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「想うものの欠片」第二話 ⑫

12


図書館のあの場所だった。両側の本棚を見上げて、その谷間の向こうに男が一人立っていた。腕には、少女が横たわっている。
「!ミキー!」
立ち上がって、一歩歩こうとしてよろけた。
棚に手を着いて見上げる少年に、男は冷たい視線を向ける。


「あんた、シーガなのか?」
青年はひどく綺麗な顔をしていた。白く冷たい肌、愁いを帯びたような翡翠色の瞳。銀の髪は長く伸ばされ、背で一つにまとめられている。上質な黒のシャツにベスト。背が高い。
「そうですが」
「あの、あんたが助けてくれたのか?」
青年は何も言わずただ、黙っている。不機嫌そうなしわが眉間に刻まれていた。
タースは見回した。レンドルの姿も、トントの姿もない。足元に、レンドルの守衛の制服が落ちていた。

「あ、レンドルさんは?トントは?」
「…ユルギアを名で呼ぶとは」
バカにしたように笑う青年に、タースは顔をしかめた。
「別に僕の勝手だ。二人はどうしたんだ」
「眠らせました」
「え?」
「消した、と言えば分かりますか?」
シーガはそう言って、ミキーを片手で抱えると、左手を開いて見せた。
青い石が二つ、ブローチになったもの、ネックレスになったもの。
トントとレンドルさんが持っていたものだ。
 

「ルリアイ……」
「なんです?それは」


青年はその言葉を知らないようだ。五百年前にはその名前が当然のように知られていた。ルリアイ、石の名だ。


「レンドルさんは知ってた。この石がなんなのか。なのに、消した?」


タースの睨みつける視線に少しだけ、目を細めて、シーガは言った。
「ユルギアが素直に眠るなど珍しいことです。私が来た時には既に、ユルギアたちは消えかけていました。私がしたというより、お前がしたのでしょう。ネズミに取り付いた少年のユルギア、制服をまとった老兵のユルギア。どちらもたまたま、石を持っていたがために実体を持った。本来あるべき姿に戻したのはお前です」
「どういうことだよ!」
「あれらの思念を打ち消すような何かを、お前が与えました。私に分かるのはそれだけです。私のせいにされても困りますね」
「なに言ってるんだよ!石がほしかったんだろ!だいたい、あんた、自分の親を探すのにミキーを使うなんて、こんな危険なことさせるなんて、どうかしてるよ!」


シーガは小さくため息をついた。
「お前には関係ありません。まったく、こんな気分の悪い場所に呼びつけて」
「……ごめん、なさい」
青年に抱きかかえられた少女は小さくつぶやくように言った。
「ミキー!」
タースが駆け寄ると、シーガはくるりと向きを変えた。
「近寄るな、雑種くさい」
「ざっしゅ!?」
タースは一瞬何のことか、飲み込めなかった。
雑種…。
去っていくシーガの綺麗な銀色の髪が揺れる。
保護区以外で本物のシデイラを見るのは初めてだ。
母さんと同じ、翡翠色の綺麗な瞳をしていた。
雑種……。
僕のことか!
そこで初めて、混血のことを言われたのだと気付いた。
むっと腹の奥が熱くなった。
「あいつ!」
既に、男の姿は無い。


シデイラの血を引くと、疎まれたり蔑まれたりすることは今までもたくさんあった。けれど、本物に雑種だとバカにされる筋合いはない!シデイラの血を引くために、どれだけ苦労していることか!


タースは階段を駆け下りる。
シーガは既に図書館の扉を開いて、外の日差しの下にいる。
ジャムさんがこっちを見ているのをちらりと視界の隅に感じながら、飛び出した。
「待てよ!」


門の前に小さな黒い馬車。シーガは既に乗り込んでいた。
タースが階段を駆け下りる。
走り出した馬車を悔しそうに見送る少年に、誰かが声をかけた。
「タース!」

振り向くと大柄な、作業服の男が立っていた。
「!親方…」





夕食も大人しいタースに、エイナはパンのお代わりを確認する。
タースは黙って首を横に振った。


親方に説明しようとしたら、この間と同じ口調で言わなくていい、と言われてしまった。
怒っているのは分かった。
仕事を済ませたにしろ、親方の許可を得ずに図書館に向かった。
すぐに戻るつもりが、気付いたら仕事の時間は終わっていて、心配した親方が探しに来たのだ。


