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「想うものの欠片」第二話 ⑩

10


「レンドルさん!?何してるの?」


「立って……」
「ないよね。ミキー、いるの?」
「見つからない。かくれんぼしたままだよ。あの子いいなぁ」


タースはレンドルの脇を這ったまま、すり抜けようとして、無理やり押しのける。狭い紙製の通路はゆらりと全体が揺れるような気がした。
「おいおい?」
「ちょっと、通してくれよ。もうちょっと向こうへつめて。ミキーはどこ?もっと奥なのか?」
強引に抜けた少年を見つめて、レンドルは笑った。

「探すのかい」
「ああ、あの、あなたは立っているのが仕事じゃなかったの?どうしてミキーに興味を示すんだ?」


薄暗い中、レンドルの顔が赤くなった。
「あの子は可愛い」
「……あ、そう」


バカらしくなって、タースはレンドルを放っておいて、穴の奥へと進み始めた。
入り組んだ紙で出来た通路は時に登ったり、下ったり。ずっと這ったままなので、ついた膝が痛み出す。


「ミキー?」
小さな声がどこかで聞こえた。
止まって、周りを見回した。背後にいつの間にかレンドルが付いて来ていた。
「何だよ、気持ち悪いな」
「まあまあ、わしゃ、これでも若い頃は」
「立ってたんだろ、あそこに」
タースは適当に相手をしながら進み始める。
「若い頃は兵隊じゃった。こうやって穴を掘ってナ、腹ばいになって進むんじゃ」
「ふーん」
何か思い出したのか。
「あの子はいつも図書館に通っておった」
「ふーん」支離滅裂だ。
「可愛い子じゃった。わしは約束したんじゃ、必ず帰ると」
「それで?」
可愛い子ときいて、タースは少し興味がわいた。出征の間、恋人が待っていてくれたんだろう。
「わしは帰った。じゃが、あの子は帰らなかった」
「え?」


タースは止まって、後ろを振り返る。どんとお尻を押されて、転びかけた。
「いて、レンドルさん、ちゃんと前見ててくれよ」
「行方不明だった。わしは図書館で、待つことにしたんだ。ずっと、毎日、毎日、立って、あの子を待っておった」
タースは、レンドルがうつむいたままなので、その場に座り込んだ。
体の向きを変えて、年老いた守衛を見つめた。
帰ったときに、レンドルさんが生きていたかは怪しいな、タースは彼の様子をじっと見ていた。時々、ぞっとするほどやつれて見える。生々しいキズが見えたり、きれいな優しい笑顔に戻ったり。あまりユルギアの中身を見たいと想わないのだが、話を聞いてしまったために、自然と意識が探ってしまうのだろう。
切ない気持ちも、感じられて。
タースはこういう話に弱かった。


「今でも、待っているんだ?」
少年の言葉に、レンドルは顔を上げた。
「そうじゃ、待っておった。わしは、ずっと」
「そう、いつの間にか待つことじゃなくて、立つことが目的になったのかもね」
額の汗を拭いて、タースが笑った。
その表情に、レンドルは大きな目を何度も瞬き、それから、タースと同じように上半身を起こした。かぶっていた帽子を取った。
「相手の人も、どこかで待ってるかもね」
少年の言葉に、レンドルは呆然と見つめたまま黙りこんだ。
「どうしたの?レンドルさん」
「待っている」
「レンドルさんって、本当に不思議なユルギアだよね。実体はあるし、自分の思念を忘れちゃうなんて、普通ユルギアはそれだけは忘れないのに」
「待っている?」
「うん、きっと。その人も多分、死んじゃっているけど」
ぐらりと、揺れた。
レンドルさんが立ち上がろうとして天井をぐんと押した。
「死んでいる?待っている?」
「うわ、ごめん、わかんないけど!暴れないでくれよ!壊れるよ!ここ、紙なんだから!」
「ぎゃー!何すんだ!お前何してる!」
背後からドンと何かに押されて、気付くと目の前にトントが立っている。
「壊すな!おいらの家だぞ!壊すな!!」
細い小さなネズミの手が背中をとんとん叩いた。
「ほら、僕じゃなくて、そっちのおじさんが」
「お前、壊すな!」
金色ネズミがレンドルの相手をしている間に、タースは急いで奥へ進む。
目的はミキーだ。ユルギアはああして、同じ思念を何十年と抱えている。数分付き合っただけですべてを解決できるほど、簡単なものじゃない。あまりのめりこむと、こちらの心が痛くなる。
ユルギアの話を聞いて同情なんかしている場合じゃないんだ。


「ミキー?」
耳を澄ます。
かすかに何か聞こえる。
紙を、破る音のようだ。
タースは入り組んだ狭い通路を、乾燥した手触りの紙の床を這っていった。
二つ目の分岐で左を選んで、少し下って。
その先に、少女はいた。
丸く広くなったそこに、立って天井に手を伸ばしていた。


