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「想うものの欠片」第二話 ⑭

14


ライトール公国、ライト公領の北部。
新しい駅前の聖堂に比べて随分古ぼけた、それでも大きさだけは誇れる旧聖堂の建物がある。

麦畑を通り抜け、丘陵地の森の中。
月明かりが建物の屋根を夜空に浮き立たせていた。
ほとんどの部屋の明かりが消えている中、礼拝堂の奥、講堂脇の部屋にいくつか明かりが灯されている。ランプなのだろう、明かりはゆらゆらと頼りなく揺れる。


夜になって吹きはじめた強い風に青年はマントを翻して、黒い馬車から降り立った。
その後を追うように、小さな影がぴょこんと両足で着地する。


「嫌な風です」
「山臭いですの?」
「いうなら、獣臭い、ですね」


二人はそんな会話をしながら、ガラガラと上がる鉄の格子戸を見上げていた。鎖のきしむ音、落ちてくる土ぼこり。
それが顔にかかって、ミキーは思わずぶるるっと震えた。
「いやん」
「ミキー、耳が出ていますよ、みっともない」
「びっくりしたですの」
二人は歩き出し、背後で再び格子戸が降りた。


その地響きを明かりのついた二階の窓から聞いている女性が居た。
白髪の髪をきれいに結い上げた、初老の女性。ふふ、と微笑むと、机の上の呼び鈴を鳴らす。


ほどなく、ドアをノックする音がする。
「お呼びですか、ファドナ様」
扉の向こうの相手に、女性は厳かな声で命じた。
「シーガが到着しました。食事の用意を」
「は、かしこまりました」
人の気配が消える。


ファドナ、この国の教会の最高職にある聖職者だ。司祭の位で最も高い地位にある。世のうわさでは聖女ファドナ、と呼ばれるが、実際のところ、彼女本人を知るものは、聖女とは呼びにくいと感じるだろう。
再び人の気配。
ドアが小さく叩かれた。


「ファドナ様、シーガ様がお着きです」
「おお、通して頂戴!」
嬉しそうに扉に駆け寄る。開かれた目の前に女性がいることを察知していたのか、シーガは扉から一歩、後ろに下がる。
「シーガ!お帰りなさい!」
遠慮なく抱きしめようとする聖女をするりと交わして、部屋に入る。


よろけながら、ファドナはシーガの後について入ろうとする少女を、ペンと叩いた。
「きゃ!」
「お前は許可しません!出ていなさい!」
「シーガさまぁ」
頭を押さえて訴える少女に、シーガは冷たく手を振った。
少女に勝ち誇った笑みと鼻息を吹きかけて、聖女ファドナは扉を閉める。


「相変わらずですね」


青年がファドナの仕事の様子を見るように、机の上の書類の山を眺めた。ちらちらと数枚めくっている。
その立ち姿だけでも様になる、と聖女は微笑む。


「さあさ、シーガ、かけて。今食事の用意をさせています、それまで一緒にお茶でもどう?」
「座りませんよ、うっとうしい」
「なあに、水臭いじゃない、さ、座って、疲れたでしょ?いつティエンザから戻ったの?ちょうどひどい地震があったから心配していたんだから」


強引に、青年をイスに座らせると、ファドナはその背後に立つ。
「それが嫌なのです、ファドナさま」
背後に女性の息を感じることに、シーガは顔を引きつらせる。
「そんな、水臭い呼び方はよして、シーガ。母様って、昔は呼んでくれたじゃない」
「…違うと想いますが、お義母さま」
「ああ、いい響き」


ため息をつきつつ、シーガは長い足を組み変えた。
「相変わらず、この古い聖堂にこもりきりですか」
「いいのよ、今やミーア派は古い教えなんですって。新しい技術や、工業を取り入れた都会に移り、富豪や王族に媚を売るのが新しい教えだそうよ。まったく、ロロテス派は、何を考えているやら」


「くす、辛辣ですね。ここに来る前に、しばらく駅の近くにいました。随分都会になりましたね。人も多い、活気もある。人はそう言う場所に憧れるものですよ。人を救うのが教会の勤めであるなら、ロロテス派は間違ったことはしていません」


「いいえ、いいえ、シーガ、ロロテス派はティエンザ王国に大きな大聖堂を建てたそうよ。かの国の大司祭ガネルは、自分を聖王と呼ばせているとか。勘違いもいいところよ。最近では新しい医学のためと称して、異民族を捕まえることすら厭わないそうよ。私たちがシモエ教区に保護しているものたちですら、引き渡せといってきているのです」
「異民族、ではなくて。シデイラ、でしょう?」
青年の言葉に、ファドナは言いよどんだ。
シデイラが疎まれ蔑まれているのは周知の事実、もちろんシーガも分かっている。しかし、それを本人の前ではっきり言うのははばかられた。


シーガはその気持ちを見透かしたように、にやりと笑う。
普段は無表情なのに、相手が人間として弱い部分を見せると嬉しそうにする。
そのような性格に育てた覚えはないのに。
見かけは申し分ない青年に育ったと想うのに、と。
そこだけがファドナの密かな悩みだった。


「…ええ、そうよ。シデイラは今でこそこんな風に扱われているけれど。遠い過去には神の民族と呼ばれ敬われていたのに。嘆かわしい。私の名がなければ、あなただって危なくてかの国には入れないところよ」
「そうですか」
涼しげな視線をまともに受けて、ファドナは頬を染めた。