タースは黙って親方の後について帰って来た。
親方は言った。
「図書館には行くな」
それが、タースの何を止めさせたくて言っているのかが、分からない。
勉強して大学に行きたい、それがいけないのか。
仕事を抜け出すのがいけないというのだろうか。
それとも、タースの様子から、シデイラに関係する何かだと勘付いているのだろうか。


どちらにしろ、タースには逆らうことは出来なかった。

次へ(7/13公開予定♪)
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松果さん♪

ありがとうございます!!こんなに一気に!v-10
はい、図書館に住む。きっと何かいる気がするんですよ~。
霊とか全然見えないんですけど。
いたらいいなって。
レンドルさん、いい感じの人でした♪彼の残してくれた情報は、今後役に立ちますので♪
シーガさま。
今回登場してまた、しばらく雲隠れ(笑)謎多き人ですが。
だんだんと分かってきます♪いいですよね~銀髪、サラサラ長髪~♪(もちろん、オーリさまを思い浮かべている)

こんばんは

ユルギアって切ない存在ですね。
図書館に住み着くわけのわかんないモノたち、そういうのって大好きです。
特にレンドルさん、ジジキャラ好きな私のツボだったので消えちゃったのは寂しい~。でもタース君のおかげでやっと眠りにつけたんですよね…

ううう、シーガ様の出現でまたしも「最後まで読みたい病」が出そうです。
でももったいないので…また来ますね。

要さん♪

ふふふ。シーガ、上品ですか?嬉しいです♪
そうですね、魂に似ているかも。だんだんと、いろいろなユルギアが出てきますので。
どんなものか。少しずつですがわかると思います。
はい。次回、期待してください♪

シーガさんと出遭ったタースさん。2人は出遭った時から険悪な雰囲気に包まれていましたね。そしてシーガさんは相変わらず、クールで上品な雰囲気だと思いました。
シーガさんの言葉によると、ユルギアは生き物の魂のようなもののようですね。
果たしてこの後、タースさんがどのような行動を取るのか
次回の展開に期待します

ユミさん♪

へへへ~♪
シーガ様とタース君、性格的にぶつかるわけです。これからも火花バチバチさせる予定♪
シーガ様、人嫌い、ユルギア嫌い、(自分好き?)ですから(笑)
いっそこういう性格になってみたいと皆さんに思わせるようなヤツに仕上がるといいなぁ…(一応、主人公です、これでも)
さて。この後。
お話を動かします!ご期待ください!

楓さん♪

そこまで言います!空気を凍らせる男シーガ様!
性格の悪さはこれからドンドン、表に出していきますので~それでもついてきてくれるかなぁ…皆(不安^^;)
そうです!タース君、癒し系です。これからも彼はそう言う立場ですね!今第四話書いてますが…だんだん、話を動かさないと!ちょっと、大きくしていく予定ですので♪

おお!?bbsですか!?
他薦のスレですね…ありがとうございます!
ご挨拶に伺います!(は!名刺がない…笑)

あ…

来ましたね~。
んもう!トントが壁に穴開けなかったらこんな風にならなか
ったのかしら?いやいや、シーガ様。どんな状況でも、きっと
いがみ合いになるようなことを言ったんでしょうね。
雑種だなんて。そんな言い方…。
さすがです(笑)

図書館にはまだ何か秘密があるのでしょうか?
親方がシデイラやユルギアと関わることを恐れて「図書館
行くな」って言っただけ??
なんか気になります。

出たシーガ!笑

すげぇっすね(笑
登場と同時に凍り付くような雰囲気。
そして「雑種」しかも「くさい」

(;´Д`)のおおお!!ガビンショック!