「ミキー?何してるんだ」
「あ、タース。見つけましたの!これなんですの」
少女が天井を指差した。
覆うように張り巡らされたたくさんの紙、よく見ると文字が書かれているから本のページをちぎったものだろう。
手書きの文字が並んでいる。
ミキーはそれを背伸びしながらちぎり取っていた。
「届かないですの」
「これ?」
「タース、大きいですの」


タースは天井のミキーが剥しかけた本のページをそっと引き剥がした。
それは古い小さな手紙のようだった。半分は千切れている。走り書きの文字で、短い言葉が書いてある。


「神のご加護を。…どうかこの子に。名はシーガ。…どうか、お守りに持たせてください」


読めるところだけ読み上げると、ミキーが首を傾げる。
「タース、それ、下さい」
「あ、ああ。これなんだい?シーガって書いてあるけど」
「シモエ教区の保護施設の記録ですの。二十二年前、神暦482年ですの。シーガ様はご自分のご両親を探しているですの。差出人とか、署名とかないですの?」
ミキーは紙切れを受け取ると切れていることに気付いて、顔をしかめた。そんな顔も可愛らしい。
「どこかにあるよ、きっと」
タースは何となく興味がわいて、天井を見上げる。


「お守って、なに?今も持っているの?」
「シーガ様の大切な石ですの。拾われたときに握っていたんです。青い透明な綺麗な石を。それが何かの手がかりになると、そう思っているですの」
「青い石……?聞いたことないな。宝石じゃないんだ?」
言いながら、タースは天井の紙切れ一つ一つを順に指を差しながら確認していく。
「はい。小さな丸い石です」
「ふうん。シーガを拾った人はお母さんとかを見てないの?」
「わからないですの。シーガさまは聖堂で拾われて、そのまま聖堂で育てられましたの。今も義理のお母様がいらっしゃいますの」
「ふうん。でも、これ、シモエ教区のだって?」
「はい、シーガさまのお義母さまは偉い方ですの、だから、特別に聖堂で育てられましたの。法律でシデイラの方々はシモエ教区に行かなくてはならないから、保護された記録だけは保護施設に置いてあったですの。でも、十年前保護施設で事件があって、資料をこちらに移したそうですの」
タースは考えていた。
捜す親がいるだけ、いいのか。
それとも会えないのなら、死んでしまったのと同じ、かな。


二人は首が痛くなっても、一つ一つの紙切れを見て廻った。
足元の紙が時折薄くて、破りかけたり、引っかかって転びそうになりながら。
不思議なトントの巣穴は温かくも寒くもない。暗いけれどじっと目を凝らすと文字も読める。意思の力で、変えられるのだろうとタースは思った。
何しろ、思念だけのユルギアが作り出す空間だ。
試しに求めるものを頭に浮かべてみた。見つけられるかもしれない。
が、何も分からなかった。そう都合よくは行かないんだな。


「はあ、疲れたですの」
背後でミキーが座り込んだ。
「もっと、違う場所なのかな…」
「んー、なかなか大変ですの」
「そうだね、大丈夫?」
「タースは、優しいですの。お手伝いしてくださる」
「ん、ああ。まあね」


自分がどうしてそこまで、シーガの探し物を手伝っているのか、ふと疑問に思いながら、タースは固まって痛む首を回した。
「見いつけた!」
金色の塊がトンと、タースの腰にしがみついた。
「今度はタースが鬼だ!」
トントは尻尾をぱたぱたさせながら、見上げた鼻をひくひくさせて嬉しそうだ。


かくれんぼが続いているのか。
タースは何となく憎めない気分になって、トントの頭をなでた。丁度、小さな子供のようだ。このくらいの背だったら、六歳くらい、かな。小さな男の子の姿を金色ネズミの姿に重ねて、タースは膝を曲げて視線を合わせた。
「な、トント、今度は宝探しだよ」
「宝!!探す探す!」
また頭を何度も頷かせるので、止めてやる。

次へ(7/9公開予定♪)
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要さん♪

ありがとうございます♪
はい、レンドルさん、理由を忘れてしまったりしてますが。なかなか味のある方です♪どんな人にも理由がある…そう言うもの表現できたらなぁと。

図書館の守衛のレンドルさん。かつて彼は兵士だったのですね。彼は今でも、想い人を待ち続けていると言うなかなかロマンチックな雰囲気の人物だと思いました。
タースさんはミキーさんに再び出遭うことが出来ましたね。
両親を探すシーガさんを手伝うミキーさん。果たしてシーガさんの両親を見つけ出す事ができるのか
次回の展開に期待します

楓さん♪

ありがとうございます!!
お忙しいのに(><)嬉しいです!
タース君、保育士さんとか?似合いすぎです(笑)
おお、隣に楓さんもですか?
親方が睨んでますよ、ほら、入り口の影で…(笑)

なるほど!!

