性にも出会わなかったから、タースにとってそう言う類の言葉は笑って受け流すことになっている。

「うん、そうだね、変わった色だって言われる」
「そうね、雑誌で見た、リール海の色に似ているわ」
「そう?見たことないから」
「え?知らない?リール海は世界一美しい海なのよ!ティエンザ王国の西の海で、白い砂石灰の海岸線。家は皆白い壁にオレンジの屋根。蒼い海と空!もう、バカンスを過ごすにはこれほどいいところはないっていうのよ」
女性はこういう話になると元気になる。
昼間のミキーを思い出していた。
「でもね、この間の地震で、すごく被害を受けたんですって」
こういう話も女性は好きだ。
「ティエンザ王国で有数の港だし、有名な観光地でもあるから、復興と同時に王国では鉄道を引いて、もっと便利にするらしいわ。ああ!行って見たいなぁ!」
タースは微笑みながら、目をこすっていた。
くしゅん!
押さえるまもなく、くしゃみが出た。
「あ!ごめんなさい!寝て!さ、ほら」
ライラに肩を押されて、タースはベッドに横たわった。
まるで母親の真似事をするかのようにライラは毛布を少年にかけると、満足そうにぽんぽんと優しく上から叩いた。
「おやすみなさい」
笑うライラの表情は、とても素直な少女のものだった。
ぽんぽんと叩かれた毛布の心地よさに、タースは直ぐに眠りに落ちた。

次へ♪

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要さん♪

ふふ、二人の関係…うむ。お楽しみに♪
タース君の幸せな時間。
どうなるでしょう!続きをお楽しみに!!

タースさんとライラさん、初めはタースさんを嫌悪していたライラさんでしたが、2人はどうやら仲良くなれているようですね。そして、親方の家庭的な一面を、この時タースさんは覗く事が出来ましたね。
果たしてこの後タースさんをどのような運命が待ち受けているのか
次回の展開に期待します

kazuさん♪

こんばんはー!
うふふ♪少女漫画的状態ですよね~ある日突然、かっこいい男の子が家にいて!しかも、一緒に住む!?
なに、なんなの!?って。(笑)
こういう立場に一度はなってみたいですね♪
シーガ様と対決するより、うん、ライラちゃんのほうが絶対いいと思いますよ♪らんららも。
でも。
ふふ。
世の中、そうはうまく行かないわけです。

かいりさん♪

ふふ、ありがとうです!
ライラちゃん、案外素直な子です。
親方も奥さんも期待していることですしね!知らないのはタースくんだけ…どうなるんでしょ♪
楽しんでもらえると嬉しいです!

うきゅ~ん

なんだか どきどきです絵文字:v-10]
ライラちゃん、可愛いですし♪
そら 突然、見知らぬ男の子が・・しかも一つ下とはいえ同年代の男の子が、家にいたらびっくりですよね。
そのまますむっていうし。
でも、恐さが取れた後のライラちゃん、とっても可愛くていいです~~
そうだ!ミキーちゃんはシーガ様一筋だから、ライラちゃんがいいぞ!タース君!!

うふふ~、続き楽しみなのです~

なんだー!!

良かったー!前回のライラちゃんの態度にはヒヤヒヤしましたが、ただ照れていただけだったんですね!クス☆
そりゃ同じ年くらいの男の子が急に同じ屋根の下に!!ってなったら誰でもドキドキしますよ!!(笑)
いやぁ、なんだか読んでいてニヤニヤほんわかしました^^
ライラちゃん、確実にタース君に惚れましたねvVふふふ~!
なんだかこれから恋愛模様も複雑になっていく気がして、私的にかなりドキドキわくわくです!!
続きも頑張ってくださいませ^^!!

コメントありがとうございます!

ユミさん♪


ふふ、ライラちゃん素直ですよ!
親方自慢の娘ですから!
タース君より一つ年上ですからね、お姉さん気取りというか、怖くないと分かれば逆に世話好きな女の子になっちゃうわけです♪
お布団のうえから、ぽんぽん、らんらら大好きで♪
いいなぁ、やってほしいなぁ。


chachaさん♪


タース君、いい子過ぎます、ええ(笑)
もうちょっと、冒険したりわがまま言ったりしてもいいのだけど。こういう性格なんですね(^^)
(タースの耳をふさいで)そうそう、秘密だけど、ユルギアなんです。気付いてないけど。気付いたらどんな顔するんだろ。ああ、その時が楽しみです~(><)


楓さん♪


ツンデレ、そうか!初めて書けました、ツンデレ少女!
なるほど~これが…
シーガ様はツンツンです、はい(笑)
(象さんって誰?ごめんなさい~わかんない…^^;)
期待を裏切らない?はい!裏切りませんよ!楽しい後にはやっぱり事件が…必要でしょ?ふふふ。


takagaさん♪


ぶぶ!
歌われてるし!
赤面しているし♪(可愛い!)
神田川生活…うっとり…似合いそう~清貧な感じが(笑)ここでもやれますよ、階段で、二人で。
親方無視して。
「待った?」
「ううん」って(笑)
明らかに仕事なくなりそう…

ライライラ~イ♪

なんだよ、ライラ(赤面)

こうなったらタースと二人でワンルームアパルメントで神田川生活ですよ(ワンルームかどうか知らないけど)

ライラ、意外に世間話とか始めてしまいました。タースもなあ……ちょっと体調悪い時だから。もう少し話していたかったよねえ……(笑)

きた・・・

きたきたきた
キタ━━━━(゚∀゚)━━━━━!!!
ツンデレ美少女!!!
はい。
ライラが好きです。
でも、象さんの方がもぉーっと好きです!←おぃ。
シーガ君はツンツンでしたが・・・
そぉか、ここのツンデレが!!!!
いやぁ良かった。←何が?笑
さすがらんららさん、
期待を裏切らない人だ。
暖かい家族への憧れ・・・タース君、もう出て行く必要はなくなったね。良かった!!

良かった!^^

ライラ、良かった~~いい子じゃないですか!さすが親方の娘!^^
いやいや、きっとね、タースの優しい心に触れて、感じ方が変わったんでしょうね。
だってタースくん、本当にいい子過ぎるほどだもの(笑)

それにしても・・・
むふふ?^^ライラ、ちょっとタースが気になるんじゃ??
ミキーは(秘密だけど)ユルギアだぞ!タース!ライラちゃんにしておくんだ~(←余計なお節介^^;

あったかい家の様子が、気持ちが、とてもよく伝わってきてホワッとなりました^^
優しい気持ちにしていただいてありがとうございます☆

またまた

可愛い女の子の登場だ^^
ライラちゃん、タースくんが怖くなくなって、途端にお喋りに
なって、素直でかわいー。女の子って、どうしても母親気取
りになってしまうこと、ありますよね~。
気持ち、分かります!!
セルバさんは、男気たっぷりですね~。タースくんの腕を見
込んで。どうあれ、差別とかしないところ素敵です^^
Secret

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らんらら

Author:らんらら
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