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「想うものの欠片」第二話 ⑥



次に目覚めたとき、タースは自分がどうしてこの家にいるのかを、もう一度思い出さなくてはならなかった。深く、たっぷり眠ったからだ。
重かった頭もはっきりしていて、タースはまだ少し熱はあるものの、エイナに断って自分のアパルトメントに荷物をとりに行くことにした。
親方もライラもすでに出かけていて、こんなに日が高くなるまで寝ていた自分が少し恥ずかしくなる。

学校に出かける前に、ライラが母親にタースのことを話したらしい。
エイナはにこにこして、
「娘はわがままに育ったけれど、根はいい子だから、仲良くしてやってね」
と言った。
その言葉が微妙に気にかかりながら、タースは通りを歩いていた。
昨日の病院の前を通り過ぎて、右手に公園が見えた。図書館。
昼前の日差しが公園の白い石畳を光らせて、タースは目を細めた。


そういえば、昨日ミキーと約束した。
また、図書館で会おうって。
少女を思い出すと、とくん、と心臓が鳴る。
彼女はシデイラを尊敬しているといっていた。彼女のご主人がシデイラらしいことを言っていた。彼女なら絶対に差別なんかしない気がした。
タースは自然と図書館に向かっていた。


ミキーが図書館のユルギアに頼んでいること、そのために図書館に通っているのだということを思い出して、タースは昨日見たネズミのでかいのが気になりだしていた。
あいつが悪さしたのかもしれない。だから、急に熱が出た。
ユルギアはいろいろな不思議な力を持つ。物理的に人を傷つけたり、人の心に入り込んだり。悪意の塊のようなユルギアは人を襲ったりすることもある。


図書館の前で、いつも通りの守衛さんに挨拶をすると、タースは涼しい日陰の室内に入る。
ジャムさんが手招きしていたが、今日のタースは手を振るだけで、近づこうとしなかった。
その場所から、「あの子、きてますか?」と問うとジャムさんは意味深に笑って、また三階よと笑った。


心臓の音がやけに耳に付くのを無視しながら、少年は階段を昇る。
また、声がした。
ミキーの声。
また、ネズミの奴と言い争っているようだ。タースは急いだ。


「ですから、お願いですの、古いお手紙を見たいだけですの」
「だからぁ、おいらは知らないってば。じゃあ、見せてあげたら一緒に遊んでくれる?」
甲高いネズミの声。
「ほら、それってさ、汚い字でなんか書いてある奴だろ?多分、どこかで見かけたんだ。一緒に探してくれたら見つかると思うんだ」


ミキーだめだ、そいつの言うこと真に受けちゃ、ダメだ。
念じながら三階の扉を開ける。
「ええと。一緒にって、どこを探すんですの?」
ミキーは何の危機感もない様子だ。タースは一直線にこの間の場所へと走る。
「おいでよ、おいらの世界だ」
ミキーの小さな悲鳴と同時に、タースは空気がずんと重くなったのを感じた。
よどんでいる。
嫌な、空気。
ユルギアの奴!
「待てよ!」
昨日の場所に駆けつけると、狭い書架の間、少女の細い手が本棚の一番下の段から伸びていた。
ありえないことだが、まるで本棚の一箇所に、ミキーが吸い込まれていくように見えた。
「ミキー!」
駆け寄って、とにかくその手を取って引っ張る。
その手は、分厚い本に挟まれた棚の隙間、小さな真っ暗な空間から伸びていた。
ぐっと、ひっぱっると、ミキーのもう一方の手も出た。助けを求めるように、白い細い手が空をかく。
「ミキー!大丈夫か!」
両手を取って、タースは精一杯引っ張る。
「邪魔するなよ!」
ネズミの声がして、座り込んでいるタースの肩に、上の棚から本が落ちてきた。
「うわ!」
それでも、手を離してはいけない。
放したら、ミキーはどこかに行ってしまう。
二度と出られなくなってしまうかもしれない。
「ミキー!」
「…た、タース」
顔が出た。
暗い闇はそこに真っ黒な煙が詰まっているかのようだった。煙はゆらと揺れたと思うと、弾けるように一気に飛び散った。急に軽くなって、ミキーの体が飛び出した。
派手な勢いで背後の書架にぶつかって、本が落ちる。
「危ない!」

バサバサ!
いくつも、重い本の衝撃を背に受けながら、タースは必死に少女を抱きしめた。
腕の中の少女は、思ったよりずっと小さく、軽く、弱弱しい。
守らなきゃ。
そう思わせた。

。。。。。

「タース」
ミキーの声に、少年は二回瞬きした。
目の前に、ミキーの顔がある。
大きな瞳がじっと見つめていた。直ぐ間近に少女の息を感じて、とくん、と心臓が泣いた。


「大丈夫ですの?」
タースは顔を上げて、自分の周りに散らかったたくさんの本を見回した。
あの棚の暗がりは、今はただの本棚の隙間になっていた。
背中がずきずき痛んだ。
「いて…」
体を動かそうとして、一瞬痛みに顔をしかめ、タースは大きく息を吐いた。
腕のなかでミキーがふわりと動いて、そのたびに不思議と甘い香りがした。