そこまで言うか、そこまで言うのかぁああ!!
タースがユルギアを消したというのは、僕もchachaさんと同じことを思っていました。
毒舌シーガにキュートなミキー、そして雑種タース(笑
この三人がコンビを組む日が待ち遠しいです♪
ピーエス
野いちごのBBS「他薦の館」スレにて、
らんららさんとchachaさんを紹介しておきました。
にや

7-12 16:52の方へ♪

はい!いいですよ!
朝食後の一杯が♪
お互い、ゆっくりペースで楽しく小説書きましょうね!

kazuさん♪

シーガ様、これから魅力爆発(?)
あ、それはもうすこしさきかなぁ~
ええ、態度悪いかららんららは冷たくあしらいますが、好きです♪かなり。ツンデレ男くんですから♪
さてそろそろ。動きますよ♪一件落着、ではありませんからね!うふふふ…

シーガ様登場♪
う~ん、あるいみ気の合わない2人ですね^^;
しかしシーガ様、雑種って・・;;
純粋なシデイラだからこそ受けてきた、誹謗中傷。
シーガ様の持つ誇りと尊厳が、その言葉を言わせちゃうんでしょうか。
・・・あれ?かなりシーガ様よりv-10
トントくんとレンドルさんが消えちゃったのが寂しいですが、2人を現実につなぎとめていた想い残すことが、タース君のおかげで昇華できたんですね。
レンドルさんが、恋人と天国であえていればいいなぁと思うkazuです♪
続き楽しみにしています♪

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

おはようございます♪

chachaさん♪
ふふふ~。chachaさんの深読み、感謝です!はい、そんなところだと(←いい加減!?)
だんだんと。です。
とにかく今は、タース君は親方の機嫌を直さなくちゃですね…ミキーちゃんのことは気になっているでしょうけど。
シーガ君ひどいヤツでしょ?そうなんです(笑)
脇役ですし(笑)

かいりさん♪
ありがとうございます!!
シーガくん、ひどいヤツですよ。それでも好きといってくださる方がいる!嬉しいことです~♪これからもっともっと怖さ倍増計画中ですので。お楽しみに♪
はい。レンドルさんたち、安らかでしょう。
楽しいやつらでしたが…引きずって連れて行くのもちょっと難しかったので。寂しくなるのでニューキャラ登場予定です♪
かいりさんのお気に召すといいなぁ…。


史間さん♪
おお!きっちりまとめてくださって。はい!そうです!そのとおりです!!chachaさんの鋭い読み、そしてそれをこなしてくださって本当に嬉しいです!タース君には自覚はないですし、シーガくんも語らない人なので…表現が難しい~。
親方、そうですね~いずれ。
もちろん、いつか、親方とであったことがタース君にひいては物語りに影響を及ぼす予定ですが。まだまだ。先の話ですね…。見守ってやってください♪


不思議なルリアイ

トントとレンドルさん、消えちゃったんですか~
寂しいです~!
タース君ってば、すごいじゃないですかぁ。
そうか、chachaさんの鋭い推測に、どっきり。
無意識のうちに成仏(?)させてあげられるタース君、
このまま親方のもとでおさまる感じでもなさそうで…?

親方が見れなくなるのも、寂しいです~(ファン)

うはぁ~!

予想通り…いえそれ以上の2人の言い合いにハラハラいたしました><;!!
「雑種」って…!!!シーガ様それはかなりヒドイ!!
でもでもそんな毒舌なあなたも好きでーす!!(←
そうか…レンドルさんもトントも眠ってしまったのですね…。
安らかに眠った…という意味だといいなと思います^^

私もすっかり忘れていました。親方と仕事のこと…><!!
親方が怒るのもわかりますが…図書館には行くなという理由は…?
続きも楽しみにしております^^

そうか><

トント、ねずみに乗り移ってたんですね・・・
実際は少年だった。うんうん、ねずみのユルギアって不思議だなぁと思っていたので、なるほど!と^^

二人とも眠ってしまって・・・

もといるべき場所へ還ったと言う方がいいのかな?シーガくん、一体何したの!?><
って思ったら??え?タースが何かしたの??
もしや、トントは誰かと遊びたかった=タースが遊んであげた。
レンドルさんは恋人を待っていた=タースが恋人のいる場所(亡くなっていると)教えてあげた??
ですか!!?><
あぁ、色々と想像するのは楽しい(笑)

親方・・・図書館禁止令まで出しちゃって;;
その真相は確かに、どういう意味を込めているのかわからないけれど。
タースにとってはひとまず、離れた方がいいかもしれないなぁ・・・
でも、ミキーには会いたいんだろうなぁ^^
タースがどうするのか!?とっても気になりつつ、見守ってます☆

シーガくん・・・ちょっとひどいぞぉ。
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