タースやるなぁ。
きっと、保育士とか向いてそう。
小学校の先生とかも。
実は僕、そう言うのになってれば良かったなぁと最近しみじみ思うんですよね~
何かタースとは同じ匂いを感じる今日この頃。
あ、でもユルギアとかは見えなくていいです(汗
続き、読みに行くデス!!

コメントありがとうございます!

ユミさん♪
はい、ほのぼのとしています!ユルギアの二人、らんららの思った以上に可愛らしい奴らになってしまいました(笑)
競技場のユルギアとはまた違う彼ら。純粋な想いだけだからまるで、子供のようなんですね♪
トントもレンドルさんも描いていて本当に楽しいです!
ふふ~シーガ様がでてくると…
このほのぼのは…

史間さん♪
おお!お忙しいのにありがとうございます!!らんららではありえない時間のご訪問に、本当に感謝です!!からだはちゃんと、いたわってくださいね♪
トント、かわいいでしょ?ワンコと違ってネズミは(イタチやオコジョみたいに)立ったりできるし、手(前足)が小さいから人のイメージと重ねやすいんです♪
レンドルさんの過去。
ふふ。次を読むと分かりますよね。レンドルさんとの出会いが、タース君を救うことになります!

うは~★

前回から一気読み&まとめコメントですみません(汗)
トント、宝探しだぞ、がんばれ~!
トントってば、やっぱかわいいですね。
可愛さならミキーが一番だけど(笑)タース君が(ちょっと嫌ってる??)シーガ様の探し物を思わず手伝っちゃうほど可愛いんだもん!
シーガ様、そうか、両親を捜して。
図書館で何か分かるといいですね!どきどきです!

それから、レンドルさんが何か思い出しそうなのが、すっごく気になります~><
恋人、待っていてくれるといいですね!
案外近くに立っているとか??(そりゃ、待ちぼうけカップルじゃねぇか?)

続き、楽しみにしております!

ほのぼの

暖かいお話です。
シーガ様の生い立ちの件に関しては、そうも言っていられないし、
今後大きな話に展開するのでしょうが、まずはこの状況が、
ちょっとほっとしてます。

レンドルさんのむかしの話。
いつの間にか、立って待つことになった彼。ずっと待ってる
んですね。想い人を…。
その人もきっと探してる。レンドルさん、会えるといいのにね♪

トントも可愛いんですよね~♪
本当に子供みたいで…。
宝探しで、シーガ様の過去に関する物が見付かるといいですね。

あ~、シーガ様、そろそろお戻りですか??
どうか、この暖かい雰囲気が続きますように!!

コメントありがとうございます!

かいりさん♪
ふふ、意外でしょ?理由はおいおい、って感じですが(^^)
レンドルさん、そういう人でした!トントも悪意のあるユルギアではないので。上手く使えば可愛い奴らです♪
シーガさまの出生…この物語の鍵ですので、相当時間かかるかもですが。とにかく、今手に入る手掛かりを見つけることですね♪がんばって更新していきます♪

chachaさん
そうなんです♪お人よしのタース君ですが、機転は利くというか、鼻が利くというか(笑)
レンドルさん、恋人は…そうですね…きっと。
ユルギア一人一人の存在意義に思いをはせると、いろいろな人生が浮かんできそうですよね~。
ふふ、やっとお話が?ええ、もう少しで、シーガ様脇役から主役に戻ってきます。あと、そう、もうちょっと、かな~♪

ほんと、ほんと^^

タース頭いいっ♪^^
探し物を一緒に探してって言っても無理だもの。
宝捜しと言われたら・・・やるやる!ってなりますよね~☆
うまいっ!と思いました(笑)

レンドルさん、そうか、立っていたのは図書館を護る役目じゃなかったんだ。
待ってたんだ、恋人を。
でも、きっと恋人は天国で待っているんじゃないかな・・・
そんなことを思いながら。

シーガくんの過去にもちょこっと触れて、話が動き出したなぁと実感です^^
さて、手紙!探し出せるかな!?
で、レンドルさんは何してんだろう??ちょっと混乱させちゃったから・・・危険なユルギアにならないか心配です><

シーガ様…

その目的は、両親を捜すことだったんですか…。
意外なような…妙に納得がいったような…。
そうか、その手がかりがあの青い石なんですね!

そしてレンドルさんにもそんな過去が…!!その想い人は今どこにいるのでしょうか><
出来るなら会わせてあげたいですね!!

タース君、あったま良い~!!!
遊びが好きなトントなら絶対宝探し頑張ってくれそうですね!
シーガ様の出生について新たな手がかりが見つかりますように><!!!
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