「あの、大丈夫ですの?お熱は?ミキー、いつもシーガさまに怒られるのです。でも、シデイラは平気だと聞きましたの」
何を言っているのかよく分からないまま、タースはうなずいた。背中の打ち身が痛んだが、そんなこと、顔に出したら心配させてしまう。笑った。
「う、うん?大丈夫、だよ。あのネズミ、君をどこに連れて行こうとしたんだ?」
ミキーは恥ずかしそうに笑った。
「あの、トント、彼の名前ですが、トントは自分の巣穴があって、そこにいろいろな本を持ち込んでいるんですの。探しているものが見つからないので、彼が持ち込んでいる中にあるのではないかと思っていますの。どうしてもそれを見たいってシーガ様がおっしゃるから」


はあ、と大きく息をついて、タースは体を起こして、そっと背後の書架に背を預けた。
少女は、膝をついて座り込んだまま、タースを心配そうに覗き込んでいる。


こんな可愛らしい少女に、そんなこと命令するなんてどうかしている。


「ミキー、そのシーガさまはここには来れないのか?君が来るより、そいつが来たほうが早いんじゃないか?」
ミキーは困ったように笑った。
「あの、トントは私のこと好きなので、それで私に適役だって。シーガ様が」
「!なんだよ、それ!」


ユルギアは基本的に単純だけれど、だからこそ、怖い存在だ。話しても無駄なことが多い。理屈なんか通じないし、自分たちの感情、つまりユルギアを作り出した思念と同じ感情しか理解しない。時には人を食らうほど恨みや憎しみで凝り固まったユルギアもある。
トントが遊びたいというなら、彼はその感覚しか理解できない。ミキーが何をどう説明したって、お願いしたって、決して協力してくれることなんかない。
シデイラなら分かっているはずだ。
生まれたときから身の回りのユルギアの声を聞いて、姿を見て、まるで隣人のように付き合っていくのだから。
タースは鼻息を荒くして、ミキーのご主人だというシデイラを想像した。
どうせ、ろくでもない男だ!

次へ(7/1公開予定♪)

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ぬこさん♪

うふふ♪ミキーちゃん疑わないから(笑)
タースももうちょっとずるければ直ぐだませる…(^^;)
うん。シーガさま、何かと強いから。美形だし。
で。タース君は若さが魅力♪ふぉっふぉふぉ♪(←打ちにくい^^;)

ねずみに簡単にだまされちゃだめだよミキー!

タース君の若さではシーガに片手ひねられるくらい簡単に撃沈されそうですが・・若いのう、ふぉふぉふぉ

緋村真琴さん♪

おお!?一気にここまで!嬉しいです(><)
リンク大歓迎です♪
よろしくお願いします~!!

はじめまして

 はじめまして、緋村 真琴と申します。
 今日、このサイトを発見して、ここまでいっきに読んでしまいました。
 僕もブログにて小説をやっている身です。
 そこで、是非貴方様のサイトと相互リンクを致したいと思ったのですが、いかがでしょうか?
 一度、お時間よろしい時などに僕のブログに遊びにいらしてみてください。
 そこで、貴方様のサイトのリンクに連ねるのに足るものかどうかを是非ご判断くださいませ。
 では、長々と乱文失礼いたしました。

要さん♪

ドンドン、追いついてきますね~(^o^)/
タース君がここで彼らに出会うのは後々、いろいろと起こることになります♪でも、今はまだ、目の前のことで精一杯だから…(笑)
今後に期待してくださいね~♪

病も少し回復してきたタースさん。親方の妻のエイナさんは、彼と娘のライラさんが良い友達になる事を願っているのではないかと思いました。
そして再び図書館でミキーさんと出遭ったタースさんが次にどのような行動を取るのか、彼が見た金色のねずみの正体は何なのか
次回の展開に期待します

コメント遅くなりました♪

かいりさん♪
ありがとうございます!
タース君、どきどきですよ!もう、彼にはめいっぱい恋してもらいますから!そのうちそんなこと出来なく…おっと。
いえ、まあ、今のうちに楽しんでもらおうかなぁと、作者からのサービスです、はい。
シーガ様とのご対面…、それはいつのことやら(笑)


花さん♪
わはは、シーガ様、美形でクールでと期待を背負って書いてみたものの、クールすぎてつまんなくなっちゃって!(←おい!^^;)
だって、感情の起伏のない人を描くの難しいんだもん~!でしょ?タイプじゃないでしょ?…と、あまりひどい扱いをすると、一応主人公なので、イメージを回復するのが大変かしら…そのうち、救いの手を伸ばすことにして…。この第二話はタース君のためのお話ですから。タースくんにがんばってもらいます!!