実際はファドナの後援がなくとも、シーガは平気だろうと分かっている。養母としての面目を押し付けようとしている自分に気付く。
さらにそれを見透かされているようで息苦しくなる。
話題を変えた。


「そうそう、この間公国政府から話があって、シデイラの混血を一人、保護したわ」
「混血?」
珍しかった。思い当たる人物が一人。
「ええ、可愛い子よ。会ってみたい?」
「……嫌です」
シーガは言ってから、しばらく考えた。
それから、ふと目を細めた。
「いえ、会ってみますよ。食事が済んだら、会わせてください」
「え?ええ、いいわ。今日連れて来たばかりだから、まだ落ち着いていないのだけど。シデイラの血を引くものとして、諦めてもらわなければならないことがたくさんあって、それを、どこから話していいものか、迷っているところよ。シーガ、あなたから話してあげてくれる?」


シーガはイスから立ち上がった。
着たままだったコートを脱いで、片腕にかける。
「ええ、そうですね、楽しそうです」
「シーガ?」
青年が、楽しい、という言葉を使うことは希だった。

らんららです♪やっと。シーガの出番♪お待たせでした!
次へ(7/19公開予定♪)
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N&Eさん♪

うふ。
ですよ~♪
そのしつけ。

それが、なぜ彼に必要なのか…いずれ、わかりますよ~♪(第三話くらいで…^^)

シーガ様はミキーに躾が厳しいですね。

でもファドナさんにもそうやって育てられたんですね。

要さん♪

ありがとうございます♪
コメントいつも嬉しいです!
はい♪シーガの後見人とでもいいますか。
ふふ、淑女ですかぁ~はい、表向きはそうですね♪
シーガの前だと違いますが(笑)
二人のやり取り…ご期待ください♪

ライトール公国へ到着したシーガさん達を迎え入れたのは、この国の聖女ファドナさんだったのですね。ファドナさんは教会の長に相応しい、淑女な雰囲気の美しい女性だと思いました。
そしてシディラの子供であるタースさんが教会に保護された事を聞き、シーガさんは一瞬ためらいましたが彼に会う事を決意しましたね。果たして、この後物語がどのように進んでいくのか
次回の展開に期待します

楓さん~♪

お忙しいのに、読みに来てくれる、その律儀さが嬉しいですよぉ(^^)
ふふ、シーガさま……らんららもM心くすぐられっぱなし!
タース君には逆に…なんですが(笑)
スレイドくん、うむ。
正式にはちょっと違う立場です。そうか。ちゃんと設定を説明していなかったなぁ~だれか、タース君に説明してくれないかなぁ。
ねえ、ミキーちゃん?
ミキー:ミキーだけのけものですの(TT)
じゃあ、シーガ様
シーガ:必要ありません
ううん、じゃあ、スレイド。
スレイド:ヒミツだからイイってことも、あるんじゃない~?
う、むむむ。
ファドナさん
ファドナ:あなた、誰ですか!うちのシーガを呼び捨てにするなど!!様をつけなさい様を!!

無理かも(笑)
ふびんだなぁ、タース。

タース:誰のせいだと…v-359

出たな!

「ミキー、耳が出ていますよ、みっともない」

おおうぞくぞくします←M?

相変わらず辛辣で。笑

たーす君と再会するんですね。てことは、スレイドは本当に公国政府の使いだった…

ずいぶん手荒な(苦笑^^
でも憎めないキャラがちょっとお気に入り♪

にしても…
聖女ファドナ…そんなキャラだったとは?!
なにげに「くーちゃん!」なあのおじいちゃまと雰囲気かぶりました。
いい人そう~☆

かいりさん♪

うふふ、シーガ様きました!
いちいちかっこよくしてあげなきゃいけなくて大変(笑)
いよいよ、タース君と対決…うむ~♪
うふふ、怖いシーガ様、いいですよね~最近、この人を書くのが楽しくなってきました(笑)どうやら、らんららにもSっぽい部分がv-12

シーガ様ー!!

シーガ様再登場でウハウハなかいりです!こんばんは!!
人の弱いところを見ると嬉しそうに…!?なんて素敵な…!!(←末期
長い足を組み替えた…などの描写にいちいち反応してしまいます!!
もーシーガ様カッコ良すぎですー!!(叫)

でもでもファドナ様、ミキーちゃんのことはなんだか毛嫌いしている感じで…気になります(泣)
さぁ!次回またも対決な2人が見られそうな予感ですね!
楽しみにしております^^♪

ユミさん♪

ふふ、そういう性格なので…。
これからタース君とどんなやりとりが…ますますシーガ様、人気者の座は遠くなりそうですね(笑)
タースくん、がんばりますよ~多分…^^;

怖いよ~

シーガ様!!人が弱みを見せると嬉しがるなんて~。
しかも、しかも再会のシデイラの混血とは、もちろん…。
あー、なんか嫌です~。タースくんが苛められそうで。
ミキーちゃん入れてもらえないから、ミキーちゃんとは
再会できないんですよね…。
シーガ様のいるところ、嵐って感じ?!
次回upが楽しみのような、辛いような~^^;
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