タース君…ふふ、ふふふっ(楽しげな笑い
ミキーちゃん可愛いからねぇ。でもシーガ様以外にも、ミキーちゃん贔屓の障害はたくさん立ちふさがってるぞ!
それで、ボロクソに言われちゃって、シーガ様…。まぁ、花もシーガ様は、どちらかというとあんまりタイプじゃないのですが><
一途に頑張れ、タース君!実は自分がモテることにも気付かないで!(笑

っぶなかったー!

ヒヤヒヤしちゃいました><;!!
危うくミキーちゃん飲み込まれそうになっちゃって…!!
そして思わず強く抱きしめてしまったタース君。
ドッキドキですね*><*!!で、でもホント熱は大丈夫…?

タース君の中でシーガ様の印象最悪になってますね><;
そ、それもしょうがないですが…^^;
そろそろ二人の対面が叶うのでしょうか!!ドキドキー!!
そしてトントが持っているかもしれないシーガ様の探し物も早く手に入れられるといいですね!
続きも楽しみにしております^^

コメントありがとうです!!

chachaさん♪
ふんv-355って(笑)届きました?
シーガ様と出会うとき…ふふ、どんなでしょう(ニヤリ
テッタくんの場合:…すげー、美形!!イケメンって言っちゃいけない気がするぞ!…ってか、言葉通じるかな、俺、英語苦手…
クラフくんの場合:その髪の毛、どうやって染めたんだ?ねえ、触ってみていい?
リスガちゃんの場合:!!!!(すでに胸の前で両手を握り締めて、見とれている)
カカナくんの場合:(リスガを引き離そうとしている)
ありゃ、コメ返しが…妄想しすぎ(笑
さてトント、また出てきます♪微妙にらんらら好きなんですよ、金色ネズミ♪ネズミ好きなんですね~♪


楓さん(メラメラ在中v-12?)♪
ええ、すこぶる美青年です!今回はキャラの絵が最初にあるから…ごまかしようがないなぁ(笑)
ふふ、トント。飼いたいトント♪うちにもほしいトント♪
でも最後は…いえいえ。黙っておきましょう!
シーガ様が放置プ…!?放置ぷ、きゃ、恥ずかしくていえませんの!!
シーガ:「一度消えてみますか?v-359


ユミさん♪
タース君、恋人にするならこういう子ですよね~♪
ミキーちゃんになりたい…ええ、なりたいです。でも、最近らんらら、シーガ様と仲が悪くて(笑)顔合わせると喧嘩になるので。
ミキーちゃん、タース君にしておきなさい!と、密かに思っています♪
シーガ様の登場は、…いつでしょ?
シーガ:……v-359


やっほぅ!史間さん♪
おおお!ここまで!よくぞご無事で(?)ありがとうございます!(><)
嬉しい~♪「片翼のブランカ」から「水凪の国」、あ、クラフくんのお話は…読んでくださったのかな(あれこそ、長い!!><)本当に、嬉しいです!!
ミキーは可愛く行きます!!ええ、くどいほど、とにかく可愛い、愛されキャラに徹します!シーガ様のいい男ぶりは、今後タース君と一緒にいるとさらに際立つ予定!ああ、まだ先のお話ですが(ニヤリ)いろいろと企んでおりますので♪お楽しみに~!

わーい、ここにも追い着き♪

こんばんは!
ちょっとずつ読み進めて、ここまで来ました、やっほう♪
ミキーかわいすぎるだろー!
天然罪作り少女め(笑)

タース君には悪いけど、シーガ様はいい男だよ?
ああ、らんららさんの作品、好きだー!(なにを今更告白だ)

タースくん

熱くなってますね!!
かわい♪
とっても一生懸命で、こんな風に思われているミキーちゃん
が羨ましかったりしますよ~。
そして、シーガ様の言うことを素直に実行するミキーちゃん
もまた可愛かったりします^^
シーガ様、次はいつご登場ですか~?

うは☆

ろくでもない男・・・
当たらずとも遠からず?
・・・すこぶる美青年ですが何か?
でもま、タース君も十分いい男・・・ぶるるっ
今軽くメラニスに憑依されかけました。あぶねぇ・・・
chachaさんがおっしゃるように、
なぜトントのようなユルギアが産まれたのか?
そこが分かれば解決の糸口は見えそうですよね。
にしてもシーガ様・・・
ミキーちゃんを完全に放置状態ですね。
それともどこかでそれとなく護ってくれている???

あは☆

タース、鼻息がここまで届いたよぅ(笑)
ふんっ!て^^ぷぷぷ☆
本当、タースはいい子だなぁ。ミキーの為にそこまで考えて想ってくれるだなんて。
もう、ミキーにぞっこんですな?ニヤリ。(死語。笑

でもね。
シーガくんを見たらきっと驚くはず。
だってだって・・・・超美形なんだからっっっ!!><(そこかぃ!笑

トントは協力してくれるのかなぁ?タースの言葉と、今まで見てきた様子からは、そんな風に感じられないけれど。
どういった思念で生まれたユルギアなんでしょう?
そこを突いていけば、シーガくんが見たいと言ってるお手紙も見つかるかもしれませんね^^
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